書名:あじさい日記
著者:渡辺淳一
発行所:講談社
発行年月日:2007/10/12
ページ:500頁
定価:1600 円+ 税
ある日偶然、妻のベッドでシーツの下から妻の日記を発見するところから物語がはじまる。その日記の表紙には「あじさい日記」とある。その日記を読んで驚愕する夫。主人公の夫は開業医で年齢は46歳。妻は40歳で子供が2人いる専業主婦。夫を支える健気な妻として、二児の教育にかかりきりの母親として、満ち足りた生活をしているようにみえる。
この主人公の医者には26歳の美しい愛人がいる。自分の経営する病院の職員であり、マンションを持たせてやっている。勘の鋭い妻は夫の不倫に薄々感づいている。夫の怪しい行動や、かすかな香水の香りなど不倫の証拠を、自身の怒りや嫉妬とともに、克明にあじさいに綴り続ける。
その日記を妻に隠れて読み、妻の意思や心理を知り、自身の思いを絡めて狼狽し、なおかつ家庭を壊すことを恐れつつも一時の潤いを求めて不倫に走る身勝手な男。40歳という年齢を迎えた妻の女としてのあせり、愛人や夫に対する怒りと嫉妬、自尊心の葛藤に悶える女の心理の対比。
渡辺淳一は「愛の流刑地」など濃厚な性愛描写で知られている作家ですが、この小説では平凡なちょっと裕福な夫婦の男と女のお話。ちょっと渡辺淳一にしては珍しい本です。中年期以降の夫婦がそれぞれが固有の世界を持ち、異なる夢をみる。でも外面的には幸せな夫婦を演じている。心の中は全く別に。仮面をかぶり共同生活を送っていく。そんな姿を心理描写を含め克明に描いている。また妻も実は夫に読まれることを知りながら(勿論夫は知らない)日記を克明に綴っていく。夫婦とはを問いかける本です。
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紫陽花は昔から日本に自生していて、あず(集まる)さい(藍色)からこの言葉が生まれたという。他は「あずさい」「よひろ」などとも呼ばれていたらしい。またこの花は植えられた土壌により、アルカリ性だと赤い花に、酸性だと紫色に変わることから七変化とか八仙花などの名があるらしい。さらにそのあとに花言葉として、「移り気」「心変わり」そして「浮気」と記されている。