下北沢ザ・スズナリ 10/27〜11/8
11/5(土)マチネ観劇。座席 I-4(招待)
作・演出 千葉雅子舞台は、作詞家・高尾剛(池田鉄洋)の別荘。高尾はその昔、三井光(岩本靖輝)、大前新一(村上航)、さの(中村まこと)と四人で、ミッドナイトトレインというグループを組んでいた。しかし今では解散し、それぞれ別の道を歩んでいた。
りょうこ(佐藤真弓)との離婚後、慰謝料の話も進まぬまま、高尾は仕事もせずに、別荘に籠もっていた。別荘には、三井、そして昔メンバーがタムロしていたライブハウス(絨毯喫茶?)のオーナー・家永直也(久ヶ沢徹)も、管理人みたいな感じで暮らしていた。そして、いつの間にか部屋の中にいた、堀功二(市川しんぺー)も加わり、平坦な日常生活が営まれていた。しかし、離婚したりょうこが、近々入籍するという新しい男、横田勝之(森田ガンツ)を連れて別荘にやって来た事から、波風が立ち始める・・・。
高尾の評価に逆恨みを持つ吉井美代治(中村まこと)・明人(菅原永二)親子と美代治の愛人・小枝(千葉雅子)も加わり、別荘の周辺は混沌として行く。そんな中、高尾の精神は、過去の記憶から作りだされた妄想と現実が交錯し、壊れ始めていた・・・。高尾剛というミュージシャンの栄光と挫折を描いた作品だが、ラストが少々物足りない。結末を見せないで、想像の中で完結させるのもイチ演出だと思うが、今回の作品では、明確な結末(それも悲劇が良い)が見たかった。過去を振り返る事によって堀功二の正体が判り、人間をちょっと信じられると思った途端、逆恨みで吉井明人に刺され、火を放たれる・・・そんな結末はあくまで想像で完結するしかない(思い違いもあるかもしれない)。最後を急速に終わらせてしまった為、不完全燃焼な後味の悪さが残ってしまった。ちょっと残念である。
ただ、そのモヤモヤを解消してくれるのが、終演後の千葉、市川による一芝居。上演中に携帯電話が鳴らなかった時のご褒美、“携帯電話の電源を入れ忘れると大変なので、忘れずに電源を入れましょう”のコント(?)である。本編とはまったく関係ないが、大いに笑ってしまう。と同時に、「消せ消せ」うるさく言っている事への心使いが見えて、千葉雅子を更に好きになる。本編の物足りなさを補完するには、「卑怯な(笑)」と思わなくもないが、“猫のホテルを楽しむ”という点に於いては素晴らしいと思わざるを得ない。終演後拍手が起こっても舞台に登場しない劇団もある。作品の後味を楽しむには、その方がいい時もある。話はちょっと反れるが、子供の頃、“人体切断”の手品を見た事がある。いや、手品だったと思うが、今考えると、それは手品ではなく、単なる残酷ショーに思えてならない。マジシャンが美女の体を、電動ノコギリで二つに切り裂くと言う、良く見かける手品である。その後何事もなく、その美女が登場して拍手ってのがお決まりの展開だと思うが、その“手品”は違っていた。内臓らしきものが散乱しているその現場を観客に見せて終わるのである。トリックじゃなければ、公開処刑ショーで逮捕されてしまうので、ニセモノには違いないが、美女が復活しないその後味の悪さは、その後いつまでも自分の記憶に残る事となってしまった。それと演劇のカーテンコールを比較しても意味はないかもしれない。でも、現実を見せない後味の悪さを必要とするなら、カーテンコールがないもの納得してしまう。ただ、自分としては、終わった後の役者の表情ってのが好きなので、舞台に出て来て欲しい。そして拍手を贈りたい。猫のホテルは、それにプラスアルファなのである。満足しないはずがない。
“猫のホテル”自分が観た公演ベスト
1.土色の恋情 2.しぶき 3.ウソツキー 4.苦労人
作・演出 野木萌葱舞台は、大正八年の永田町から始まる・・・。その年、帝国議会議事堂(現:国会議事堂)の建設が動き始めていた。建築意匠は、一般公募によって決定された。宮内省技官の奥宮冬二(杉田健治)、千葉原覚(植村宏司)、陸軍省軍属技師の法本征弥(舞場壊人)、辰野設計事務所の紺野高尋(井内勇希)の四名の設計士が最後まで残ったが、建物に刻まれた設計者は、未確定となっている・・・。
一方、地下鉄の建設も動き出していた。東京高速鉄道株式会社の七海景之(西原誠吾)と東京地下鉄道株式会社の颯田創平(十枝大介)は、互いに牽制しあいながらも、実現に向けて動き出していた。この年、東京地下鉄道が獲得した敷設免許から8年後に、日本初の地下鉄(浅草−上野間)が開通したのである・・・。
軍部の力が強く残るそんな時代に、日本を裏舞台から動かした男達の物語。前半は、その雰囲気とか物語への興味で面白かったが、終盤になり眠気に襲われてしまった。疲れてはいたけど、あまり進展のない平坦な展開と、暗めの舞台、感情を抑えたセリフまわしで、気が付いたらラストシーンであった・・・。なので、内容についての感想が書けない。でも、面白かったら、眠ることもなかったので、「つまらなかった」と言うしかない。と、自己防衛。
知識がないので、史実通りかフィクションなのか判らない。でも、史実通りに描いても、そこに“面白さ”がなければ、演劇としての魅力はない。こんな男達がいたと言うのは、テレビのドキュメント番組でも見ればいい。そんな風に感じてしまった。
作・演出 岡田利規申し訳ありません。まだ書けていません。
作・演出 吉田衣里申し訳ありません。まだ書けていません。
作・演出 飯野邦彦西荻窪の裏路地にあるパチンコ店外景品交換所。そこで景品と現金を交換した雨森始(松尾健太朗)は、老女(ヨネクラカオリ)から受け取った現金が、全て千円札だった事に不信を抱く。その上、その千円札は自分が作ったニセ札だった・・・。何故かニセ札の原版を持っている老女。奪い返そうと、その手を握った途端、昭和59年へと迷い込む。そして、老女のものと思っていたその手は、雪野弥生(田中智保)の手と代わっていた・・・。
雪野弥生は、宇宙へ旅立つ夢を持ち、千円札を集めていた。その金を狙って村上さん(早川隆雄)と借金鳥(飯野邦彦)が周囲をうろつく。弥生の旦那、キャプテンシャイロック(中島栄治郎)は、弥生の妹、皐月(勝目知里)との間を行ったり来たり。流し台からは、千円盗賊(伊藤昌子、高橋ゆうき、永峰久美子)が行ったり来たり。そんな千円を巡る『千円王国』の迷宮で、雨森始は翻弄する・・・。なんと言うか、作品が入ってこない。いや、作品に入り込めないと言った方が素直か。不条理な世界へ迷い込んだ男の物語であるが、キチガイ女の妄想を延々と見せられているような感じでもある。いや、そっちの方が強いかもしれない。
全体から受けたイメージは、唐十郎の世界。意味が解らなくても感動してしまう、そんな唐十郎の作品は大好きである。でも、この作品はニセモノ。そりゃ別人が書いている訳だし、唐十郎っぽさを名乗っている訳でもないし、唐十郎の“カ”の字も出てこない。でも、今回の作風は、どこを切り取っても似ていると思わざるを得ない。まぁ百歩譲って、唐十郎を模倣したとしても、面白ければ文句はない。しかし、今回の作品は、意味不明さだけが残り、物語の筋も追えない。ドタバタしているだけで時間だけが過ぎてしまった・・・って感じ。正直言って、いろいろ感想を書くだけ作品を覚えていないのが実情である。眠っていた訳ではない、しっかり起きていたハズだ(自信ないけど)。でも、どんな内容か問われれば、「“唐組”っぽい作品だけどつまらなかった」としか答えようがないのである。残念ながら・・・。と、苦言ばかりだが、全てダメなのではない。舞台美術が作り出す異様な世界はとても良い。ただ、それに作品がついて来なければ意味がない。本来は作品を生かすのが舞台美術だと思う。でも私としては、舞台美術を生かす非現実的な作品が観てみたい。と書いてみたものの、非現実的な点だけを挙げれば、今回の作品はうってつけだったんだけど・・・。でも面白さが・・・。あぁ感想が堂々巡り。
“劇団阿佐ヶ谷南南京小僧”自分が観た公演ベスト
1.善哉の耐えられない甘さ 2.風雲!しんでれ羅城〜血の徒花の義母娘子(ママハハ)ブギウギ〜 3.千円女王 4.百合・シーズン(ゆりしーずぅ?)