書名:責任 ラバウルの将軍 今村均
著者:角田 房子
発行所:筑摩書房
発行年月日:2006/2/10
ページ:553頁
定価:950 円+ 税
太平洋戦争の頃、一種のエアースポットのように戦争から取り残されていた地域があった。それはラバウル。大将今村均はラバウルに7000haの農地、大規模な地下要塞を築いた。それを見た米軍はラバウル攻略を諦めて、それ以外の基地を攻略していく。角田房子(故人)が描く力作。鋭い視点が面白い。
戦後生き残った今村均の関係者達にインタビューをこまめにおこなっている。司馬遼太郎の作品とは全く違って取材の質が違う。司馬の場合は彼特有の始め結論ありき、それの証拠を集めて司馬史観なる独自の説を展開しているが、角田の姿勢は全く違う。自分の足と頭で追いかけていくスタイルが良い。一つのロマンを見ているようだ。今村均は「歎異抄」と「聖書」をいつも手元において暇があると読んでいた。でもキリスト教徒でも仏教徒でもない。
長い長い戦犯裁判でも部下を救うためには何度でも証言台に達、全ての責任は大将の自分にある。を貫いた人。戦犯と呼ばれた人の中には本当にどうしょうもないつまらない人もいるが、でっち上げの容疑で戦犯として処刑された人も。また今村のように死刑にはならず生き残った。刑期を巣鴨拘置所で過ごさせるために日本に送り返された後、自ら交渉して過酷な状況のマヌス島の戦犯収容所へ。元の部下達と一緒に服役する。
こんな大将もいたことに、少しの救いがある。今村均のことに興味を持った。この本は一読する価値のある力作です。