2001年コクテツの旅

宮崎は遠すぎて - 鹿児島本線・特急〔にちりん〕 -

東京や大阪から飛行機で行くぶんには福岡も鹿児島も宮崎も関係ないが、鉄道で行くには宮崎はあまりに遠すぎる。東京からの直通列車が消えて久しく、熊本からの急行〔えびの〕も高速バスに負けた。そしてまもなく福岡からも切り離される。〔有明〕の1時間に1本が小倉へ延長されるのと引き換えに、〔にちりん〕の博多〜小倉を廃止することが、先日発表された2001年3月ダイヤ改正の概要で明らかになった。


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博多駅に出入りする電車も、いつしかJR化以降の
新製車で占められるようになった

山陽新幹線が博多に到達してから、博多-小倉-大分-宮崎-西鹿児島と東九州をまわっていた〔にちりん〕は次第に小倉始発に変更された。「増備なき増発」への対処もあろうし、博多-小倉間は新幹線に乗ってほしいという意向もあったのではないか。

ところが国鉄分割民営化で事情は一変、新幹線と在来線で会社が異なることになったので、両者は競争相手になったのである。新生JR九州は次々と〔にちりん〕を博多へ延長、自由席特急料金を下げるなどの施策に出た。

相手は新幹線だけではない。九州北部に広くネットワークを張る西鉄高速バスとJRとの競争も熾烈だ。特に福岡 (天神)〜小倉「福北ライン」は、ノンストップ便、福岡空港連絡も合わせ5〜10分間隔で走っている。福岡側ターミナルの立地が良く、運賃も手頃 (2000年には運賃を1,550円→1,000円に値下げ) とあって利用を伸ばしてきた。さらに大分自動車道の開通で福岡 (天神)〜大分を直行するバスが走り出し、鉄道の優位性が揺らいできた。

これらに対抗すべく、JR九州は振子電車「ソニック」883系を投入。博多〜大分を2時間余で結んだ。好みの別れるであろうかなり奇抜なエクステリア・インテリアデザインだが、スピードは武器であり、好評につき増備が繰り返された。2000年3月からは「白いかもめ」885系を使った〔ソニック〕も登場している。

一方で宮崎方面への直通は先細りが続く。空路もあるところで6時間の所要では勝負にならず、隣県、特に大分県との流動が少ないとあって、宮崎地区はむしろ宮崎空港を軸とする県内交通に注力していると見た。1998年には南宮崎〜西鹿児島を廃止して〔きりしま〕に立て替え、2000年には一部列車の佐伯〜延岡を廃止し、延岡以南は〔ひゅうが〕を新設した。「つばめ型」の〔にちりんシーガイア〕〔ドリームにちりん〕もハイパーサルーンに変わった。


国鉄時代の車である485系「レッドエクスプレス」は改正ごとに勢力を狭め、1998年に鹿児島本線、2000年に長崎・佐世保線から撤退、〔にちりん〕4往復に残るのみとなった。そして2001年3月で九州西部から去る。

485系の「国鉄色」は次の全般検査までの3〜4年間、この色で走るという話だが、「ハイパーサルーン」783系も主力から追われる状況を見ていると、なんとなくそれより前に用途廃車ではないかという気がする。

とにかく、博多〜西小倉間でもうすぐ485系が見られなくなるのは確かだから、それを見届けることにした。

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[上から]485系「レッドエクスプレス」・783系「ハイパーサルーン」・
811系「三井グリーンランド」・813系・883系「ソニック」 (赤間〜東郷)

遠賀川〜海老津。背景はうるさくないので目をつけたものの、車窓から見ても線路わきの枯れ草が明らかに邪魔なので、今回は没。海老津〜教育大前でトンネルを抜けると北九州圏から福岡圏に移る。この付近は小倉〜博多間の一つのヤマで、駅から離れており今回は見送るが、一度は足を運んでおきたいと思う場所だ。

赤間から西方に歩いて15分、堤防を走る道路脇に足場を構えてみた。このあたりはすっかり福岡のベッドタウンで、周囲に建物が増えつつある。好適地はありそうでなかなかない。

線路に並行する道路から横顔を狙う。特急電車、とくに「ソニック」は猛然と走り込んでくる。気迫に押されないようにシャッターを切った。今日見た485系はみな「レッドエクスプレス」。国鉄色はどこにいるのか?