■本の評価は、☆☆☆☆☆満点
☆☆が水準作
ホームページへ
不可能犯罪ミステリリスト(国内編)へ
不可能犯罪ミステリリスト(海外編:お試し版)へ
風太郎全作品刊行祈願カウントダウンへ
新刊レヴューへ
過ぎ去りしWhat’s New?へ
パラサイト・関の翻訳ミステリアワーへ
メールコーナー
掲示板(NEW)
2001.9.30(日)
・今日も仕事で、しくしくしく。行く前に、ふらふら寄り道しているのも悪いのだが。逃避場所としての本屋とか。
・「HMM10月号」と「彷書月刊10月号」購入。前者は、肉厚掟破りの定価2500円。これが定価か。「二十世紀ミステリ映画の遺産」と題して、世紀に一度の映画特集だ。巻末の「作家別映画リスト」は永久保存版。竜弓人=北島明弘というのは、今までも明らかにされていたのだろうか。
・「彷書月刊10月号」は、「夢の久作」と題して、この度20年ぶりに完結した「夢野久作著作集」にちなんだ特集。著作集未収録の「発明家」と題する短編も掲載。末永昭二さんの「昭和出版街(4)」は、「顎十郎捕物帖」の改稿の謎に取り組んでいて、今後ますます目が離せない。情報覧によると、9月下旬発売予定の季刊「福神」という雑誌に連載されているの上杉清文エッセイに、山田風太郎の未発表エッセイが全文引用されるらしい。
・そういえば、この前伺った話によると、河出で「山田風太郎」のムック、「ユリイカ」で山田風太郎特集が準備中らしい。
・というわけで、「山田風太郎さん お別れの会」の模様なのだが、また次回ということで、ご容赦。(引っ張ってるわけではないのです。これから持ち帰った仕事なのだ。しくしくしく)
2001.9.27(木)
・お山に雪が降ったというのに、遅い夏休みをとり26日東京会館で開かれた「山田風太郎さん お別れの会」に行って来ました。本日は、国会図書館で、山風の学生小説等を漁ってきました。レポート
は、後日ということで。単なる予告編ですみません。さあ、明日は、NHK金曜時代劇「山田風太郎 からくり事件帖」だ。
2001.9.24(月・祝) 「ふしぎな異邦人」
・土曜日は、帰省中の岩井大兄とあっちゃんで、「金富士」を振り出しに転々。あっちゃんは、しきりに
最近面白い本がないというなり。『猿の惑星』の結末を聞くが、それって××に忠実というやつじゃ。
昨日、今日は、やけくそ気味に仕事。
・ピール・バイヤール『アクロイドを殺したのはだれか』(筑摩書房)。フランスの文学・精神分析理論家が、彼の名作の犯人は別にいるということを解き明かしたという触れ込みの長編評論。読みやすくあってほしい。
・NHK金曜時代劇「山田風太郎 からくり事件帖」は、今週金曜日から放映らしい。
・山風リストとカウントダウンに出版芸術社『忍法創世記』、光文社文庫『戦艦陸奥』(山田風太郎ミステリー傑作選5〜戦争編)、『天国荘奇譚』((山田風太郎ミステリー傑作選6〜ユーモア編)の内容を反映。「ふじきな異邦人」を追加。
・本の雑誌10月号に「風太郎研究会緊急追悼対談/山田風太郎は不滅である!」(北原尚彦×日下三蔵)2P
どうも、復刊が進んでいるだけに全集刊行は難しいらしい。
・『戦艦陸奥』縄田一男解説は読み応えあり。
「戦艦呂号99戦艦陸奥」が『戦中派不戦日記』の3月10日の大空襲のくだり(講談社文庫版の橋本治解説も引用している−「ねえ……また……きっといいこともあるよ」−)という部分の作品化であることを指摘しているが、実は冒頭の文章も、ほぼ3月10日の記述と、ほぼ同じである。一部を吹き出してみる。
【戦中派不戦日記 3.10】(昭和20年)
「電柱はなお赤い炎となり、樹々は黒い杭となり、崩れ落ちた黒い柱のあいだからガス管がポッポッと青い火を飛ばし、水道は水を吹き上げ、そして、形容し難い茫漠感をひろげている風景を、縦に、横に、斜めに、上に、下に、曲りくねり、うねり去り、ぶら下がり、乱れ伏している黒い電線の曲線。」
【戦艦呂号99浮上せず】(昭和28年)
「電柱はまだ赤い炎の柱となり、樹々は黒い杭となり、くずれおちた石のあいだからは、ガス管がぽッぽッと青い火をとばし、水道はむなしく水をふきあげ、そして形容もしがたい茫漠感をひろげている風景を、縦に、横に、斜めに、上に、下に、まがりくねり、うねり去り、ぶら下がり、乱れ伏している電線が截っていた。」
漢字を開いているほかは、ほぼ同じである。既に作家デヴュー前にして、そのまま小説に引用できる文体を確立していたことにも驚くが、『戦中派不戦日記』は、作者において何度も読み返された作品に還流されていった原点なのだろう、とも思わせられる。
・おげまるさん発見に係る「ふしぎな異邦人」(昭和32年平凡別冊11月号)も、戦争編に収録されて違和感のない話だと思われるが、同作品には、「ヨコハマ・横浜」という作者の言葉が付されており、昭和20年6月3日の深夜、横浜駅を通ったことを回想する。6月3日の関連部分を抜くと、
【戦中派不戦日記 6.3】
「月はまだ昇らず、ただ闇黒の中に、全市灰燼となった残骸が、赤い火をチロチロと、不知火の大海原のように燃えつつ拡っている。棒杭のような無数の黒い柱が蛇の肌みたいに光って、何たる凄惨、陰刻、粛殺の景か。」
【ヨコハマ・横浜】
「月はなく、暗黒の中に全市灰燼となった残骸が、赤い火をチロチロと−不知火の大海原のごとくにもえひろがっている。棒杭みたいな黒い樹が、蛇の肌のようにひかって、凄惨といおうか粛殺といおうか、この世の地獄といってもいい光景であった。
そして私は、いまのヨコハマを考える。明るく華やかな元町、美しい汽船がひしめいている波止場の風景。
あれから十二年たった。私はその歳月をしみじみと思わざるを得ないのである。」
またしても、「戦中派不戦日記」が、作品の原点になっている。それで、話は、「ふしぎな異邦人」に移るのだが。
2001.9.20(木) 世界で一番
・本日も残業で12時すぎ帰宅。来週、夏休み取らせてくれえ。
・こしぬまさん情報。山田風太郎追悼文を朝日新聞から出ている無料本「一冊の本」9月号に5人ほど書いているようです。
・NHKの金曜時代劇で山風の「警視庁草紙」原作のドラマをやる予定だったはずなのだが、NHKのサイトを見ても、いつからと書いていない。テロ事件の影響で、今やっている宮部みやき原作のドラマが1週延びたせいなのか。
・石川喬司の本に、世界で一番短い○○小説というのがあって、世界で1番短いSFは、筒井康隆の「転落」(タイトル違うな)だったかな。これは4行くらいしかない。
・世界で一番短い推理小説は、
「おまえが犯人だ」
「そうです」
というものだというのが定説だったが、ある男がそれの改良型を考案。
「俺が犯人だ」
というもの。完結ながら、まるでギリシャ悲劇のようではないか。
で、世界で一番短い時代小説は何だろう、という話になって飛び出たのが、これ。
「殿っ!」
・ネタなし更新失礼しましたー。
2001.9.17(月) ジャーロ
・元上司の御母堂の通夜へ行く。
・「ジャーロ5」購入。森英俊氏の「Net Detective」に当サイトが紹介されている。これだけ詳細な紹介、かつ、お褒めがあったのは初めてのことなので、何度も読み返したり。「少年探偵小説の部屋」のおげまるさんの業績についても、バッチリ紹介されている。ありがとうございました。
同誌巻末に載っている野村宏平氏の「ミステリーファンのための古書店ガイド」が圧巻。野村さんのサイトの情報ともども、永久保存版にしたい。しかし、古本屋廻りで「ジャーロ」を持って歩くのは、やや、つらそうだ。
・山風追悼
○「文学界10月号」(こしぬまさんに教えていただいたもの)
金井美恵子「追悼 山田風太郎覚書」
「いずれにせよ、山田風太郎は山田風太郎として、魂や真実やあり有べき、しかし自分ととは切り離されている本当の文学へのルサンチマンを語ることもなく(持っていないのだから)、自己の「ホラフキ」多き人生を癒してくれる土着的自然に帰ることもなく、歴史的街道を行くこともなく、語り続け書きつづけ語り終わりました」
○「文藝春秋10月号」
山田啓子「夫・山田風太郎の臨終まで」
「七月二十八日。午後四時の面会時間が終わり、「夜七時にもう一度来るからね」と呼びかけると、主人はゆっくりと目だけを上下させて頷きました。/容態が急変したとの報せを受けたのは、それからわずか一時間後。再び病室に駆けつけると、モニターが示す血圧がみるみる下がっていき、やがて平らになった。苦しむ様子もなく、本当に眠るような死でした。」
○「ビジネスジャンプ9/15」
「追悼 山田風太郎先生 / 十兵衛 虎之巻」(構成・文/鎌倉三次)
過去エッセイ等からの語録(1p)
2001.9.16(日)
・ドタバタしている間に、更新の間がすっかり御無沙汰してしまいました。掲示板の方も、間が空いてすみません。さて、何から行こう。
・アメリカのテロ関係、関つぁんは、乗っ取られて墜落したNewark→SF便は二週間前に乗っていたかも知れなかった、というったくらいで西海岸は平穏無事とのこと、です。会社で不況につき、5%給料カットの方が皆アメリカの悲劇だ、と騒いでいる由。無事で何より。
・掲示板の戸田さんの書込みによると、『ジャーロ』で拙サイトが紹介された模様。まだ見ておりませぬ。今日、買ってこよう。
・『忍法創世記』面白し。なんで、これが封印されていたの?という感じ。おげまるさんが書いているように、多少登場人物の設定で計算違いがあったような気配もあるが、特にラスト50pは、怒濤の展開を見せます。文章も改めてうまいと感じます。
・土曜日は、結婚式→知人宅の2次会。新郎は、わしより1つ下で、30半ばをすぎて看護学校に通ったという異色の経歴の持ち主。20代の嫁さんとは、許せんなあ。お久しぶりの山猫シスターズのお会いし、是非、早く披露宴でテルミンを弾かせろと強要。S山さん、遅くまで騒いですみませんでした。
・日曜日は、高橋@梅丘来襲。初対面のもう一人の方が風太郎作品を絶賛していて、いい気分。文章は、三島由紀夫よりうまいとおっしゃっていたが、そこまでいうか。高橋は、サイト準備をしているらしい。
と、とりあえず、ここまで近況報告ということで。
2001.9.9(日) 『忍法創世記』
・つ、ついに、出たっ。山田風太郎『忍法創世記』(1700円/出版芸術社)。他にもネタはあれども、本日はこれだけ。さあ、読むぞ−。
・当掲示板「テルミン」スレッドが遂に100書込み到達。慶賀、慶賀。このシステム、どこまで書き込めるのかな。
2001.9.6(木) 貸本小説
・『貸本小説』 末永昭二(アスペクト/01.9)
文学史やミステリ史は、いってみれば傑作中心の歴史である。そこでは、傑作あるいは「運動」がシーンに与えた状況が還元的に語られ、歴史のダイナミズムは、つまるところ作品傾向の興亡として語られる。江戸川乱歩−中島河太郎を正系とする日本のミステリ史もその例外ではない。文学史が傑作中心の歴史となるのは、「歴史学」が、権力の推移を中心に時系列的に記述したものであることを考えれば、不思議ではない。文学史もミステリ史も、「正統的」な「歴史学」を模倣しているといえるのだ。
しかし、本来的なミステリ史なるものが単なる傑作史で事足りないのはいうまでもない。ミステリは大衆向けの小説の王道であり続けたジャンルであり、大量消費財の一種でもあった。ミステリの全体像を歴史的に語ろうとすれば、傑作中心でないミステリ史、ミステリという装置を欲した大衆読者の欲動のありようや精神史を示すようなミステリ史、出版物(消費財)という観点からのミステリ史もまた必要だろう。
と、いささか大上段にふりかぶったが、本書は、もう一つのミステリ史・大衆小説史の可能性へ向けて瓢然と殴り込みをかけたといった感じを抱かせる快作である。
貸本小説は、昭和30年代に隆盛を誇った貸本店に並べられることを目的に制作された本。新刊の補充とともに、どんどん処分されたために、現物が残っていない。作者も読者も「読んで楽しんで忘れる」本だと考えており、評論家は見向きもしなかった。たった40年ほど前の本なのに、記録もほとんどなく、もはや研究することも困難な作品群。忘れさられた大衆小説という意味では、19世紀の英国のニューゲイト・ノベルやアメリカのパルプマガジンに通じるものがありそうだ。
未知の大地に咲き乱れる異貌の作品紹介が実に楽しい。ミステリ・SFでは、城戸禮、宮本幹也、九鬼紫郎、園生義人、出ました栗田信、野村敏雄、保篠龍緒、時代小説では、井上孝や風巻舷一の奇想、現代小説では、若山三郎、三橋一夫等等。これまでほとんどまとまって触れられることのなかった作家の作品を広く渉猟した上での、手際良くユーモラスかつ、勘所を押さえた紹介が罪つくり。時代の変遷ととともに瞬時に色褪せてしまう部分も、貸本小説愛好文脈においては、大きな楽しみどころだ。インタヴューやリサーチに基づく当時の知られざる出版事情や作家の素顔の紹介も、行き届いている。貸本作家の多くが投稿小説の受賞歴があったり、基本修業を積んだ人たちであるのも、意外だった。
個人的に眼からウロコだったのは、園尾義人の作品に関する鋭い考察で、「極端な人間機械論者」という作家の位置づけは、園尾作品に関して感じた(といっても2冊しか読んでないが)一種の「ヤバさ」が明解に解きほぐされたように思った。駄菓子屋の甘菓子から劇物を取り出したような華麗なる手品。
著者の渉猟が次にどこへ向かうのかはわからないが、また再び見たこともない世界の水先案内人になってくれるに違いない。
2001.9.4(火)
・往復葉書をいただき驚く。9月26日に東京で開催される「山田風太郎さんお別れの会」の案内。呼びかけ人が佐野洋・原田裕の両氏、幹事社が講談社・光文社で、会費1万円。関係者の偲ぶ会のようなのだが、なぜワシに声がかかる?どなたかのご配慮だと思うのだが・・。厚かましくも、これは行く一手。
・山風リストに関し、法水さんから、「伊賀の散歩者」がちくま文庫の『乱歩の幻影』(日下三蔵編)に入っており、リスト中の『乱歩(下)』は現在入手不可らしいとのこと。また、講談社文庫の『くノ一忍法帖』が『くの一忍法帖』になっているとの指摘がありました。
『乱歩の幻影』は押さえておりましたが、こちらも入れておきますね。「くノ一」に関しては、「くノ一紅騎兵」も「くノ一地獄変」も「くの一」になっておりました。「女」という漢字からつくられた言葉だから、これは「くノ一」でないとダメですね。御指摘感謝、訂正しておきます。
・ちよっと前になるけど、芳林文庫から届いた本。ヘルマン・ランドン『階下の密室』(大正14/博文館探偵傑作叢書30)、バウチャー『ゴルゴダの七』。前者は、外れても同じくらい嬉しかったであろう5桁の本。これで密室物でなかったら、枕が涙で浮くところだったが、目次を見る限り、密室物のような感じ。ヘルマン・ランドンって誰?と、ロバート・エイデイの本に当たると、2つの長編が、密室物らしい。『階下の密室』には、原題も解説もないのだが、登場人物を見る限り、密室物に認定されているどちらの長編でもないようだ。スカだったらと思うと、当分読めない。
2001.9.2(日) 「貸本小説」
・図書新聞9.1日号
平岡正明 追悼 山田風太郎 「巨匠死して俺のキンタマが痛い」
「肝腎なところで生死をすててかかっているから、その作品には明るい虚無がある。自分の一生は冗談であるといった爽快さがある。」
・最近、停滞気味にもかわらず、90000万アクセスを突破しました。ありがとうこざいます。10万アクセスも今年中に到達しそうになってきました。10万に達したら、記念に紙の冊子(「密室系バラエティブック」とか)を出そうかなと無謀なことを考えているのだが、構想は少しはあれど原稿はまだなにもない。アイデア・原稿募集中。
・本日仕事に出かけたら、夏を惜しむ間もなく、外はもう秋の風。空は青いのに。
・各所で話題の末永昭二「貸本小説」(アスペクト)をリーブルなにわで購入。もぐもちさんのところで書影を見ていたので、すぐにわかったけれど、これは装幀だけでも大賞ものですね。装画(堂昌一)は、まんま貸本小説のエレガンスを醸しだし、背とカバーのタイトルも貸本とそっくり。おまけに本文用紙には、時間が立つと貸本そっくりに変色する紙を使っているという念の入り用。真空保存用にもう一冊買っておきたいくらいだ。本文は、まだ少しだけど、面白そうな貸本作家の作品の紹介がずらり並んでいます。面白い小説の話に眼がない方は必携の本と思います。弘栄堂では、「小説」のコーナーに並んでました。