書名:華麗なる一族(一)山崎豊子全集
著者:山崎豊子
発行所:新潮社
発行年月日:2004/10/10
定価:4935円
書名:華麗なる一族(二)山崎豊子全集
著者:山崎豊子
発行所:新潮社
発行年月日:2004/11/10
定価:4935円
山崎豊子の作品は知ってはいたが、どういう訳か今まで一度も読んだことがなかった。ちょっとベストセラーが多すぎたせいで敬遠していたのかもしれません。「華麗なる一族」は映画化、テレビ化もされており内容もよく知られた小説だと思う。神戸銀行、太陽銀行がモデルとか騒がれていたり、山陽特殊製鋼がモデルとか実際には複数のモデルを一つにしたようなことを作者は書いている。城山三郎の「小説・日本銀行」などをヒントにしたとか。女性の作家ですが、取材の緻密さ、構成など非常に筆力のある作家だと思う。通常の合併は「大が小を呑み込む」が普通ですが、それでは物語にならない。「小が大を呑む」この作戦も緻密な構成になっている。企業小説、銀行合併、政治家、官僚、財界と閨閥の構造を鋭く暴いている。
何でも毎日新聞時代、井上靖に指導されたとか?企業小説でありながら人間(特に悪い人間)をある種の愛情をもって描いている。これを超えるにはかなりハードルが高い。1970年代の小説でありながら、今でも十分通用することが多い。この小説に啓発されたのか?銀行の合併が一気に加速されて今では何処が何処と合併したとも判らない位、銀行の再編成が進んでしまった。官僚との夜の会話など本当のことのように事細かに書かれている。また文章も練れているので読んでいて違和感が少ない。ちょっと山崎豊子をもう少し読んでみたい気がします。
本書より
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孟子の教えに
「天下ヲ得ルニハ 一不義ヲ成サズ、 一無辜ヲ殺サズ」
読み下すと
「天下を得るには、一つの不義もなさず、一人の罪なき者も殺してはならぬ」