玄 関 口 【小説の部屋】 【シンフォニーの食卓】 【CD菜園s】 【コンサート道中膝栗毛】 【MIDIデータ倉庫】

フィンランド・ラハティ交響楽団

日時
1999年10月10日(日)午後2:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
フィンランド・ラハティ交響楽団
指揮
オスモ・ヴァンスカ
曲目
《オール シベリウス プロ》
1.交響詩「フィンランディア」
2.交響曲第5番 変ホ長調
3.交響曲第2番 ニ長調
座席
1階B列14番(A席)

狼少年はピノキオになった

 世間では土、日、月と3連休のようですが、私は全部仕事でした。(16、17日も仕事です。悲しくなるぜ) それでもこのコンサートを聞きに行くため、私はまたもや狼少年になって午前で仕事を切り上げてしまいました。自分の鼻がニョキニョキと伸びていくのを感じましたが、気にしない、気にしない。

 今日のヴァンスカとフィンランド・ラハティ交響楽団がCDで進めているシベリウス管弦楽曲全曲録音ですが、それを聞くと今までのシベリウスとは少し違う音が聞くことができます。交響曲第5番についてはCD菜園sで取り上げていますが、実演ではいったいどんなシベリウスを聞かせてくれるのでしょうか? 非常に楽しみでした。

交響詩「フィンランディア」

 満場の拍手に迎えられて指揮者が入場。非常に大柄な体躯をしているのが印象的だ。
 演奏の方はオーケストラが最初から全力を出していて非常に好感を持てた。曲の解釈もオーソドックスで、この曲の物語性をほとんど強調しない純音楽的な演奏だった。そしてクライマックスではダイナミックにオケを鳴らし、カタルシス満点の演奏だった。
 オケの人達を見ると、1stヴァイオリンの人達の激しい身振りで弾く熱血ぶりに比べて、チェロの人達がクールに弾いていたのが対照的で面白かった。
 この時点でもうブラボーが飛び出していた。おやおや。

交響曲第5番 変ホ長調

 ヴァンスカとフィンランド・ラハティ交響楽団は交響曲第5番に関して初稿版と決定稿版の二種類のCDを出しているが、今回の来日では初稿版の演奏が目玉のひとつとなっている。
 とは言っても、大阪では決定稿版の演奏ですら珍しく、ぜひとも決定稿の方を演奏して欲しいと思っていた。
 で、プログラムを読んでみると、どうやら現行版の演奏だと書いてあり、ホッと胸をなで下ろした。

 冒頭のホルンがそろわず。これには少し残念な気がした。この曲に関してホルンの出来には始終不満を感じた。
 第1楽章に当たる部分での盛り上がりは、みっともない演奏だといきなりトップギアに入る感じがして聞く気をなくすが、この演奏にはそんなところは全くなく、違和感のないクライマックスだった。しかしその盛り上がりのボルテージ自体はそれほど高くはなく、もうちょっとガツンとやってくれるかと思っていたので、若干拍子抜けした感じだ。
 またCDでは不満の元凶のひとつだった、弦のpppにおける音量の絞り込みが実演ではくっきりと聞くことが出来て、ヴァンスカの意図を初めて解ることができた。最弱音でも音の粒がきりりと締まった、切れの良い音だ。このささやき声が順次重ねられていく所は美しくまたエキサイティングだった。この魅力を伝えられないCDはBISスタッフの力不足か、ヴァンスカの録音用演奏に対する認識不足のどちらかだろう。
 第2楽章に当たる部分では弦の歌い回しがとても良く、またアタッカで続けられた第3楽章に当たる部分になると彼らの自発心溢れた演奏が光り出すように白熱し、曲にのめり込ませてくれて大変良かった。
 最後の金管による鐘のような音型が、輪郭のはっきりしないドローンとしたもので、感心することができなかった。
 曲の最後に叩きつけられる6つの和音だが、最後の音で金管の縦が揃わなかったのが非常に残念だ。ここは全曲の決め所でもあるので、この失敗は痛かった。指揮者も少し憮然とした表情をした。(それでもこの部分での緊張感はただごとではない)
 情熱を傾けた演奏にいつまでも熱い拍手が送られた。

交響曲第2番 ニ長調

 さて、今日のメインである2番だが、曲の持つ深さからいくと5番をトリとすべきだ。しかし後期ロマン派の影響を残す2番も終楽章での盛り上がりが素晴らしく、こっちを最後にまわしたのもしょうがないと思えなくもない。

 演奏の方だが、第2楽章の第1主題から第2主題へと切り替わる箇所における長い間が息を詰まらせるような緊張感を漂わせたことが挙げられる。
 また、トランペットなど金管楽器をやや押さえ気味に吹かせていたが、個人的にはもうちょっと強調させても良いような気がした。
 緻密な音響を確保しながら、終局に向かってクライマックスを築き、ダイナミックレンジを広く取った演奏は最後に盛り上がりを見せ、曲が終わると同時に会場は大きな拍手に包まれた。

 このコンビのシベリウスは割とねちっこくて粘液質っぽく、それにダイナミックな表情をつける。これが今までに聞いたことのないシベリウス像を聞かせる原因となっているのだろう。
 今年になってこの曲を聞く機会が3回あったが、やっぱりサラステとフィンランド放送交響楽団の演奏が耳にこびりついている。今日の演奏はその次かな? 朝比奈と大フィルのものは大変みっともないものだった。

アンコール

 盛大な拍手に応えてアンコールを2曲やってくれました。

おわりに

 休憩時間ホワイエに寄った際、同席した青年たちが非常に興奮した口振りで「フィンランディアと5番が良かった」と語り合っていました。どうもどこかのオケで弦を弾いているらしく、「あのプルト数であの音量を出せるなんて」とか「あの場所での指揮者のキューサインは絶妙だ」とかプレイヤーサイドの意見が中心で、大変楽しく立ち聞きさせてもらいました。私はどうしてもコンダクターサイドの意見になってしまいます。
 また、当日プログラムに当たりの押印が入っている人20名にヴァンスカのサイン入りのCDがプレゼントされました。メチャクチャうらやましくて、交換所の横でずっと指をくわえて見ていました。ぐすん。

 総じて、将来性を多大に感じさせた演奏会でした。

 10月11日から16日まですみだトリフォニーホールで行われる、シベリウスの交響曲全曲演奏会もかなり満足度のある演奏会になるんじゃないかと思います。実際に行かれた方はどうでしたか? よろしければぜひ教えて下さい

 さて次回はアニマ・エテルナ・オーケストラです。開演がPM5:00と言うのがネックでとてもヤバイです。なるべく行きたいと思いますが、ダメかもしんない……。


コンサート道中膝栗毛の目次に戻る