書名:決断力(下) そのとき、昭和の経営者たちは
著者:日刊工業新聞社
発行所:日刊工業新聞社
発行年月日:2002/10/30
ページ:552頁
定価:1524円+税
下巻に登場する人は資生堂の松本昇、セイコーの服部正次、オムロンの立石一真、大塚製薬の大塚正士、野村證券の奥村綱雄、鹿島建設の鹿島守之助、電通の吉田秀雄の7人です。上巻、中巻に比べるとちょっとスケールの小ささが目立ってきているか?
資生堂の松本昇は昭和の初め定価販売を強固に貫いた。安売り、安いが良い現代の風潮に一石を投じる。企業の商品価値の安売りには走らなかった。セイコーの服部正次は世界一の時計メーカーを実現した。それには分社経営。オムロンの立石一真は制御器機に特化して事業の礎を築く、また福祉にも精力的にも動く。大塚製薬の大塚正士は圧倒的に売れる商品、息の長い商品を開発した。オロナイン軟膏、リポビタンD、ボンカレー、ポカリスエット等誰でも知っている商品、それも超ロングセラー。
野村證券の奥村綱雄は戦後の混乱期だから社長になれた人物、桁違いの器、秩序ある社会ではすぐに首になったのではないか?でも知人、友人、部下など関係している人からは褒め言葉が多い。鹿島建設の鹿島守之助は先代の娘婿、倒産寸前の鹿島組に外交官を辞めて飛び込んで再建に取り組む。工業地帯の埋め立て工事、火力発電所、原子力発電所の建設、霞ヶ関ビルをはじめとする超高速ビルの建設など。そして文化事業にも深い理解を示している。豊富な経験で教養あふれた人物。電通の吉田秀雄は広告屋と蔑まれていた業界のレベルアップに尽くした。それも強引にラジオ放送、テレビ放送、新聞と電通の軌跡を追うと吉田が見えてくる。昭和の歴史の一端を見ることが出来る。
ちなみに、この本のベースになった調査では総合順位のトップにはソニーの創業者である盛田昭夫、第二位には本田技研工業を設立し、世界有数の自動車メーカーに育て上げた本田宗一郎、第三位に松下グループの創始者で「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助がそれぞれ選ばれた。
以下、日本の産業近代化に貢献した渋沢栄一(第四位)、盛田とともにソニーを創業した井深大(第五位)、ネット革命の旗手の孫正義(第六位)、ヤマト運輸で宅配便という新しいビジネスを確立した小倉昌男(第七位)、経団連会長として高度経済成長期をリードした石坂泰三(第八位)で、第九位には「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門のほか、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎。