Column Train

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きみとぼくのあいだに
<哀愁>をひとつ…

笑ってもいいよ
うん うん と うなずいてくれたら
ぼくはまた1日だけ
生きることができる

 

Vol.1●「哀愁」は何処へ行った?
Vol.2●宇多田ヒカルと藤圭子の間に
Vol.3●さざんかの問題
Vol.4●21世紀元旦日記

Column Vol.1
「哀愁」は何処へ行った?

「哀愁」などという言葉をもちだすと、即座に「古い!」と一喝されそうである。
年配の人なら、思わず「懐かしいね!」と幾つかのイメージを思い描くことができる
かもしれない。
まず映画の「哀愁」がある。ロバート・テーラーとヴィヴィアン・リーが共演した大悲恋
映画で、マーヴィン・ルロイ監督の最高傑作といわれている。
日本公開は昭和24年だが、ぼくはそれから約20年後、リバイバル上映で、この映
画を見た記憶がある。第二次大戦下の将校とバレリーナの恋物語は、あのすれ
違いメロドラマで有名な「君の名は」(昭和27〜28)のベースにもなっている。

昭和30年代に入ると、「哀愁の町に霧が降る」(山田真二)、「哀愁列車」(三橋美智
也)、「哀愁出船」(美空ひばり)、「哀愁のからまつ林」(島倉千代子)、「哀愁波止場」
(美空ひばり)といったヒット歌謡曲のタイトルに「哀愁」の二文字が並ぶ。
日本は戦後の復興期からようやく抜け出そうとしていた頃で、地方から都会へと出
て行く多くの若者たちがいた。そうした都市集中化の始まりの中で、「切ない別れ」
を唄った哀愁のメロディがバックミュージックとして流れていたのである。
その頃の日本には「暗さ」と「明るさ」、「貧困」と「希望」が奇妙にミックスした時代の
風が吹いていた。それは文字通り、「哀愁の時代」だった。

昭和40年代初頭にビートルズ旋風が上陸し、日本の音楽シーンや若者世代の感
性は大きく変化していくわけだが、その頃のぼくは、口笛のイントロで始まる舟木一
夫の「哀愁の夜」が大好きだった。

ここで突然、年号表記から西暦表記に変えてしまうけど、70年代以降、「哀愁」とい
う言葉はどうも影をひそめてしまったような気がする。田原俊彦の「哀愁でいと」くら
いしか思い出さない。多分、80年代の初め頃だと思うが、椎名誠の自伝的青春を
描いた「哀愁の町に霧が降るのだ」が本屋さんの店先に並び、「哀愁」は「のだ」の
時代になってしまったのだなあ…と感心してしまったことがあったが、それ以降、ぼ
くは「哀愁」という言葉にお目にかかっていない。

岩波国語辞典(第4版)によると、「哀愁」とは「もの悲しさ」「うら悲しい感じ」という二
つの意味しか出ていない。なんのこっちゃ!といわざるを得ない。まったく哀愁を
感じてしまう説明である。

しかしまあそうだとして、70年代から80年代は日本人の感情から「もの悲しさ」や「う
ら悲しい感じ」が希薄になっていった時代だったのかもしれない。高度経済成長か
ら経済大国への道をひた走りに走りつづけていた時代、そこには「哀愁」などという
マイナーでセンチメンタルな気分はなく、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と「24時間
戦えますか!」の時代だったのである。

そしてバブルがはじけた90年代、日本は再び暗い時代へと突入していく。この暗さ
に「哀愁」はない。不良債権、金融倒産、貸し渋り、リストラ、エトセトラ…。ここで日
本人は「哀愁」などという言葉では救いようもないほど、堕ちてしまったのである。
そこで出てきたのが「癒し」というキーワードであり、五木寛之の「大河の一滴」だっ
た。しかし、「癒し」や「一滴」は、いっときの慰めにはなっても、真にこの闇から抜け
出す手立てにはならないのである。

そこで思うのだが、われわれはもう一度「哀愁」という言葉に象徴される、極めて人
間的な情感、「もの悲しさ」や「うら悲しい気分」を感じることの出来る暮らしや生き方
を取り戻すことが必要ではないだろうか。「もの悲しさ」や「うら悲しい気分」の中から
人は「自分を省みる」ことができる。つまり、救いようのある人間に戻れるのである。
そこから未来が見えてくるような気がするんだよね。
少し、説教くさくなってしまった。こんなつもりではなかったのだが…。

と、ここまで書いて、試しに検索で「哀愁」と書き込んでチェックして見た。
なんとなんと、Gooで6499件、Infoseekでは8468件もあり、実に奥深い「哀愁」の
世界がひろがっているのである。(インターネットは岩波の国語辞典より凄い!)
「哀愁」は死んでいなかったのである。


                                                  (1999・4・1 By Dennou-Tabigarasu)

 

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