去り行く白鳥を追って

さらに白い世界へ

2月11日。今日は、新潟から車に乗って北へ向かう。

朝、新潟では時折晴れ間も見られたが、坂町を過ぎる頃から、雪がはげしくなってきた。平野部は特に風も強い。そんななか、車を村上の北、笹川へ進める。

きれいに除雪されていた道路が、村上の市街地を出ると途端に雪道にかわった。ここでは風が強くないのが幸いだが、一面真っ白になってきた。カメラの露出や測距にも少なからず影響が出てくる。

笹川流れの桑川(くわがわ)まで行く時間が少なく、行ってもこの雪では何も見えないだろう。間島(まじま)よりすこし北よりの線路わきに車を止め、踏切で列車を待った。一段と強くなった雪の中に3つのライトが光った。上り〔白鳥〕約10分遅れ。

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雪化粧して北へ向かう〔いなほ3号〕 (間島〜越後早川)
[Nikon F5, AF Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF), RHPIII]

新潟へ戻りながら何ヶ所か撮影をしたが、夕方の下り〔白鳥〕は遅れたのか捉えられなかった。

日が暮れて〔いなほ9号〕で酒田へ向かう。複線の北陸・信越線と違い、単線・複線が入り交じる羽越線はダイヤ乱れの影響が大きい。今回も少しずつ遅れだした列車は、山形県に入るとさらに歩みが遅くなった。強風のため速度が15km/hに制限され、暗闇を手探りで歩むように進む列車に雹まじりの氷雪が降りかかる。


2月12日の朝、酒田から村上ゆきの気動車に乗って2駅、砂越(さごし)で下車。ここ庄内平野は鳥海山の南麓にあり、晴れていればその姿が大きく見られるはずなのだが、今日も雪、雪、雪……。

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雪煙を上げて快走〔いなほ6号〕 (東酒田〜砂越)
[Nikon F5, AF Nikkor 50mm F1.4D, RHPIII]

風が強い。庄内付近は「悪風」とまでいわれる強風地帯だ。集落の中は建物と立ち木で守られているが、一歩外に出ると地吹雪ともいえる猛烈な風が襲いかかる。立っているのもやっとだ。そんな中を列車は健気にも走り続けている。

日本海側でも、この地方まで来ると気温が低く、雪の粒子が非常に細かい。軽い雪は列車の風圧で舞い上がり、車体にまとわりつく。絵的に美しいものだが、見ているぶんには良くても撮るには大変だ。線路ぎわにいると一瞬前が見えなくなる。

〔白鳥〕は砂越駅のすぐ近くで待つことにした。吹雪は止んだが、列車は来ない。5分、10分……冬場ならこれくらい遅れるのはまあ普通か。25分、30分……だんだん不安になってきた。50分……酒田へ戻るつもりだった下りの列車が来てしまった。

諦めて戻るかという頃、地元の人から偶然「68分遅れ」の情報を得た。すぐではないか! あわてて撮影可能な場所に戻ると、ほどなくカーブの向こうからボンネットの姿が現れた。11両に増結されているが、満員のようだ。

あとで知ったが、この遅れの原因は秋田駅構内でのポイント故障らしい。一運用2,000kmという過酷な〔白鳥〕の旅では車両故障もたびたびといい、また冬場は大雪による運休も少なくないので気をもんだが、その日は約1時間遅れで大阪まで到達したという。

上り〔白鳥〕の画像はこのあと乗車記に載せています