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大阪フィルハーモニー交響楽団
第336回定期演奏会

日時
2000年3月10日(金)午後7:00開演
場所
フェスティバルホール
演奏
大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮
朝比奈隆
曲目
1.ベートーベン…交響曲第2番 ニ長調
2.ベートーベン…交響曲第6番 ヘ長調「田園」
座席
Rサイド1階D列2番(A席)

レッツ エンジョイ 花粉症

 やっと最近暖かくなって、春の来訪を感じられる季節になってきました。
 で、へーくしょい。花粉症。体調はどうですか? 私の場合、花粉症自体は大したことがないのですが、体調をくずしてしまって万全の体勢というわけにはいきませんでした。季節の変わり目、体にはお互い気を付けましょう。

ベートーベンチクルス

 今日の定期公演ではベートーベンの交響曲第2番と第6番をするわけですが、シンフォニーホールで行う「朝比奈隆の軌跡2000」での
第4、5番(5月10日)
第1、3番(7月 8日)
第7、8番(9月24日)
 それにフェスティバルホールで行う
・第9番(12月29、30日)
 を加えて交響曲チクルスとなります。

 会場に足を踏み入れると満員の観客。それにNHKのテレビクルー、なにより指揮台横にある2本のでっかいスタンドマイクはたぶんエクストンの録音でしょう。会場にいつもと違う興奮がありました。(4月30日にNHK教育で放送予定とのこと)
 大フィルのメンバーがそろうと、コンマスの登場。今日はルーシーの方じゃなくてマリオの方だ。客席から起こった拍手に応えてから音合わせに入った。
 照明が落ち、会場がいよいよ静まると朝比奈御大が登場した。盛大な拍手。しっかりとした足取りで壇上に上がります。ここにいるすべての人間の視線がひとりの男の一挙一動に集まりました。

交響曲第2番 ニ長調

 オケの編成は管楽器をだぶらせないものでしたが、響きに重量感があり、非常に恰幅のある演奏でした。なにより大きな特徴は枯れて淡々と曲が進行するのではなく、ピリと神経が張り詰めていて艶やかな音色をしていたことです。“無骨”と評される朝比奈の音ですが、今日は彼にしては女性的な滑らかさを持っていました。
 しかしスケールが小さくなることは全くなく。この曲が「エロイカ」以前のベートーベン初期の作品としてではなく、激しい情熱がこもった大シンフォニーとして演奏していました。
 非常に聞き応えたっぷりであった名演です。

 曲が終わると余韻を味わってから大きな拍手が起こりました。
 激しい情熱を込めながら、優しい気持ちを忘れない(特に第2楽章がそうである)この曲はベートーベンの交響曲でも屈指のものです。シューベルトが彼のシンフォニーのうち一番好きだと語った理由がよく解ります。
 ベートーベンの1番と2番なんか聞いたこともない、と言う人もそんなことを言わず、一度は聞いてみて欲しいと思う。これは素晴らしい名曲です。

 それにしても前半が終わって切に思ったことがあります、
「もうお腹いっぱい」

交響曲第6番 ヘ長調「田園」

 1番から5番に向かって段々と内面的激しさを増していったベートーベンの交響曲が5番でひとつの完成を見たので、ほっと肩の荷が下りたように穏やかな曲が生まれました。
 それが「パストラーレ」です。よく言う「偶数番号の交響曲は穏やかで女性的だ」はどうも2、4、8番を聞く限り当てはまらないような気がします。
 しかし6番は違うと思います。神への感謝と自然への慈愛に満ちたこの曲は演奏によっては宇宙的な響きを放つことがあります。特に終楽章が交響曲史上類を見ない穏やかで優しい曲想で締めくくる形となっているのが大きな特徴です。(まあ先にハイドンがやってそうですが)

 演奏中ちょっとしたハプニングがあって、朝比奈が第2楽章で指揮棒をすっ飛ばしてしまった。でも素早くビオラの譜面台にあった予備の棒を取り上げて事なきを得ました。ここ最近御大は指揮棒をよく落としてしてしまう。スケルツォの前に落ちていた指揮棒をコンマスがさっと拾って、指揮者の譜面台に戻していました。

 で、内容の方ですが、悠久の時の流れを感じさせるものでした。特に第2楽章と終楽章ではいつまでもこの響きの中に浸っていたいと思わせるもので、終わりに近付くと「え〜、もう終わるの?」と感じてしまうほどでした。
 オケの方も第2楽章のチェロと第4楽章のティンパニ(2番と違ってオッチャンの方でした)それに終楽章での弦セクション全体が特筆すべきものでした。終楽章での感慨の深さは弦に担うところが大でした。
 一方管楽器のデリカシーのなさはいったいどうしたのでしょう? こちらの方はまったく感心することがありませんでした。

おわりに

 田園での最後の和音が鳴ると同時に携帯電話が鳴るというハプニングがあり、ややばらけた感じの拍手が起こりました。
 しかし次第に盛大なものとなり、御大も再三にわたってステージに呼び出されました。そしてオケが解散すると演奏会の幕が降りました。

 今日は一般参賀はなしでした。
 田園における弦セッションの集中度が非常に良く(特にコントラバス、第2ヴァイオリン、チェロ)終楽章では素晴らしいほどでした。それでもなぜか感動することができませんでした。体調のせいかな?
 ちょっとしたら録音で聞くと印象も変わるかもしれません。
 でも2番は違います。今日の演奏は大変素晴らしいものだったと言えます。私はこれが聞けただけで満足です。

 総じて、意外な伏兵にやられた演奏会でした。

 さて、次回(というより明後日)はバッハのマタイ受難曲です。休憩なしで3時間半かかるこの大曲。ひとつ気合いを入れて聞きに行ってきます。(実際はカットするでしょうけど) それでも大変楽しみです。


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