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ルパンシリーズ
表 紙絵美術室


<英米版展示室>

 フ ランスの産んだ「怪盗ルパン」は発表当時は英語圏でも素早く翻訳・紹介され人気を博してました。とくにアメリカではひところはフランスも上回る人 気だったようで、「虎の牙」など一部作品はフランス本国より先にアメリカで発表されています。そもそもアメリカのハリウッド映画にみられるスピーディーで 息もつかせぬ展開のエンターテイメント性は、ルパン・シリーズにすでに見られたものでした。
 ルブラン存命当時はシリーズのすべての訳本が素早 く英米で翻訳・出版されているのですが、20世紀後半以降は人気は下降気味であったようです。現在ネット書店をあたってみますとルパン・シリーズはペー パーバック版(文庫本)でコンスタントに出版され続けてますが、訳文じたいは昔のものの再利用で、シリーズの前半ばかり(「八点鐘」まで)で、後半の作品の英訳版はほとんど読めない状況の ようです。また、これは最近の英米小説本の傾向なんでしょうか、表紙にはタイトルがあるだけで絵に工夫がないものが目立ちます。

☆Wildside版ルパンシリーズ
ルパン英訳本のペーパーバックはずいぶんいろんな種類が見つかるのですが、「ビックリするルパン」の表紙絵のバリエーションが楽しめる2000年代初頭のものを並べてみました。
The Exploits of Arsene Lupin
Arsene Lupin Versus Herlock Sholmes
The Hollow Needle」
「813
「The Confessions of Arsene Lupin」




「アルセーヌ・ルパンの手柄話」。「怪盗紳士」もいろんな英訳題があるんです。 「アルセーヌ・ルパン対ハーロック・ショームズ」。「ホームズもどき」のあの人の表記は英語版でもいろいろあります。 「中空の針」(奇岩城)。
「813」 「ルパンの告白」
「The Crystal Stopper」 「The Secret of Sarek」 「The Teeth of The Tiger」 「The Eight Strokes of The Clock」 「Arsene Lupin」

「水晶の栓」「サレック島の秘密」(三十棺桶島)。昔から英題はこれになっていたようです。 「虎の歯」(虎の牙)。英語版は仏語版より先に出てしまったため内容に相違があります。なおトム・クランシーに全く同名の小説があるので注意。 「時計の八回の音」(八点鐘)。なぜかこの一冊だけ「ビックリルパン」の絵ではありません。 戯 曲「アルセーヌ・ルパン」(宝冠事件、「ルパンの冒険」)の小説版で、エドガー・ジェプソンによる英文版しか存在しません。この小説は今も英米ではポピュ ラーですが、本国フランスでは長いこと紹介されませんでした。そういう経緯もあってか「びっくりルパン」の向きが逆です(笑)。

Arsene Lupin versus Holmlock Shears James A Rock & Co. Publishers 、2002
英米、とくにイギリスでは「ルパン対ホームズ」の「ハーロック=ショームズ」をさらに変えて「ホルムロック=シアーズ」とするお約束のようです。
「ホルムロック・シアーズ」の最新版です。

Wildside Press(2002〜2003)
上記のWildside版に入ってないものが中心。ルパンシリーズ以外のルブラン作品も収められています。
The Eyes of InnocenceThe Tremendous EventThe Woman of MysteryThe Golden TriangleArsene Lupin



「三つの目」。
「驚天動地」。ルブランの名の下に「アルセーヌ・ルパンの生みの親」と書かれてます。
「謎の女」。これは「砲弾の破片」(オルヌカン城の謎)の英題です。
「金三角」。
戯曲「アルセーヌ・ルパン」の小説版。ルブラン作のようになってますが、中身はエドガー・ジェプソンが書いたもののようです。

☆BiblioBazaar版(2006〜2007)
昔ながらのマットス訳を使ったルパンシリーズ。ごく一部の作品しか出てないようですし、イギリスとアメリカとでカバー絵を変えているようです。どっちも表紙は地味です。

The Extraordinary Adventures of Arsene Lupin, Gentleman-Burglar

Arsene LupinThe Hollow Needle: Further adventures of Arsene Lupin The Hollow Needle: Further adventures of Arsene LupinThe Hollow Needle: Further adventures of Arsene Lupin
「怪盗紳士ルパン」。英米版ではこういう文字だけのカバーも目立ちます。エドガー・ジェプソンによる「ルパンの冒険」。なぜ竹林…?「奇岩城」。「奇岩城」のカバー違い。これも「奇岩城」のカバー違い。2007年に出たものですが、内容と無関係な写真です。
Crystal Stopper
The Teeth of the Tiger: An Adventure Story
「水晶の栓」。「水晶の栓」のカバー違い。「虎の牙」。2007年版ですがわざと古びたカバーデザインにしたようです。

Dodo Press(2005〜)
英米などでポピュラーなペーパーバック版。このシリーズは表紙絵に工夫があって嬉しい。とりあえず集めた画像だけ。
Extraordinary of Arsene Lupin:
Gentleman-Burglar

Extraordinary of Arsene Lupin:
Gentleman-Burglar
The Hollow Needle:Further Adventure of Arsene Lupin
Arsene Lupin
The Crystal Stopper


「怪盗紳士ルパン」。この表紙は2008年からのもの。レトロな雰囲気があります。 こちらは2005年に出たもの。2005年版ではいずれもルパンの顔が描かれてました。「奇岩城」の2008年版。この顔はボートルレということなのかな?
エドガー・ジェプソンによる戯曲「アルセーヌ・ルパン」の小説版。
「水晶の栓」の2008年版。
Arsene Lupin and the Crystal StopperThe Teeth of the TigerThe Eight Stroke of the Clock
「水晶の栓」の2005年版。「虎の牙」の2005年版。「八点鐘」の2008年版。

☆Hollywood Comics 版「ルパン対ホームズ」シリーズ(2005〜)
出版社名および表紙絵から一見コミックスに見えますが、中身は文字だらけ。基本的に原書から忠実に英訳してますが、「エルロック・ショルメ ス」をすべて「シャーロック・ホームズ」に改変、ホームズシリーズとの整合性をはかるための短編パスティシュがいくつか挿入されています。
Arsene Lupin vs Sherlock Holmes: The Blonde Phantom Arsene Lupin Vs. Sherlock Holmes: The Hollow Needle Arsene Lupin vs Sherlock Holmes: The Stage Play Arsene Lupin vs. Countess Cagliostro


「金髪の美女」「ユダヤのランプ」に加え、パスティシュ「遅すぎたアルセーヌ・ルパン」と「不親切きわまる省略」を収録。
「遅すぎたシャーロック・ホームズ」「奇岩城」に加え、後日談のパスティシュ「避けられぬ運命」を収録。
ルブラン公認で1910年に上演された戯曲「ルパン対ショルメス」の英訳です。日本ですら未訳の作品で、現在世界でもこれでしか読めない貴重なもの。
「対ホームズ」ではなく「対カリオストロ」。2010年に出版されたもので、「カリオストロ伯爵夫人」「カリオストロの復讐」を一冊に、おまけに短編パスティシュを収録しています。表紙はCGのようですが、妙に色っぽいジョゼフィーヌ(笑)。

Penguin Classics2007)
その名の通りペンギン・ペーパーバックの古典収録版。とりあえずルパンは1冊のみ確認。
Arsene Lupin, Gentleman-Thief
「怪盗紳士ルパン」。フランスの最初の原書の表紙絵が使われてます。「泥棒」の英訳は「Burglar」の場合と「Thief」の場合とがあります。

FQ Classics2007)
The Hollow Needle Further Adventure of Arsene Lupin
「奇岩城」。で、この肖像画はどなた?

Book Jungle版(2007
これは珍しく「ルパン」ではなく「ルブラン」を前面に押し出してます。ルブランの写真入り表紙のルパンシリーズというのはフランスでも見かけないです。
Extraordinary of Arsene Lupin:
Gentleman-Burglar
The Teeth of the Tiger

「怪盗紳士ルパン」。 「虎の牙」。

Kessinger Publishing版(2004〜
絶版本などを再刊する出版社で、ルパン・シリーズもいくつかありました。表紙は本当にタイトルしか書いてないので違いのある2例だけあげておきます。
Arsene Lupin:
Gentleman Burglar
The Golden Triangle:The Return of Arsene Lupin

「怪盗紳士ルパン」。これと同じ体裁で「獄中のルパン」「ルパンの脱獄」「ふしぎな旅行者」「金髪の美女」などの短編・中編が薄い一冊ごとに、「ルパン対ショルメス」「奇岩城」「水晶の栓」「三つの目」などの長編が刊行されています。 「金三角」。なぜかこの一冊だけこの表紙になってます。「アルセーヌ・ルパンの帰還」とあるのは最初に英訳が出たとき「虎の牙」以来久々のルパンものだったため英文版のみこの副題がついていたためです。


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