正月の餅を焼きながら、めずらしく夫婦の会話。
「21世紀ですってね」
「そうだってね…」
「いいことあるといいわよね」
「まあ〜な…」
と、そのとき玄関先で声がした。
「ちわー!21世紀ですが…」
「あ、そう。新顔だね、あんた」
「へー、なにしろオープンしたばっかりなもんで」
「あ、そう。で、何か用?」
「へー、ご希望を伺いに来ました」
「ご希望?なんの?」
「ですから、21世紀の…」
「ふ〜ん。じゃあ、みんなを幸福にしてくれ」
「え!、そ、それはちょっと…」
「できない?じゃあ、用はないよ。帰ってくれ」
「いや、あの、その…、出来るんですけどね。ちと、費用がかかるんで…」
「ふーむ。それもそうだな。で、どれくらい?」
「ちと、高いですよ」
「いいよいいよ、みんながそれで幸福になれるんだったら」
「ざっと680兆円」
「何、680兆円!」
「まあ、あっしの手数料もすこし入ってますが…」
「バカヤロ!そんな金はだな。NAGATATYOやKASUMIGASEKIあたりの住人から巻き上げて来い。あいつら、無駄使いばっかりしてるんだから」
「なるほど!それもそうですね。じゃあ、ちょっくら行ってふんだくってきます」
「おう、頑張って来い。みんなの幸福がお前の双肩にかかっているんだ」
「わかってま。あっしも元旦から、えー仕事させてもらって。なんか、こう、武者震いしてきましたぜ」
「そうだ、その意気だ。そこからお前の世紀が始まるんだ!」
「あいよ―っ!!!……」
「掛け声だけは立派だけどな…。おい、ばあさん、餅は焼けたかね」
「………」
「なんだ、股ひろげて眠っちまいやがった。まったく…」
――そんな、こんなで、21世紀の元旦も暮れていくのであった。
(2001・1・1 By Dennou-Tabigarasu)