忠平・龍子の中国料理見聞録
香港の巻

平成7年のことでした
 
楽しい旅行の秘訣は気ままに歩けること。海外旅行の場合はそうは行ないと思われがちですが、香港は大丈夫。 ボデイランゲージだけで十分歩けます。男厨会会員で旅行社にお勤めのK氏にお願いして、全行程フリーの旅程を組んでもらいました。 値段は格安、ホテルは最高。やはり持つべきものは友です。香港では地下鉄が香港島と大陸側の九龍を南北に結んでおり、 また香港島では東西にも伸びているので、旅行者にとっては大変便利です。ツーリストチケットという割安の乗車券を設けるなど旅行者 への配慮は行き届いていて、ほとんど地下鉄だけで一週間をすごせ ました
    


  

  
ビクトリアピークから湾内の眺め

   香港の町裏に漂う独特の匂い。若い女性は「あれさえなければ」とか「むかつく」とか言いますが、慣れれば何のことはありません。匂いの正体は中国料理に欠かせない、「ルー水」と「香菜 (シャンツァイ) 」の匂いです。「ルー水」は肉や魚の煮物のたれです。鶏足を、葱、生姜で煮込んでだしを取り、醤油、八角、桂皮、山椒等で味と香りをつけたものです。 これを探し求めていたのですが、香港では見当たらず、マカオの小さな肉屋で漸く見つけました。




李錦記のラベルでしたから、どこでも売っていそうなものですが、所詮煮物のたれ、こういう物は家庭で作るもので、 商品にはならないのでしょう。これは一回で使い切るものではなく、醤油や八角を足しながら、長い間繰り返し使うものです。 我が家では豚足の煮込みに欠かせません。これでゆで卵などを煮込むと、簡単な点心の一品になります。
因みにこれは、日本では売ってません。横浜の中華街の調味料屋で聞いたら、売れっこないから置かないのだそうです。




この水槽の中の魚や海老を自分で選びます。 このロブスターを選びました。哀れ、彼の運命は
海覇焼鵞海鮮酒家にて
待つこと15分、おいしそうで満足


香港からマカオにわたる場合は出国手続きになるのですが、 ここでは出国票に記入するだけの簡単なものでした。鮎川から金華山に わたる程度の手続きです。 マカオ港の案内所でバスの乗り場を尋ねました。思い切ってカタカナで書いたような英語で「バスストップ云々?」すると、 キュートな感じの彼女から「アーユー・コリア・オア・ジャパニーズ?」 ジャパニーズ 」「 どうぞ日本語でお話ください」 見事な標準語でした

ここからはマカオの風景です
 この辺はレストラン街。お昼時の賑わい 聖ポール天主堂跡
ポルトガルの植民地だったことをしのばせるコロニアル風建築
二人乗りの観光人力車。客を選べないのが辛いところ 焼き栗屋さん

どこの国へ行っても、真っ先に足を運ぶのはデパートの食品売り場ですが、香港で一番気にいったのは裕華百貨店です。 支店が三ケ店あり滞在中毎日通いました。珍しい食材といっても持ち帰れるには限りがあります。 せっせと買い集めた瓶詰の調味料が、いつのまにか百本くらいになってしまいました。 帰国時の空港カウンターでのこと。調味料入りのスーツケース一個だけで、二人分の重量オーバー。 嗚呼どうしよう!目の前真っ暗。しかしそこは観光立国。旅行者には大目に見てくれるお国柄か、 旅行社の嘆願が聞いたのか、 O K。おかげでいまだに我が家の食卓を賑わしてくれています。
ここまで忠平

上海蟹で有名な大上海飯店
グルメで名高いキュウ永漢氏曰く、「 金持ちの集まるところ、おいしいものもまた集まる」 香港の街はまさにこの言葉どおり、なんでも食べ尽くす巨大な胃袋のようなです。そう言ったご本人はさっさと香港に移住してしまいました。 私たちは返還前に、一度この目とこの舌で確かめなければと、今度は二人だけで出かけました。95年10月のことです。>時あたかも上海蟹のシーズン。あの 「大上海飯店 」へ。広い店内上海蟹が目当ての客で満席。予約なしの客は階段にまで並ぶ混雑ぶりでした。 ウエイトレスが鋏で巧みにさばいて皿に載せ、タレをかけて出してくれます。ジャスミン茶の入ったボールが出てきますが、 これはフィンガーボール。飲み物は熱燗の紹興酒が一番ぴったりです。熱いものをとることは、蟹に体を冷やす作用があるので、 バランスを取る意味から、理に適っているのです。


店の外の通路でも、鍋料理を作ってます。
この役所前の広場には毎週、土曜日になるとこのように、大勢の女性が集まってきます。カメラからはみ出した周辺の広場も、おびただしい人数で埋め尽くされております。彼女らは主にフィリピンから出稼ぎののメイドたち。毎週ここに集まって、就労条件などの情報交換をしたり、グチをこぼしたりして、ストレスを発散させているとか。
一週間の滞在中、三食すべて自分たちで好みの店を選んでみました。燕の巣のスープやふかひれ、ロブスターの揚げ物、腸粉の蒸し物、魚団子入りのスープ等々、連日よくもまあ食べたと、我ながら感心します。  香港でも市場に出かけ、面白い光景をカメラに納めてきました。

鶏のケージ。右側のテーブルでは鶏を解体中。ちょっと酷ですね。 野菜は日本と似たようなものですが、へちまはよく食べるようです。


南国ですから野菜や果物の種類も豊富、水槽には活魚が泳ぎまわり、新鮮そのものです。鶏もここでは生鮮食品扱い。何百羽もケージの中に閉じ込めて、生きたままで売っています。客が要望すれば目の前で毛をむしり、あっという間に裸にしてしまう仕組みでした。  香港島のすばらしい夜景同様に、深い闇は見ず、輝きだけに目を向けていれば、これほど魅力的な街もありません。返還後の変化を確かめる意味からも、是非もう一度行ってみたいと思います。
ここまで龍子
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18.4.5更新

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