書名:史伝鎌倉源家北条記
著者:山口 俊章
発行所:未知谷
発行年月日:2009/9/25
ページ:568頁
定価:7000 円+税
鎌倉時代というと頼朝の鎌倉幕府、武士の時代。時宗の元寇、鎌倉幕府滅亡の高時、新田義貞、後醍醐天皇の倒幕など。平家物語、太平記などに記載された事柄は比較的よく知られているが、全体を通して鎌倉時代の歴史を扱ったものはすくない。「吾妻鏡」「北条九代記」「源平盛衰記」「平家物語」「太平記」「大日本史」「神皇正統記」などの読み下し文を入れながら、源氏3代(頼朝、頼家、実朝)北条16代執権(時政、義時、泰時、経時、時頼、長時、政村、時宗、貞時、師時、宗宣、煕時、基時、高時、貞顕、守時)征夷大将軍9代(頼朝、頼家、実朝、頼経、頼嗣、宗尊親王、惟康王、久明親王、守邦親王)の事跡を時間軸で追いながら詳しく説明されている。
平安時代末期、平家によってはじめて武家政権となった。しかしそれまでの律令制の国家の仕組みを変えることが出来なかった。しかし頼朝は東国の地鎌倉に幕府を開き武士による政権を目指した。京都の朝廷、公家から離れた政権を目指す。約140年に及んだ鎌倉幕府の歴史を綴っている。今までなかった武家政権を創造していく上での失敗、トラブル、血の通った人間の生き様、エゴ、怨念、執念など裸の人間の欲望が渦巻く世界が展開されている。1代ごとの代替わりの時には必ず、有力御家人の没落、壊滅、梶原一族、畠山一族、和田一族など次々と没落して、次の勢力が台頭してくる。したがって140年間継続したといえ,安定した時代は殆ど無かったのではないのか?当然文化、芸術、経済なども発展していないのが鎌倉時代。もっとも政権に興味がなかった。または参加させて貰えなかった実朝、高時などは和歌、蹴鞠に執心したとか。
「平家物語」のように後世に残る「源氏・北条物語」が残らなかったのは物語としてはやっぱり面白くない時代だったのではないだろうか?現にいまでも鎌倉時代のことは興味を持つ人は少ないのではないか?またよく知らないことが多い。
源義経なども菅原道真のように怨霊にならなかった。鎌倉も天変地異が多く、疫病などが起こっているが、義経の怨霊、畠山一族の怨霊などと怨霊封じ込めの神社などを作った形跡がない。もっとお寺、神社に加持祈祷はおこなっているが。怨霊話はどうも都では流行るものらしい。
鎌倉時代の仏教は禅宗に代表されるが、以前の仏教比叡山延暦寺、東大寺等は公家の宗教、武士は禅宗、真言宗を支援したとのこと。したがって建長寺、円覚寺等の禅宗(臨済宗)、極楽寺の真言宗などが有名なお寺。鎌倉時代の概要が一気に理解出来る大作です。作者の主観があまり出ていなくてあくまで資料に語らせるという感じの記述です。好感の持てる書です。