■本の評価は、☆☆☆☆☆満点
☆☆が水準作
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3月23日(土) ゴッドハンド健在なり
・本日も、出勤。とほほ。出た。笠井潔『オイディブス症候群』3200円、860頁。帰りが一気に重くなる。
・先日、掲示板で、山風の知られざるを短編「無名氏の恋」について後藤さんから情報提供があり、すかさず、O氏、いやさ、おげまる氏が解明し、新たに短編「わたしのえらんだ人」を発掘したばかりだというのに、また、おげまる氏から新着情報の提供があった。
・一つは、短編「魅入る」の発見。MEN’S CLUB 第28集(昭和37年6月)掲載。
・さらに、「飛ばない風船」(初出違い)、「祭壇」(初出発見)、「痴漢H君の話」、「ダニ図鑑」の初出関係の情報を戴く。
・さらに、さらに、「漫画アサヒ」(ソノレコード出版)という雑誌の昭和38年6月号に載った次号予告に、風太郎の名前があり、「毎回長編読切一挙掲載 第一回 淫術/山田風太郎」と掲載されているとのこと。A5の月刊誌からB5月2回刊行にリニューアルする旨の予告だが、次号が実際に刊行されたのか、調べがつかなかった由。中絶して、後の忍法帖のいずれかになった可能性もある。ゴッドハンド健在なり。
・『達磨峠の事件』の発刊や、最近、小林文庫オーナー、後藤さん、おげまるさんにいただいた情報を山田風太郎作品リスト及びカウントダウンに反映。カウントダウンの方は、単行本未収録が(新たな発見作を覗けば)、2つの、リレー長編の一部を残すのみなので、もうすぐファンファーレが聞こえてきそう。
・おげまるさんから、少年探偵小説の部屋の風太郎の部分に訂正項目が増えたので作品リストの方で管理してほしいというの申出があり、「風太郎の少年物」の方で管理することにしました。
3月21日(木・祝)
・深夜帰宅の連続で、ひいひい。ところで、ほいほい。
・補遺編で、とりあえず、未読の6編「疾風怪盗伝」講談調の語り口の現代悪党物。物語に似つかわしくなく、なぜか暗号が絡み、最後はフランス暗黒映画風という怪作。「死人館の白痴」トリックのある本格編。犯人の悪意と壮大な企図がまぶしい本格編。これだけ取り出したら、傑作の部類だと思う。惜しむらくは、山風作品で同じトリックを使った作品が複数あること。「片目の金魚」軽快な語り口の千慮の一失物。「無用な訪問者」常人の思いもつかぬ復讐を成し遂げる男を描いたショート・ショート。「幻華飯店」戦時中の食糧不足の記憶が現代とクロスし、深淵を覗かせる奇妙な味。「幸福」女性誌に掲載された口絵つき600字ショート・ショートという。超短編ながら余韻深い。
・MYSCON3の深夜ゲリラ企画で、日下三蔵氏を囲んで「山風追悼」をやることになりそうなので、ご関心のあるむきは、是非。
3月9日(土) 補遺編発刊!
・仕事やら何やらで疲れ気味のところに、『山田風太郎ミステリー傑作選10 達磨峠の事件』が届いて一挙に覚醒。厚さ780p、全35編うち29編が単行本未収録、という待ちに待った超レアトラック集だ。まさに、日下三蔵氏の執念の編集の賜物。深く頭を垂れるばかり。
・「宗俊烏鷺合戦」の初出について、小林文庫オーナーから追加情報。「猖奇」は典型的なカストリ雑誌で、他の執筆者は、名前も知らないような作家ばかりとのことです。
・さあ、読むぞ。
3月5日(火) 「宗俊烏鷺合戦」初出
・日曜日、仕事のついでに「HMM」「彷書月刊」、ネビル・シュート『パイド・パイパー』等購入。
・「彷書月刊の末永さんの連載、城田シュレーダーは、城戸禮なのか、興味をそそる。これから真相が明かされそうなところで、次号に続くとなってしまうのが、もどかしくも嬉しい。城田シュレーダー名義の短編「復讐鬼」(「犯罪実話」(昭7.6)は、建物の見取り図が入った密室物らしい。これは、リストにいただき。森レオンという日独混血の超人型名探偵キャラをもっていたというのにも驚く。
・『現代思想』臨時増刊は、なんとプロレス特集。巻頭で、ターザン山本と香山リカが対談している。これでいいのか。流智美のインタヴューで、プロレスの起源を追及している人が、日本に2人、オーストラリアに2人、アメリカに8人、計12人いて皆知り合いだというのを読んで、何事も深い世界というのはあるもんだと思いました。
・小林文庫オーナーから、大変貴重な情報を戴く。
先日購入した古雑誌に、山田風太郎の作品「宗俊烏鷺合戦」掲載されていたとのこと。掲載誌は、「猖奇」第5号(昭和23年12月25日発行 第2巻第5号(ママ)
発行所 大衆文学研究会 発売元 株式会社オール・キング社営業部(岡山県上石井奉還町三六四))とのことです。山風最新の書誌である「文芸別冊 山田風太郎特集」(日下三蔵編)においても、従来どおり、昭和25.8「面白倶楽部」が初出とされており、本作は、それより2年近く早く発表とれていたことになる。ごく初期の作品がこういう雑誌(カストリ誌?)にも出ていたとすると、まだ知られざる作品や、初出発見があるのではないかと期待したくなってしまいます。「猖奇」って、グーグルで検索しても一つも出てこないですよ。オーナー、さすがです。
3月2日(土)
・嵐山さんのところを見てたら、『白の恐怖』の復刊は見送られた模様とあり、光文社の風太郎ミステリー傑作選の補遺編は大変なことになっている、とある。ソースは?とあちこち探してたら、当掲示板じゃないですか(←莫迦)。日下さん情報提供ありがとうこざいます。下の方にあると気づかないことがあるんですよね。『白の恐怖』見送りは残念だが、補遺編のラインナップ凄いの一言。
・MYSCON3受付担当、おーかわさんからオーダーあり。実現すれば面白そう。
3月1日(金) 『細工は流々』
・受付開始前に帰宅し、3月末のMYSCONに参加申し込む。
・本日の本は2000年4月8日にパラサイト・関のレヴューあり。同感であまり書くこともないが。
・「細工は流々」エリザベス・フェラーズ(創元推理文庫/99.12('40))
トビー&ジョージのシリーズ二作目。『猿来たりなば』『自殺の殺人』がどちらも抜群に面白かったフェラーズの邦訳第三弾。トビーを訪ねて金を借りていった娘は、翌日殺されてしまう。トビーとジョージは真相を探りに田舎屋敷に乗り込むが。
フェラーズの語りの作法には、どことなく寡黙というか、ストイックなところがある。本書で、お人好しすぎて、それゆえ、はた迷惑でもある娘ルーが冒頭で魅力的に描かれながら、次の章ではあっさり殺される。トビーは、表だって悲しみはしないが、トビーの行動にその心情は窺えるのだ。俳句的というかハードボイルド的というか。ごてごてとした叙述をしないという点では、解説の杉江松恋氏のいうところの「言い捨て」の魅力というのは、的を得た言い方と思う。この語らない、という語りの作法は、プロット構築の面にも現れていて、謎解きの風呂敷を大げさに広げることはしない。一癖も二癖もある登場人物を操って、二重三重の迷彩を施してくるが、奧に鎮座しているのは、相当に大胆である意味恐ろしい真相である。迷彩の一つとして、屋敷には、密室をはじめミステリのトリックが多数仕掛けられており、ポスト黄金時代の爛熟を感じさせもするが、その趣向は判るものだけ判ればいいという、一種の開き直りも感じさせる。語られないという点では、ちっちゃくて見栄えのしないジョージの行動の意味が、また語られない。ハーポ・マルクス的といいたくなるほど、ジョージは、この小
説の中で一体何を考えて行動しているのか判らない。特に、小説の半ばから耳に脱脂綿を詰めるという意味不明の行動が、結末に至って探偵側の仕掛けたトリックとして燦然と輝き出すのは、作者の語りのストイシズムが大いに役立っていると思う。名手が放つ巧妙な細工物。仕上げをごろうじ。
2月28日(木) 『将棋の子』
・『怪奇探偵小説名作集1 小酒井不木集』(ちくま文庫)戴く。ありがとうございます。全5巻の「怪奇探偵小説傑作選」に続く5巻シリーズとなるとのことで、「傑作選」と「名作集」とはどう違うのかという疑問はさておき、嬉しい限り。解説の日下三蔵氏によると今回の5巻が好評なら、さらに戦後作家も準備されているようなので、是非とも続いて欲しいものである。小酒井不木なら、この人というわけで、もぐらもちさんのサイトも紹介されています。
・『将棋の子』 大崎善生(01.5/講談社)
何でも平等の現代日本で、天才幻想が生き残っている場所といえば、将棋の奨励会は間違いなくその筆頭に挙がるだろう。全国の選りすぐられた将棋の天才少年たちが集結し、日夜生き残りをかけてしのぎを削る。奨励会会員は、プロ棋士のひよこだが、21才までに初段、26才までに四段にならなければ、退会という厳粛な掟がある。奨励会の修業は、一般社会に出ると無に近い。敗者たちは、何度も価値観の転換を迫られ、挫折を繰り返す。この本は、勝者も敗者も見続けてきた人間による奨励会のノンフィクション。著者は、札幌南高の出身、「将棋世界」の編集長を続けてきた人で、早逝した村山聖の生涯を描いた「聖の青春」はベストセラーとなったという。著者は、小学生のときにクラスメイトに勝ちたい一心で、札幌の将棋道場なるものに顔を出す。そこでは、自分より年下のあやつり人形のような少年が大人たちを将棋でひれ伏せさせ、扇子をパタパタと仰いでいるという奇妙な光景を目撃する。少年は三段で、将来を嘱望されているという。クラスメイトに勝って、鬱憤を晴らした著者は、それ以来将棋に関心がなくなるが、早稲田の学生時代、将棋の世界にはまり込み、就職先も日本将
棋連盟となる。そこで、奨励会の一員となっていたのが、道場で見た少年ね成田英二だった。少年をプロにするために、両親は東京に移り住み支えるが、最初は順風満帆だった将棋人生が狂っていったのは、羽生善治ら昭和57年組といわれる天才集団の出現だった。成田は、四段を前にして、彼等に追い越され、敗者として奨励会を去っていく。息子がプロ棋士になることだけを望んでいた母は癌に倒れる。奨励会当時、成田に兄弟のように接していた著者は、退会後、十数年ぶりに、成田が苦境に陥っているのを知り、札幌へ向かう。借金で首がまわらなくなって身を隠していた成田から、聞き出したのは、奨励会退会後の壮絶なまでの半生だった。成田の半生を縦糸に、様々な敗者のエピソードを挟み込んで、語られるのは、苛酷すぎるほどに勝者と敗者が明確な世界。挫折した男たちのその後は、様々だが、天才としてもてはやされ、「体中が総毛立つような焦燥感」を経て、捨てられていった男たちのその後の戦いは胸に迫る。全体に流れる文学的感傷のようなものは趣味ではないのだが、著者にしか書き得ない世界をどうしても書いておきたいという熱意が伝わってくる迫真のノンフィクション。札幌
オリンピック前後の空気感みたいなものも、同郷の人間として懐かしい。
2月27日(水) 『白の恐怖』
・『白の恐怖』 鮎川哲也('59.12/桃源社(書下ろし推理小説全集10)) ☆☆☆
やった。どうやら間に合ったらしい。昭和ミステリ秘宝シリーズで、『白の恐怖』復刊と、風の噂で聞きつけて、早く読まねばとあせっていたものの、手に取ることがためらわれていた一冊。学生時代、誰かから巻き上げて、それ以来20年間、積みっぱなしだ。フクさんとそのうちクロスレヴューをやりましょうとかいっていたのも、もう何年も前だし、復刊話がなければ、ツン読慣性の法則により、永遠に飾りっぱなしだったかもしれない。ありがとう復刊。なんでも、ギリギりにならないとやらない男だが、今回は間に合ったぞ−。それにしても、今まで放っておくとは、まったくもって大莫迦者であることよ。雪の山荘で繰り広げられる連続殺人劇。感想を一言でいうと、「殺しすぎだ、鮎川」か。サクサク事件が起こるというテンポの良さも、ラストで登場する星影龍三の推理が軽量なのも、中編の枚数なのに人が死にすぎるところに起因しているのではないかと思われる。でも、誤導のテクニックにうまく乗せられて、万国旗が出尽くしたシルクハットの中から鳩が飛び出すような驚きがあった。やはり、熟成させておいただけのことはある。と日記には書いておこう。長編『白樺荘事件』に全面
改稿されると聞いて幾星霜。その日は、訪れるのだろうか。併録されている短編「影法師」は、推理作家クラブ「金曜会」の帰り、同業の薔薇小路棘麿から聞いたという奇譚という構成。初出は、中川透名義で発表されたらしいので、なんだか入り組んでいる。満州での若いロシア人男性との間の友情と、女性を巡る破局をドッペルゲンガー幻想を交えてリリシズム豊かに描いた犯罪譚の佳品で、この作家のもう一つの側面をよく示していると思う。
2月26日(火) 『ロウソクのために一シリングを』
・芳林文庫の目録をみると、博文館と同社の雑誌「奇譚」の特集をしている。なんでも、博文館の編集者の日記の入手により、今まで不明だったことが明らかになったようで、個人の日記といえども侮れないものである。昭和13年10月には「少年雑誌の大弾圧」があった旨記載されているらしく、用紙事情ゆえなのか、なんとなく気になるところ。
・本日の作品には、パラサイト・関2001/1/8の項にHMM連載時の丁寧なレヴューがあります。連載小説は、本になってから読もうと思うのが我ながら二重投資でもったいない。
・『ロウソクのために一シリングを』ジョセフィン・テイ(ポケミス/2001.7('36))
『時の娘』で知られる英国女流のテイ名義の第1作(別名義の長編ミステリが処女作としてある由)。ユーモアとウィットに富み、行き届いた観察を見せる筆致は、数行ごとに余裕の笑みがこぼれてくるようで、女流には珍しい大人(たいじん)の風格たっぷり。タイプはやや違うかも知れないが、セイヤーズと比べたくなる。
避暑地の海岸で発見された著名な映画女優。容疑は、彼女のコテージに逗留していた青年にかけられるが、警察の目の前で逃亡。グラント警部の必死の追跡のうちに、青年の容疑にも疑問が生じてくる。
遺産を蕩尽しつくした青年があてもなく佇んでいると、女性の車に拾われ別荘に招待され、しかも彼女は世界的な大女優だった、というおよそありえない(しかし英国伝統風の)シチュエーションをなんとなく信じ込ませてしまうところが、作者の力量。女優仲間や夫、取り巻きの連中が個性豊かに描き出され、青年の無実を信じて活動する警察署長の娘のやんちゃぶりも飽きさせない。ただ、結末に向かって、お話の方はやや失速気味。提示される意外な犯人と動機は、この時代としては大技だったかもしれないが、今となっては小粒になってしまった感が強い。タイトルが匂わす過去の真実が曖昧のまま、登場人物たちに様々に評される女優の像も結末に至ってもフォーカスを結んでこない点は、はぐらかされたような印象を受ける。
ヒッチコック「第三逃亡者」(未見)の原作とのことだが、「ヒッチコック−トリュフォー」を見ると、殺人容疑をかれられた青年、というところだけが同じでまるで別の話のようだ。
2月25日(月) 『巴』
・この前、届いた「住宅なんたら」という本差し上げます。というメールに続き、「心の病」のマンガ差し上げますというのが同じところから送られてきた。要は、宣伝ししてほしいということらしいのだが、第二の韓国海苔なんて声もあって、本を扱うサイトには広く送られているらしいものと察せられる。これが、ミステリなら喜んで貰っちゃうのだが。
・今日のタイトル「巴」という漢字は、よく見ると可愛いですな。
・『巴』 松浦寿輝(01.5/新書館) ☆☆☆
帯に大きく「形而上学的推理小説」の文字。乱歩の「幻影城」で「形而上」という言葉を知って以来、この言葉には弱いのだ。しかも、作者が芥川賞作家で、詩人でもあるということで、期待値は高かったのだが、「推理小説」ではなく、都市迷宮小説の収穫というか、まあ、そんな感じの小説。パブル崩壊の余波で失職し、シャブ漬けになった過去をもち、今は裕福な人妻のヒモのような形で東京の片隅に隠棲している「わたし」は、知り合った書の大家の老人の家で、孫娘を主人公にした映画の制作の話をもちかけられる。わたしは、美少女朋絵(!)に興味を惹かれるが、トラブルに巻き込まれ、老人らと関係を絶つ。人妻との別離や新規まき直しの就職のエピソードを挟んで、わたしは、再び老人らとの関わりをもつことになるが、老人も別れた人妻もどこかで繋がっており、わたしは、抗いがたい運命の罠に落ちていく。雰囲気と描写の犀利を味わうべきで小説で、ストーリーを書く意味はあんまりないかもしれない。根津周辺など東京の古い面影を残す街並み、「巴」に関する思弁、陵辱される美少女と道具立ては多様だが、物語は、おぽろに包まれ、どこかへ求心していくわけではない。ラスト
近くで、少し伝奇SF的な展開をみぜるが、こういうネタなら牧野修の方がずっと巧い、と詮もないことを思ってしまう。意外に、描写に常套句が多用されるのも、やや期待はずれ。しかし、これもまた、美少女。美少女は、現代男性作家の宿痾かもしれぬ。
2月23日(土) 牙王は寝て待て
・霞流一氏から、本を戴く。『フォート探偵団ファイル@ 牙王城の殺劇』(富士見ミステリー文庫)。1月の本なのに、最近出版を知って慌てていた本。大概、普段近づかないような場所に置かれているからなあ。ありがとうございます。腰巻きは、
「2001バカミスキングの著者が贈る最新作/天守閣消失!?/犯人は空飛ぶワニ? UFO? 奇妙奇天烈な事件に、超常現象大好き三人組が真っ向勝負!」
昨年大受けだった「スティームタイガーの死走」に続く本だけに、ジュブナイルといえども、期待度もも高い。今回はワニで、動物づくしも続けられている模様。同封されていたコメントがあまりにも面白くて御紹介したいのだが、二十秒ほど考えて私信ゆえ公開を見合わせる。ああ、残念。関つぁん用にも、一冊戴いたのだが、460円の本ゆえ送料が数倍につきそうで、どうしませう。アメリカに富士見ミステリー文庫は、入っていないか?
・芳林文庫の目録届く。これからゆっくり見よう。
●密室リスト追加
辻 真先 『超特急燕号誘拐事件』、斉藤 栄『花嫁川柳殺人事件』、『雪の魔法陣』、森村誠一『黒魔術の女』、法月倫太郎「中国蝸牛の謎」、山村美紗「京都小犬土鈴殺人事件」(以上、TACさんより)、井上ひさし『四捨五入殺人事件』(やよいさんより)、仁木悦子『冷えきった街』(おげまるさんより)、長井彬『萩・殺人迷路』
2月23日(金) 『比翼』
・2月は逃げる、というがもう逃げられっぱなし。3月も先が思いやられるなあ。
・『比翼』 泡坂妻夫(01.2/光文社) ☆☆★
職人もの、奇術物、怪異譚、恋愛譚の4種から成り立つ、お楽しみ短編集。というか、帯に「奇術探偵 曾我佳城全集」で「このミステリーがすごい」2001年度版で第1位と謳われており、ジャンルは揃わないが出してしまえという便乗出版っぽい。奇術もの以外も、ほのかにミステリの香りが漂うところは、斯界の重鎮として枯淡の境地か。純ミステリといえるのは、意外な凶器を扱った「赤いロープ」と、「記念日」だけだが、タイトルも構成も決まっている奇妙な味の表題作、若き日の恋愛を扱って味わい深い「風神雷神」、江戸時代奇術物「胡蝶の舞」んど印象に残る短編が多い。ありがちかもしれないとはいえ、濃厚なエロティシスデムと恐怖が強烈な「思いのまま」がベストかな。
2月17日(日) 『アフター・ダーク』
・伊藤秀雄『明治の探偵小説』(双葉文庫)。このお高い本が文庫化とは、ありがたい。連城三紀彦『白光』(朝日新聞社)。腰巻に「連城ミステリーの最高傑作」の文字、これも楽しみだ。
・『アフター・ダーク』 ジム・トンプスン(01.10('55)/扶桑社) ☆☆☆☆
元ボクサーのビル・コリンズは、わけありの放浪生活の途上、立ち寄ったバーで、魅力的な未亡人フェイと出逢う。フェイとの邂逅は、ビルを資産家の子供の誘拐という犯罪劇に引きずり込むが・・。トンプスン中期の作品。
どうして、ジム・トンプスンの主人公たちの独白は、こうまで読み手の心をざわめかせるのか。本書の主人公ビル・コリンズは、「ポップ1280」の悪くて、嘘つきで、インモラルで、という主人公とは違っている。主人公は一種の精神疾患を抱えており、一見すると無神経で無理解な周囲の犠牲者であるのだが、不安や怯えの中、無垢と虚言と狂気と正気の間を継ぎ目なく移行していく不安定な生き物である点では、トンプスンの他の主人公たちと共通する。ビル・コリンズは、一人語りをしつづけながら、自らも見定めがたい己の姿を読者に露呈させていく。この主人公の特異な存在性こそが、ジム・トンブスンの真骨頂なのかもしれない。冒頭で、さりげなく言及される主人公の疾患である「コルサコフ症候群」というのは、記憶障害の一種らしいのだが、実は、単に記憶だけの問題だけではなくて、いま自分がある過去からの時間の中での定位、生活史の中での自己の定位が壊れるような症状を意味するらしい。実に、ジム・トンブスン的ではないか。
ビルは、これまた生のさなかで生き惑うファム・ファタルに導かれ、運命の轍に引きずり込まれざるえない。この物語の前で読者は傍観者でいることはできない。90分でエンドタイトルが降りるフィルム・ノワールのような単線的な犯罪物語にもかかわらず、読者と臍の緒がつながっているような男が呑み込まれる迫真の物語に、強烈に感情は揺さぶり続けられる。犯罪への導入から、身代金受け渡しのシーン、やや甘めかもしれない結末まで、凡百の物語とは、質が違うサスペンスに翻弄され続ける。またしても、天才作家の技巧を超えた強烈なパンチにKOされる。一撃の刻印は、永いこと読者の胸から消えないだろう。
2月14日(木) 『騙し絵の檻』
・昨日の池田満寿夫に、小林文庫ゲストブックの桜さんに反応いただいた。クララさんというのも気になりますね。
・『騙し絵の檻』 ジル・マゴーン(00.12('87)/創元推理文庫) ☆☆☆☆
昨年の本格系の話題をさらった感じのある本書。幼ななじみの人妻を殺害し、さらに事件の真相をつかんだと思しき私立探偵を殺害した罪で、16年服役した男が故郷の町に帰ってきた。真犯人を探し出し、復讐を遂げるために。男の再捜査に合わせて、カットバックが多用され、事件に関わる人物の証言も一見ランダムに配置されるため、事件の全体像は、容易に浮かび上がってこない。読者は、画家の点描が徐々に全体の構図を描き出す場に立ち会っているようなもどかしい思いをしながら、霧の中を彷徨うとことになる。朦朧法とでもいうその語りの裏には、「パーフェクト・マッチ」でも鮮やかに決めた、語りの技巧によって、読者が気づいてもよい陥穽に気づかせない、作者のしたたかな計算がある。事件の再現に鼻面を引き回されているうちに、見事な「騙し絵」が完成してしまうのだ。特に、本書は、表面上派手なところのない事件に、結末で見せる逆転の構図と「論理的にあり得ない××」という二つの骨太のアイデアを盛り込み、さらに謎解きの場面で容疑者の犯行の可能性が次々に否定されていくという見せ場も展開した、現代本格の一つの達成点ともいえる出来映えだと思う。
個人的嗜好では、一度関係者の関わりを整理し、ダイヤグラムを組み建て直し、より縛りをきつくした上で、美しき補助線が顕れるとなおアイデアが引き立ったような気もするのだが、これは望蜀の類か。心を失った男を主人公を描いているにもかかわらず、甘さを含んだ現代風の「二人で探偵を」になっているのは、作者のクリスティ嗜好ゆえか。
2月13日(水) 『冷えきった週末』
・『「新青年」傑作選』(光文社文庫)で、幻の探偵雑誌全10巻が無事完結したことを言祝ぎたい。本巻の目次に並ぶ作家のマイナーぶりも凄い。100p以上もある巻末の作家別作品リストは、意外な顔もあり、眺めているだけで面白い。ん?池田満寿男の名が載っている。1930.12の作品。まさかとは思ったものの、検索してみると画家の方は34年生まれでした。
・『冷えきった週末』 ヒラリー・ウォー(00.9('65)/創元推理文庫) ☆☆☆
随分昔『失踪当時の服装は』を読んだだけのウォー。『夜明けの睡魔』で瀬戸川武資は、「忘れられた作家」というタイトルを付けつつ、本格度の高さや現代ミステリへの影響を称揚してたっけ。ここのところ次々と翻訳が出ている。名士たちのパーティから人妻が姿を消し翌朝死体で発見され、同じ席にいた大富豪が失踪しているのが判明。とらえどころのない事件にフェローズ署長の捜査が続く。2pにぎっしり詰まった登場人物表に腰がひけるが、主要人物は限られており、案ずることはない。105項目のデータ提示が版元の売り物になっており、データを生かした結末で意外な真相が明らかにされるものの、フェローズの推理は厳密なものではなく、一つのありうべき可能性の提示に近い。意外性を狙う余り、結末までに構築した世界とややかけ離れてしまった感あり。大人の風格漂うフェローズのキャラクターとそこはかとないユーモアが、地道な捜査行の良いアクセントになっている。捜査の流れとは別に挿入される、諍い合う男女の会話が巧い、と変なところに感心。
2001.2.12(火) 『雪に閉ざされた村』
・11万アクセス感謝です。
・過日、ブックオフで、『超革中』(ハヤカワ文庫SF)を入手。以前掲示板で教えてもらったとおり、鏡明の後書きに栗田信『発酵人間』に対する言及があった。「『発酵人間』なんて信じられぬイモなSFを読んでいるのはぼくだけかと思ったら、ちゃんと読んでいて、「ケッケッ」と笑った綿引宏。」
こういう絆というのは、強いはず。
・最近、でもないか、読んだ本を、少しずつ。
・『雪に閉ざされた村』 ビル・プロンジーニ(扶桑社文庫/01.12('74)) ☆☆☆
なぜか突然出たプロンジーニ初期の活劇サスペンス。88年フランス推理小説大賞受賞作という。
クリスマスを迎えた山間の村に、3人の逃亡中の現金強盗犯が侵入し、雪崩で孤立した村の住民
すべてを人質に、財産強奪と逃亡を企てる。人口75人の村なのだが、不倫あり、嫉妬あり、孤独あり、野望あり、人間社会の縮図であることには変わりない。やや図式的ながら、多数の個性的な登場人物を捌いて、サスペンスを盛り上げていく手腕は確か。村人一同を教会に閉じこめてからの犯人側との攻防にも、工夫がある。犯罪者のリーダーが次第に壊れて、サイコぶりを発揮していくのは、書かれた時点では、結構新しかったかもしれない。
2001.2.4(月)
・リスト類の更新だけにしても、間が空いてしまう。雪印、宗男、自治労の横領役員、前日の残りビールを混ぜていた札幌ビール園等・・最近、北海道関係は録なニュースがないなあ。
・山風リスト及びカウントダウンを修正。
・やよいさんから、またも、密告がありました。
「四捨五入殺人事件」 井上ひさし著。。主人公の新進作家とベテラン作家が東北の鄙びた温泉に着いたものの、橋が流され、一体は陸の孤島に。旅館の密室の風呂場では女主人が殺され……と展開の純然たるミステリらしい。これはレア。
・『日本の異端の文学』川村湊(集英社新書)の1章は、山田風太郎論。上野昂志の60年代肉体論を継承・発展させたような論旨で、忍法帖以外の「「裸の島」、『十三角関係』を分析しているのが面白い。ミステリ関係では、他に中井英夫、小栗虫太郎、橘外男、日影丈吉、渡辺温等も採り上げられている。著者の定義では、日本における「異端の文学」とは、自分自身の文学としての在り方に懐疑的なもの、「無用」の立場を強調するような文学の謂というが、どうもピンとこない。尾崎翠『第七官界彷徨』のレヴィ・ストロースを援用した?分析なんかもハッとはするけど、それは、この小説を語ったことにならないのでないかと思ったり。
2001.1.17(木)
・早く『南部牛追節殺人事件』を読みたくなってきた今日この頃である。
●密室リスト追加
太田忠司「ミステリなふたり」、「ミステリなふたり happy lucky mix」(戸田さん)、斉藤 栄 『花の魔法陣』(TACさん)、飛鳥高「細すぎた脚」(ようっぴさん)、栗本薫『ぼくらの時代』(フクさん)、海渡英祐「下痢をした死体」
2001.1.16(水) 「青髭通信」ほか
・「本の雑誌2月号」掲載のkashiba@猟奇の鉄人×土田館長×よしだまさしのネット古本御三家の鼎談を読み、一行ごとにバカ受けするサイ君。そんな面白いか。いや、面白かったです。「えっ、僕は基本的に全部読もうと思って買ってますよ」発言で二人を絶句させたところをはじめ、土田館長のきゅラ立ってました。
・もらったネタ3つ。
・1月5日付けで触れた「KADOKAWAミステリ」2月号掲載の北上次郎氏の原稿(連篇累読)がアップされました。ただで読めるとは、ありがたい。日本初のSFコミック誌を企画して、あすなひろしに原稿を依頼しにいったことを中心にした回想なのだけど、その企画の顛末が「本の雑誌」創刊の遠因になっているというのは、今回初めて言及されることかも。
・立命館大学ミステリー研究会の嵐山薫さんから、会誌「青髭通信no67」を戴く。「狂風記」と題する、山田風太郎のミステリにフォーカスを当てた120p超の大特集。ほぼミステリだけを扱ったこんな大部の特集というのは、商業誌はもちろん同人誌にもないのではないか。去年の10月19日に企画して、11月30日に発行したというのだから、若いって素晴らしい。自分が学生のときにこんな会誌を一度つくってみたかったというような内容だ。コンテンツは、時代ミステリと『山田風太郎ミステリー傑作選』所収の長短編の全作レヴュー、著作リスト・年譜(ともにミステリ編)、本格評論等、山風ミステリと真っ向勝負でとても読み応えがある。
中に「虚像淫楽」と「眼中の悪魔」どちらが面白いか、という企画があって、提出された回答をみると、各人各様、小説・ミステリに求めるものの違いが浮き彫りになっていて、面白い。数えてみると、8勝5敗1分で「眼中の悪魔」の勝ち。わし的には、「虚像淫楽」なんだけど。しかし、こんなテーマで14人分の、短くない原稿が集まるとは、自分のときの経験に比較して、素晴らしいサークルであると感じ入ってしまう。特集を機会に山風を初めて読んだという書き手も結構いたけど、ほとんどの人に好評で、これで日本も安心だ、という気になりました。
・やよいさんから、光文社文庫の『「探偵」傑作選』に収録された大庭武年「飛行機事件」も密室殺人である旨、密告がありました。感謝。前回、報告あった「勘違い」は、以前TACさんからも報告あったのを失念しておりましたので付記。もう一つ、どっかーんというお知らせがあったのだけど、そのことだけをとりあえず書いておく。
2001.1.12(土)
・やよいさんから、密告がありました。
宇神幸男『消えたオーケストラ』満員のコンサートホールから団員が一人残らず(総勢50人)消えてしまうという不可能興味が入っているとのことです。リスト掲載の由良三郎の部分の「人体密室の恐怖」は、「人体密室の犯罪」であり、「円周率πの殺人」(S63.8
カッパノベルス)の改題ということです。
また、由良三郎「殺人集中治療室」(H6.4 祥伝社文庫、H3.7「犯罪集中治療室(立風書房の加筆改題)という短編集の「勘違い」という短編は、ドア・チェーンの掛かった密室で青酸カリ中毒死の女性の死体が発見される。死体の傍には青酸が入っていた容器が見当たらず自殺と断定されるが……というもの。同書の「延髄斬り奇譚」は、交通事故で緊急入院した男性が病室で急死しているのが発見された。早速解剖に廻されるが、開いた頭蓋骨から切り取られた脳ミソが転がり出した。頭蓋骨にも脊椎にも傷を付けず、犯人はいかに脳ミソを切断したのか。という謎とのことです。
情報提供に感謝し、仮収蔵庫追加、リスト修正をしました。
●密室系リスト追加
二階堂黎人「寝台特急《あさかぜ》の神秘」「ガラスの家の秘密」(TACさん)、陳舜臣「東方の客」「観燈の夜」「見られたくない姿」(花井圭太さん)
2002.1.5(土)
・3日付けで書いた「あすなひろし追悼公式サイト」のサイト名とURLが古いままになってましたので、
修正しておきます。なお、KADOKAWAミステリサイトも15日更新だそうです。こちらもあわせて記しておきます。
2002.1.4(金) 歌姫失踪/2001年回顧
・な、なんと、やよいさんから大庭武年「歌姫失踪事件」(ぷろふいる/昭和十二年三月号)をテキストに落としたものが送られてきた。平身低頭。
冒頭は、こんな感じ。
「人間の体が煙のようになり得るかどうか?と言う事が真面目な問題として考えられた事件と言えば、或いは諸君の中には数年前新聞紙上を騒がせた『歌姫失踪事件』を想起する人もあろう。/全く事件は燃え立つ火のように人の眼を奪って勃発し、そして軈て煙の如く曖昧に、所謂『迷宮入り』とレッテルを貼られた儘幕を閉じたのだ。」
帰朝リサイタルを開催した美貌のソプラノ歌手の元に、世を騒がす怪盗青髭から、誘拐予告が送りつけられる。関係者は、鍵のかかった車に歌姫を押し込み、後ろから追尾し護衛するも、ホテルに到着したときは、忽然、彼女の姿は、消失していた−。慧敏な素人探偵、峰島一衛は、友人と捜査に乗り出す。
冒頭から不可能興味を強調した作品で、嬉しくなります。手掛かりが示されないややアンフェアな部分が物足りないが、解決も予想を上回っている。オチには、ただ吃驚。全体に素朴な味わいながら、作者のマニアぶりが窺えて大変好ましい作品でした。
うまく運べば、「別冊シャレード」で大庭武年の特集が出るかもしれないということなので、楽しみに待っています。
・十大ニュース続き。
第5位 テルミン、大ブレイク
竹内正実『テルミン』のレヴューをきっかけに、高橋@梅丘が掲示板で火をつけ、テルミニスト、末永昭二氏が登場。テルミンスレッドが爆発。筆者も、教えられるままに東京でイシバシ・テルミンを購い、さわってみる。時あたかも、21世紀初頭のデフレの風景に奇妙にマッチしたのか、世では、テルミン人気が急騰し、映画「テルミン」の公開、竹内正実、やの雪のアルバムが発売。テレビへの出演、雑誌の特集等メディアへの露出が頻繁になる。21世紀初頭限定のブームになるのか、町にテルミン教室ができるまで普及するのか。今後の予断は許さない。それにしても、テルミン練習はどうなったのだ。
第4位 「密室系」10万ヒット
カウンターをつけたのは、98年1月からだが、昨年11月に10万アクセス達成。数字は数字にすぎないのだが、一つの目標であり、うれしい出来事でした。10万アクセスを機に紙ベースの「密室系バラエティブック」の制作を宣言したものの、いつ完成することになるのやら。というより、まだ取りかかっていない。今年の目標です。
第3位 風太郎作品刊行相次ぐ
光文社文庫から、日本ミステリー文学大賞受賞記念と銘打った決定版「山田風太郎ミステリー傑作選全10巻」がスタート。国書刊行会から、未収録短編17編だけで固めた『天狗岬殺人事件』が発刊。さらには、幻の忍法帖長編『忍法創世期』が刊行。年末には、これまた幻の「笑う肉仮面」ほかのジュブナイルを満載した『笑う肉仮面』が出る。扶桑社文庫「昭和ミステリ秘宝」から『妖異金瓶梅』の完全版刊行。ここ数年の復刊ブームの最終局面ともいえる状況に。おかげで山風カウントダウンも進みました。『忍法創世期』が、他の後期忍法帖と比べても遜色のない出来映えであり、未収録短編を集めた『天狗岬殺人事件』が「このミス」で7位入賞したのも、嬉しい驚きでした。光文社文庫『十三角関係』2刷から「帰去来殺人事件」が削除され、ファンの抗議が相次いだせいか、元の形に戻ることになった一件は、まだ記憶に新しい出来事。
第2位 おげまる氏掘り進む
前年に引き続き、道立図書館にておげまる氏の発掘が進む。「少年探偵小説の部屋」は、SF作家も追加して全面リニュアル。風太郎関係の調査に限って、ざっと数え挙げても、■発掘 「伴天連地獄」(2/19)、「人魚燈篭」(3/10)、「殺人病院」(原案)(7/29)、「不思議な異邦人」(8/12)、■初出確認 「不知火軍記」(1/17)、「悲恋華陣」=「十字架姫」(1/21)、「死に顔を見せるな」(1/27)、「数珠かけ伝法」(3/5)等が明らかに。4月になって、金光さんから、まったく別に「人魚燈篭」の報告があり、掲載誌まで戴いてしまったのは、まさに奇縁というほかはない。文雅さんが探究していた神津ものジュブナイル「道化仮面」掲載紙が道立図書館に存在し、おげまるさんが筆写したという美談も忘れ難い。年末、「ユリイカ」の一文に端を発した不幸な行き違いを契機に、おげまるさんから、当分の間、発掘作業休止宣言が出てしまったのは、残念でならない。
第1位 風太郎逝去
7月28日28日午後5時30分、肺炎のため東京都多摩市の病院で逝去。享年79歳。近親者のみの密葬を経て、その死が知れ渡ったのは、31日、午後のこと。勤務中に同僚の一報により知らされる。長きにわたった闘病で、その日がいつか来るということはわかっていたものの、実際の訃報に接したときは、茫然とした。ネットにも、その死を悼む声が溢れ、後を追うように、新聞、週刊誌、小説誌等に著名人の追悼の声が載った。雑誌では、河出文芸別冊、「ユリイカ」で特集。その他、幾つかの雑誌で小特集が組まれ、TV「知っているつもり?」でも採り上げられる。日下三蔵氏に声をかけて戴き、9月26日の「お別れの会」で、故人の遺影を目の当たりにもし、「創元推理21」から、追悼文の依頼が来るという、とんでもない事態も出来した。多くの追悼を目にしたが、晩年の、面白いことをいう老人という側面が強調されたものも多かったと思う。それらは山風山脈ともいえる作品世界の凄さ、多彩さに釣り合っていたかどうか。山田風太郎が本当に広く読まれるのは、これからなのかもしれない。 * * * *
年明け早々ですが、諸般の事情で、暫くの間、what's new?が更新されるのは、リスト類の更新の際だけになると思います。「パラサイト・関」、掲示板等については、変わらぬご支援をお願いします。
●リスト追加
大庭武年「歌姫失踪事件」(やよいさん)、芦辺拓『和時計の館の殺人』(こしぬまさん)、「赤死病の館の殺人」(TACさん)
2002.1.3(木) 謹賀新年/2001年十大ニュース
・明けましておめでとうこざいます。年越し〜正月、「密室系」ウェブマスター(わし、わしの事)は、ほとんど寝て過ごしました。なんとも、意気挙がらないスタートになりましたが、本年もどうぞよろしくお願いします。
・掲示板で高橋@梅丘氏が書いてますが、以前紹介した「あすなひろし追悼公式サイト(暫定版)」に本の雑誌社の北上次郎氏から寄稿があった模様。凄いっす。イントロ部分が同サイト掲載で、本編が
KADOKAWAミステリ誌の2月号(1月15日発売)に掲載予定とのことです。北上次郎氏とあすなひろしとの意外な関係とは?興味のある方は、両方覗いてみでください。
・やよいさんから、年賀メールで馬を扱ったミステリを教えてもらいましたが、大庭武年「競馬会前夜」のついでに、大庭武年「歌姫失踪事件」(「ぷろふいる」掲載)という不可能犯罪物を教えてもらいました。走っている車(後から追走している目撃者有)から美女が失踪してしまうというというシチュエーションらしい。正月から、特濃。今年は、密室系の方をなんとかしなくては。
・年末にやろうと思ったのに、年を超えてしまった間の悪さだが、2001年密室系周辺十大ニュース。無論、ウェヴマスター(わし、わし)の独断です。
第10位 パラサイト・関、wat's new?停滞
いきなり停滞がニュースか。テロ事件、炭そ菌等とは、おそらくほとんど無関係に、サンノゼ在住パラサイト・関の「翻訳ミステノアワー」が停滞。これで、HMMを読んだ気になっていた人はどうする。後を追うように、夏過ぎから、残業が続いたせいもあって、what's
new?も停滞。今年は、もう少し頑張りたいが。
第9位 栗田信マイブーム
「発酵人間」のあまりのバッドテイストが、なぜかやめられなくなり、「夜来る悪魔」5/23、「ダイヤル110」(6/25)、「台風圏の男」(7/16)を次々と道立図書館から借りて読む。「映画スキャンダル50年史」(6/27)などというエッセイまで借りてしまう。栗田信はじめ、貸本作家を初めてまともに扱った末永さん『貸本小説』も記憶に新しい。
第8位 MYSCON参加
4月、東京にて「MYSCON2」に参加。地方在住者は、めったに電網界の方々と顔を合わすことはないので、色んな意味でありがたい。推測するに、今年は、ちょっと難しいのかな。
第7位 「女相撲の女子高生」連載
女王様の常識を超えた発言から、突如として、掲示板で本邦初の古本女相撲青春本格推理小説の連載が開始。多士済々の書き手による予断(余談)を許さぬ展開は、ウェブマスターの手に汗を握らせていただきました。ほとんどすべての傑作が常にそうであるように、未完になっていますが、「必ず完成します」といっていた責任者出てこい。
第6位 「ジャーロ」で「密室系」紹介
高級探偵小説誌「ジャーロ」の「ネットデテクティヴ」のコーナーで「密室系」が紹介される。おげまるさんの名前が初めて活字になったのではないか。森さん、ありがとうございました。今後とも、高級スリックエクセレント(もういい)「ジャーロ」を買います。
というわけで、1位から5位は、次回発表。(<こんなネタで引っ張るな)