FURIKO de SHIKOKU

第3走者 : スーパーはくと11号 〜 HOT7000系 (智頭急行) 〜


京都 18:53 -(61D〜2062D)- 22:03 鳥取
JPEG 9KB

時刻表に掲載されているページが違うので気づかなかったが、〔しなの18号〕と〔スーパーはくと11号〕の間に〔オーシャンアロー29号〕 (新宮ゆき) が発車している。振子車を一つでも多く乗りたいのであれば、新大阪まで283系に乗るという手もあった。

智頭急行の開業とともに登場した〔スーパーはくと〕は陰陽連絡のメインルートになった。当初JR西日本〔はくと〕 (非振子) と混合して運転されていたが、その後すべて智頭急車に統一されている。その一方で岡山〜鳥取を津山経由で運転していた急行〔砂丘〕は、智頭急行線経由の〔いなば〕181系に置き換えられている。

JPEG 9KB JPEG 7KB

客室内にテレビモニターが置いてあり、その画面には前面展望が映し出されている。京都を発車して大阪まで、最近買った「電車でGO! プロフェッショナル版」で見るJR京都線の光景そのまんま。

高山からの85系気動車特急〔ひだ22号〕に続いての発車。その前にはもと〔白鳥〕の〔雷鳥〕485系も走り、30分間にものすごいバリエーションの特急車が集中している。わざわざ指定席にしたものの京都では拍子抜けするほど空いていたが、大阪からかなりの乗車があり、三宮、姫路と少しずつ乗客を拾う。すっかり日が暮れたが、テレビはあいかわらず前面展望を映し出している。あまりすることもないので、じっと見ていた。

上郡(かみごおり)から智頭急行線、ここから智頭(ちず)までが振子の作動区間。高架橋とトンネルで構成されたもともと高規格の新線で、スピードが全く落ちない。車体制御が車両ごとにずれるので、テレビ画面の傾きと実際の傾きに時間差ができ、ちょっと不思議な感覚だった。

因美(いんび)線に入ると振子が切られ、途端にのそのそとした足取りになった。ただ、ここを含む智頭〜鳥取〜米子間も、安来〜益田に続いて高速化事業が始まっている。時刻変更のため22時を少し回って鳥取着。


自然振子の試験と実用化

JPEG 9KB

確実に働く車体制御として国鉄総合技術研究所が取り組んだのは、現在の振子車の原形である自然振子方式。これは車体にかかる超過遠心力を逆に利用しようというものである。

車体は台車に支持されているので、遠心力がかかると線路面を支点に上側が振られるが、上部に棒を渡して車体をつり下げると、車体はその棒を支点として下側が振れるようになる。これが振子の原理。

といっても振子車は、屋根に棒を渡して車体をつり下げているのではないし、支点になる棒なども無い。なぜなら重心を回転中心よりも下に置きさえすれば下側が振れるからで、車体を台車にある円弧状の梁に乗せて左右方向に動くようにして、この原理を具体化している。

この特殊な台車を装備して591系交直流試験電車が1970年に製作された。車体はアルミ製、上下を大きく絞った卵形の車体断面と3連接車体構造が特徴で、高速走行における連接車の利点を問う目的もあったと見られる (後に一般的なボギー車2両編成に改造された)。一方の先頭車はボンネットを廃した高運転台、もう一方は平妻で非対称の前面窓 (しかも特急シンボルマークをJRマークのように右側に寄せて配置!) というのもかなり異彩を放っていた。1980年ごろに廃車となり、すでに解体されている。

日本の自然振子はすべて振子梁による方式だが、スペインの高速客車「Targo Pendular」では連接車であることを利用して、台車からアームを立ち上げて両方の車体がそれにぶらさがる、実際の振子に近い形態を取っている。 (前項の小田急における連接振子台車はこの原理を利用しているものとみられる。)


この試験車の成果を受けて製作されたのが381系直流電車である。591系と同じく卵形の断面を持ったアルミ車体を採用、エアコンも床下に置いて屋根上にはパンタグラフくらいしか残されていない。一方で床下機器の艤装スペースに余裕がないため、国鉄の電車としては異例の車両長[連結器間]21.3m (通常は20.0m) となっている。

先頭部は581系で採用された貫通路を組み込んだ形となった。小断面トンネルを通過するため頭頂部のヘッドライトは初めから設置されていない。

客室はカーテンを廃し、ブラインド内蔵の二重窓を採用、窓框もなく平天井とあいまってすっきりした造作が特徴。それだけに床下のエアコンから冷気を立ち上げるダクトが目につく。

客室床はデッキより下げられ、仕切扉は自動になった。普通車の座席には簡易リクライニングシートを採用している。食堂車は廃止され、以降の系列はグリーン車に車販準備室を設けるのが通例になった。神領電車区に配置され、中央西線の電化と同時に181系気動車特急〔しなの〕を置き替えた。