Northwind Passasge - 北風紀行 -

海峡 - 海峡線 -


三厩 8:06-(330D)-8:22 津軽二股…津軽今別 10:02-(3123:海峡3号)-11:03 木古内
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「ここからJR北海道」と主張する駅標がホームに立つ 新駅にはめずらしい構内踏切に、消火栓(赤い箱)が見える

津軽今別駅はもともと非常用の緊急停車場および保線基地として建設された。

車両火災などが発生した場合、通常列車は緊急停車するのだが、北陸トンネルの惨事を機に、トンネル内での火災発生時は出口まで走りぬけることが決められた。車両の客室内に1つはある「非常停止ボタン」に「トンネル内で火災の場合には使用しないでください」と書いてあるのもこのため。しかし50kmを超えかつ勾配の続く青函トンネルでは、走りぬけられない可能性、延焼の危険が高くなってしまう。そこでトンネル内に2ヶ所、地上部に2ヶ所の非常停車・避難および消火作業のためのエリア「定点」が設置された。定点はトンネル内の2ヶ所で、地上部のは信号所という扱いだが、役割は同じようだ。

1988年の開業直前にトンネル内の2ヶ所は竜飛海底、吉岡海底の両駅となり、地上の2ヶ所は津軽今別と知内(しりうち) (1990年開業) の両駅となった。

「道の駅いまべつ」が建つ津軽二股駅すぐ脇、シェルターに覆われた階段を登ると、対向式のホームが2面。青森方面ゆきのホームへ行くには線路を横断するため、踏切がある。新幹線規格の線路にはありえない施設だ。(知内は跨線橋) 新幹線開業時に「奥津軽」駅の設置が決定しており、たぶんこの場所がそうなるのだろう。線路わきには消火栓が多数並んでおり、この「駅」の持つ本来の役割を認識させられる。もちろん、こんなものは使われないに越したことはない。列車ダイヤ上も、先行列車が定点を通過するまで後続列車は進入しない。

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「ノースレインボーエクスプレス」がED79に牽かれて津軽今別を通過
[Nikon F5, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D (IF), RDPIII]

この日を含む連休中、函館から弘前への桜観光列車、その名も〔さくらエクスプレス〕がJR北海道のジョイフルトレイン「ノースレインボーエクスプレス」で走った。ディーゼルカーだからどこでも自走は可能だが、津軽海峡線内は電気機関車ED79に牽引されている。トンネル内での安全確保と、海峡線内の運転は専用ATC搭載車に限られることによるのだろう。


10時を前に乗客が集まりだした。津軽線は昼過ぎまで列車がないので、海峡線が蟹田・青森方面への足になる。ただ津軽二股とかならずしも分担しているわけではない。

開業14年もたって津軽海峡線を初乗。通常は4〜5両という編成の〔海峡〕も、ゴールデンウィークとあって列車によっては9〜12両の大増結。青森へゆく客を乗せて〔海峡2号〕が発車して間もなく、ドラえもん塗装のED79に牽かれた客車が到着。九州筑豊のレッドエクスプレスがまもなく消え、昼行客車列車は遂にこの快速〔海峡〕だけになる。

〔海峡3号〕は14系、この日は9両。暦の上では平日で、本州から連絡する優等列車もないのでちょっと持て余し気味。一番前で乗ったら、自由席禁煙「座席」車はずーっと後ろだった。ドラえもんの声に案内されて、列車は一路青函トンネルへ。

短いトンネルをいくつか抜けて、他と明らかに違う立派なトンネルポータルが見えると、とたんに窓ガラスが曇る。青函トンネルだ。ものすごい湿気でガラスの外は曇りを通り越し、水滴が流れるほど。その外を蛍光灯がひっきりなしに飛び去る。かと思えば暗闇の続く場所もある、何故だろう?

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ひたすらまっすぐ線路が飛び去る青函トンネル
[Nikon F5, AF Nikkor 50mm F1.4D, RDPIII]

竜飛海底は通過し、最深部を過ぎてしばらく、上り勾配の途中でスピードが落ちる。この列車には吉岡海底駅見学専用車両がついている。輸送人員の落ち込みが止まらない津軽海峡線だが、こと海底駅見学コースに関しては「ドラえもん」効果なのか、盛況という。中国・台湾の観光客にウケているらしい。なるほど今年の案内パンフレットには中国語が併記されている。海底駅にも寄ってみたいんだけどな。特に竜飛海底コースにあるケーブルカーは立派な「鉄道」なので…… 40分後、14年ぶりの北海道上陸。すこし風景が変わって見えた。