朝鮮高校の現代史教科書は何を書いているか

 

徹底した個人崇拝、虚偽の北朝鮮史・朝鮮戦争史

 

萩原遼 朝鮮現代史家・ノンフィクション作家

(朝鮮高校への税金投入に反対する専門家の会)

 〔目次〕

   1、宮地コメント−日本共産党と朝鮮総連=朝鮮労働党との関係

   2、萩原遼−はじめに

   3、徹底した個人崇拝 一、二、三年生用教科書内容

     1、一年生用=朝鮮戦争はアメリカと韓国による北朝鮮侵略戦争

     2、二年生用=金日成と金正日のクーデターを美化

     3、三年生用=拉致の謝罪なく−「拉致を契機に反朝鮮人騒動」と八つ当たり

   4、朝鮮高校『現代朝鮮史』の翻訳・刊行にさいして緊急アピール

       朝鮮高校への税金投入に反対する専門家の会

   5、「光射せ」第5号−発行人・編集人・連絡・注文先−「現代朝鮮歴史」注文も

 

 〔関連ファイル〕         健一MENUに戻る

    『不破哲三が萩原遼を朝鮮総連批判で除籍』

    『除籍への萩原抗議文と批判メールへの党回答文』

    萩原遼HP『金正日 隠された戦争』新刊の概要・目次、寄稿欄

    『北朝鮮拉致(殺害)事件の位置づけ』朝鮮労働党と在日朝鮮人、日本共産党

    『北朝鮮拉致事件と共産党の意図的な無為無策路線』金正日擁護政策

    『北朝鮮拉致事件と拉致被害者・北朝鮮帰国者・脱北者救出運動』ファイル多数

 

   (朝鮮高校教科書問題)

    google『朝鮮高校の教科書』636000件

    google『朝鮮高校の教科書−日本共産党』1190000件

    産経『朝鮮学校 無償化結論先送り 与党内で改めて協議』2010年8月26日

    宮地幸子『「高校授業料無料」で考える』

    日本共産党『高校無償化は何のためか/新たな差別生む/「朝鮮学校除外」』

    日本共産党『朝鮮学校 なぜ無償化除外/どこにもある高校の風景』

 

 1、宮地コメント−日本共産党と朝鮮総連=朝鮮労働党との関係

 

 これは、三浦小太郎発行人・萩原遼編集人『光射せ!第5号』の内、特集1・朝鮮高校無償化問題の6論文から、2つを全文転載したものである。このHPへの転載については、萩原遼の了解を得ている。出版は、「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」である。

 

    HP『カルメギ−北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会』

 

 私のコメントとしては、日本共産党と、朝鮮労働党=朝鮮総連との関係についてのみ、リンクによる説明を合わせて書く。朝鮮総連とは何か。数年前まで、朝鮮総連内に「学習組−がくしゅうそ」があった。そのメンバーは全員が朝鮮労働党党員だった。その性質は、まぎれもなく、朝鮮労働党日本支部である。その実態が離脱者たちから全面的に暴露されたので、現在は「学習組」名を隠蔽している。ただ、朝鮮総連幹部は現在も、全員が朝鮮労働党党員や役員である。

 

 日本共産党の不破哲三は、宮本顕治への引退強要後、()中国共産党とともに、朝鮮総連=朝鮮労働党との関係を回復させた。()2000年第22回大会に、朝鮮労働党幹部を兼任する朝鮮総連トップを招待し、懇談した。()朝鮮総連韓徳銖議長の死去において、不破議長が弔電・緒方国際局長が弔問・志位委員長が告別式参列・献花弔問もした。韓徳銖議長が、朝鮮労働党幹部であることは、公然の事実である。

 

 ()さらに、2005年、彼は、朝鮮総連結成50周年記念パーティーに出席した。そして、6月22日毎日新聞記事にあるように、「祝賀メッセージを金日成・金正日の大肖像画の下で読んだ」。

 

    「しんぶん赤旗」記事『不破議長の出席とあいさつ』2005年5月25日

    『日本共産党と朝鮮労働党との関係史』3期間の関係データ

 

説明: Photo
東京都北区の東京朝鮮文化会館

 

 朝鮮総連=朝鮮労働党との関係をさらに強化する上で、不破哲三にとって、党内に巣くう最大の邪魔者は、平城特派員経歴で、北朝鮮批判を繰り返し、北朝鮮批判著書を何冊も出版している萩原遼だった。不破哲三は、自分が祝辞を述べている朝鮮総連結成50周年記念パーティーの会場前において、萩原遼が「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」ビラを封筒に入れ、大会参加者に配っただけの行為を、日本共産党の路線に違反した規律違反行為とでっち上げ、彼を除籍にした。

 

 それは、実質的な、簡便手口による除名処分である。除名処分なら、所属支部の討論と承認を必要とする。しかし、除籍は処分でなく、上級機関が支部を飛び越えて、随意に党外排除できる規約上の措置である。

 

 そのビラは、朝鮮総連が推進した北朝鮮帰国運動批判しただけだった。そこには、北朝鮮帰国運動を全面支援した日本共産党にたいする批判文言はなかった不破哲三がしたことは、日本共産党批判がなかろうと、朝鮮総連の北朝鮮帰国運動を批判する行為が、日本共産党の規律違反になるとする、驚くべきでっち上げによる党内犯罪である。

 

    『不破哲三が萩原遼を朝鮮総連批判で除籍』

    『除籍への萩原抗議文と批判メールへの党回答文』

 

 志位・市田・不破らは、朝鮮高校無償化問題にたいし、朝鮮総連と一体となり、無償化推進運動に加担している。「しんぶん赤旗」においても、その記事を載せてきた。

 

    日本共産党『高校無償化は何のためか/新たな差別生む/「朝鮮学校除外」』

    日本共産党『朝鮮学校 なぜ無償化除外/どこにもある高校の風景』

 

 下記で、萩原遼が分析しているように、朝鮮高校現代史教科書「現代朝鮮歴史」は、()徹底した個人崇拝とともに、()朝鮮史・朝鮮戦争史の偽造歪曲に満ちている。私は、萩原遼たちが出版した「現代朝鮮歴史−朝鮮高級学校教科書」の全文翻訳・掲載著書「現代朝鮮歴史の一、二、三年生教科書」も購読した。その上で、彼の分析・主張に全面賛成の立場でいる。そこから、志位・市田・不破らの朝鮮高校無償化対応政策は、拉致問題にたいする意図的な無為無策路線の誤りと並んで、犯罪的誤りと規定できる。

 

    『北朝鮮拉致(殺害)事件の位置づけ』朝鮮労働党と在日朝鮮人、日本共産党

    『北朝鮮拉致事件と共産党の意図的な無為無策路線』金正日擁護政策

    宮地幸子『「高校授業料無料」で考える』

 

 

 2、萩原遼−はじめに

 

 朝鮮高校の現代史の教科書は「現代朝鮮歴史」の表題で一から三巻まである。各学年ごとに一冊づつ学ぶという。一年生用は一二一頁。二年生用は一五八頁、三年生用は一六二頁。今回全巻を翻訳・刊行したので、ざっと目を通していただければ、おおよそ何を書いているかはわかっていただけよう。

 

 三年生用を見ると、金日成・金正日父子の写真掲載が二三回。三頁半に一回の割で親子の写真が出てくる。そして金日成への言及が六七回(二頁半に一回)。金正日は八六回(二頁足らずに一回の割り)。これでは歴史ではなく金親子の家系史を学んでいるといっても過言ではない。以下一巻から三巻まで特徴的なことのみ紹介する。

 

 3、徹底した個人崇拝 一、二、三年生用教科書内容

 

 一、二、三巻を通じてまず目につくのは、金日成、金正日に対する徹底した個人崇拝である。ほとんどの頁に金日成と金正日が登場する。

 

 〔小目次〕

   1、一年生用=朝鮮戦争はアメリカと韓国による北朝鮮侵略戦争

   2、二年生用=金日成と金正日のクーデターを美化

   3、三年生用=拉致の謝罪なく−「拉致を契機に反朝鮮人騒動」と八つ当たり

 

 1、一年生用=朝鮮戦争はアメリカと韓国による北朝鮮侵略戦争

 

 「米帝国主義のそそのかしのもとに、李承晩は一九五〇年六月二十三日から三八鹿線の共和国地域にたいする集中的な砲射撃をおこない、六月二十五日には全面戦争に拡大した。

 

 共和国政府は即時李承晩「政府」に戦争行為をただちに中止することを要求しつつ、もしも侵攻をやめなければ決定的な対策をとるであろうと警告した。しかし敵どもは戦争の火を引き続き拡大した

 

 六月二十五日、共和国に作り出された厳重な事態と関連して朝鮮労働党中央委員会政治委員会が招集され、次いで共和国内閣非常会議が開かれた。

 

 敬愛する金日成主席様におかれては、会議において、朝鮮人をあなどって飛びかかるアメリカのやつらに朝鮮人の根性を見せてやらねばならないとおっしゃりながら共和国警備隊と人民軍部隊に敵どもの武力侵攻を阻止させ、即時反攻撃に移るように命令をお下しなされた」(七九頁)。

 

 これが事実ではないことは、北朝鮮と朝鮮総連以外の人間はみな知っている。金日成が二年にわたる周到な準備のもとに七個師団の大部隊で南に攻め込んで朝鮮戦争が起きたことを、朝鮮戦争時に米軍が押収した一六〇万頁の北朝鮮文書をもとに立証した私が黙っているわけにはいかない。これについては『朝鮮戦争−金日成とマッカーサーの陰謀』(一九九三年文春文庫)に書かれている。資料として『北朝鮮の極秘文書』(夏の書房)上中下三巻本で北からの攻撃を示す極秘文書をまとめた。

 

 また、『朝鮮戦争の謎と真実』(二〇〇一年草思社)の著者トルクノフはソ連崩壊後に公表されたロシア側の秘密資料で、金日成とスターリン、毛沢東の連携のもとに南を攻撃したことを明らかにした。

 

 朝鮮戦争開戦から六〇年の今日、いまも虚偽を教えられている朝鮮高校の生徒がかわいそうである。虚偽を真実と教え込めば命を賭して韓国とアメリカ、さらには後方支援した日本に復讐しようとする若者を生みかねない。南北統一にも逆行し、日本との共生にも反する。朝鮮学校卒業生のなかから韓国での破壊活動や、日本人拉致に従事するものが少なからず生まれているのはこうした教育と無関係ではない。虚偽を流布し、若者をあやまった道に誘い込むことが教育といえるのか。

 

 2、二年生用=金日成と金正日のクーデターを美化

 

 北朝鮮が今日核恐喝に頼るしか体制が維持できなくなつた契機は、一九六七年五月に強行された金父子によるクーデターであった。つぎのように記述している。

 

 一九六〇年代半ば、アメリカの侵略策動と現代修正主義(当時のソ連を指す)の影響を受け、ブルジョア・修正主義路線をとる幹部たちが金日成の政策にことごとく反対した。

 

 「ところが、当時の一部の幹部たちは党の路線と政策にもとづき彼らを正しく見抜くことができず、彼らに盲従妄動する現象まであらわれた。

 

 敬愛する金正日将軍様におかれては、朝鮮労働党中央委員会で活動されながらブルジョア・修正主義分子たちの正体を見抜かれ、彼らの策動を阻止するための対策をお立てなされた。敬愛する主席様におかれては作り出された情勢と党内の状況を分析され、一九六七年五月朝鮮労働党中央委員会第四期第一五回全員会議を招集なされた。

 

 会議においてはブルジョア・修正主義分子たちの策動が全面的に明らかにされ、党の唯一思想体系を確立することについての問題が討議された。(中略)

 

 全員会議を契機にブルジョア思想、修正主義思想などあらゆる不健全な思想を根こそぎにし、主体思想で武装するための活動が力強く展開された」(六五〜六六頁)。

 

 極端な個人崇拝と息のつまりそうな国になって、人びとに笑いが消え、強制収容所と飢餓の国に変わっていった。

 

 3、三年生用=拉致の謝罪なく−「拉致を契機に反朝鮮人騒動」と八つ当たり

 

 拉致は事実無根と強弁していた金正日政権は、内外で孤立するなかで小泉首相にすり寄って日朝国交正常化を画策。拉致を認め謝罪した。ところが朝鮮総連は金正日ほどの反省もない。三年用の現代史教科書にはこう書いている。

 

 「アメリカでブッシュ政権の登場を契機に朝米関係は緊張状態に戻った。二〇〇二年九月朝日平壌宣言発表以後、日本当局は『拉致問題』を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることによって日本社会には極端な民族排他主義的なふんいきが作り出されていった」(一二二頁)

 

 小泉首相の訪朝は、金正日の密使が「拉致を完全に解決します」といって小泉首相を呼び寄せた事実を森書朗元首相が雑誌で公表している。ところがまったく反対を教える。

 

 「二〇〇二年九月十七日には歴史的な朝日平壌宣言が発表された。

 

 半世紀以上共和国を敵対視したり遠ざけてきた諸国が共和国政府を正式に認め関係改善の道に踏み切ったのはアメリカの国際的な『対朝鮮包囲環』がくずれ、反共和国孤立圧殺策動が危機に瀕するようになったことを示している」(一四三頁)

 

 一九九七年十一月に大韓航空機を爆破し、一一五人の韓国人の命を奪ったテロは今では北朝鮮の仕業であることは天下に明らかであるが、「でっち上げ」の一言である。

 

 「南朝鮮当局はこの事件を『北朝鮮工作員金賢姫』が引きき起こしたとでっち上げ、大々的な『反共和国』騒動をくり広げ…慮泰愚『当選』に有利な環境を整えた」(三四頁)。

 

 在日朝鮮人を取り巻く状況も変わった。それをこう叱りつけている。

 「少なからぬ同胞が日本人に『同化』して生きることで生活の安定や後代の将来のための道を求めようとし、日本学校に通う学生の数や、『帰化』、『国際結婚』が急速に増加した。またこの時期在日同胞社会の主役となった三世、四世の同胞のなかには民族的誇りや自負心をもって生きるのではなく、苗字と名前を維持して『朝鮮系、韓国系日本人』として生きることがあたかも国際化の流れに合っているかのごとく考える傾向が表われ始めた」(一〇八〜一〇九頁)。

 

 朝鮮総連の教科書は民団にまで八つ当たりである。民団が従来の名称から「居留」をはずし「在日本大韓民国民団」と改めたことを非難がましく記述している(一〇九頁)。

 

 日本や日本人を罵倒するだけでなく同じ同胞や同胞の若い世代まで敵視したりする。これでは排他的な穴倉にこもってすねるだけではないか! 教科書はこう書く。

 「一九九〇年代の総連は深刻な危機的状況に陥るようになって、同胞社会の存在自体が存亡の岐路におかれるようになった」(一〇九頁)。自業自得というものだ。

 

 こういうものを教科書といえるのか。子どもを政争の具にし、自分たちの体制の維持のための隠れ蓑にすることをやめよ。ましてや情けない物乞いをただちにやめるべきだ。

 

 (朝高生の諸君に 萩原遼の意見)

 

 、私は朝鮮高校の生徒諸君を非難するつもりはない。こびるつもりもない。私は君たちと同じ年ごろに韓国から密航してきた少年と大阪府立の定時制高校で机を並べ.た縁で生涯を朝鮮半島とともに生きることになった。朝鮮語を愛し、朝鮮と朝鮮人に親しんで五五年たった。

 

 、教育と政治は別だという意見もあるが、私はそうは思わない。誤った政治にわかものの心がむしばまれるときは、大人が是正のために声をあげるべきだ。

 

 三、愛国心とは、ことばを覚えることから生まれると教えてくれたのは、かつて私に朝鮮語を教えてくれた朝鮮総連の先生だった。君たちが祖国を愛し、誇りとするためにも、今のゆがんだ教育から抜け出て真の民族教育、ことばと歴史と文化と祖国の先人を尊敬する教育を受ける権利が君たちにはある。そのためにがんばってほしいと心から願う。

二〇一〇年 六月十一日

 

 

 4、朝鮮高校『現代朝鮮史』の翻訳・刊行にさいして緊急アピール

      朝鮮高校への税金投入に反対する専門家の会

 

 、朝鮮総連が運営する朝鮮高級学校(高校、以下同じ)の現代史教科書『現代朝鮮歴史』の第一巻を全文翻訳し、世に出すことにした。現在、日本各地の朝鮮高校で使われているもので、一巻から三巻まである。これを三年間で教えているとみられる。第一巻に次いで二、三巻も引き続き翻訳出版する。

 

 昨年末ごろから鳩山内閣が高校授業料の無償化方針を打ち出したことに関連して、朝鮮総連や朝鮮学校関係者から朝鮮高校も無償化すべきだとの意見があがった。

 

 二〇一〇年三月十六日の衆議院議員本会議で、日本の高校授業料無償化法案が可決された。このさい、朝鮮高校については教育内容がわからないから「第三者機関」を設け検討して判断し、決定するとした。

 

 、このころから、朝鮮総連や朝鮮学校関係者から「朝鮮の子どもを差別するな」の意見がはげしくなるにつれて、マスコミやインターネット上で賛否の議論が行われている。教育問題から政治問題へと発展しつつある。これらの論議には問題点が多い。朝鮮学校の教科書は朝鮮語で書かれている。日本の多くの論者が朝鮮語を読めず、中身を知らないままであれこれのべあっている段階である。

 

 、われわれは、朝鮮問題を長く研究してきた専門家の立場から、朝鮮高校の現代史教科書を翻訳して、討論の参考に供することにした。中身で判断していただくことが基本である。

 

 、翻訳にあたっては、原文に忠実に訳した。写真や図表の位置、頁数も原書どおり配列した。ただし不要と判断する表などは翻訳を省略しハングルで残したものも若干ある。巻末の索引は省略した。

 

 原文は漢字を排し、地名、人名はハングル書きであるが、日本でよく知られている韓国・朝鮮の人名、地名などは漢字を当てた。複数の人たちで翻訳を分担し、萩原が全体を統一した。

 

 、著作権についてふれる。著作権法が保護する著作物は「日本人の書いたもの」に限られる(著作権法・第六条)。国交のない国のものはこの保護を受けないというのが日本の文化庁の見解である。

 

 日本の公費を要求する以上、朝鮮学校側がその教科書を日本語に訳し、関係方面に配り判断を仰ぐのが筋である。それをしないどころか、朝鮮学校側は教科書をあたかも秘密文書のように隠して公表を抑えている。われわれの今回の措置はそうした秘密主義を排し、公明正大な土壌で論議するための一つの試みである。

 

 、この機会に、われわれ専門家の立場も明らかにしておく。

 朝鮮学校教科書の内容は虚偽が多い。たとえば朝鮮戦争は南北どちらの側が起こしたか、につけてはおびただしい証拠や文献によっていまでは北の主導による南進であったことが国際的常識になっている。にもかかわらず、朝鮮高校教科書は、アメリカと韓国による北朝鮮への侵略戦争だと教えている。虚偽はこれだけではなく、ソ連軍の手で植民地朝鮮の解放がおこなわれ、北朝鮮地域でソ連の軍政が行われたことも隠されている。一九六〇年代の帰国事業についても正反対のことを教えている。

 

 いうまでもなく、教育の目的は、真実を求めることであり、愛と助け合いで平和に生きるための人材を育てることである。

 

 虚偽を教え込むことは、ある種の犯罪である。南とアメリカが北を侵略し、人命や財産、国土に甚大な破壊をもたらしたと言いつのるならば、南の側との和解や共生は生まれない。逆に、南北対立をあおり、復讐のために命を賭して邁進しようとするとする若者を育てるるとになりかねない。

 

 朝鮮高校の卒業生のなかから日本人拉致や韓国での破壊活動に従事する者が少なからず生まれていることも、こうした教育と無関係ではない。

 

 虚偽を教育の柱としている機関に日本の公費をつぎ込むことは犯罪に手を貸すことになる。

 

 、教育に政治をもち込むなとの意見についても、無理解がある。朝鮮総連は彼らの経営する民族教育を「在日朝鮮人運動の生命線」と規定し、「高等学校授業料無償化」を必ずかちとるよう運動をおこなうと決定した(二〇〇九年十一月十一日の本部での会議決定)。そして、この方針が偉大なる金正日将軍様のご指導であるとこう述べている。

 

 「敬愛する将軍様におかれましては、今年を『民族教育を強化する年』とお定めくださり、決死の覚悟と不退転の意思で民族教育を守り発展させることについての方針をお与えくださいました」(二〇一〇年一月十三日朝鮮総連本部委員長・中央団体責任者会議での報告から)

 

 教育に政治をもち込んでいるのは朝鮮総連であり、それを指導する朝鮮民主主義人民共和国である北の朝鮮労働党は機関紙「労働新聞」でこういっている。

 「在日朝鮮学校を政府の支援対象から除外しようとする日本当局の方針はたんに金銭にかかわる問題ではなく、朝鮮総連の民族教育の権利を奪うための犯罪的策動である」「反朝鮮総連、反共和国政策の産物である日本反動どもの今回の策動は、わが朝鮮人民の憤怒を激発させている」(二〇一〇年三月九日付)

 

 こうした感情論ではなくきちんとした話し合いこそ教育問題の基本である。

 

 、われわれの立場と行動は、朝鮮高校生を差別するものではない。真実と平和を愛する子どもを育てるという普遍的な理念から出発するものである。この翻訳・刊行が正しい論議のたたき台となることを期待する。

 

   二〇一〇年四月十五日

   朝鮮高校への税金投入に反対する専門家の会 代表 畝原 遼

 

 

 5、「光射せ」第5号−発行人・編集人・連絡・注文先−「現代朝鮮歴史」注文も

 

 発行日 2010710

 発行人 三浦小太郎

 編集人 萩原遼

 発行所 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会

 連絡先 〒5810868大阪府八尾市西山本町765 3F

 TelFax O729902887

 頒 価 900円 送料100

 

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 〔関連ファイル〕

    『不破哲三が萩原遼を朝鮮総連批判で除籍』

    『除籍への萩原抗議文と批判メールへの党回答文』

    萩原遼『金正日 隠された戦争』新刊の概要・目次、寄稿欄

    『北朝鮮拉致(殺害)事件の位置づけ』朝鮮労働党と在日朝鮮人、日本共産党

    『北朝鮮拉致事件と共産党の意図的な無為無策路線』金正日擁護政策

    『北朝鮮拉致事件と拉致被害者・北朝鮮帰国者・脱北者救出運動』ファイル多数

 

   (朝鮮高校教科書問題)

    google『朝鮮高校の教科書』636000件

    google『朝鮮高校の教科書−日本共産党』1190000件

    産経『朝鮮学校 無償化結論先送り 与党内で改めて協議』2010年8月26日

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