はんがーのっく日誌 |
06/16(wed) | 科学的トレーニングと薬物 |
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世界最高のスポーツイベントのひとつ、ジロ・デ・イタリアで総合優勝を目前にしたマルコ・パンターニが、ドーピング検査でヘマトクリット値(赤血球の値)が基準を上回り、失格となった。 昨年のツール・ド・フランスでのドーピングのスキャンダルに続いて、プロロード界に大きな衝撃が走ることとなった。ツールでは、前半戦で大量の失格者がでたということで、ショックであったが、今回は、総合優勝をほぼ手中に収めた選手を、レースからの除外するという裁定であり、より大きな衝撃となった。 今回、問題となったヘマトクリット値とは、血液中の赤血球の割合で、赤血球が多いほど自転車やマラソンなど持久力を競うスポーツでは有利だとされている。 ヘマトクリット値を上げるためには、高地トレーニングでも可能であるが、手っ取り早いのは、自己血液輸血または、EPO等の薬剤を使用することである。だがこれらの方法は、使用されたかどうかを体内への残留薬物という形で測定するのが困難であるため、血液中のヘマトクリット値を測定して、判定することとなる。つまり、状況証拠に頼っているわけである。 このヘマトクリット値は住んでいる環境により差があり、脱水症状などによっても上昇する。またその測定結果にある程度の誤差があるのが常識らしい。 今回パンターニの血液が示した 52%という値は、UCIの規定値(50%)を越えているので、失格となったわけであるが、この 50%という数字は正常な人間もなりうる範囲であり、これが妥当であるかどうかについても、大きな疑問符がつく。 ドーピング検査は当然その薬物の量や効果には関係なく、使用すること自体が NG であるはずだ。基本的に体内に少しでも使用痕が見つけられれば、失格の対象となるはずである。(カフェインなどふつうの生活でも摂取する可能性があるものはのぞいて...) しかし、EPOについてはヘマトリット値を 50%以内に押さえることができれば事実上容認されていることになる。さらに競泳の規定は 53%ということなので、52%であっても何のおとがめもない。 体に悪影響を薬物の使用は論外としても、現在のプロスポーツでは、科学的なトレーニングを無視して勝利することはあり得ない。私たちホビーレベルでさえも、ハートレートモニターの使用や、カーボローディングやマフェトン理論に基づいてトレーニングすることが当たり前になっている。 アマチュアレベルの大学や高校でも、乳酸値の測定や高地トレーニングなど、一昔前のTOPプロの特別だったトレーニングメニューが取り入れられている。 スポーツをやるからには強くなりたい、強くなるには効果的にトレーニングしたい。効果的にトレーニングするのみには、科学的に分析・実行しなくてはならない。 しかし、薬物にまで手を染める、今のスポーツ科学は、もはや完全に方向性を見失っているとしか思えない。 #今回の記事の、基礎知識のほとんどを浦田さんのアスリートおやじ伝言板への書き込みから引用しました。 |
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