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少し前のことだが、プロテニスプレイヤーのボリスベッカーが引退した。ベッカーと言えば、強烈な弾丸サーブをひっさげて登場したデビュー当時のイメージが強いが、ちょうどその頃、テニス雑誌に村上龍のテニス小説が連載されていた。
主人公の男がウィンブルドンを目指すのだが、彼は、サーブの練習だけ黙々とこなすのである。ラリーが全くできない彼は、確実にエースを取れるサーブを武器に、相手のダブルフォルトやミスで次々と勝利し、ついにウィンブルドンのセンターコートに立つのである。
現在のプロスポーツの世界では、オールラウンダーでなければ、TOPに立つことは難しい。コンピューター等の導入により、相手の癖や弱点を調べ上げてそれに合わせた戦術で戦う。また、科学的なトレーニングによって自分の弱点を克服し、相手につかれないようにする。
もちろんテニスの世界でも、サーブもストロークもボレーも全てが超一流でなければ、世界では戦えなくなっている。
オールラウンダー同士の戦いは、接戦となることが多く、見ている分には面白い。
しかしスポーツとして面白いのは、絶対にスペシャリスト同士の戦いである。
少しの間もベースラインに留まろうとしないジョン・マッケンローと、絶対にネットに出ないビヨン・ボルグが、かたくなに自分のスタイルを貫いて戦うから面白いのである。
スペシャリスト!バンザイ!くたばれオールラウンダー。
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