IT技術でエコライフ

数値流体力学での室内暖房シミュレーションの変更点

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{{category 住宅}}

!!目的

暖房の温度分布は目で確認しにくいため、シミュレーションでビジュアライズし、どうしたら暖かく過ごせるのかを試したい。

そのシミュレーションを、スマホで行えるようにする。

!成果

 完成しました。 https://www.hinodeya-ecolife.com/test/cfd2015/index.php


!!検討の背景

エアコンの暖房では、部屋が暖まらないと言われることがあります。計算上は、ヒートポンプ機能を使って室外の熱を活用するために、灯油やガスのストーブと比べても、CO2負荷は小さくなるのですが、実際に暖まっていないのであれば、そもそも暖房の意味がなくなってしまいます。

実際に室温が低く、吹き出しで十分な風速がない場合には、床まで暖気が届かずに暖まらないこともありえます。また窓の断熱が弱く、窓で冷やされた空気が、冷たい風として吹き下ろしている(ダウンストリーム)場合には、床を伝わって冷たい風が広がり、エアコンから出される暖気が届かない場合もあります。

断熱ができていない家、広い家(特に天井が高い家・吹き抜けがある家)の場合には、エアコンが十分に機能しない可能性が多分にあります。

定性的には知られているものの、実際にどの程度の風量で送るといいのか、サーキュレータなどで改善の可能性があるのか、シミュレーションができたらいいなあ、というのが希望です。

!個人的な趣味

大気シミュレーションはコンピュータの能力を最大限活用している感じがあって、個人的にはとても興味を持っていました。雲がどのように形を変えていくのかなど、シミュレートできたら面白いだろうなと考えており、高校の時から8ビットパソコンで、流体力学のシミュレーションを試みてきました。しかし当時の8ビット機(コロック4MHz)では、24時間計算し続けても、ありふれた安定的な流れ解が得られる程度で、具体的な計算なかなか手が出せる代物ではありませんでした。

大学に入って、大型計算機を使わせてもらえる機会がありました。TSSを20秒ほど使って、1万セル程度の差分方程式を説いてみましたが、複雑な計算をするにはあまり基礎ができていないので、教科書的なシミュレーションで終わってしまっておりました。

!最近のシミュレーション

最近は住宅関係のシミュレーションソフトも充実してきており、まさに「風の吹き抜ける様子」や「日光の差し込む様子」などをシミュレーションして立体で示す、非常に面白いものが出てきています。とても興味深く眺めていたのですが、いずれもソフトが数十万円するなど、簡単に手を出せるものではありませんでした。

そんな中で、時代の流れなんでしょうか、OpenFOAMという、汎用の流体力学解析ソフトがオープンで開発が進められていることを見つけ、ついつい手を出してしまいました。安定流だけでなく、時間変化や、乱流なども扱え、実際に部屋暖房のシミュレーションをしている人もある様子でした。

一時期世界一であったスーパーコンピュータの「京」でも動くようになっているなど(性能向上のための調整はかなり必要なようですが)、オープンソフトでありながら、なかなか素性はよさそうなものです。

* OpenFOAM http://www.openfoam.com/
* penguinists OpenFOAM http://www.geocities.jp/penguinitis2002/study/OpenFOAM/index.html

ただ問題は、実際の部屋をモデリングするのに、3Dのソフトを利用しないといけなかったり、エアコンや窓などの共通パーツを、一つひとつ設計して設置しないといけなかったり、シミュレーションの準備をするのが非常に大変だという点です。事例を計算して、違いを示したりするのは、ビジュアルで示せて効果的なのかもしれませんが、簡単に条件を変更して、試してみるというのには、まだ敷居が高いようです。


!!検討の経緯

初出:2014年1月29日

経緯追加:2016年5月10日

!!行いたいシミュレーション

!エアコンの空気がきちんと床まで届くのか
 部屋の広さや、物が置かれているかどうか、部屋の温度、窓や壁の断熱状況などから、傾向が見えたら望ましい。

 複数の部屋でエアコン暖房をつけたときの温度分布を測定し、パラメータを調整してうまく再現できるようにする。この上で、パラメータを変えた時にどうなるのかを、その場に応じて設定ができれば、説明力がつくのではないか。

!窓のコールドドラフトを止めることはできるのか
 カーテンが有効だとされているが、どの程度の隙間があると有効に効かないのか。

 また、ついたてのようなものが省エネ機器として販売されているが、確かにコールドドラフトに対して堰のような役割をするために、風速を弱めることにはなりそうだが、窓面での流速・熱損失に影響が出るほどになるのかどうか。

 ただし、乱流が引き起こされて、流れ落ちた冷気が一定あたたまることで、部屋の快適性が向上する面はあるかもしれない。どうなのだろうか。


!サーキュレータが本当に機能しているのか
 感触としては有効そうだが、本当に有効なのか。有効だとしたら、どう設置したらいいのか。

!障害物がある場合にはどうか
 部屋は空間だけではなく、多様な障害物がある。これにより空気の流れはどうなるのか。

 実際のオフィスでは、机や床設置の資料などの熱容量が大きく、床を温めてもこれらが十分温まるまでは暖かい風が流れない。人がいるところから暖かい風が発生し、温まっていないものから吸い上げるなどの流れが必要かもしれない。風の通り道がない場合は難しい。

!エアコンの風向き

 下向きの場合と、斜め方向に噴出した場合。また風の幅も重要と思われる。狭い範囲を強風で出すのではなく、シーリングファンのように全般に流れをつくることができれば、風速は小さくでも床まで届けられる。


!!付記


! 2014年1月30日追記

 OpenFOAMで1週間格闘しましたが、どうにかエアコンシミュレーションのベースになりそうなものができてきました。数秒でシミュレーション結果が動画で出てくるので、パラメータをいじりながらかなり遊べます。

 まだ単純な、blockMeshのみですが。

https://www.facebook.com/yasufumi.suzuki1

! 2014年2月12日追記

 メッシュを細かくしたり、時間スケールを短くしたりなど、試しながらやっています。Windowsパソコンの、VMware上のlinuxで動かしているので、かなり遅いですが、メッシュを細かくしなければ(200メッシュ程度)、ほぼリアルタイムに計算結果を得られます。

 偽拡散が起こっている様子なのと、床・壁面からの熱流出がまだ計算に入れていないので、かなり理想的なエアコンとして計算されていますが、吹き出し温度が高かったり、送風が弱かったりすると、床まで風が届かない傾向などは再現できています。

 現在2Dでのシミュレーションですが、これだとエアコンの吹き込みが強力に効いてしまい、送風の多くがすぐに巻き込まれる現象が起こってしまいます。3Dにしないといけなさそうですが、もう少し挙動を確認してから進めたいと思います。

! 2016年1月28日追記

 OpenFoamでもいいのですが、メッシュ作成や計算など、かなり重厚なシステムを使わないといけないのが難点に感じていました。室内だけに限ることで、メッシュも簡単(8×8×8)にして計算ロジックを組み立て、空気の流れと温度をシミュレーションできるものを作成しました。それでもきちんと3次元のシミュレーションが、リアルタイムで表示できます。ダウンドラフトのシミュレーションでは、1時間のシミュレーションが、10秒程度で終わります。

https://www.hinodeya-ecolife.com/test/cfd2015/index.php

 メッシュ数が小さいことから、かなり計算スピードは速く、スマホでもそれなりに動作します。最近のパソコンはすごいですね。

 窓・壁の断熱性能を変えた場合のダウンドラフトの違い、衝立を使った場合の風の違い、ラジエントヒータを窓の下に設置した場合の効果、エアコンを強風・弱風にした場合の部屋の暖まりかたの違いなどが、ボタンひとつで設定してシミュレートできます。