まるこの日常生活の記録と映画鑑賞記
2000.3.11〜3.20.
3月10日(金)
金曜日だし、帰りは少しぐらい遅くなっても構わないので、残業帰りにレイトで『シビル・アクション』を観ようと目論んだ。でも、今日は仕事がキツかったので、そのあとに裁判ものの重い映画をどうしても観る気にはなれず、結局適当に残業してまっすぐ帰って来た。
家に帰ってめずらしくテレビをつけたら、何と、気にもしていなかった『日本アカデミー賞』がやっているじゃない! 何と言っても『日本アカデミー賞』だからね、今年は『鉄道員(ぽっぽや)』一色でしょう…と思っていたら、やっぱりそうだった。つまんなーい。大竹しのぶが『黒い家』ではなく、『鉄道員(ぽっぽや)』で主演女優賞を受賞したことが、やっぱり納得いかない。“演技”で言えばやっぱり『黒い家』の方でしょう。でも、納得いかないのが『日本アカデミー賞』の特徴なんだから仕方ないね。武田真治が見れただけでヨシとしよう。
しかし、去年の日本映画には突出した面白い作品はなかったような気がする。『菊次郎の夏』も良かったけど、私が一番面白いと思った作品は『おもちゃ』かな。主演男優賞と主演女優賞を選ぶなら、共に『39/刑法第三十九条 』に主演した堤真一と鈴木京香だな。鈴木京香は好きなの♪ 10年くらい前だったかな、彼女がまだ名前も顔も売れてない頃、ソフィーナのCMで見て一目惚れしたのさ。私がオトコだったら、あーゆー人を奥さんにして、家に帰った時に「おかえりなさい♪」って言って欲しいなーって思ってた。堤真一と付き合ってるんだよね。堤真一が羨ましいな。…などと考える私って、やっぱりヘンでしょうか。
3月9日(木)
レディースデイ。仕事は山ほどあるが、先週の恨みを晴らすべく、今日はぜーーーったい『マグノリア』を観て帰る決心をしていた。最終回の本編が始まるのが20時からだから、19時半まで仕事してても間に合うな、なんて考えながら。しかし、誘惑は突然やって来るものである。定時を過ぎ、残業モードに入ったところで、職場のおじさまに「まるちゃんも一緒に飲みに行こうよ」と誘われた。何もこんな日に誘って来なくってもいいじゃない。今日は映画が1000円で観られる日なんだから。「わ、私、仕事がありますから」と断ったら、「じゃ、もし早く終われたらおいで。みんなであそこの寿司屋に居るから」 ……… す・し・や? 行くでしょう、そりゃ。当たり前でしょう。人間ですもの。残業を1時間程度で切り上げ、おじさまに1時間くらい軽くお付き合いしてお寿司をたらふく頂き、「このあと用事があるので」と抜け出せば映画に間に合うと、私は計算した。
しかし、事態は予測不可能な方向へと進むものである。計算通り残業を1時間で切り上げて18時45分くらいには店に着いた私は、「このあと用事があるので19時半で失礼します」と前もって断った上で、先に着いてお座敷で一杯やってる人たちの中に混じった。映画を観る前にお酒を飲むことにためらいはあったが、ウーロン茶では済まされない気がしたので、ちょびっとだけ飲むことにし、きっとオゴリなので、遠慮しつつもニギリを3品ほど頼んだ。しかし、いつまで待っても私のオーダーしたお寿司が出て来ない。何でも、オーダーがとても混み合っていて、少々時間がかかるとのことなのだ。私は時間が無いんだよん。早くしてくれないと、食いっぱぐれちゃうんだよん。私が来る前に頼んであった残りものの鉄火巻きをチビチビとつまんでいるうちに、時計は既に19時半になろうとしていた。
私はギリギリまで諦めなかった。でも、限界だった。19時45分、私はとうとう “ほたて” “サーモン” “穴子” のニギリの姿を見ることなく、涙を飲んで「時間ですので、お先に失礼します」と席を立った。この場所から劇場までは歩いて15分はかかるだろう。20時は予告編ではなく、映画の本編が始まる時間なのだ。映画のことを考えてグラスに半分しか飲まなかったけど、すきっ腹で飲んでいるので走るとヤバい。3時間もある映画の前だから、劇場に着いたら当然トイレにも行っておかなきゃならない。せっかく仕事を放り出して来たのに目的のお寿司にもありつけず、おまけに時間に煽られている自分が何とも情けなかった。途中でコンビニに立ち寄ってウーロン茶を買って、精一杯早足で歩いて、劇場に着いたのはちょうど20時だった。辛うじてセーフ。でも、駆け込んで映画を観るのは好きじゃないんだな。やっぱり5分前には座席に着いて、落ちついて映画を観る体勢を整えたいんだよな。
ポール・トーマス・アンダーソン監督は前作『ブギー・ナイツ』で、ポルノ映画の世界で生きる人々の人間模様を見事な心理描写でもって描いてみせた。『ブギー・ナイツ』では、自分たちの仕事を恥じることなく自尊心を持ってポルノ映画を作っているように見える人々が、実はその自尊心を保つためにギリギリのところで突っ張っている姿が描かれていた。そして、この『マグノリア』に出てくる主要人物のほとんども、みんな突っ張って生きている人たちばかりだった。
人間は誰もが心の中に色んな問題を抱えて生きている。誰もが “他人には見せない顔” を持っている。心の底に “秘密” を持っていたり、心の裏に “本音” を隠していたりする。絶対に他人には見せない自分のそんな一面を見せる時というのは、心に隙が出来た時か、心の中で張り詰めていたものがプチっと切れた時ではないだろうか。『マグノリア』は様々な形で突っ張ってる人たちが、それぞれの身に起ったある出来事によって心に隙を作ってしまったり、プチっと切れてしまったりして、隠していた心の中を暴露し始める…という映画だ。ある街で生活する12人の主要人物が、同じ時間軸で巻き起こすいくつものストーリーが交錯しながらテンポ良く進んでいく。突っ張ることで自分を保っていた人たちが偶発的な出来事で豹変して行く様を描いた、とてもリアルな人間ドラマを観たような気がした。
しかしラスト近くで、ある衝撃的な出来事が起こる。それがあまりにも非現実的で、私はせっかくのリアルな人間ドラマを、遥か彼方へ吹っ飛ばされたような気持ちになった。映画を観ていれば、監督がいかに “それ” を撮りたかったか良く分かる。 “それ” を撮りたかったために、この映画を作ったのだろうということも、およそ想像がつく。でも、 “それ”が無くてもこのドラマは充分に成り立っているし、ラストになって監督の芸術性が暴走してしまったことが、私的にはかなり残念な気がした。ただ、“それ”が映画史上まれに見るインパクトを残すシーンであることも確かだ。 レベル4
しっかし、あの方のセンスのない字幕は相変わらずですな。ゲンナリしちゃいます。そろそろ勘弁してほしいです。「誘惑してねじ伏せろ」「おマンを手なずけろ」「イチモツを敬え」だっけ? 私は原語が分からないので、こんなこと言えた義理じゃないけどさ。もーちょっとマシな訳し方ないのかな? もっと心に響くような、グッとくる訳し方がね。あんなセリフじゃ説得力ない気がするんだけど、どうなんでしょ、男性の皆さん。
3月8日(水)
3月に入ってから、まだ映画を1本しか観ていない。なんて侘しい生活なんでしょ。これじゃ『映画鑑賞日記』なんかになりゃしない。始めて早々に、またタイトルを変えてみた。こんなもんでしょ。
本調子ではないが、もう休んでいられないので無理矢理会社に出た。毎日残業しないと仕事がこなせない状況で2日半も休めば、どういう状態になっているかはおよそ想像出来たが、私のデスクはほぼ予想通りのすんごい状態となっていた。会社は病み上がりの人間にも容赦はない。20時間分の遅れを取り戻すには、やっぱり20時間が必要なのだ(時間外にね)。水・木・金で3本の映画を観る…という私のささやかな夢は出社と同時に打ち砕かれた。それでもせめて1本は観たいもん。希望は捨てないで、目一杯頑張るのさ。
しかし残業途中、あまりの肩こりの激しさに頭痛ばかりか吐き気まで催してきたので、今日のところはとっとと仕事を切り上げて、クイックマッサージというやつに行くことにした。生まれてこの方、このテの店に行くのは2回目である。怪しいビルの一室にあるその店で、一番安いコースが“全身マッサージ30分3000円”。前に行った治療院に比べるとちょっと高い気もしたが、その時の私はマッサージして欲しくてして欲しくてたまらない衝動に駆られていたので、ここまで来て引き返すわけにもいかない。惜しげも無く3000円を支払うと、マッサージャー(←いい加減英語)として颯爽と登場したのは若いおにーちゃんだった(でも好みではない)。ホントに効くんかいな。まるこっち、すでにパジャマ姿にされ、まな板の上の鯉状態になりつつも半信半疑。
マッサージの詳細は省略することとして(聞きたい?)、30分間、気持ちよ〜くなりながら考えていたこと。30分で3000円…ってことは、10分で1000円かぁ。なーんていい商売なんでしょ♪ そりゃ、時にはやりたくないようなおじさんやおばさんの全身マッサージもしなきゃならないだろうけど、1日何人かは若いOLだって来るでしょ。OLを全身マッサージして、お金もらうなんて、いいと思いませんこと? 就職に困った若い男子学生は、マッサージャーを目指すと良いかもしれないね(←無責任発言)。お姉さんだって、マッサージャーはおじさんよりも若いおにーさんの方が嬉しいでしょ。相手がカッコよければ「効かなくても、ま、いいや」とか思っちゃったりするでしょ。「また来よっかなー」なんて思っちゃったりもするでしょ。それでギブ&テイクが成り立つのさ。
30分間しっかりマッサージしてもらって、頭痛は何とか治まった。名駅に“あんぱんや”が出来たので、あんぱんを買って帰った。ちょびっと幸せな気持ちになった。
3月7日(火)
目覚めたら朝8時半だった。薬が効きすぎたのか、私は22時間も眠っていたようだ。相変わらず頭は痛い。熱も下がっていない。さすがにもう休めないと思ってはいるものの、いかんせん身体が動かない。午後からだけでも会社に出ようという気力もない。仕方がないので
「もう一日休ませて下さい」と会社に電話した。情けない…。まるこっち、本格的にダウンです。
5日の23時30分に『まるこのつぶやき』を更新してから、初めてネットに繋いだ。『まるこのつぶやき』を読んで下さった人から、掲示板やEメールでたくさんの励ましの言葉が届いていた。ひとりひとりにちゃんとお礼を言うべきかもしれないけど、なんせこんな状態だし、こんな体調だし…。この場で「ありがとう」と言わせて頂きます。こんな私ですが、これからもよろしく。
3月6日(月)
頭が痛い。起きられない。熱を計ったら37.0℃ある。以前にも書いたが、私は平熱が35.4℃という低温人間なので、37.0℃にもなるともう動けなくなる。熱と頭痛以外の症状は出ていないので、風邪ではないような気がする。いい年齢して“会社に行きたくない病”かな? 会社は休めるような状態ではないけど、こんな状態では行けない。行っても仕事にならない。だから、休むことにした。食欲はあるので、朝から昨日の残りのカレーを食べ、薬を飲んで眠った。
3月5日(日)
起きたら頭が痛い。熱も少しある。連日の疲れのせいかもしれない。でも、もう1ヶ月近く部屋の掃除をしていない気がするし、洗濯物も溜まっている。夕方まで何もする気が起きずダラダラと過ごしたが、やらなければやらないで気が滅入りそうなので、ドリンク剤を飲んで無理矢理身体を動かした。そしたら一転して今度はノリノリになり、晩ゴハンまで作っちゃう気になった。どうしてもカレーライスが食べたかったので、カレーを作った。これで少なくとも今日から3日間はカレーの日々である。
色んな複雑な心境の中、約1ヶ月間放りっぱなしにしていたこのHPだけど、何とか続けていく決心をした。とりあえず、お詫びの気持ちとこの4週間の心境を綴り、『まるこのつぶやき』に掲載した。更新がストップしているのに、見放さないで足を運んでくれた皆さん、本当にありがとう。分かってる。掲示板がコミュニケーションの場として存在していて、それだけでカウンターがどんどんと上がっていくページもある中、掲示板が全く盛り上がらない私のページに足を運んでくれるみんなが、私のページに何を望んでいるのかってこと。みんなが私の文章を読むためにここに来てくれてるんだっていうことを。だから、もうちょっとだけ頑張ってみることにした。『まるこのつぶやき』にも書いたけど、リセットボタンを押せば、簡単にカウンターは“0”に戻ってしまうけれど、戻してしまってから「戻さなければ良かった」と思っても、もう遅いのだから。
3月4日(土)
所用で、朝から両親と静岡県藤枝市へ。せっかくのドライブも、雨降りじゃ台無しだ。車の中ではひたすらに眠った。だって疲れてんだもん。昨日も充分に睡眠を取ったはずなのに、いくらでも眠れてしまう。今日は夕方から『けーずシアター』の映画鑑賞会が小牧コロナで催されているのだが、時間的にどうしても参加出来ないため、その後の飲み会だけ参加することにすることにしていた。帰り道、小牧I.C.で降りてもらい、小牧コロナでおっことしてもらった。時間は17時40分。みんなが観ている映画が終わるのは18時10分。まだ30分ほど時間がある。私にとっては初小牧コロナなので、ちょっとだけ探検しながら劇場前へとたどり着き、横にあるカフェで何も頼まずに密かに執筆活動に勤しんだ。
19時から飲み会開始。今日のメンバーは13人。その中で私がお初だった人は“ミルさん”と“らんちゅうさん”のふたりだけだった。らんちゅうさんは映画に詳しく、最近のもよく観ている。彼から、観ようと思っていた『13F』が「つまらないから観ないでよし」という情報を仕入れることが出来たのは貴重だった。だって今日から上映時間が昼間2回だけになっちゃったから、会社帰りには無理だもん。明日無理矢理時間を作って行こうかと考えていたところだったからね。
去年の末に“カウント50000達成記念”と銘打ってプレゼントなどを出したのだが、実はそれっきりになっているのが気になっていた。『トイ・ストーリー』の絵本が当たったミルさんに会うことが出来たので、ようやく渡すことが出来、少しだけ肩の荷が下りた。
「次の客が待ってるんだから、いい加減に帰れ」と言わんばかりに店を追い出されたのが22時。映画仲間と飲み会をやると話が尽きないため、いつもこのパターンだ。楽しいひとときをありがとうね、けーさく@管理人さん。
3月3日(金)
「今日は午後半休を取らせていただきます」と声高らかに宣言し、12時半に無事会社を脱出。みんなが仕事をしている時に、休みを取って堂々と街を歩いたり、堂々と映画館に入ったりするのって、何て気持ちがいいんでしょ♪ 目的の『シャンドライの恋』の劇場には平日の昼間なのに30人ほどの人が入っていた。平日の昼間っから映画を観られるご身分の人がちょびっと羨ましい。
『シャンドライの恋』は、家主である英国人音楽家のキンスキーに惚れられてしまった黒人の使用人シャンドライの物語。孤独でほとんど外出もせず、一日中家の中でピアノを弾いているだけのキンスキー。そんな彼に激しく求愛されるが、彼女にはアフリカで投獄されている夫が居た。「君のためなら何でもする」というキンスキーの言葉に「じゃあ、夫を刑務所から出して!」と答えるシャンドライ。もちろん、その場の勢いだけの言葉である。しかし、キンスキーはマジになった。家にあった調度品を次々に売り払い、彼女の夫を刑務所から出すための資金を作り始める。そして、ついには自分が大切にしていたピアノまでをも売り払ってしまう。それを見たシャンドライは…というお話。
この作品のベルトルッチという監督は『ラストエンペラー』を撮った人らしい。でも、私は『ラストエンペラー』を観ていないので、この監督が“巨匠”と呼ばれる所以がよく分からない。前作の『魅せられて』には、「監督がリブ・タイラーを前に暴走してるだけ」とコメントし、堂々とレベル1を付けさせていただいた。海外のレビューの中にはこの『シャンドライの恋』に対して「ベルトルッチの再生」というものもあるので、やっぱり前作『魅せられて』を観てヒドいと思ったのは、私だけではなかったのだろう。しかし、一転してこの『シャンドライの恋』は素晴らしかった。
映像のタッチが岩井俊二に似ていると思った。…という言葉は“巨匠”と呼ばれる人に対して失礼かもしれない。岩井俊二のタッチがベルトルッチに似ているというべきか。そんなことはどちらでも良いが、『Love Letter』以来、岩井俊二の映像感覚に惚れこんでいる私は、この作品の映像世界にも必然的にどっぷりとハマってしまった。その1カット1カットがとても芸術的だと思う。そして、極端に少ないセリフの中、映像だけで心情を語らせる手法も、実に私好みだ。そこまでセリフはひとつも無いのに、夫が拉致されたのを見て泣き叫ぶシャンドライの姿を映したオープニングのシーンだけで、私は既に涙していた。
愛していない人に愛されるということは、本人にとってもつらい。特に、キンスキーの思い込みはストーカー的で、はっきり言って迷惑である。しかし、キンスキーの想いは、やがて頑ななシャンドライの気持ちをも揺るがしていく。静かに、丁寧に、シャンドライの気持ちの変化が描かれて行く。そしてラストシーン、彼女はどんな決断をしたのか。どんな解釈も出来るような気持ちの悪いエンディング。この気持ち悪さが、私はたまらなく好きだ。「さぁ、あなたならどうする?」と問われている映画のようだった。 レベル4
3月2日(木)
レディースサービスデーだっちゅーのに残業。昨日は映画の日だっちゅーのに残業。この2日間で『マグノリア』『ノイズ』『ストーリー・オブ・ラブ』の3本を観ようと密かに目論んでいたのに、21時からのレイトにすら間に合わない状況で、結局1本も観ることが出来ない(しょんぼり)。こうなったら今日は徹底的に残業して、明日は絶対に午後半休を取って『シャンドライの恋』を観に行くのさ。そう思ったら、ちょびっと元気になった。
会社を出たのは23時だった。腹ペコだったので、ラーメンを食べて帰った。美味しいラーメン一杯で至福のひとときを感じられる、今日この頃…。
2000.2.1〜8
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