不破哲三が萩原遼を朝鮮総連批判で除籍

 

平壌宣言批判、帰国事業批判は反党的規律違反か

 

(宮地作成)

 〔目次〕

   1、萩原除籍における不破哲三の閉鎖体質強化路線

   2、共産党規律委員会の萩原遼除籍決定

   3、毎日新聞の共産党による萩原遼除籍記事

   4、HP『電脳補完録』の記事と資料当日のビラ(全文)、不破議長挨拶(全文)

 

   5、『除籍への萩原抗議文と批判メールへの党回答文』

       『朝鮮と私、旅のノート』における萩原遼の党改革意見

   6、萩原遼HP『金正日 隠された戦争』新刊の概要、掲示板−メールへの党中央回答

   7、宮地幸子HP『書(ふみ)を愉しむ』『拉致と核と餓死の国、北朝鮮』で萩原遼の覚悟を読む

   8、Google検索『萩原遼除籍』 『朝鮮総連50周年』 『萩原遼』

 

 (関連ファイル)       健一MENUに戻る

  1、北朝鮮拉致事件

    『北朝鮮拉致(殺害)事件の位置づけ』朝鮮労働党と在日朝鮮人、日本共産党

    『北朝鮮拉致事件と共産党の意図的な無為無策路線』金正日擁護政策

    『「異国の丘」とソ連・日本共産党』日本共産党の犯罪的対応の前歴

    中野徹三『共著「拉致・国家・人権」の自己紹介』藤井一行・萩原遼・他

    加藤哲郎『中野徹三・藤井一行「拉致・国家・人権―北朝鮮独裁体制を国際法廷へ」』

    藤井一行『北朝鮮型スターリン体制告発サイト』 『日本共産党と北朝鮮問題』 『藤井HP』

    黒坂真  『日本人拉致問題と日本共産党』北朝鮮批判・共産党批判ファイル多数

    電脳補完録『北朝鮮拉致事件関連年表』

    れんだいこ『日朝政治史「拉致事件」考』

    大日本史『番外編・朝鮮の巻』

 

    朝日『拉致事件』 『核問題』 読売『北朝鮮』 日経『拉致問題』 毎日『拉致事件を追う』

    Yahoo『核開発』 Google『核開発』 原水禁『北朝鮮の核開発データ集』

    Yahoo『朝鮮総連と拉致事件』 『朝鮮総連と帰国事業』 『朝鮮総連と朝鮮労働党』

    Google『朝鮮総連』 『朝鮮総連と朝銀問題』 『朝鮮総連と日本共産党』

    総連再生フォーラム『朝鮮総連の改革と再生のための提言』

    お笑い日本共産党『青瓦台事件に対する日本共産党の無責任な総括』

    よど号事件 無限回廊  よど号ハイジャック事件  Yahoo  Google検索

 

  2、拉致被害者・北朝鮮帰国者・脱北者救出運動

    RENK『救え!北朝鮮の民衆』 RENK『東京』

    HP『朝鮮民主主義研究センター』 『北朝鮮問題リンク集』

    HP『北朝鮮難民救援基金』 『カルメギ−北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会』

    さざ波通信『北朝鮮問題・討論欄』

    加藤哲郎『拉致問題リンク集』

    中野徹三『国際刑事裁判所設立条約の早期批准を』拉致被害者救済のために

          『拉致(強制的失踪)と北朝鮮問題について』

    金国雄『梁山泊』 『在日朝鮮人帰国事業の考察』1〜32

    金英達『北朝鮮への帰国事業について』

    参考資料『在日朝鮮人の帰還事業』多数

    掲示板『北朝鮮拉致問題』 掲示板『北朝鮮・拉致事件支援者』

    掲示板等リンク集『北朝鮮問題』 山本孝司『ブルーリボン電脳補充録』

 

 1、萩原除籍における不破哲三の閉鎖体質強化路線

 

 〔小目次〕

   1、2005年5月24日、共産党員2人の行動の対称性

   2、除籍決定と不破の6項目提言における欺瞞性

   3、不破哲三の閉鎖体質強化路線

 

 1、2005年5月24日、共産党員2人の行動の対称性

 

 第一、不破哲三日本共産党議長の行動

 

 彼は、朝鮮総連結成50周年記念パーティーに出席した。そして、6月22日毎日新聞記事にあるように、「祝賀メッセージを金日成・金正日の大肖像画の下で読んだ」。

 

    「しんぶん赤旗」記事『不破議長の出席とあいさつ』5月25日

 

説明: Photo
東京都北区の東京朝鮮文化会館

 

 朝鮮総連内の「学習組」とは、日本における朝鮮労働党組織であり、総連の中核部隊である。「学習組」メンバーは、全員が朝鮮労働党員である。それは、在日朝鮮人93000人の帰国運動を組織しただけでない。それが、金正日の秘密指令に基づいて、金正日直轄の秘密政治警察と連携しつつ、日本人拉致(殺害)事件を遂行した事実は、様々な証言・著書によってほぼ完璧なまでに証明されている。

 

 ところが、日本共産党は、その朝鮮総連と5年前に友好関係を回復した。下記は、2000年11月21日「しんぶん赤旗」記事の抜粋と写真である。「日本共産党の不破哲三委員長は二十日、第二十二回党大会の開会に先立ち、在日本朝鮮人総連合会の南昇祐(ナム・スンウ)副議長、金明守(キム・ミョンス)国際局部長と懇談しました。日本共産党の志位和夫書記局長、緒方靖夫国際委員会副責任者、西口光国際局長が同席」。

 

説明: 【写真】朝鮮総連代表と懇談

 

 

 したがって、この「朝鮮総連」来賓参加は、事実上の日朝両党の“共産主義友党”関係の復活と規定できる。韓徳銖議長が、朝鮮労働党幹部であることは、公然の事実である。党大会来賓招待だけでなく、彼の死去にたいし、日本共産党として、(1)不破議長が弔電、(2)緒方国際局長が弔問、(3)志位委員長が告別式参列・献花をしたという行為は、日朝両党の“共産主義友党”関係復活事実を象徴した。

 

 不破哲三は、それら金正日・朝鮮労働党・朝鮮総連の犯罪事実を知りつつ、「在日朝鮮人総連合会の五十周年に当り、お祝いのあいさつを申しあげます」と、金正日にたいしエールを送った。帰国運動、北朝鮮拉致(殺害)事件、日本共産党と朝鮮労働党との関係史については、別ファイルで分析した。

 

    『北朝鮮拉致(殺害)事件の位置づけ』朝鮮労働党と在日朝鮮人、日本共産党

    『北朝鮮拉致事件と共産党の意図的な無為無策路線』金正日擁護政策

 

 第二、萩原遼「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」名誉代表の行動

 

 彼は「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」名誉代表として、会の声明ビラ「朝鮮総連は『帰国事業』という巨大な誘拐・拉致に責任を取れ―朝鮮総連結成50周年に際して―」を会場近くで配った。ビラの配り方は、毎日新聞記事や写真4枚のように、「一枚一枚封筒に入れ、参加者に『お読み下さい』と言って、手渡ししていたもので、混乱を起こすようなものでは決してなかった」。不破挨拶全文とビラ全文は、HP『電脳補完録』に載っている。

 

    HP『電脳補完録』の記事と資料当日のビラ全文、不破議長挨拶の全文

    HP『カルメギ−北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会』名誉代表萩原遼、声明ビラ

 

 不破哲三は、金日成・金正日の大肖像画の下における金正日・朝鮮労働党・朝鮮総連・「学習組」への自分の声高なエールにたいして、たかが元赤旗外信部副部長にすぎない萩原遼が朝鮮総連批判のビラを会場前で配った行為に怒り狂った。

 

 すでに、17年前の1988年12月3日、宮本・不破・志位らは、赤旗外信部副部長でありながら、金日成・金正日批判を赤旗編集局内で抱き続ける萩原遼を、朝鮮労働党・金正日との関係復活の野望から、危険視した。「邪魔者は殺せ」は、前衛党の専従内運営の鉄則である。彼らは、河邑赤旗編集局長の口から、「赤旗外信部副部長を解任する」と通告させた。萩原遼は、解任理由を問い質した。編集局長は、宮本・不破・志位らの秘密命令通りに、「人事についての理由は言えない」と突っぱねた。萩原遼は、その手口に憤激して、赤旗記者をやめた。ただし、転籍して居住支部に残った。萩原遼は、この経過を著書『朝鮮と私、旅のノート』(文春文庫、P.205)で明記している。

 

 この経過が、「しんぶん赤旗」記事になると、「一九八九年に赤旗編集局を退職した後も元赤旗平壌特派員の肩書を使い、党外の出版物で、党を批判したり、北朝鮮問題で党とは異なる見解を公表してきました」となる。

 

 2人の共産党員の内、どちらの方が、日本国民の立場に立った行動なのか。

 

 2、除籍決定と不破の6項目提言における欺瞞性

 

 第一、除籍決定の欺瞞性

 

 党中央規律委員会は、萩原遼除籍理由を5つ挙げている。これらは彼が規約に違反した規律違反行為になるのか。

 〔第一除籍理由〕一九八九年に赤旗編集局を退職した後も元赤旗平壌特派員の肩書を使い、党外の出版物で、北朝鮮問題で党とは異なる見解を公表してきました。

 

 〔第二除籍理由〕、日本共産党が、平壌宣言を評価したのにたいし、「一部の政党」と名指しは避けつつも、「身代金交渉に応じる卑屈な論」だと批判しました。

 

 〔第三除籍理由〕、自著で、小泉首相の「日朝正常化交渉」発言を非難しつつ、「それに追随する一部野党の見苦しい醜態」などと書いています(『金正日 隠された戦争』)。これは、日本共産党を指しての批判であることは明らかです。

 

 〔第四除籍理由〕、朝鮮総連結成五十周年記念レセプションの際、会場の近くで、「そこに駆けつける政治家は恥を知れ」と訴えたことが報道されています。

 

 〔第五除籍理由〕党からの注意をまったく無視し、党規約に反する行動を続けました。

 

 除籍理由における「北朝鮮問題」とは、具体的に見れば、金正日・朝鮮労働党による拉致事件の評価問題、朝鮮総連の帰国事業評価問題、平壌宣言の評価問題のことである。上記のように、不破哲三らは、2000年に、朝鮮総連=朝鮮労働党との共産主義友党関係を事実上回復した。1959年から61年をピークとした帰国事業については、共産主義友党関係の蜜月時期にあった金日成・宮本顕治・日本国内の朝鮮労働党機関=朝鮮総連という3者が一体となって、それを強力に推し進めた。

 

 しかし、現在、北朝鮮拉致(殺害)事件や帰国者93000人の悲惨な実態は、金正日・朝鮮労働党が犯罪的な一党独裁政党であり、朝鮮総連もその犯罪加担組織であることを明白に証明している。その状況に直面して、萩原遼という北朝鮮問題プロフェッショナルの一人である共産党員が、金正日批判、朝鮮総連の帰国事業批判をしてはいけないのか。それを発言すれば、規律違反になるのか。

 

 共産党と名指し批判をしていないのに、それはまさに日本共産党批判にほかならないとでっち上げることがまかり通るのか。

 〔第二、第三、第四除籍理由〕における「一部の政党」「一部野党」「政治家」という萩原発言は、事実から見て、他政党を含んでいる。50周年には5政党全部が参加した。彼は、5政党すべてを批判したのである。そこには共産党も入ってはいる。しかし、他政党も合わせて批判した行為が、共産党を含んでいるからには、共産党の規約に違反し、除籍に相当する反党行為だという論理と倫理が説得力を持つのか。

 

 〔第四除籍理由〕は、奇妙なことに、彼が「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」名誉代表として、会の声明ビラを配った行為、ビラの朝鮮総連批判内容を恣意的にカットしている。当日における彼の主要行動は、「そこに駆けつける政治家は恥を知れ」と訴えたことではない。それは、朝鮮総連批判のビラを会の名誉代表として参加者に渡した行為である。なぜその主要な真実を書かないのか。不破哲三が萩原遼を、帰国事業問題での朝鮮総連批判=朝鮮労働党の日本出先機関批判をしたことを直接の主要理由として除籍したことを、それほどまでに覆い隠したいのだろうか。

 

 第二、不破の6項目提言における欺瞞性

 

 「しんぶん赤旗」は、除籍決定の文中で、不破の6項目提言を誇らしげに宣伝している。

 ()、日朝平壌宣言を堅持し、その生きた力を発揮させる。()、拉致問題――国際的な犯罪を認めた最初の決断は、ひきつづく諸問題に誠実に対応してこそ、日朝の友好と信頼の道につながる。()、拉致協議前進のカギは「特殊機関」問題の解決にある。()、交渉打ち切りや「力の政策」など、平壌宣言にそむく態度をいましめあう。()、「非核化」の六カ国合意こそ安全保障の最善の道。()、私たちは、現状の打開に力をつくす用意がある。

 

 この内容に新鮮味があるのか。惨敗した参院選前に出版した不破パンフの二番煎じにすぎない。この北朝鮮政策も原因の一つとして参院選は惨敗した。よって、ここでは、「()拉致協議前進のカギは「特殊機関」問題の解決にある」という不破提言だけを再検証する。

 

 「特殊機関」という用語は、金正日が、日朝首脳会談の場において、責任逃れ・自己保身で使ったものである。14の一党独裁型社会主義国家における普遍的な共通用語は、「前衛党最高権力者直轄の秘密政治警察」である。

 

 ()レーニンが権力奪取一カ月後に創設したジェルジンスキー指揮の秘密政治警察チェーカー、チェキスト28万人体制、()スターリンとエジョフ・ベリア指揮のOGPU、NKVD、()ブレジネフのKGB、(4)チャウシェスクのセクリターテ、(5)ホーネッカー、ウルブリフトのシュタージなど、すべての社会主義国前衛党の最高権力者は、レーニンに倣って、自己直属の秘密政治警察を一党独裁体制維持・強化の必要不可欠の道具としてきた。14の社会主義国家の内、1989年から91年にかけて、10カ国がいっせい崩壊した。その原因の一つとして、それらが犯罪的な秘密政治警察国家だった事実が暴露された。レーニンの赤色テロル犯罪については、別ファイルで詳述した。

 

    『「赤色テロル」型社会主義とレーニンが「殺した」自国民の推計』

 

 不破哲三は、なぜ、金正日詭弁の「特殊機関」という用語を真似るのか。なぜ、「金正日直属で、金正日と一体の秘密政治警察」という日本語を使わないのか。そもそも、北朝鮮型秘密政治警察にたいし、日本人拉致犯罪を直接指令した者は将軍様自身である。将軍様が直属の秘密政治警察機関を解決=解体できるはずもない。なぜなら、それを解体すれば、金正日体制が即座に崩壊するからである。不破哲三はそれを百も承知している。となると、彼が言う「特殊機関」問題の解決とは、まるで実現不可能で、空想的な提言にすぎない。彼が祝賀あいさつで行った提言の欺瞞性は、ここに典型的に表れている。よくぞ、これほどまでに白々しい日本国民だましの詭弁を使えるものだと感心しさえする。

 

 不破哲三が祝賀あいさつとして発言した内容だけでなく、意図的に黙殺したテーマを見る必要がある。朝鮮総連50周年において、総括すべき課題は拉致犯罪への組織的加担問題だけではない。もう一つの重大なテーマは、93000人の帰国事業とその結果、現時点における帰国者の生命と人権状況であろう。当時、多くの日本人や左翼は「地上の楽園」という金日成と朝鮮総連の大宣伝を信じた。しかし、今日、朝鮮総連が、北朝鮮内の実状を熟知しつつ、93000人を「地上の楽園」ペテンにかけたことは、無数の著書・証言・データで証明されてきた。

 

 不破哲三は、なぜ、その朝鮮総連犯罪を黙殺するのだろうか。なぜなら、日本共産党もその犯罪加担政党の一つだからである。当時、共産党は、党中央機関として、帰国事業を全面支援しただけではない。共産党員寺尾五郎著書『三八度線の北』と共産党員撮影監督宮島義勇の記録映画『チョンリマ−千里馬』は、大評判になり、共産党もそれらを大宣伝した。著書・映画のいずれも、日本共産党と共産主義的友党関係の蜜月時期にあった朝鮮労働党・金日成を絶賛した。それらを読んだり、観たりして、「地上の楽園」への帰国を決断した人たちも多かった。もっとも、宮本・不破らは、後に、寺尾・宮島2人が反党的規律違反をしたとして除名した。

 

 5月24日不破哲三は、祝賀会場内側にいて、朝鮮総連と日本共産党との共通犯罪を覆い隠した。一方、萩原遼は、会場外側において、朝鮮総連の帰国事業犯罪を告発するビラを配った。いずれの側の方が、帰国者93000人の生命と人権を守る立場にあると言えるのだろうか。不破哲三が萩原遼の朝鮮総連批判を直接の理由として除籍した行為は、不破哲三がまさに日本人の倫理感を共有しない共産主義的人間であることを、自ら暴露したと言えよう。

 

 3、不破哲三の閉鎖体質強化路線

 

 不破哲三は、宮本顕治を引退させた後、1998年、中国共産党と共産主義友党関係を回復した。2000年には、朝鮮総連=朝鮮労働党日本支部との共産主義友党関係を回復させた。それによって、日本共産党・中国共産党・朝鮮労働党という3カ国による東アジア版の国際共産主義運動体制を再構築できた。

 

 彼の新しい国際路線を批判する共産党員の存在を許さないというのが、不破哲三の共産主義的理論と倫理となった。

 (1)、「しんぶん赤旗」紙面においても、中国共産党批判記事、北朝鮮批判・朝鮮総連批判記事をほとんど載せないように紙面操作を強めた。

 (2)、党内におけるそのテーマでの批判意見書・批判メールは握りつぶし、返事も出さない。

 (3)、インターネットHP掲示板での異論者は、党中央幹部会第二事務部と47都道府県委員会反党分子対策委員会のネットワークで、ハンドルネームの本名を割り出し、調査(=査問)にかけ、除籍する。幹部会第二事務部とは、非政権共産党における秘密政治警察の性格を持つ。その実態は別ファイルで解明した。

 

    『インターネットHP攻撃政党』『掲示板発言者摘発・粛清政党』

 

 (4)、新たな不破式タブーに触れたのが、北朝鮮問題プロフェッショナルの一人である萩原遼だった。不破哲三は、当然のように、萩原遼の行動を、自分の正しい国際路線に叛逆する反党的規律違反と断定した。不破哲三による萩原遼除籍は、私(宮地)の規定から見ると、政治的殺人犯罪行為である。しかし、これが、Democratic Centralism(=民主主義的中央集権制)の本質と実態と言えよう。

 

 Democratic Centralismを今なお堅持しているのは、一定の政治勢力を持つ政党の中で、日本共産党とポルトガル共産党の2党だけになった。というのも、ポルトガル共産党を除くヨーロッパのすべての共産党が、Democratic Centralismについて、次の規定を下したからである。それは、党の統一と規律を守る側面において役に立った。しかし、他方で、それは必然的に、党内民主主義を破壊し、党を官僚組織に変質させ、生き生きとした党活動を圧殺した。レーニンが暴力革命・権力奪取のために創作し、分派禁止規定と結合させたDemocratic Centralismの歴史的実態は、それが犯罪的で反民主主義的な組織原則であることを証明した。よって、それを放棄する。

 

 暴力革命放棄を宣言している不破哲三は、なぜ、武装蜂起・武装闘争のための軍事規律である閉鎖的組織原則にしがみつく必要があるのだろうか。その答えは明快である。不破路線に批判・不満を抱く党員の党内発言・意見書はすべて無視し、握りつぶす、萩原遼のような党外発言・行動は、即座に調査(=査問)をし、除籍にする。そうしておけば、不破・志位・市田らの政策・方針、選挙惨敗総括に批判を持つ党員が党内の多数派になることは、100%ありえない。かくして、不破・志位・市田らの党内地位と特権は、死ぬまで保証される。民主主義的中央集権制については、いろいろ書いてある。

 

    『なぜ民主集中制の擁護か』

    『ゆううつなる党派』民主主義的中央集権制の4システム

    『コミンテルン型共産主義運動の現状』

 

 私(宮地)は、萩原遼が愛知県に来たとき、一度会ったことがある。その様子を妻がHPに載せた。

    宮地幸子『書(ふみ)を愉しむ』『拉致と核と餓死の国、北朝鮮』で著者萩原遼の覚悟を読む

 

 

 2、共産党規律委員会の萩原遼除籍決定

 

 ()、「しんぶん赤旗」記事は、一週間後、有料検索に変わる。よって、これは、その記事をコピー転載したものである。私(宮地)の判断で、青太字赤太字を付けた。〔第 除籍理由〕の5個所は私が挿入したものである。原文は、HP『電脳補完録』の5に載っている。

    「しんぶん赤旗」『萩原遼氏を除籍』記事 ただし、6月30日以降は有料検索

    HP『電脳補完録』5、除籍決定の原文

 

 2005年6月23日()「しんぶん赤旗」 萩原遼氏を除籍


 日本共産党中央委員会の規律委員会は、十七日、萩原遼氏(元赤旗平壌特派員)の除籍を決定しました。

 

 萩原氏は、〔第一除籍理由〕一九八九年に赤旗編集局を退職した後も元赤旗平壌特派員の肩書を使い、党外の出版物で、党を批判したり、北朝鮮問題で党とは異なる見解を公表してきました。

 

 そのつど、日本共産党規約に照らし、党員の行動として誤りであることを指摘し、長時間の議論を経て、萩原氏も、「二度とやらない」と表明していました。

 

 ところが、二〇〇二年九月に日朝平壌宣言が発表されると、萩原氏は、元「赤旗」平壌特派員の肩書で次々とマスコミに登場。日本共産党が、北東アジアの安定と平和を確立する立場から、核問題や拉致事件など、日朝問題の解決の目標と方向を示したものとして平壌宣言を評価したのにたいし、

 〔第二除籍理由〕萩原氏は、「一部の政党」と名指しは避けつつも、「身代金交渉に応じる卑屈な論」だと批判しました。

 

 これにたいして、党は、今後同様なことをおこせば「党員の資格」が問われることをきびしく指摘し、萩原氏の態度を見守ってきました。

 

 しかし、〔第三除籍理由〕萩原氏は、その後も、自著で、小泉首相の「日朝正常化交渉」発言を非難しつつ、「それに追随する一部野党の見苦しい醜態」などと書いています(『金正日 隠された戦争』)。これは、日本共産党を指しての批判であることは明らかです。党規約を守る立場を放棄する態度です。

 

 さらに、〔第四除籍理由〕五月二十四日の朝鮮総連結成五十周年記念レセプションの際、会場の近くで、「そこに駆けつける政治家は恥を知れ」と訴えたことが報道されています(「産経」五月二十五日付)。

 

 このレセプションには、日本共産党から不破議長が出席。北朝鮮側の問題点について率直に指摘しつつ、今日の日朝関係を打開するために、次のような六項目の提言を行っています

 

 ()、日朝平壌宣言を堅持し、その生きた力を発揮させる。()、拉致問題――国際的な犯罪を認めた最初の決断は、ひきつづく諸問題に誠実に対応してこそ、日朝の友好と信頼の道につながる。()、拉致協議前進のカギは「特殊機関」問題の解決にある。()、交渉打ち切りや「力の政策」など、平壌宣言にそむく態度をいましめあう。()、「非核化」の六カ国合意こそ安全保障の最善の道。()、私たちは、現状の打開に力をつくす用意がある。

 

 〔第五除籍理由〕萩原氏は、党からの注意をまったく無視し、党規約に反する行動を続けました。このような事実を慎重に審議した結果、党員としての資格を自ら喪失したものと判断し、規律委員会は、党規約第十一条にもとづき、十七日、萩原氏と協議を行い、除籍を通告しました。

 

 党規約第十一条は、「党員の資格を明白に失った党員、あるいはいちじるしく反社会的な行為によって、党への信頼をそこなった党員は、慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる。除籍にあたっては、本人と協議する」と定めています。

 

 

 3、毎日新聞の共産党による萩原遼除籍記事

 

 ()、これは、HP『電脳補完録』資料の一つを転載した。黒太字赤太字は私(宮地)の判断で付けた。

    毎日新聞HP『共産党による萩原遼除籍』

 

 日本共産党が、党員であり元赤旗平壌特派員の萩原遼氏(「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」名誉代表)を除籍した。直接のきっかけは、5月24日に東京の首相官邸近くのホテルで行われた朝鮮総連結成50周年記念パーティーの会場前で、朝鮮総連批判のビラを配ったことのようだ。この記念パーティーには、不破哲三日本共産党議長が出席し、祝賀メッセージを金日成・金正日の大肖像画の下で読んでいる。

 

 萩原氏がこの日配ったビラには『朝鮮総連は「帰国事業」という巨大な誘拐・拉致に責任を取れ』と題した守る会の声明がプリントされていたが、その内容は『(朝鮮総連は)いまも北朝鮮で地獄の苦しみにある何十万人もの在日朝鮮人帰国者を希望するところに行かせるよう本国当局に進言すべきである。またすでに日本に戻ってきた帰国者の生活と教育、就職斡旋などで朝鮮総連は組織を挙げて支援する責務がある。』という極まっとうな主張である。

 

 この内容のどこが日本共産党批判なのだろうか。「党の見解と異なる」と言っているところを見ると、共産党は「帰国事業」に関し朝鮮総連には責任は全くないと認識しているということなのだろう。当時、一心同体だった朝鮮総連の責任を認めることは共産党自身の責任を認めることにもつながり、今、また総連と蜜月を迎えようとしている共産党には耐えられないことなのであろう。

 

 ビラの配り方に関しては、一枚一枚封筒に入れ、参加者に「お読み下さい」と言って、手渡ししていたもので、混乱を起こすようなものでは決してなかった。

 

 萩原遼さんは、1958以来の共産党員であった。早くから北朝鮮の圧政を批判し、朝鮮戦争が金日成のしかけであることを綿密に研究した著書や、北朝鮮の飢餓が金正日の意図的なものであること(金正日の戦争)などを明らかにした著書を発表してきた。その中で、和田春樹東大名誉教授との論争なども起きている(萩原さんのHP和田春樹批判論文PDFで掲載されています)。また、大韓航空機爆破事件の金賢姫に関して、北朝鮮がそのような人間は存在しないと強弁した際、平壌空港での金賢姫の少女時代の写真を発掘したのも萩原さんだった。

 

 著書に、「北朝鮮に消えた友と私の物語」 「朝鮮戦争?金日成とマッカーサーの陰謀

 「拉致と核と餓死の国 北朝鮮」 「金正日 隠された戦争 金日成の死と大量餓死の謎を解く
などがあるが、日本共産党機関誌の赤旗には、
萩原遼氏の著作の広告や書評が掲載されることは一度もなかった。また、共産党は、98年に拉致問題に積極的に取り組んでいた兵本達吉氏も除名している。


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 4、HP『電脳補完録』の記事と資料−当日のビラ、不破議長挨拶

 

 HP『電脳補完録』

 1、投稿記事「共産党、萩原遼氏を除籍、朝鮮総連への抗議が原因」

 2、毎日新聞記事「共産党、萩原遼氏を除籍」 (全文)

 3、当日配られた声明ビラ「朝鮮総連は『帰国事業』という巨大な誘拐・拉致に責任を取れ」

    ―朝鮮総連結成50周年に際して― (全文)

 4、朝鮮総連結成50周年記念パーティーで不破哲三議長が行ったあいさつ、5月24日 (全文)

 5、共産党規律委員会「萩原遼氏を除籍」2005年6月23日「しんぶん赤旗」 (全文)

 

 ()、「しんぶん赤旗」記事は、一週間後、有料検索に変わる。

 

 5、『除籍への萩原抗議文と批判メールへの党回答文』

       『朝鮮と私、旅のノート』における萩原遼の党改革意見

 

 6、萩原遼HP『金正日 隠された戦争』

      新刊の概要・目次、掲示板−メールへの党中央回答、他

 

 7、宮地幸子HP『書(ふみ)を愉しむ』

      『拉致と核と餓死の国、北朝鮮』で著者萩原遼の覚悟を読む

 

 8、Google検索『萩原遼除籍』 『朝鮮総連50周年』 『萩原遼』

 

以上  健一MENUに戻る

 (関連ファイル)

  1、北朝鮮拉致事件

    『北朝鮮拉致(殺害)事件の位置づけ』朝鮮労働党と在日朝鮮人、日本共産党

    『北朝鮮拉致事件と共産党の意図的な無為無策路線』金正日擁護政策

    『「異国の丘」とソ連・日本共産党』日本共産党の犯罪的対応の前歴

    中野徹三『共著「拉致・国家・人権」の自己紹介』藤井一行・萩原遼・他

    加藤哲郎『中野徹三・藤井一行「拉致・国家・人権―北朝鮮独裁体制を国際法廷へ」』

    藤井一行『北朝鮮型スターリン体制告発サイト』 『日本共産党と北朝鮮問題』 『藤井HP』

    黒坂真  『日本人拉致問題と日本共産党』北朝鮮批判・共産党批判ファイル多数

    電脳補完録『北朝鮮拉致事件関連年表』

    れんだいこ『日朝政治史「拉致事件」考』

    大日本史『番外編・朝鮮の巻』

 

    朝日『拉致事件』 『核問題』 読売『北朝鮮』 日経『拉致問題』 毎日『拉致事件を追う』

    Yahoo『核開発』 Google『核開発』 原水禁『北朝鮮の核開発データ集』

    Yahoo『朝鮮総連と拉致事件』 『朝鮮総連と帰国事業』 『朝鮮総連と朝鮮労働党』

    Google『朝鮮総連』 『朝鮮総連と朝銀問題』 『朝鮮総連と日本共産党』

    総連再生フォーラム『朝鮮総連の改革と再生のための提言』

    お笑い日本共産党『青瓦台事件に対する日本共産党の無責任な総括』

    よど号事件 無限回廊  よど号ハイジャック事件  Yahoo  Google検索

 

  2、拉致被害者・北朝鮮帰国者・脱北者救出運動

    RENK『救え!北朝鮮の民衆』 RENK『東京』

    HP『朝鮮民主主義研究センター』 『北朝鮮問題リンク集』

    HP『北朝鮮難民救援基金』 『カルメギ』

    さざ波通信『北朝鮮問題・討論欄』

    加藤哲郎『拉致問題リンク集』

    中野徹三『国際刑事裁判所設立条約の早期批准を』拉致被害者救済のために

          『拉致(強制的失踪)と北朝鮮問題について』

    萩原遼『金正日 隠された戦争』新刊の概要・目次

    金国雄『梁山泊』 『在日朝鮮人帰国事業の考察』1〜32

    金英達『北朝鮮への帰国事業について』

    参考資料『在日朝鮮人の帰還事業』多数

    掲示板『北朝鮮拉致問題』 掲示板『北朝鮮・拉致事件支援者』

    掲示板等リンク集『北朝鮮問題』 山本孝司『ブルーリボン電脳補充録』