感染症の日本史 - つみかさね
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書名:感染症の日本史
著者:磯田 道史
発行所:文藝春秋
頁数:176ページ
発売日:2020/9/18
定価:880円 Kindle版
この本は新型ウィルス、コロナウィルス対策にも通じるノウハウ、事例などを歴史の資料平安時代の史書、江戸時代の随筆、100年前のスペイン風邪の事。政治家や文豪の日記など歴史の知恵を集めた本です。
昔のウィスルも初めて出てきた時は未知の新型ウィルス、コロナウィルスもやっぱり新型ウィスル、経験のないことでは同じ、そんな新型コロナに先人はどうやって来た。天然痘に対する国家鎮護の大仏建立、国分寺の設立、藤原不比等の息子達藤原4兄弟が天然痘にかかって無くなっている。日本の感染症の殆どが日本発ではなく、新羅、中国など外国からの伝染で流行っている。コレラなどはペリーの来航で流行りだした。
今回のコロナウィルスで参考になる事例はスペイン風邪、原敬総理も罹患している。結構重い、その他山県有朋(80以上で)、秩父宮は17歳位で、また昭和天皇の皇太子時代、政治家皇族なども罹患し、亡くなった人もいる。原敬総理は軍事費を拡張するために、その為の根回しで毎晩のように晩餐会等の食事、酒で体力も弱っていた。そして後遺症も含めて4,5ヶ月不調を訴えている。また不調で御前に出られなかったことも。
この時のスペイン風邪の発症は、シベリア出兵でシベリアに派遣した兵隊達が国内に帰還した時から流行していった。
世界の大量死主な原因
感染症
スペイン・インフルエンザ 5000万人 1948-20
ペスト(黒死病) 7500万人 1347-51
戦争
第一次世界大戦 900万人 1914-18
太平天国の乱 数千万人 1851-64
第二次世界大戦 5000万人 1939-45
ホロコースト(虐殺)
ナチのユダヤ人虐殺 600万人 1933-45
スターリンによる粛清 1200万人 1937-53
蒙古族による中国農民虐殺 3500万人 1311-40
こう見てみるとスペイン風邪は凄いウィルスだったんですね。今で言うところのインフルエンザだった。そしていろいろな人の日記とか、随筆とかを読んでみると口蓋(マスク)をすること。手洗いは推奨されていない。(まだ気がついていなかったことか)学校は普通に通っている。また習い事なども、図書館も閉鎖されていない。スペイン風邪にかかった人は隔離(自宅で)されて直れば出て行く。一度掛かった人は重要な役割を果たしていた。確率的に2度は掛からないので、病人の世話などを行っていた。一読の価値のある本です。
【本書目次より】
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第一章 人類史上最大の脅威
牧畜の開始とコロナウイルス/ペリー艦隊が運んできた感染症/スペイン風邪は波状的に襲ってきた ほか
第二章 日本史のなかの感染症――世界一の「衛生観念」のルーツ
「最初の天皇」と疫病/奈良の大仏は天然痘対策?/疫神を歓待する日本人/江戸の医学者の隔離予防論 ほか
第三章 江戸のパンデミックを読み解く
すでにあった給付金/薬をただで配った大坂の商人たち/上杉鷹山の患者支援策 ほか
第四章 はしかが歴史を動かした
「横綱級」のウイルスに備えるには/都市化とパンデミック/麻疹が海を渡る ほか
第五章 感染の波は何度も襲来する ――スペイン風邪百年目の教訓
高まった致死率/百年前と変わらない自粛文化/「「感染者叩き」は百害あって一利なし ほか
第六章 患者史のすすめ――京都女学生の「感染日記」
日記が伝える「生きた歴史」/ついに学校が休校に ほか
第七章 皇室も宰相も襲われた
原敬、インフルエンザに倒れる/昭和天皇はどこで感染したか?/重篤だった秩父宮 ほか
第八章 文学者たちのスペイン風邪
志賀直哉のインフルエンザ小説/宮沢賢治の“完璧な予防策”/荷風は二度かかった? ほか
第九章 歴史人口学は「命」の学問 ――わが師・速水融のことども
数字の向こう側に/晩年に取り組んだ感染症研究 ほか
本書より
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欧州各国のような「強制措置」ではなく「要請→自粛」という形です。「行政からのお願い」と「国民の自主規制」。法律家からは「法的根拠が曖昧」との批判もありますが、柔軟性もあります。この方式の吉凶はまだわかりません。衛生政策で有名な後藤新平は、「寝覚めよき事こそなさめ、世の人の、良しと悪しとは言ふに任せて」と詠みました。私はこの文章を書くときに、部屋にこの後藤の歌の掛軸を懸けていました。緊急時のリーダーは、世評は放置し、仁慈・良心に従って断行する必要があります。
この国には神が「八百万」もいて、神はカジュアルです。さらにいえば、?が許されやすく、世襲が権利を正当化されやすい。神話学風に分析すると、そんなこの国の特性もみえてきます。 また、人間が疫神を歓待する→疫神が人間に感染免除をしてくれる、という疫病神と人間の互酬=なれ合いの存在も面白いものです。日本人は疫病神さえ買収してしまうのです。そこには、疫病神に感染免除を期待する「甘えの構造」もありますが、疫病神との「共生」思想もみることができます。疫神は怖いが、歓待すれば買収・契約・交流できる「客人」であり、日本人にとって、疫神は仇敵ではなかったのです。
地球を一つにみて、最善と思われる対策事例があれば、どんなに手間でも、政府は、力の限り、それを真似たほうがいい」。これが歴史の教訓です。