書名:ウェブ時代
5つの定理
著者:梅田望夫
発行所:文藝春秋
発行年月日:2008/3/10
ページ:269頁
定価:1300 円+ 税
ウェブ時代で活躍する第一級ビジョナリーの名言を集めて、ウェブ時代をリードしている人達の一つの法則、定理をまとめた本です。著者がシリコンバレーを舞台にしてコンサルタント業を行っている。その仕事の中でベンチャー企業の創業者、アップル、ゴーグルなど巨大企業になったCEOなどと付き合ってきた中で彼等の発する名言を集めて、ウェブ時代特にシリコンバレーを引っ張っている人達の典型を示している本です。その代表としてグーグルを詳しく説明しています。
今ネットの世界で活躍している人達は理系の工学博士(高学歴、そして博士号をとるまで一つのことに集中して成し遂げることが出来た人を中心に回っているようです。またレベルの高い人が同等の人と会うことによってそれぞれが触発されて凄いことをやってします雰囲気がシリコンバレーにはある。いままでネットで成功してきてきた人達を例に説明しています。
技術、科学は10倍100倍の効果を生む、10%のアップだとかではなく、桁違いの影響を与える。したがってネット、ウェブ時代を否定するような流れ、技術に賭け得策ではないという。またレベルの高い人たちが出会うことによって相乗効果を上げる。効率が格段に上がる。したがって仕事をやる場合でも根っこのところで信頼、尊敬できる人と、お互いを高めあえる人としか仕事を一緒にしない。(成功の鉄則)
等々理詰めに考えて、完璧、完璧を追求している論理展開で最初はそれなりに納得もしながら読んでいたが、段々凄い嫌悪感を感じてきた。何故だろう!ナチスの選民思想のように感じてしまう。優秀な人(あくまで工学、科学系極狭い範囲)と言っているところに何かイヤミを感じる。世の中にはそんな人ばかりではない。馬鹿もいれば賢もいる。技術、科学の進歩、ウェブの進歩というのが本当に世の中に幸せを持たせる事が出来るのか。
どうも将棋の世界のように理詰めの世界では通用しても詩、和歌、庭、風景、骨董、絵画、音楽等、感性の世界が結局人を幸せにしてくれるような気もする。このあたりは永遠のテーマでしょうね。出来過ぎた絵画は面白くない。どこか抜けているような余裕、遊びがある。そんな世界とは全く反対の世界を描いているように感じる。
より良い世界を作ることが良いことなのか?その辺りはよく分かっていないし、コンセサスの得られる話でもない。どっか独断的な、強調しないと注目されないと言った気負いが感じられる。これはアングロサクソンの中で仕事をしているといつの間にか著者が知らないうちに身に付けてしまったアクのようなものかもしれない。これが鼻につくように感じてしまう。
ただ、シリコンバレーをリードしている人たちの考え方、思想、戦略、やり方の実態をよく観察しているように思う。果たしてこのやり方だけかというとそうではない。歴史が証明している。ただウェブ時代の流れで変わって来ていることは事実ですね。30年後は全く違った方向に行っているかも知れない。
瞬間風速的な風景を垣間見せてくれるウェブ時代をどっぷり浸かった中で観るか、ちょっと離れてみるか、自分の立ち位置によって同じ名言(迷言)でも違って感じされるものですね。
本書より
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・会社は命令によってではなく質問によって走らせる
・全員イエスでなければ採用しないグーグルの人材採用
・ipodの裏側はなぜぴかぴか光っているのか
・一つのアルゴリズムで完璧な答えを出す精神
第一の定理
「アントレプレナーシップ」不確実な未来を楽しむ精神を私たちはいかにして養うか。自らの未来を創造する上でいちばん大切な精神的な構えについての話
第二の定理
「チーム力」どんなに優れた人も一人では何も出来ません。自分に出来ないことが出来る人たち、自分にない能力を持った人たちと、どうチームを組んで行かない仕事をするか。
第三の定理
「技術者の眼」
二十一世紀のビジネスは、科学と技術を抜きにして考えることはできません。最先端技術の意味づけとそれを索引する技術や発想をしっかりと理解する必要があります。
第四の定理
「グーグリネス」
グーグリネスとは、ウェブ時代をリードするグーグルという会社の気質やグーグルらしさを表す言葉です。
第五の定理
「大人の流儀」
世代間の融合や相乗効果を追求しなければ、未来の創造はできません。「成熟した個としての仕事の生き方のスタイル」