書名:日本原発小説集
著者:井上光晴 清水義範 豊田有恒 野坂昭如 平石貴樹
発行所:水声社
発行年月日:2011/10/30
ページ:249頁
定価:1800円+税
2011年3月11日の福島第一原発事故後に編集、出版された原子力発電所に関する小説。勿論それ以前の短編集を集めたものです。作家の感性が際立って見えてきます。反原発、脱原発、原発推進いろいろ取り混ぜてあります。これを読んでどう感じますか?そんな命題を突きつけられたような作品集です。
「放射能がいっぱい」清水義範、「隣の風車」豊田有恒、「乱離骨灰鬼胎草」野坂昭如、「虹のカマクーラ」平石貴樹、「西海原子力発電所」井上光晴の5つの短編集。
隣の風車は原子力発電所が廃止された近未来小説、エコと騒がれて風力発電装置を各家庭の屋根の上に設置して暮らす人々の「風の権利」争奪戦の末路をブラックユーモア的に描いている。原子力発電所がなくなると警告しているように見えて、実はその奥は深い。電気を使った暮らしに深く問題提起している。豊田有恒は群馬大学付属中学校の時、高木仁三郎と同級生だったとか。
「乱離骨灰鬼胎草」は新潟県出身の野坂昭如が、昔の村の様子をおどおどろしく描いている。そして原子力発電所が建設されるとき様子、その後のようすを反原発の立場で描いている。ふるさとを愛しながらも村が変わってしまった様子をおどおどろしく描いている。
どの作品も短編ですが、心にしみる作品です。
本書より
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「激烈な核爆発である原子爆弾を制御できないように、穏やかな核分裂であるはずの発電用原子炉の運転を、私たちは最終的に制御できない。」山本義隆。「原発は単なる湯沸かし器としては常軌を逸した巨大で複雑なメカニズムとテクノロジーの化け物だった。人間は時として自分たちの手に負えない怪物を作り出してしまうのだ。」しかもそれは使用済み燃料の放射性廃棄物の処理能力を持たない、致命的な欠陥のある「炉」である。川村湊