富士 - 特別急行第2列車 東へ -

継走

門司での併結作業 〔はやぶさ〕編成が推進で近づく

定刻18:58からわずかに遅れて門司に着いた。ここで熊本からの42列車〔はやぶさ〕と連結し、両者2列車として出発(19:15)する。

〔はやぶさ〕はすでに交代したEF81に牽かれて門司港方の引上げ線へ移動しており、〔富士〕のED76が去ったあとに推進で入線してくる。この作業のため停車時間は〔富士〕で17分、〔はやぶさ〕は実に29分も取られている。

客車列車の運転は電車や気動車に比べ機関車の解放・連結というひと手間がかかるわけで、これが衰退を招いた一因でもある。昨今の客車イベント列車では機関車を前後に連結した「プッシュプル運転」が顕著だが、これは折り返し駅での機回しが(時間・空間・人員的に)できないがための措置だ。

カメラと視線の中、誘導の係員に従って〔はやぶさ〕はスハネフ15を前面に近づいてきた。3m手前で停止、動き出して1m手前で停止、また動いて連結。それからブレーキ管とジャンパ線の接続、幌と渡り板の接続、すべて手作業である。

まがりなりにも12両という長編成になった2列車は、緩やかに加速して関門トンネルに向かう。ここは電化区間の境目「交直セクション」で、電車ではいったん室内灯が消えることがある。しかしブルトレ客車は発電機による電源供給だから、セクションは関係しない。気動車による直通も2005年で中止されているため、この列車が電気の消えない唯一の存在となった。

5分でトンネル本州側(彦島)へ、すぐに鉄橋を渡り本州本島。そして下関総合車両センターをながめ、下関(19:22)に着いた。EF81の役目はもう終わり、ここから(19:27発)EF66が長駆東京まで担当する。JR九州の車掌氏もここで下車する。

EF81→EF66の交換も〔はやぶさ・富士〕の大事なイベントだが、だいぶ後方にいることだし、見に行くのはやめにした。かわりに今朝の下り列車での機関車交換をご覧にいれたい。


1列車〔富士・はやぶさ〕下関到着
[D200, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D]
機回し線を回送中のEF81 410 (2008-12)
下関到着と同時に乗客が飛び出して
EF81連結 一連の作業にに視線が集まる

新山口から新幹線・新下関経由で下関に着くと、ローズピンクのEF81が門司方から側線を登ってきた。赤いJRマークはJR九州の400番台(411号機)、これから関門間の〔はやぶさ・富士〕を牽引する。いったん幡生方へ引き上げて、下り線側の中線へ転線し、機待ち線に入った。

一番東側の「3・4番のりば」は、九州への直通列車が使用していた。しかしそのほとんどが消えた現在では、同列車に一回使われるのみで、あとは山陽・山陰本線からの到着列車のおりばとなる。ホーム中央の売店は、同列車のためだけにわずかな時間開けられる。

門司側先端へ移動する。作業員が出てくるのと同刻、EF66 46の姿が見えた。1列車〔はやぶさ・富士〕の到着である。

停車してドアが開くや否や、1・2号車から乗客が一斉に飛び出し先頭部と連結部に集まる。それを待つでもなく、EF66は直ちに切り離され引き上げていった。かわってEF81が係員に誘導されて接近する。こうして手旗で誘導される光景を間近に見る機会も、めっきり減ってしまった。

1985年3月、長期債務にあえぐ国鉄ではあったが、その一方でブルートレインはすくなくとも外見上は絶頂期を迎えていた。実際にはすでに乗客の逸走がはじまっていたのだが……。80年代前半からの「ブルトレ・ブーム」に応えるかのように、1981年にテールサインのイラストマーク化、1984年には九州内ブルトレ牽引機のヘッドマーク復活が行われた。

そして「旅のゆとり」を演出するロビーカーと、その増結を名目としたEF66のブルトレ牽引抜擢。他地区のヘッドマークも復活、新列車は新調したばかりか、臨時「カートレイン」や、関門間を受け持つEF30・81にまでもマークを掲出するようになった。日本鉄道の看板である新幹線と並んで、とても大事にされていた様子がうかがえる。分割民営化がなければ、せめて上下分離方式で総合的に運行できていれば……と考えるのは想像が過ぎるだろうか。

関門の列車牽引は、EF30の去った後はEF81の独擅場であったが、それは同時に活躍の場が列車本数に依存するということも意味する。星が一つずつ減るごとに仕業も両数も減り、いつしかマークも省略されるようになった。所属する大分車両センターへの回送を兼ねて、下り〔彗星〕と上り〔富士〕が大分まで足を伸ばしてこの区間はマークをつけたが、それが最後となった。現在JR九州に在籍する2両はJR貨物の門司機関区に常駐し、検査も委託している。JR貨物機もEH500の投入によって活躍場所は狭まっており、この先予断を許さない。

トンネルへ向かう列車を見届けて普通電車に乗り込む。門司でも機関車の交換と、〔富士〕〔はやぶさ〕の分割が行われるため、特にあとから発車する〔富士〕は24分も停車する。門司で普通電車に接続、さらに小倉で特急〔ソニック〕へ乗り継ぐと、杵築には30分も先着できる。〔はやぶさ〕にしても、新幹線に乗れば博多からかなり先回りできる。