ドラゴン・キングダム プレミアム・エディション [DVD] ドラゴン・キングダム (製作年度: 2008年)
レビュー日:2009.9.7
更新日:2010.2.18
評価:★★★★
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解説(Yahoo映画より):
現代に暮らすカンフーオタク少年が、古代の帝国で巨悪に立ち向かうアドベンチャー大作。監督は『スチュアート・リトル』シリーズのロブ・ミンコフ。少年を導く戦士2人をジャッキー・チェンとジェット・リーが演じる。少年役は『ロード・オブ・ドッグタウン』のマイケル・アンガラノ。『キル・ビル』『マトリックス』のアクション監督ユエン・ウーピンのもと、アジアの2大アクションスターが華麗に舞うバトルシーンに注目だ。


カンフーオタクの夢

ボストンに住むカンフーオタクの少年ジェイソンが、姦計にはまって石にされた孫悟空を助けるために異世界の古代中国にはいりこみ……というなんだか少年マンガの世界にありそうなストーリー。
ジェイソン君、最初みんなが中国語を話すのでコミュニケーションが取れずに困り果てるんだけど、そこで出会った酔いどれ道士ルー・ヤン(ジャッキー・チェン)に「聞こうとしないからだっ!」と一喝されたとたん、会話がみんな英語になる、というところが、結局のところこの話は、カンフーオタク少年の夢(妄想?)の世界のできごとかもしれない、ということを暗示しているみたいで面白い。

どこでロケしたのか、どこまでCG合成したのかわからないけど、途中に出てくる山河の風景がとても美しい。

ジャッキー・チェンvsジェット・リーのバトルは確かにスゴイ。息の合った熟練者同士のアクションって、見ごたえあるものですねぇ。
それからこの作品ではふたりとも一人二役を演じているのですが、どちらもまったく別の役柄というわけではなく「論理的必然性のある二役」というところが面白い。ジェット・リーのほうはともかく、ジャッキーのもうひとつの役柄は最後になってようやく気がついた。見事な化けっぷりです。


【ここが美味しい名シーン】

いやもうこれも美味しいシーンがいっぱいなんですよね。

最初に見たのはジャッキーにハマりはじめたばかりの頃だったから、自分もカンフーやるようになってから見ると、ずいぶんまた見方が変わってくるものだなぁ、と思います。
最初はひたすら草刈り(というか藪漕ぎw)、というところから始まる修行シーンも、今見ると実に理にかなってるなーと思うし。

カンフーオタクだけあっていろんな技は知ってるけど、それを使いこなすためにはそのための身体作りからやらなければならないことを知らないジェイソン君、ルー・ヤン(ジャッキー)に向かっていろんな技の名前を並べ立てるけど、ルー・ヤンは彼の持つ器に注ぐ湯をあふれさせて、まず無駄な知識でいっぱいの頭を空っぽにしないといけないということを、「すでに知っていることをどうやって学ぶ?」といういかにも禅問答的な問いかけで教えるのです。

ルー・ヤンの指導の下、半泣きで「馬歩」の鍛錬に励むジェイソン君をあっさり「○○コ座りか」と評してしまう黙僧(ジェット・リー)の突っ込みも笑える。

でも最後、現実世界に戻って不良少年たちのボスを倒した瞬間のジェイソン君のポーズ、「ミラクル」新ボスお披露目シーンで腕試しを挑んできたふたりの子分と戦った時のジャッキーのポーズにそっくりなのよね。なかなか優秀な弟子じゃん(笑)。

そしてもちろん、最高に美味しいシーンはジャッキーvsジェット・リーのバトルシーン。「酔拳」の構えをとるジャッキーも、ワンチャイばりに衣の裾をバッとさばくジェット・リーも「うわぁ懐かしいよぉ」と感涙にむせびたくなるし……っていうほどファン歴長くないですが(笑)。
でも次から次へと繰り出される技の応酬からは、もう目が離せない。


【不死(immortality)ということ】

酔いどれ道士ルー・ヤンは中途半端な仙人。酔っ払ってる間は不死身らしいが、酒が切れると死んでしまう、らしい(笑)。
敵から逃げる途中、しんがりを守っていたルー・ヤンは背中に矢を受けて倒れる。近くの寺に運び込まれたが傷は重く、酒かあるいは不死の霊薬を手に入れなければ長くはもたない、と告げられたジェイソン君、はじめてこのチャランポランにしか見えなかった師匠に寄せる、心からの親愛の念に気づく。ワケありらしい家庭事情のため父親を知らないジェイソン君にとって、ルー・ヤンはいつしか父親のような存在になっていたのです。

枕元に付きっ切りのジェイソン君にルー・ヤンは、自分が不死になり損ねた中途半端な存在であることを打ち明け、「不死になって傷つくことも悲しむことも無い、そんな存在になるよりは、誰かを愛して尽きる命のほうがいい」と告げる。この時ルー・ヤンの目じりからすっと流れ落ちる一筋の涙……
うわー、ここもまたジャッキーの演技が光るところです。

実はわたしのとても個人的な感想ですが、この映画には、なんだか今世紀に入ってからジャッキーが出演してきた3つの映画、すなわち「メダリオン」「THE MYTH/神話」、そしてこの「ドラゴン・キングダム」で提起された「不死」という問題の答えの集大成がある、という感じがしているのです。 その話については激しくネタバレも含みますので、ページ変えます。読みたい方はこちらをどうぞ。


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