書名:穢土荘厳(上)杉本苑子全集14
著者:杉本苑子
発行所:中央公論社
発行年月日:1998/7/7
定価:3600円+税
書名:穢土荘厳(下)杉本苑子全集15
著者:杉本苑子
発行所:中央公論社
発行年月日:1998/8/7
定価:3600円+税
聖武天皇の御代、天皇家の力も余り強くない時代、天智天皇系から天武天皇系、藤原不比等が藤原氏の盤石の基盤を築いた時代、今から1300年前の奈良の都が建設されて、大仏開眼、全国に国分寺国分尼寺が作られるような時代。長屋王の悲劇、聖武天皇苦悩など、奈良時代の物語です。史実ではあまり知られていないし、判っていない時代。作家の中で物語りが展開していく、多分フィクションも多いのであろうがグイグイと引き込まれてしまう、杉本苑子の実力か?久々にこれが小説かという思いで一気に読んでしまった。
本の寿命を考えると物語は以外と永遠というところがあるが、科学書、ノウハウ物、経営書、経済学書などは短いその場限りの寿命。でもこの本の寿命は1000年後でも残るかも。やっぱり天皇といえども人間を扱っているところは不変的なところがあるのかもしれない。寿命の長い本にはやっぱり迫力が違う。生きている。情報過多の時代、その場で価値の無くなる本に惑わされすぎている感じがする。その中にも光る作品も少しだけれど何時までも残っていくものがあるように感じさせてくれる。吉川英治の唯一の女性弟子杉本苑子をもう少し知りたいと思う。やっぱり一つの事柄をあらわすのでも語彙の数が格段に違う。またバックにある教養も現代の人にはない奥行きがある。そんなことを考えながら読みました。色々な本も読んでいる量、理解なども遠く及ばない気がする。凄い作家だと思う。こんな作家はもうでてこない??