不破哲三の資本論「研究」と中国「賛美」の老害ぶり

 

「民主集中制」権力は絶対的に腐敗する

 

山椒魚

 

 ()、これは、私(宮地)の友人・山椒魚さんの論考である。彼は、不破哲三の議長時期からの資本論「研究」文献を検証し、そのレベルを解析し、位置づけた。また、不破哲三が、中国にまで赴いて、その出前講演をし、中国型社会主義を「賛美」した内容を検討した。不破哲三は、宮本顕治とともに、東方の島国において、Democratic Centralism(民主主義的中央集権制)権力を体現・堅持してきた。その「民主集中制」権力の絶対的腐敗度を、不破哲三の「研究」「中国賛美」に関する山椒魚さんの論考から読み取ることができるか。以下の事例は、代々木党本部トップからの腐敗、党本部における内部崩壊度を示す典型ではなかろうか。

 

 山椒魚はペンネームなので、経歴を載せない。しかし、彼は、共産党体験や市民運動体験・人脈を豊富に持っている。この論考は、「さざ波通信」一般投稿欄の(1)2006年4月29日不破氏の「資本論」について、(2)5月4日つづき、(3)6月3日不破氏の「学術講演」に載った。このファイルは、それら3つを、一つにまとめたものである。このHPに全文を転載することについては、山椒魚さんの了解をいただいている。文中の各色太字は、私(宮地)の判断で付けた。

 

 〔目次〕

   1、不破哲三氏の資本論「研究」のレベルと位置づけ

   2、中国に出前しての不破氏「学術講演」という老害

 

 〔関連ファイル〕         健一MENUに戻る

    (時系列による不破報告、および、不破批判ファイル)

    『「戦後革命論争史」に関する不破哲三「自己批判書」』1983年8月

    志位・不破 『1994年第20回大会』の丸山批判1994年7月

    『不破哲三の宮本顕治批判』〔秘密報告〕日本共産党の逆旋回と4連続粛清事件

    『不破哲三の第2回・宮本顕治批判』〔秘密報告〕宮本秘書団私的分派、2000年11月

    『綱領全面改定における不破哲三の四面相』04年1月

    不破哲三『綱領改定についての報告』(全文)、04年1月

    『北朝鮮拉致事件と共産党の意図的な無為無策路線』金正日擁護パンフ、04年1月

    不破哲三『現在の情勢と課題を日本の政治の歴史のなかでとらえる』04年7月参院選総括

    『不破哲三が萩原遼を朝鮮総連批判で除籍』05年6月

    google検索『不破哲三』117000件

 

    (不破哲三と中国共産党との関係経緯)

    『日本共産党と中国共産党との和解劇』1998年

    共産党『不破哲三議長の中国訪問』 『学術講演「レーニンと市場経済」』02年8月

    共産党『中国共産党との会談終了/日本の情勢について不破議長が発言』05年12月

    新日本出版社『不破哲三の本−90冊リスト』『日中理論会談で何を語ったか』目次・構成

    日本共産党『不破哲三−「学術講演」内容』全文、06年5月訪問

    「しんぶん赤旗」『不破所長−中国社会科学院で「学術講演」』06年5月27日記事

    中国共産党『賀国強党中央組織部長、不破哲三氏と会見』06年5月

    google検索『不破哲三 中国共産党』 『文化大革命 日本共産党』

    『中国共産党のインターネット摘発・管理』

 

 1、不破哲三氏の資本論「研究」のレベルと位置づけ

 

 〔小目次〕

   1、不破哲三氏の資本論に関する「研究」著書とそのレベ

   2、不破氏の著書7冊からの要点とその位置づけ

 

 1、不破哲三氏の資本論に関する「研究」著書とそのレベル

 

 いま私の机上には地元の市立図書館から借り出した不破哲三氏の「マルクスと資本論」全3巻、「エンゲルスと資本論」上下2册と「レーニンと資本論」の1、5巻(それ以外は貸し出し中)の合計7册がある。「レーニンと資本論」は全7巻だから、不破氏は「資本論」に関して合計12册、定価26、400円、6、000頁を超す大冊を書いたことになる。そしてほかに「『資本論』全三部を読む」( 代々木『資本論』ゼミナール・講義集全7冊)があるのだ。

 流刑、亡命、ないし獄中生活を送っているなかでというのではなく、これが現職の日本共産党議長在職中の仕事なのだからタダごとではない。

 これらはいずれも不破氏の「個人的な著作」のようで党の公的任務として書かれたものではなかろう。それとも重要な党活動の一つとして正規の党機関で承認・決定されたものだ、というのだろうか。

 しかも各巻の「はしがき」には、臆面もなくそれらの出版は党創立記念日とともに彼の妻、つまり、七加子夫人との婚約ないし結婚何周年の記念すべき年にあたるなどとぬけぬけと書いているのである。

 ところで、このような大冊が果たして日夜末端で苦闘している党員にとって有益な内容と言えるだろうか、またこれらの党員がその全巻を手許に揃える資力があり、かつこれを讀み通す時間があると、この著者は考えているのだろうか。

 マックス・ウエーバーは、『職業としての学問』のなかで「とにかく、自己を滅して専心すべき仕事を、逆になにか自分の名を売るための手段のように考え、自分がどんな人間であるかを、『体験』で示してやろうと思っているような人、つまり、どうだ、俺はただの「専門家」じゃないだろうとか、どうだ俺のいったようなことはまだだれもいわないだろうとか、そういうことばかり考えている人、こうした人々は、学問の世界では間違いなくなんら「個性」のある人ではない」といっているが、これは不破氏にたいするまさにうってつけの指摘といえまいか。

 それに、どうみても不破氏のこれら著作の水準は、アマチュア研究者の域を出るものではなく、学問的批判にたえるものではないだろう。

 不破氏を学生時代からよく知る友人の原論学者O君に「鳥なき里のコウモリということかな」と電話で話したら、「全く同感だ」という返事がかえってきた。本部勤務員その他を前に得々として「講義」する神経がわからない、やるなら内外の資本論研究者に呼び掛けて公開討論の場を設けたらどうだ、ともいっていた。

 また、在野で独創的な国家論研究をいまも続けているT君は、「『資本論』全三部を読む」を、「論語読みの論語知らずだな」と一刀のもとに切り捨てていた。

 数万冊の蔵書をおさめる書庫をもち、料理人、運転手、防衛各二人を常駐させているといわれる山荘から本部へ向かう車の中で「資本論」に読みふける現役の政治家などというものがほかに一人でもいるだろうか。

 

 2、不破氏の著書7冊からの要点とその位置づけ

 

 ここで、いま机上にある不破氏の7冊の著書をざっと通読して得た要点の若干をできるだけ簡潔に記そうと思う。

 いちばん鼻もちならなかったのは、「再生産論と恐慌」と副題された「マルクスと『資本論』」第一巻の「まえがき」であった。
 これによると、不破氏が研究の目的とした「主題」は「マルクスの恐慌論を、その形成の歴史を追い、まだ書かれなかった部分への推測的な展望もふくめて探究すること」で「マルクスの恐慌論を腑に落ちるまで讀みとる」ことだったというのだ。

 そのために不破氏は『五七〜五八年草稿』(いわゆる「経済学批判要綱」)や『一八六三〜六五年草稿』などを「剰余価値学説史」とともに現行『資本論』と対比しながら、永年かかって苦労しながら「全部讀み通した」というのである。現代的な問題意識など皆無なのは無論である。

 『一八六三〜六五年草稿』というのは、いうまでもなく全9巻、平均700頁、本体価格95,000円の新メガ版による『資本論草稿集』(大月書店刊)の中に収録されているもので、「資本論草稿集翻訳委員会」によって1994年に全巻完結をみたものだが、不破氏はこれを主として山荘と党本部を往復する車のなかで讀んだというのだ。因にいうと「経済学批判要綱」は氏の鉄鋼労連書記時代、往復の電車のなかで線を引きながら讀み継いだというから大した出世ぶりではある。

 「エンゲルスと『資本論』」下巻には「エンゲルスの編集作業を追体験する」という一節があって、そこにはこう書かれている。「マルクスの草稿をエンゲルスがいかに編集したかについて、より綿密な吟味を行い、エンゲルスが讀み落とした点や誤解していた点があれば、それを解明するということは『資本論』研究の当然の課題」で「エンゲルスの編集の過程を自分で体験してみることがどうしても必要だ」というのである。

 「レーニンと『資本論』」第一巻には、不破氏が1986年にモスクワを訪問したさいに手にいれたという『レーニン遺稿集』の最新の巻(40巻)のなかに40頁にわたって『資本論』へのレーニンの書き込みが収録されているのを発見して、ホテルに戻ってロシア語の辞書と首っぴきで自分用の翻訳をつくった、などという自慢話とその内容紹介におおくの頁を割いているが、その評価、意義などには一言もふれていない。こうした資料を私物化して「個人的著作」のタネにするのは彼の得意技といえる。

 いずれにしても全巻すべてその内容は、お世辞にも「独創的」などとはといえず、あいかわらず折衷主義的で冗漫かつ平板な解説の域を出ていない。
 結局、これらの著作中に見え隠れするのは、要するにエンゲルス、レーニンをさえ超えてマルクスと肩を並べてオレは「資本論」の高峰を踏破したと誇示したいのだ。

 一年間にわたって行われた不破氏の「代々木『資本論』ゼミナール」の最終講義のあとで、松本善明氏「不破さんは現代のマルクスだ」と空世辞をいったそうだが、語るに落ちたというべきだろう。

 

 エラスムスは『痴愚神礼讃』のなかで、「値打がなければないほど自惚れが強く横柄であり、いよいよ尊大ぶり、いよいよ気取るものだから、だれも称讃してくれない時に自分で自分を称讃するのは当然だ」といったが、いい得て妙だといえまいか。
 そのわかき日、不破氏がまっ先に国際派全学連から離脱して、悪名高い「51年綱領」を支持して党主流に復帰したことは、知る人ぞ知る、その無定見さには定評がある。

 不破氏のこの著作を、まれにみる悪書だと断じたい。

 

 

 2、中国に出前しての不破氏「学術講演」という老害

 

 不破哲三氏は、「日本共産党付属社会科学研究所所長」の資格で、2006年5月25日に北京の「中国社会科学院」で「マルクス主義と二十一世紀の世界」と題して「学術講演」をおこなったが、その内容の全文なるものが、5月30日付の「しんぶん赤旗」に掲載された。

 不破氏は現役時代から「資本論講義」や「学術講演」などといった空談義が大好きだったが、なんとこれを中国に「出前」するまでにのぼせあがってしまったようだ。

 だが、その内容はとても「学術講演」などとはいえぬお粗末なもので、その全部につきあう気には到底なれない。一言でいえばこれはまさに「老害」の典型、天下にその「老醜」をさらしたものといってよいだろう。

 「老害」とは簡単にいえば、高齢化した組織の指導者がいつまでもポストにしがみつき、組織の健全性を阻害すること、といってよかろうが「組織」にとってこれほど厄介でうとましい存在はない。

 「議長」を退任したら、同時にきれいさっぱり「常任幹部会員」からも退き、すべてを後継者にゆずるというのが引退の美学だろう。
 高齢だから「国会議員」はつとまらない、「議長」として選挙活動で全国を走り回るのは無理だから引退するが適材が見当たらないからそのポストは空席とする、社会科学研究所の所長が空席だからそれをやろう、というわけだ。面倒なことは一切やらないが実質的な権力は手放さないという虫のよさである。

 不破氏が社会常識にうとく、実務能力・大衆感覚をほとんどもちあわせていないことは、党内外で周知のことである。かつて時の宰相佐藤栄作が「頭のいい不破君」といい、「ああいう男を自分の秘書に欲しい」といった話は有名だ。

 ところでその「学術講演」だが不破氏はその講演のなかでつぎのようにのべている。

 「私たち日本共産党は、ソ連の解体のとき、党の声明を発表しましたが、その声明のなかでソ連の崩壊を、社会進歩をさまたげる有害物・歴史の巨悪の解体と評価して、この事態を歓迎しました。それが正確な評価であったことは、それ以後十五年間の世界の動きによって証明されている、と思います。

 もう一つ重要なことは、解体の波がソ連・東欧圏だけにとどまったことです。この十五年間のあいだに、中国、ベトナム、キューバは、それぞれ社会主義をめざす独自の路線を確立して、大きな発展をとげています。社会主義をめざす国ぐには、世界経済と国際政治に占める地位と比重をますます大きくしているし、その傾向は二十一世紀にさらに加速されてゆくでしょう。」

 

 おおくはいわないとしても、このなかで「北朝鮮」について一言もふれていないのが、不破氏のずるいところで、肝腎のところに頬かむりして、招待相手に媚態を呈する彼の性癖が丸出しだ。

 そして「あなたがたが、壮大な未来をもった国づくりで、社会主義をめざす国ならではの優位性を発揮して、大きな成功をおさめ、そのことが二十一世紀の世界的な発展の力となることを願って、私の話を終わりたいと思います。ありがとうございました。」というのが結びの言葉である。

 「社会主義をめざす国ならではの優位性」とは、なにをさすのはもちろん説明なし、空文句の見本ではあるまいか。これは日本共産党にとってのというばかりではなく、日本人民のといわねばなるまい。

 

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 〔関連ファイル〕

    (時系列による不破報告、および、不破批判ファイル)

    『「戦後革命論争史」に関する不破哲三「自己批判書」』1983年8月

    志位・不破 『1994年第20回大会』の丸山批判1994年7月

    『不破哲三の宮本顕治批判』〔秘密報告〕日本共産党の逆旋回と4連続粛清事件

    『不破哲三の第2回・宮本顕治批判』〔秘密報告〕宮本秘書団私的分派、2000年11月

    『綱領全面改定における不破哲三の四面相』04年1月

    不破哲三『綱領改定についての報告』(全文)、04年1月

    『北朝鮮拉致事件と共産党の意図的な無為無策路線』金正日擁護パンフ、04年1月

    不破哲三『現在の情勢と課題を日本の政治の歴史のなかでとらえる』04年7月参院選総括

    『不破哲三が萩原遼を朝鮮総連批判で除籍』05年6月

    google検索『不破哲三』117000件

 

    (不破哲三と中国共産党との関係経緯)

    『日本共産党と中国共産党との和解劇』1998年

    共産党『不破哲三議長の中国訪問』 『学術講演「レーニンと市場経済」』02年8月

    共産党『中国共産党との会談終了/日本の情勢について不破議長が発言』05年12月

    新日本出版社『不破哲三の本−90冊リスト』『日中理論会談で何を語ったか』目次・構成

    日本共産党『不破哲三−「学術講演」内容』全文、06年5月訪問

    「しんぶん赤旗」『不破所長−中国社会科学院で「学術講演」』06年5月27日記事

    中国共産党『賀国強党中央組織部長、不破哲三氏と会見』06年5月

    google検索『不破哲三 中国共産党』 『文化大革命 日本共産党』

    『中国共産党のインターネット摘発・管理』