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   ものを見るということ(10)  地平の月は大きく見える
 月の錯視 Moon illusion
  Why does the moon look so big when it is near the horizon ?
   地平の月は真上の月より大きく見える。 これは、心理学的錯覚です。
  月だけでなく,太陽でも星座でも起こるので,「天体錯視」とも呼ばれています。
  山などでも、雄大な山容を写したつもりが実感の十分の一ほどの山が写っていたりします。
  これは、写真のほうが正しい、人間は脳で補正した像を見ているのです。この錯視の仕組みについて
  アリストテレス以来、様々な仮説が立てられましたが、なぜ起こるのかは,完全に解明されているわけではありません。
  1962年,ロックとカウフマン(Rock, I. & Kaufman, L.)は実験により、 月までの見かけの距離が大きさの錯視を
  生み出しているという説を発表しました。この説は,教科書にも取り上げられ,一般的な説になっていますが,反証も
  多く出されています。(The moon illusion
   2002年,ロスとプラグ(Ross, H. E. & Plug, C.)は,これまでの研究の結果を総合的に検討し,月の錯視が単一の要因に
  よるものではなく,眼の位置、頭の位置,姿勢,地平周辺の構造物などの要因が総合的に関係しているのではないか,と
  推測しています。
  文献: 苧阪良二 1985 地平の月はなぜ大きいか—心理学的空間論— 講談社
  Ross, H. E., & Plug, C. 2002 The mystery of the moon illusion: Exploring size perception . London: Oxford University Press.
  
 
比較対照する構造物のない上空では、月は小さく見える? エビングハウス錯視
   この図では、空間を小さく四角く切り取ってあるので、錯視は起らないでしょう。現実には視野一杯 空間が広がっています。
   
   
  地平の月と真上の月は,なぜ大きさが違って見えるか? 日本心理学会 /  Perceived_visual_angle 視角による知覚 / 
  Summer Moon Illusion NASA / Moon illusion en.wiki 
 
 ロックとカウフマンの'flattened sky' 説 ( Lloyd Kaufman and James H. Kaufman )
Above: The 'flattened sky' model for the Moon Illusion. [ More ]   
   地平線の月が上昇した月よりも遠くにあるように知覚システムが応答する。
  人間が知覚する空間は、水平方向の方が、垂直方向より長い。地平線の月が、天頂の月より遠くにあると感ずる。
  月の視直径は約0.5度、腕を伸ばして指先に持った5円硬貨の穴の大きさに等しい。
  知覚される月の軌道の円弧は、仰角45度未満で、平坦になる。
  遠くにあると知覚されたものは、サイズが大きく補正される。
 
 
   エビングハウス錯視(小さい円で囲まれた円は、大きい円に囲まれた円よりも大きく見える
 
 Ebbinghaus illusion
 
 
  垂直水平錯視(垂直線は同じ長さの水平線よりも長く見える)バランスを取るため、水平線を引き延ばして知覚する。
  ヴント錯視 (Wundt illusion) /  Horizontal-Vertical Illusion (水平垂直錯視) / 
  知覚の恒常性(constancy) / size constancy(大きさの恒常性) / Subjective_constancy 主観的な恒常性 / 
  網膜に写った対象を、推定される、あるべき大きさ、形態、色彩に補正して知覚する。
  対象の手がかりが豊富なほど、恒常性は強く働き、手がかりが少ないほど弱まる。
 
 
 水平垂直錯視 Vertical−horizontal_illusion (en.wiki)
 
ポンゾ錯視  Ponzo illusion ( 1913年 )
 
 人間は物体の大きさを背景に依存して判断している。           
 錯視図形の遠近法感は、奥行きを意味する線の収束によって生み出される。 
 
MOON ILLUSION ILLUSTRATIONS & OBSERVATIONS ABOUT THE "MOON ILLUSION"
線画で見るより、テクスチュアーを付けた方が錯視が起こりやすい。
       風景などの距離の手がかりがあることで、奥行き感が生じ、月は遠くにあると判断される、遠くにあるものはサイズが
       大きくなるように補正される。
       
       
     地平の月が大きく見えるのは錯視であることは、判っていますが、何故そう見えるかについては、心理学の分野であるため、
    証明が難しく、決定的な説明は、まだ出来ていないのが現状です。おそらく最新のロスとプラグによる説である、様々な錯視
    要因が複合したものという説が、妥当なものであるように思えます。
       






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