書名:天地人(上)
著者:火坂 雅志
発行所:NHK出版
発行年月日:2008/12/10
ページ:292頁
定価:850円+ 税
書名:天地人(中)
著者:火坂 雅志
発行所:NHK出版
発行年月日:2008/11/15
ページ:333頁
定価:850円+ 税
書名:天地人(下)
著者:火坂 雅志
発行所:NHK出版
発行年月日:2008/11/15
ページ:282頁
定価:850円+ 税
「北越軍談付録 謙信公語類」に『輝虎(謙信)公の曰く。天の時、地の利に叶い、人の和ともに整いたる大将というは、和漢両朝上古にだも聞こえず。いわんや、末代なお有るべしとも覚えず。もっとも、この三事整うにおいては、弓矢も起るべからず、敵対する者もなし』とある。ここから題名の「天地人」となったようです。
主人公の直江兼続、少年の頃から才知並ぶ者なく、将来を見込んだ政景夫人の仙桃院によって、六歳の時に景勝の小姓となる。この時、景勝は十一歳。上杉景勝の幕臣としてともに謙信亡き後、上杉家を残すことに一身を捧げた武将。その行動の基本とするところは「義」「愛」。豊臣秀吉が亡くなった後の徳川家康の行いには「義」はないと、天下分け目の関ヶ原の戦いを企画する。
敗れたのちの行動にも常に「義」で120万石から米沢30万石と大幅に削減されても家臣をまとめて乗り切る。明治20年代東京の人口が70万人の頃、新潟県は170万人、いかに新潟県は産業が盛んで多くの人々を養っていたか。これも謙信以降の産業殖産、日本海航路、北国船、港。そして金山(甲斐の国武田氏より)を保有していた。そこに謙信の経済的基盤があった。それらを一気に失っても米沢の地に産業を興し、財政改善を行った直江兼続の力は大きい。後年(200年後)上杉鷹山が出て財政復旧をおこなったが、実は直江兼続の行った事を忠実に守った。ことによるともいわれている。越後の地はこんな人物を育てる土壌があったのかという気がします。
作者の火坂雅志は新潟出身の人。随分前から郷土の人物を書きたいということで、10年以上温めていたとか、作者の熱情が直江兼続に引かれているところが、また面白い。第三者的でないところにこの物語を熱くしているように思う。