書名:決断力(上) そのとき、昭和の経営者たちは
著者:日刊工業新聞社
発行所:日刊工業新聞社
発行年月日:2001/3/30
ページ:493頁
定価:1524円+税
日本工業新聞社が現役社長100人を対象に実施したアンケート調査「20世紀の経済人」で選ばれた名経営者たち(物故者)を21名を取り上げている。この上巻で登場する人物は、盛田昭夫(ソニー)、本田宗一郎(ホンダ)、松下幸之助(松下)、土光敏夫(石川島播磨重工業、東芝)、木川田一隆(東京電力)、早川徳次(シャープ)、御手洗毅(キヤノン)の7人。
ソニーが日本を代表する国際企業に成長するきっかけを作った盛田昭夫の英断、松下の技術力を飛躍的に高めた松下幸之助のフィリップ社との提携と契約時のかけひきの妙、石川島播磨重工業、東芝、さらに行政改革をも推し進めた土光敏夫の決断の数々。木川田一隆は松永翁の下で電力再編、9電力体制実現に奔走、ふるさと福島に福島大地原発を作った。
早川徳次は日本で初のシャープペンシル、ラジオ、テレビ、電卓、液晶などを作ったシャープの創業者。御手洗毅は病院を経営しながら二足のわらじでカメラを作った。それぞれ人知れぬ苦労、倒産の危機、絶体絶命のときの決断がある。興味深いエピソードが数多く収められている。読み物としても、人生訓としても楽しめる、味わい深い1冊である。めざしの土光にも原子力開発の推進に力を注いだこともあり、また松下も晩年は政治に目覚め新党結成を企画するが、実現せず、松下政経塾を作った。
これは晩年を汚したか?結果は歴史が記すところだろう。経営の神様も経済だけではだめ、政治と経済は一体のものと意識したようだ。早川徳治は福祉に力を注いで全盲の人たちの会社を創設したり、自分の生活は質素、そして儲けは寄付と知られない面も語られている。
ここに出てくる人は自分は無、天下、国家、人の為の意識が強い。でも現代ではこんなリーター達について行ける人がどれだけいるか?
その中で異色なのは御手洗毅ではないだろうか?「実力主義」「健康第一主義」「新家族主義」、三自の精神(自発、自治、自覚)を唱えている。1人あたり70ページ程度で良く纏められている。一気に読んでしまった。
この紹介されている企業も「盛者必衰のことわりをあらわす」「ゆく川の流れは絶えずしてしかも元に水にあらず」を見る思いがする。「企業の寿命は30年」
本書より
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土光の目にはインテリ経営者ほど優柔不断で決断力と実行力に欠けると見ていた。高学歴社会の今、この種のインテリ経営者ばかりが残った。混迷する経済社会の病巣は、この点に潜んでいる。いつの場面でも火の玉となって組織改革に挑んだ土光流の決断と実行力の軌跡から私たちは学ぶ点が多い。