2001年コクテツの旅
もう一つの「山登り」 - 瀬野みどり坂 -
「スカイレール」空中を行く (みどり中街〜みどり中央) |
瀬野駅。国鉄時代、セノハチの補機が集う瀬野機関区が、駅の裏手にあった。いまは整地され、そこに1998年新しい「登山鉄道」が開業した。「みどり坂スカイレール」である。
ここは広島市の東端。広島まで電車で20分のこの地にベッドタウンが創り出された。しかし周囲は山が迫っている。ニュータウンが山に建設されるのは珍しくない。が、毎日坂を登り降りするのは大変だ。
こんなときはバス路線を開設するのが常識的だろう。また、エスカレーターやエレベーターを使ったりするケースもある。
ここで採用されたのは、ロープウェイとモノレールのハイブリッド形態であるこのシステムである。基本的には車両 (搬器) がロープにつかまって移動するのだが、車両はロープでなく鋼製のガイドウェイにぶらさがっている。また、駅ではロープを放し、ガイドウェイ下部に設けられたリニアモーターと車両のリアクションプレートを使って加減速を行う。さらに折返しのための転回では、チェーンのフックに車両を引っかけて移動。3種類の動力を使った非常にユニークなシステムで、1999年鉄道友の会ローレル賞に輝いた。
[左]駅部のガイドウェイに設置されているリニアモーター [右]瀬野の町を背に車両が急勾配を上ってきた (みどり中街〜みどり中央) |
JR瀬野駅に隣接するみどり口駅。きっぷを買い、自動改札に投入してホームに上がると、ホームドアが開いた。あとで気がついたが、ホームにカメラを設置して、客が来たら開けるようである。発車時刻になっており、ほどなく発進。前後動がけっこう激しくカメラを窓ガラスにぶつけそうになる。小型ロープウェイのゴンドラ並みの室内だが、つり革があるのが目新しい。通勤車両なのでロープウェイより余裕のあるモノレール式を選択したのだろう。
途中のみどり坂で、頂上発の車両と並ぶ。搬路自体は一方通行のループを束ねた複線である。
5分で終点 みどり中央に到着。高低差160m、はるかに瀬野・みどり口の駅と町が見下ろせる。その先には山の斜面に田畑が連なり、こちらの目線と同じくらいの高さまで延々と登っている。あれを歩いていくのは大変だよね。
運賃は150円均一。これだけの高低差を登り降りしていることを考えると破格の設定だ。昼間は10分間隔ということになっているが、どうやらどの駅にも乗客がいない場合は運休するらしい。
広島に戻り、駅前に出入りする路面電車を眺め一服してから、再び新幹線ホームへ。あとは〔のぞみ〕で東京まで一直線。
参考: 鉄道ジャーナル2001年2月号「21世紀鉄道図鑑」,鉄道ジャーナル社