書名:果ての花火
銀座開化のおもかげ草紙
著者:松井 今朝子
発行所:新潮社
発行年月日:2007/8/30
ページ:258頁
定価:1500円+税
明治時代の初め、銀座に洋館、煉瓦づくりの街に住む、旧幕時代の藩主、士族、岡っ引き、明治の功労者となった薩摩藩士のポリス、などが住まう煉瓦づくりの長屋に起こる事件を綴った短編です。松井今朝子は初めてですが、なかなか判りやすい語り口で江戸の街、人々を生き生きと描いている。はやりの西洋文明に被れる人々、そのはやりにはついていけない久保田宗八郎が主人公。31才の宗八郎は元士族、維新の時薩摩藩士として幕府郡を徹底的にいたぶった今は知事となっている石谷番隆をかたきと狙っている。明治の文明の衝突を下記の様な会話の中に何気なく混ぜている。なかなか含蓄ある言葉が多い。今の世にも十分通じる視点が一杯あるように思う。
本文より
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「ほう、耶蘇の神は人を世話好きにするらしい」
「汝が他人からして欲しいと望むところを他人に施せ。マタイの福音書にそう書いてあります。」
「己の欲せざるところは人に施すなかれ、これが孔子の教えだ」
「神を信じるより、人を信じろ」