日本史映画・戦後〜現代
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太陽
Солнце
2005年/ロシア・イタリア・フランス・スイス
カラー映画(115分)
スタッフ○監督/撮影:アレクサンドル=ソクーロフ○脚本:ユーリ=アラボフ○美術:エレナ=ズーコワ○音楽:アンドレイ=シグレ○製作:イゴール=カレノフ/アンドレイ=シグレ/マルコ=ミュラー
キャストイッセー尾形(昭和天皇)、ロバート=ドーソン(マッカーサー)、佐野史郎(侍従長)、つじしんめい(老僕)、守田比呂也(鈴木貫太郎)、六平直政(阿南惟幾)、草薙幸二郎(東郷重徳)、桃井かおり(香淳皇后)ほか
ストーリー敗色濃厚の戦争末期、「現人神」である昭和天皇は憂鬱な気分を生物の研究で紛らわしていた。やがて戦争が終わり占領軍がやって来ると、昭和天皇はマッカーサーと会談し、「神」であることを否定する「人間宣言」を出すことになる。
解説ソクーロフ監督のレーニン、ヒトラーに続く現代史映画三作目。スタッフも製作もロシアなのに日本人が見てほとんど違和感を感じさせないのが凄い。当然出演者の大半が日本人なのだが、イッセー尾形演じる昭和天皇はまさに本人そのものに見える瞬間があるほどのもの。ただかなり芸術性の高い難解な映画でもあり、史実を再現するといった映画ではないことにも注意。
メディアDVD発売:クロックワークス

終戦のエンペラー
Emperor
2013年/アメリカ・日本
クラスノフ・フォスター・プロダクションズ
フェラーズ・フィルム
カラー映画(107分)
スタッフ○監督:ピーター=ウェーバー○脚本:デヴィッド=クラス/ヴェラ=ブラシ○撮影:スチュアート=ドライバーグ○音楽:アレックス=ヘッフェス○製作:奈良橋陽子/ギャリー=フォスター/野村祐人/ラス=クラスノフ/芥川保志
キャストマシュー=フォックス(フェラーズ)、トミー=リー=ジョーンズ(マッカーサー)、初音映莉子(アヤ)、西田敏行(鹿島大将)、火野正平(東條英機)、中村雅俊(近衛文麿)、伊武雅刀(木戸幸一)、夏八木勲(関屋貞三郎)、桃井かおり(鹿島の妻)、片岡孝太郎(昭和天皇)ほか
ストーリー終戦直後の日本の支配者としてマッカーサーが乗りこんできた。マッカーサーは昭和天皇に戦争責任があるのかどうかの調査を日本通の部下フェラーズに命じる。フェラーズは開戦前に日本人女性アヤと恋に落ちており、彼女の行方を探しながら開戦に至る事情を関係者に問いただしてゆく。
解説タイトルこそ「エンペラー」だが、昭和天皇はラストのマッカーサーとの会見の場面にしか登場しない。フェラーズは実在の人物だがその周辺はかなりフィクションを混ぜており(アヤのモデルになった女性はいるが別に戦禍で死んだりはしていない)、実際のフェラーズは戦争中から政治的意図により天皇免責を主張していたのでこの映画の展開はかなりウソ。意図してかどうか知らないが「戦争責任のたらいまわし映画」という印象で、綺麗事で話を無理やりまとめてしまった観が強い。
メディアDVD/BD発売:松竹

憲法はまだか
1996年
NHK
土曜ドラマ(全2回)
スタッフ○脚本:ジェームズ三木○演出:重光享彦○撮影:小野彰久○美術:山口類児○音楽:牟岐礼○制作統括:金澤宏次
キャスト津川雅彦(松本烝治)、江守徹(近衛文麿)、神山繁(幣原喜重郎)、鈴木瑞穂(吉田茂)、佐藤慶(芦田均)、すまけい(金森徳次郎)、近藤正臣(宮沢俊義)、長谷川初範(白洲次郎)、岡田茉莉子(松本千)、高橋恵子(近衛千代子)ほか
ストーリーGHQの指示により新憲法の検討が開始された。近衛文麿は政府とは別に独自の草案作りを進めるが戦犯容疑者として逮捕されることになり服毒自殺。民間でも憲法学者らによる民主憲法の草案が作られるが、幣原内閣で憲法調査委員会を任された法律家の松本烝治はあくまで天皇を中心とする明治憲法の枠組みを維持した草案作りを進める。GHQは松本案を拒絶し、民政局で二週間で作成した英文の原案を示して幣原内閣に受け入れを要求する。そこには「象徴天皇」と「戦争の放棄」という驚愕の内容が含まれていた。吉田茂の内閣はGHQ案をベースにした草案を作り、国会での審議で様々な削除・変更・追加を経て「日本国憲法」は誕生する。
解説タイトルの通り、日本国憲法誕生までの舞台裏を描くドラマ。憲法50周年記念作品として制作され「象徴天皇」「戦争放棄」の二部構成。劇中、包帯グルグル巻きの少年が何度か唐突に登場するが、これが「憲法」を象徴している。あまり知られていない事実もいろいろと出てきて興味深い。
メディア現時点でソフト化はされていない。

小説吉田学校
1983年
フィルムリンクインターナショナル
カラー映画(132分)
スタッフ○監督:森谷司郎○脚本:長坂秀佳/森谷司郎○撮影:木村大作○美術:村木与四郎/育野重一○音楽:川村栄二○原作:戸川猪佐武○製作:山本又一朗
キャスト森繁久彌(吉田茂)、高橋悦史(池田勇人)、若山富三郎(三木武吉)、芦田伸介(鳩山一郎)、竹脇無我(佐藤栄作)、西郷輝彦(田中角栄)、小池朝雄(浅沼稲次郎)、橋爪功(福田赳夫)、勝野洋(中曽根康弘)、角野卓三(宮澤喜一)、梅宮辰夫(河野一郎)、田崎潤(大野伴睦)、池部良(緒方竹虎)、夏目雅子(麻生和子)ほか
ストーリー敗戦後の日本。二期目の首相を務める吉田茂は日本の独立達成のため平和条約の締結を急ぐ。その間に展開される鳩山・三木一派との権力闘争を戦うため官僚出身を中心とした吉田子飼いの政治家集団「吉田学校」が結成される。官僚政治家の独占を恐れる三木武吉は鳩山一郎を首相にすべく、次々と策謀をめぐらす。
解説吉田茂を中心に昭和20年代の日本政治史を描く。とにかく実在人物だらけの映画のため、見ていて「あ!この人もいた!」という発見が多々あって非常に楽しい。首相になった人だけでも幣原喜重郎、吉田茂、鳩山一郎、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、三木武夫、中曽根康弘、竹下登、宮沢喜一、海部俊樹などが登場。その他現在の政治家の親・祖父の世代がかなり登場する。ただ吉田茂の美化が強引すぎるような気もする。
メディアDVD発売

アメリカに負けなかった男
〜バカヤロー総理 吉田茂〜

2020年
テレビ東京
開局55周年スペシャルドラマ(144分)
スタッフ○監督:若松節朗○脚本:竹内健造/森下直/森口悠介○音楽:住友紀人○原案:麻生和子○チーフプロデューサー:中川順平
キャスト笑福亭鶴瓶(吉田茂)、生田斗真(白洲次郎)、新木優子(麻生和子)、矢本悠馬(麻生太賀吉)、佐々木蔵之介(池田勇人)、安田顕(佐藤栄作)、前野朋哉(田中角栄)、勝地涼(宮澤喜一)、久松信美(芦田均)、チャールズ=グラバー(マッカーサー)、松嶋菜々子(こりん)ほか
ストーリー駐イギリス大使をつとめ、三国同盟に反対するなど軍ににらまれた吉田茂。敗戦後のGHQによる占領下で総理大臣となり、腹心の白洲次郎と共にGHQの圧力と戦いつつ、日本の独立実現を目指す。吉田は池田勇人、佐藤栄作、田中角栄といった若手政治家たちを集めて政治的立場を強化、サンフランシスコ平和条約により独立を達成するが同時に安保条約にも調印する。
解説テレビ東京開局55周年記念のスペシャルドラマ。外見的部品が確かによく似てる笑福亭鶴瓶が吉田を熱演してるが、いささか重々しく演じ過ぎたきらいも。これまでにも何度か映像化された素材で特に新味はないが、一応ラストで沖縄の基地問題などをシンボリックに挿入してはいた。
メディア現時点でソフト化はされていないが有料動画配信で鑑賞可能。

白洲次郎
2009年
NHK
スペシャルドラマ(全3回)
スタッフ○演出:大友啓史/東山充裕○脚本:大友啓史/近衛はな○音楽:大友良英○制作統括:鈴木圭
キャスト伊勢谷友介(白洲次郎)、中谷美紀(白洲正子)、奥田瑛二(白洲文平)、原田芳雄(吉田茂)、岸辺一徳(近衛文麿)ほか
ストーリー大富豪の御曹司として奔放に育った白洲次郎はイギリスに留学、イギリス仕込みの英語力と知性で伯爵令嬢の正子の心を射止めて結婚、吉田茂や近衛文麿のブレーンとなる。戦争回避に失敗して戦時中は農村に隠居生活を送り、戦後は吉田のもとで占領政策をめぐりGHQとぶつかりあう。
解説なぜか発生した「白洲次郎ブーム」に乗る形で製作された大型ドラマ。少々キザな男の昭和史舞台裏ものといったところだが、妻・正子(本来はこちらのほうが有名人だった)にも焦点を分散させたせいもあって後半かなり散漫な印象が残る。全三回で放映されたが吉田茂役の原田芳雄の病気治療のため第三回の放送が大幅に遅れるアクシデントもあった。
メディアDVD/BD発売:ハピネット

負けて、勝つ
〜戦後を創った男・吉田茂〜
2012年
NHK
スペシャルドラマ(全5回)
スタッフ○脚本:坂元裕二○演出:柳川強/野田雄介○撮影:溜昭浩○美術:山下恒彦○音楽:村松崇継○制作統括:中村高志
キャスト渡辺謙(吉田茂)、松雪泰子(小りん)、加藤剛(牧野伸顕)、大蔵千太郎(昭和天皇)、篠井英介(芦田均)、中村敦夫(幣原喜重郎)、佐野史郎(広田弘毅)、金田明夫(鳩山一郎)、野村萬斎(近衛文麿)、谷原章介(白洲次郎)、吉田栄作(服部卓四郎)、デヴィッド=モース(マッカーサー)ほか
ストーリー戦争末期に軍により投獄された吉田茂は敗戦直後に成り行きから首相の座につき、かつての盟友であった近衛や広田が非業の死を遂げて行くなか、マッカーサーのGHQの高圧的な占領政策に反発と妥協をしつつ国家の再建につとめる。そして憲法制定、安保体制下での独立と、望むと望まざるとに関わらず戦後の日本が作り上げられてゆく。
解説もともと戦後史俯瞰ドラマの企画だったそうで、戦後の原点である占領期の吉田茂に焦点を絞り、吉田の家族関係(内縁の妻・小りんが描かれたのはたぶん初)やフィクションのキャラクターも取り交ぜて「戦後の始まり」を描く。その孫世代が現在の政治に多くいることや現実に直面する安保問題を強く意識した内容となった。太って吉田茂になってみせた渡辺謙だが、ちとカッコよすぎるような。
メディアDVD発売:アミューズソフトエンタテインメント

経世済民の男
「〜鬼と呼ばれた男〜
松永安左エ門」

2015年
NHK(名古屋放送局)
放送90年ドラマ(60分)
スタッフ○脚本:池端俊策○演出:柴田岳志○撮影:澤田智岐○美術:小林史幸○音楽:佐藤直紀○制作統括:山本敏彦
キャスト吉田鋼太郎(松永安左エ門)、伊藤蘭(松永一子)、萩原聖人(中村博古)、うじきつよし(永野成夫)、伊東四朗(吉田茂)、利重剛(近衛文麿)、大竹まこと(東條英機)、宝田明(池田成彬)、高嶋政伸(池田勇人)、國村隼(三鬼隆)ほか
ストーリー一代で民間電力会社を築き上げ「電力王」と呼ばれていた松永安左エ門は、近衛内閣の戦時統制政策で電力会社が国営に統合されたことに反発、一切の職を辞して隠遁生活を送った。敗戦後、GHQは日本の「日発(日本発送電会社)」の分割を要求、吉田茂らは大ナタをふるえる人物として74歳の松永を電気事業再編成の委員長に抜擢する。松永は強引なやり方で日発幹部らの反発を買いながらも「分割・民営化」の信念に燃え、通産大臣・池田勇人やGHQを説得してゆく。
解説放送90周年企画「経世済民の男」全5回シリーズの最終回。松永に関しては占領期の電力会社分割民営化の闘争のみに話を絞っている。さすがに本物の姿の強烈さには及ばないが、吉田鋼太郎の迫力もなかなかのもの。この一回だけで映像化を終わらせるには惜しい人物である。
メディアDVD発売:NHKエンタープライズより3本セットのDVD-BOXと一本ずつばら売りもある。

日本の熱い日々
謀殺・下山事件
1980年
俳優座映画放送
白黒映画(131分)
スタッフ○監督:熊井啓○脚本:菊島隆三○撮影:中尾駿一郎○美術:木村威夫○音楽:佐藤勝○原作:矢田喜美雄○製作:佐藤正之/阿部野人
キャスト仲代達矢(矢代記者)、山本圭(大島刑事)、隆大介(丸山)、小沢栄太郎(糸賀)、平幹二朗(奥野警視総監)、神山繁(伊庭次席検事)、岩崎加根子(下山芳子)、中谷一郎(遠山部長)、仲谷昇(官房長官)、井川比佐志(李中漢)、大滝秀治(唐沢)ほか
ストーリー占領下の1949年、大量の人員整理で労組の激しい抵抗が起きていた国鉄の下山総裁が常磐線の線路上で死体となって発見された。他殺か自殺が見解が分かれるなか矢代記者は他殺説をとり、線路上のルミノール反応を確認する。警視庁二課や検察も他殺に傾くが、GHQと政府の介入により事件は自殺として片付けられてしまう。矢代と大島刑事は執念で捜査を進め、事件関与をほのめかす謎の男と接触するのだが…
解説占領下で起こった「国鉄三大事件」のひとつ「下山事件」をテーマに、社会派の熊井啓が記録フィルムも混ぜたドキュメント風ミステリタッチの映画に仕上げた。主人公のモデルが書いた原作が他殺・謀略説なので当然その線で脚色されているが、結末部分では微妙にボカしてもある。さすがに穴の多い謀略説はさておき、占領下の混乱期から主権回復、安保闘争、そして高度成長を象徴する東京オリンピックまでの世相が節々に織り込まれていて戦後通史の趣もある。役所広司や益岡徹ら、「無名塾」出身者の無名時代が拝めるのもポイント。
メディアDVD発売:カルチュア・パブリッシャーズ(現在品切れ)

第五福竜丸
1959年
近代映画協会/新世紀映画
白黒映画(107分)
スタッフ○監督:新藤兼人○脚本:八木保太郎/新藤兼人○撮影:植松永吉/武井大○美術:丸茂孝○音楽:林光○製作:絲屋寿雄/若山一夫/山田典吾/能登節雄
キャスト宇野重吉(久保山愛吉)、乙羽信子(久保山しず)、稲葉義男(見島民夫)、小沢栄太郎(静岡県知事)、千田是也(木下博士)ほか
ストーリー1954年、22名の乗組員を乗せたマグロ漁船「第五福竜丸」は焼津港を出発して太平洋へと繰り出した。最初に漁をした東方海上では不漁だったため、彼らは南太平洋の漁場へと転進した。そして3月1日未明、「西から太陽が昇った」と思わせるほどの閃光を目撃、間もなく雪のように降る灰を浴びて乗組員たちの肌は真っ黒になってしまう。焼津に戻ったのち、彼らがビキニ環礁の水爆実験で被ばくしたことが判明、全員すぐに入院させられ、さらに東京へ移送されて手厚い治療を受ける。冷たい態度のアメリカへの抗議と全国からの応援が寄せられるなか、無線長の久保山愛吉だけは病状が悪化、家族に見守られる中でついに息を引き取る。
解説戦後の核兵器被害であり、反核運動のきっかけとなった有名な事件を、起こってからわずか5年後に映画化したもの。第五福竜丸の出港から久保山の葬儀までを、当事者たちの監修で克明に再現したドキュメンタリータッチで描く。事件の前後の一見単調な日常を淡々を描くことで彼らが遭遇した事態の理不尽さが際立つ。今になってみると「風評被害」の描写が興味深い。またよく知られているように、この事件がきっかけで「ゴジラ」が生まれることとなった。
メディアDVD発売:角川書店

力道山
역도산
2004年/韓国・日本
サイダスFNH
カラー映画
(149分)
スタッフ○監督/脚本:ソン=ヘソン○撮影:キム=ヒョング○美術:稲垣尚夫○音楽:牟岐礼○プロデューサー:チャ=スンジェ/河井信義○特別協力:百田光雄
キャストソル=ギョング(力道山)、中谷美紀(綾)、萩原聖人(吉町譲)、船木誠勝(井村昌彦)、ノ=ジュノ(大木金太郎)、武藤敬司(ハロルド坂田)、橋本真也(東浪)、藤竜也(菅野武雄)ほか
ストーリー第二次大戦のさなか、朝鮮人・金信洛は相撲部屋に入門するため日本にやって来た。差別的いじめもしたたかに逆利用して菅谷会長という有力な後援者を得た彼は「力道山」のしこ名で昇進していく。しかし朝鮮人ゆえに大関・横綱にはなれないと知った力道山はプロレスに転向。渡米後の日本で大プロレスブームを巻き起こして国民的スターとなる。しかし成功の陰で興行上の対立、妻・綾との不和も拡大し孤立感を深めてゆく。
解説戦後日本の象徴的大スターの知られざる実像に迫ろうとした力作。韓国の名優・ソル=ギョングが肉体改造したうえ、ほぼ全編日本語のセリフで熱演。現役プロレスラーも多数出演した試合シーンは大迫力で、当時の日本の熱狂ぶりを見事に再現している。フィクションも多く混ぜているが目的のために手段を選ばぬ力道山像やプロレス興行のドロドロした裏舞台も描き、なかなかリアル。プロレスにとどまらず戦後日本の「歴史」の一断面を描いた一作としてお奨め。
メディアDVD/BD発売:ソニーピクチャーズ・エンタテインメント

仁義なき戦い
五部作
1973〜1974年/日本
東映京都
カラー映画

「仁義なき戦い」99分
「仁義なき戦い広島死闘篇」100分
「仁義なき戦い代理戦争」103分
「仁義なき戦い頂上作戦」101分
「仁義なき戦い完結篇」99分
スタッフ○監督:深作欣二○脚本:笠原和夫/高田宏治(「完結篇」のみ)○撮影:吉田貞次○美術:鈴木孝俊/吉村晟/雨森義充/井川徳直○音楽:津島利章○原作:飯干晃一(美能幸三の手記より)○企画:俊藤浩滋/日下部五朗
キャスト菅原文太(広能昌三)、金子信雄(山守義雄)、田中邦衛(槇原政吉)、山城新伍(江田省一)、千葉真一(大友勝利)、小林旭(武田明)、梅宮辰夫(若杉寛/岩井新一)、松方弘樹(坂井徹也/藤田正一/市岡輝吉)、北大路欣也(山中正治/松村保)、渡瀬恒彦(有田俊雄/倉元猛)、木村俊江(山守利香)、加藤武(打本昇)、成田三樹夫(松永弘)ほか
ストーリー敗戦直後、成り行きから闇市で暴れ者を射殺した広能昌三は獄中でヤクザ若杉寛と義兄弟になり、出所後に呉のヤクザ・山守義雄の子分となる。老獪な山守は広能ら若者たちを利用して勢力を拡大、やがて広島の支配をめぐって神戸の二大勢力をバックにした「代理戦争」が展開される。市民社会が激しい抗争におびやかされたことで市民やマスコミがヤクザを批判、警察も「頂上作戦」と呼ばれる徹底取り締まりを開始する。
解説戦後有数のヤクザ抗争である「広島抗争」の渦中にあった組長・美能幸三が刑務所内で記した手記を原作とした東映「実録やくざ映画」の頂点をなすシリーズで、日本映画史上においても指折りの名作と評されている。登場人物は全て仮名、フィクションもかなり混ぜてはいるものの大筋ではほぼ史実の展開を再現した内容となっており、敗戦直後の混乱期から高度成長期にいたる戦後史を裏社会から描いた作品でもある。
メディアDVD/BD発売:東映

黒部の太陽
1968年
石原プロモーション
三船プロダクション
カラー映画(196分)
スタッフ○監督:熊井啓○脚本:井手雅人/熊井啓○撮影:金宇満司○美術:平川透徹/山崎正夫/小林正義○音楽:黛敏郎○原作:木本正次○製作:石原裕次郎/三船敏郎
キャスト三船敏郎(北川)、石原裕次郎(岩岡剛)、滝沢修(太田垣士郎)、辰巳柳太郎(源三)、高峰三枝子(加代)、宇野重吉(森)ほか
ストーリー1956年、関西電力が北アルプスの黒部峡谷に水力発電のための巨大なダムの建設を決定、建設会社熊谷組が現場へ資材を運ぶための大トンネルの建設を請け負った。気の進まぬまま現場責任者となった熊谷組の北川に、下請け会社の社長の息子・岩岡はフォッサマグナを抜けるトンネル工事の困難さを伝える。順調に進むかに見えたトンネル工事は果たして「破砕帯」にぶつかり、大規模な出水と多くの犠牲者を出す難工事となる。そのさなか北川の娘が難病に倒れ…
解説高度成長期の象徴する大工事を石原・三船の二大スタープロダクションで製作、社会派の熊井啓監督により映画化した大作でその後の「プロジェクトX系映画」の元祖。映画会社の執拗な企画つぶし圧力があり、電力会社・ゼネコンの全面協力とチケット買い取りで実現した経緯がある(企業名が全て実名なのはそのためでもある)。トンネルシーン撮影は熊谷組工場敷地内に実物そのままのセットが組まれ、出水事故シーンは大迫力。製作した裕次郎の「映画は劇場で」との遺志で長らくTV放映、ソフト化されず「幻の映画」だった一本。現在は完全版のDVDも発売されている。
メディアDVD発売:ポニーキャニオン

東京オリンピック
1965年
オリンピック東京大会組織委員会
カラー映画
(オリジナル170分、ディレクターズカット版143分)
スタッフ○総監督:市川崑○脚本:谷川俊太郎/和田夏十/市川崑○音楽:黛敏郎○プロデューサー:田口助太郎
キャスト出場選手たち、観客ほか
ストーリーアジア初のオリンピック大会が東京で開催された。古い東京が壊され、アジア各地をリレーされた聖火が富士山をバックに走り、世界各国の選手が入場行進を終えた陸上競技場に聖火がともって大会が始まる。さまざまな種目で熱戦が繰り広げられ、最後のマラソンではエチオピアのアベベが独走で二連覇を果たす。
解説1964年に開催された東京オリンピックの記録映画。名匠・市川崑監督が望遠レンズを駆使した膨大なフィルムから編集、単なるスポーツ大会の記録映画にとどまらない芸術作品に仕立て上げた。選手たちの肉体の美しさやその苦闘を映しつつ、無名の選手や観客の反応なども細かく挿入するのが特徴で、どこかユーモラスな作者の視線も感じさせる。当時組織委員長だった河野一郎が内容を批判し、「芸術か記録か」という論争を起こしたことは有名。ところどころで映る野外の風景や人々の姿は高度成長期の日本そのものの貴重な記録でもある。もともとは全種目を入れる義務があったので全3時間ぐらいあったのだが現在ソフト化されているものは30分ほどカットしたディレクターズ・カット版である。
メディアDVD発売:東宝

いだてん
〜東京オリムピック噺〜
2019年
NHK
大河ドラマ(全47回)
スタッフ○作:宮藤官九郎○演出:井上剛/西村武五郎/一木正恵/大根仁/桑野智宏/林啓史/津田温子/松木健祐/渡辺直樹/北野隆○音楽:大友良英○制作統括:訓覇圭/清水拓哉
キャスト中村勘九郎(金栗四三)、阿部サダヲ(田畑政治)、綾瀬はるか(池部スヤ)、大竹しのぶ(池部幾江)、中村獅童(金栗実次)、生田斗真(三島弥彦)、リリー・フランキー(緒方竹虎)、桐谷健太(河野一郎)、萩原健一(高橋是清)、塩見三省(犬養毅)、浅野忠信(川島正次郎)、松重豊(東龍太郎)、役所広司(嘉納治五郎)、森山未來(志ん生青年期)、ビートたけし(古今亭志ん生)ほか
ストーリー柔道の創始者にして日本初のIOC委員となった嘉納治五郎は、1912年のストックホルム五輪に初の日本選手団を派遣する。選ばれたのはマラソンの金栗四三と短距離走の三島弥彦の二人だけ。金栗はマラソンで完走を果たせず、次のベルリン五輪は第一次大戦のために中止となってしまい、以後は人材育成に努力する。
一方、朝日新聞記者の田畑政治は水泳選手団の監督としてロサンゼルス五輪で活躍、嘉納治五郎らと共に東京オリンピック実現に努力する。一度は1940年の開催が決まった東京五輪だったが日中戦争のために返上。戦後の1964年についに東京オリンピックは開催の日を迎えるのだった。
解説二度目の東京五輪へつなぐ形で企画された、久々の近現代史大河ドラマ。日本人初の五輪マラソン選手・金栗四三と東京五輪の立役者・田畑政治の二人をダブル主役とし、古今亭志ん生を狂言回し兼語り役として配置している。近現代もの、それもなじみの薄い素材であったこと、ドラマ中年代が入り組むことなどで視聴率は振るわなかったが、日本近代スポーツ史の知られざるドラマをコミカルに描きつつ、スポーツが封殺された戦争の暗い時代の歴史にも向かい合った快作となった。
メディアDVD・BD発売:NHKエンタープライズ

11.25自決の日
三島由紀夫と若者たち
2012年
若松プロダクション/スコーレ
カラー映画(120分)
スタッフ○製作・監督:若松孝二○脚本:掛川正幸/若松孝二○撮影:辻智彦/満若勇咲○音楽:板橋文夫
キャスト井浦新(三島由紀夫)、満島真之介(森田必勝)、寺島しのぶ(瑤子)ほか
ストーリーノーベル賞有力候補とみなされていた作家・三島由紀夫は二・二六事件をテーマにした作品の執筆後、観念的な天皇観とクーデターによる国家改造計画にのめりこんでゆく。自衛隊に体験入隊して人脈を作り、民間軍事組織「楯の会」を結成、左翼過激派の活動に刺激も受けて事を急ぐ三島だったが、周囲の人々は現実的判断から彼のもとを去ってゆく。その中で純粋一途な若者・森田必勝は三島に行動を迫り、ついに1970年11月、衝撃的な自決事件を引き起こす。
解説「実録・連合赤軍」を撮った若松監督が、同時期の「右」の事件である三島事件をテーマに製作した一本。さまざまな憶測と議論を呼ぶこの事件に至る過程を淡々と、かつ割と綺麗にまとめちゃったかな、という印象もある。「連合赤軍」ともども60〜70年代の日本の、どこか空回り的な「騒々しさ」を体感できる映画である。
メディアDVD/BD発売:アミューズソフトエンタテインメント

実録・連合赤軍
〜あさま山荘への道程(みち)〜
2008年
「実録連合赤軍」製作委員会
若松プロダクション
カラー映画(190分)
スタッフ○製作総指揮・監督:若松孝二○脚本:若松孝二/掛川正幸/大友麻子○撮影:辻智彦/戸田義久○美術:伊藤ゲン○音楽:ジム=オルーク○原作:掛川正幸
キャスト坂井真紀(遠山美枝子)、地曳豪(森恒夫)、並木愛枝(永田洋子)、ARATA(坂口弘)、伴杏里(重信房子)、坂口拓(塩見孝也)、原田芳雄(ナレーション)ほか
ストーリー1960年代から70年代にかけての世界的な学生運動や中国の文革の影響を受け、日本でも左翼学生運動が激化した。しかし安保闘争に敗れ、学生運動が収束していくなか過激活動家は内ゲバを繰り返し、その中から武装革命闘争を掲げる「赤軍派」が結成される。警察による指導部の検挙が相次ぐなか赤軍派は「革命左派」と合流して「連合赤軍」となり、山岳に拠点を作って軍事訓練を開始する。だがそこで起こったのは凄惨な「総括リンチ」だった…
解説世界的背景をもつ学生運動、その敗北から生まれた「連合赤軍」の結成過程とその凄惨な末路にいたる歴史を3時間超にわたってじっくりと描く実録大作。60〜70年代という時代を生きた、ある意味真剣すぎた若者たちが現実と乖離した「革命ごっこ」の末に破滅していく過程を、赤軍派とも深いかかわりをもつ若松監督が鎮魂をこめて真正面からとりくみ映像化している。下記の「突入せよ!」では全く見えてこない時代背景を描き出すにはこれだけの時間は必須だったろう。どこか「仁義なき戦い」っぽくもある。
メディアDVD発売:CCRE

突入せよ!あさま山荘事件
2002年
あさま山荘事件製作委員会
カラー映画(130分)
スタッフ○監督・脚本:原田眞人○撮影:阪本善尚○美術:部谷京子○音楽:村松崇継○原作:佐々淳行○製作:佐藤雅夫○製作総指揮:原正人
キャスト役所広司(佐々淳行)、宇崎竜童(宇田川信一)、藤田まこと(後藤田正晴)、天海祐樹(佐々幸子)、伊武雅刀(野間本部長)、豊原功輔(内田尚孝)ほか
ストーリー1972年2月、武力革命を唱える過激派・連合赤軍のメンバーがライフル銃を持って人質をとり「あさま山荘」に立て篭もった。警察庁の佐々は警察庁長官・後藤田に現場に赴いて事件解決の指揮にあたるよう指示を受け、「犯人は全員生け捕りとせよ」と厳命される。現場に向かった佐々だったが犯人たちの激しい抵抗、そして東京の指示を快く思わない長野県警との対立に苦しめられる。極寒の中、警察機動隊と犯人達の息詰まる死闘が続く。 
解説公開時にとうとうこれも「歴史」の範疇かと思わされた、日本現代史の中で最も世間の注目を集めた「あさま山荘事件」の映画化。佐々淳行本人の原作をもとに警察内部の組織対立と銃弾と水・鉄球が飛び交う攻防戦を迫力のタッチで映像化している。ただもう少しこの当時の時代を感じさせる描写や事件の思想的背景も入れてほしかったところ。
メディアDVD/BD発売:角川書店・TCエンタテインメント

KT
2002年/日本・韓国
「KT」製作員会
カラー映画(138分)
スタッフ○監督:阪本順治○脚本:荒井晴彦○撮影:笠松則通○美術:原田満生○音楽:布袋寅泰○原作:中薗英助○製作:椎井友紀子○製作総指揮:李鳳宇
キャスト佐藤浩市(富田満州男)、キム=ガプス(金車雲)、チェ=イルファ(金大中)、筒井道隆(金甲寿)、ヤン=ウニョン(李政美)、キム=ピョンセ(金俊権)、キム=ミョンジュン(朴正熙)、原田芳雄(神川昭和)ほか
ストーリー韓国大統領・朴正熙に睨まれ亡命生活を余儀なくされていた政治家・金大中は東京を訪れた。これを機会に彼の抹殺をはかるKCIA。その動きを探る日本の公安、そして自衛隊。三島由紀夫に共鳴していた自衛隊の諜報員・富田は自らの「戦争」をするためにKCIAの金大中拉致計画に関与していく。1973年8月8日、「金大中拉致」は実行されるが…
解説その後韓国大統領にもなってしまった金大中氏だが、それ以前はこの事件で最も有名だったと思う。時代も近いし依然不透明な、かつキナ臭い匂いが漂うこの題材を映画化しようという大胆な企画で、最近の韓国映画のノリも取り入れて日本映画には珍しい迫真の政治サスペンスになっているが、物語の絞り込みが足りない面も。むしろ在日朝鮮人の青年を中心に日韓近代史の混沌ぶりを投げ込んで見せたところに魅力があるかも。
メディアDVD発売:ブエナビスタ・ホームエンタテインメント

海峡
1982年
東宝映画
カラー映画(142分)
スタッフ○監督:森谷司郎○脚本:井手俊郎/森谷司郎○撮影:木村大作○美術:村木与四郎○音楽:南こうせつ○原作:岩川隆○製作:田中友幸/森岡道夫/田中壽一/森谷司郎
キャスト高倉健(阿久津剛)、吉永小百合(牧村多恵)、三浦友和(成瀬仙太)、大谷直子(佳代子)、青木峡子(峡子)、伊佐山ひろ子(おれん)、笠智衆(阿久津才次)、森繁久彌(岸田源助)ほか
ストーリー多大な犠牲者を出した洞爺丸事故をきっかけに、津軽海峡に海底トンネルを掘る計画が具体化、国鉄職員の阿久津は地質調査のため竜飛岬の寒村にやって来る。阿久津は岬で自殺しようとしていた多恵という女性を救い、以後多恵はその村で阿久津をひそかに慕いながら暮らすようになる。数年の時を経てようやく青函トンネル掘削工事が開始され、阿久津はトンネル掘りのベテラン源助を説得して現地入りし、洞爺丸事故で両親を失った青年・仙太も工事に加わる。だが海底トンネルの工事は想像を超えた苦闘の連続となった。
解説昭和20年代から50年代まで、およそ20年ものスパンで描く青函トンネルの「プロジェクトX」系映画。スタッフ・キャストともに大作感はあるんだけど、どうしても「黒部の太陽」の二番煎じの印象がぬぐえず、人間ドラマ部分も平板。
メディアDVD発売:東宝


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