日本史映画・明治〜現代
歴史映画コーナーのトップに戻る
太平洋戦争関係で戦場描写がメインのものは「世界大戦関連」でまとめてます。
◎原始〜平安時代◎鎌倉〜室町時代◎戦国時代◎安土桃山時代◎江戸前期◎江戸後期◎明治〜現代
○「田原坂」1988・日本テレビ年末時代劇
◇スタッフ
○原作・脚本:杉山義法○監督:斎藤武市
◇キャスト
里見浩太郎(西郷隆盛)、秋吉久美子(イト)、西郷輝彦(西郷従道)、多岐川裕美(愛加那)、あおい輝彦(大山巌)、勝野洋(桐野利秋)、三浦浩一(村田新八)、坂上忍(菊次郎)、佐藤慶(岩倉具視)、露口茂(島津久光)、風間杜夫(木戸孝允)、近藤正臣(大久保利通)、萬屋錦之介(勝海舟)ほか
◇うんちく
日本テレビ系が年の瀬二夜連続で放映した大作時代劇の一本で全5時間半の長編。タイトルこそ「田原坂」だが、前半では西郷の幕末での活躍も描かれ「西郷一代記」の趣きがある。里見浩太郎が体重を増やし肉付きをよくして演じた西郷が意外とハマっている。後半の西南戦争にかなりの時間を割いており、細かいエピソードが数多く織り込まれた。
○「翔ぶが如く」平成2年(1990)NHK大河ドラマ
◇キャスト
西田敏行(西郷隆盛)、鹿賀丈史(大久保利通)、田中裕子(いと)、賀来千賀子(満寿)、緒形直人(西郷従道)、益岡徹(村田新八)、佐野史郎(有村俊斎=海江田信義)、加山雄三(島津斉彬)、高橋英樹(島津久光)、三田村邦彦(徳川慶喜)、富司純子(篤姫)、佐藤浩市(坂本龍馬)、隆大介(江藤新平)、三木のり平(新門辰五郎)ほか
◇うんちく
薩摩の両雄・西郷隆盛と大久保利通を中心に幕末から明治を描くドラマ。とにかくキャスティングが絶妙で皆さん良く似てました。必然的に薩摩弁が乱舞するドラマとなったため、時折字幕が入ったという作品。原作は司馬遼太郎の同名小説だが、これは明治以降の物語のため、ドラマでは幕末部分を追加して一年続けられた。
○「半次郎」2010・半次郎製作委員会
◇スタッフ
○監督:五十嵐匠
◇キャスト
榎木孝明(中村半次郎)、AKIRA(永山弥一郎)、白石美帆(さと)、田中正次(西郷隆盛)、北村有起哉(大久保利通)、坂上忍(村田新八)、津田寛次(別府晋介)、竜雷太(村田屋伊兵衛)ほか
◇ストーリー
薩摩藩の極貧下級武士の中村半次郎は高い志を抱き、西郷隆盛につき従って動乱の京都へ乗り込む。商家の娘さとと恋仲となりながら剣の腕をふるって半次郎は活躍、戊辰戦争でも功績をあげ、明治になって桐野利秋と改名し陸軍少将となる。しかしかつての理想を見失い己の生き方に迷う半次郎は、下野した西郷とと共に鹿児島へ戻り、やがて西南戦争を迎えることになる
◇うんちく
鹿児島出身の榎木孝明自身が映画化を企画、みずから主演して実現に奔走した一本。「人斬り半次郎」などと呼ばれる人物だが映画中では人を斬る場面もほとんどなく、全体的に「割といい人」な印象で、西南戦争での彼の位置づけもやや曖昧。予算のこともあってかサラッと半次郎一代記を流した印象。なお西郷隆盛役は「似ている」ことでオーディションで選ばれた一般の方。
○「ラスト・サムライ」2003・アメリカ
◇スタッフ
○監督:エドワード=ズウィック
◇キャスト
トム=クルーズ(オールグレン)、渡辺謙(勝元)、真田広之(氏尾)、小雪(たか)、原田眞人(大村)、中村七之助(天皇)、福本清三(寡黙な侍)ほか
◇ストーリー
南北戦争を戦い、インディアンとの戦いで心もすさんでいたオールグレン大尉は、日本軍の近代化をはかる大村の招きを受けて日本へと渡る。勝元ら昔気質のサムライ達の反乱討伐に向かったオールグレンは捕虜となり、サムライ達と共に暮らすうちその生き方に共感を覚えていく。近代化された政府軍に対して古典的な戦いを挑むサムライたちに、オールグレンも甲冑を身に着け加わっていく。
◇うんちく
西郷隆盛の西南戦争をモデルにしたハリウッド製日本時代劇。アメリカ映画で日本時代劇、というのはこれが初ではないが、もっともまともな作品には違いない。まぁ士族反乱で戦国騎馬軍団はないだろうし、忍者がお約束のように出てくるところとかツッコミを入れたらキリが無いが、これはサムライ映画ファン達が作ったファンタジーの一種と受け止めれば面白いかと。「勝元」を演じた渡辺謙は圧倒的な存在感で実質的な主役になっちゃっており、アカデミー助演男優賞にもノミネートされ話題を呼んだ。
○「獅子の時代」昭和55年(1980)NHK大河ドラマ
◇キャスト
菅原文太(平沼銑二)、加藤剛(刈谷嘉顕)、新克利(榎本武揚)、根津甚八(伊藤博文)、鶴田浩二(大久保利通)ほか
◇うんちく
山田太一脚本による、まったくのオリジナル作品。主人公二人がいずれも架空の人物というのも異例。幕末から明治への激動の時代を平沼・刈谷の二人の人物の葛藤と友情を軸に描く。
○「草の乱」2004・「草の乱」製作委員会
◇スタッフ
○監督:神山征二郎○脚本:加藤伸代
◇キャスト
緒形直人(井上伝蔵)、藤谷美紀(こま)、杉本哲太(加藤織平)、田中実(高岸善吉)、安藤一夫(落合寅市)、神山兼三(坂本宗作)、益岡徹(大井憲太郎)、原田大二郎(山形有朋)、山本圭(伊藤博文)、田中好子(高浜ミキ)、林隆三(田代栄助)ほか
◇ストーリー
1918年、北海道で死の床についた老人が妻子に自らの正体が33年前の「秩父事件」の首謀者の一人として死刑判決を受けた「井上伝蔵」であることを明かし、秩父事件の真相を語り始める。1884年(明治17)、最悪の不況の秩父では農民たちが高利貸の取り立てに苦しみ、自由党の流れを汲む困民党が組織されてその救済を図ろうとしていた。公権力も自分達を助けてはくれないと悟った彼らはついに農民達と共に武装蜂起を決行する。
◇うんちく
有名な「秩父事件」の完全映画化で、神山監督にとっては「郡上一揆」に続く「一揆映画」となった。独立製作の映画としては破格の製作費(4億円強)を一般からの出資で集め、秩父市民の参加による群集シーンの実現など、まさに「草の根」的製作体制の映画。悲惨な敗北に終わりながらも爽やかな後味を残す。
○「春の波濤」昭和60年(1985)NHK大河ドラマ
◇キャスト
松坂慶子(川上貞奴)、中村雅俊(川上音二郎)、風間杜夫(福沢桃介)、壇ふみ(福沢房子)、小林桂樹(福沢諭吉)、伊丹十三(伊藤博文)ほか
◇うんちく
日本の近代女優第一号と言われる川上貞奴を主人公にしたドラマ。当時全く見ていなかったもので、何も書けない(涙)。
○「天皇・皇后と日清戦争」1958・新東宝
◇スタッフ
○監督:並木鏡太郎○原作・製作:大蔵貢
◇キャスト
嵐寛寿郎(明治天皇)、高倉みゆき(昭憲皇后)、阿部九州男(伊藤博文)、高島忠夫(山田一太郎)ほか
◇ストーリー
朝鮮をめぐる日本と清の対立はついに日清戦争へと突き進んだ。明治天皇は大本営を広島に移して国民と共に戦争を支援し、兵士たちは陸海で清軍と激しい戦闘を交える。やがて下関で講和会談が行われ、李鴻章遭難などのトラブルの末に講和が成立したが、三国干渉という予期せぬ事態が発生する。
◇うんちく
天皇を主役にするという破天荒な企画「明治天皇と日露大戦争」の大ヒットに続けと大蔵貢が総指揮をとって製作した「新東宝天皇戦争映画」第二弾。再びアラカンが明治天皇を演じ、日清戦争の有名エピソード、歌謡や講談ネタを散りばめて映画化した。伊勢神宮に始まり伊勢神宮に終わるなど一見時代錯誤な右翼調ではあるが、丁汝昌の自決や李鴻章が暴漢に狙撃されるといった逸話も描いてそれなりにバランスもみられるし、だいいち天皇以下やたら「平和主義者」でちっとも好戦的に描かれない。三国干渉まで詰め込んでしまい、日清戦争ネタてんこもりで面白く見られるのは確か。だがこれが新東宝の限界点でもあった。
○「八甲田山」1977・東宝・シナノ企画・橋本プロ
◇スタッフ
○監督:森谷司郎○脚本:橋本忍○撮影:木村大作○音楽:芥川也寸志
◇キャスト
高倉健(徳島大尉)、北大路欣也(神田大尉)、三国連太郎(山田少佐)、加山雄三(倉田大尉)ほか
◇ストーリー
日露戦争も時間の問題となっていた時期、青森県の陸軍は八甲田山を突破する雪中行軍訓練を実施した。青森と弘前の連隊はそれぞれ徳島・神田両大尉に率いられて出発する。しかし徳島隊が少数精鋭・完全準備で挑んだのに対し、神田隊は山田少佐の功名心から大人数・案内も断るなど無謀な行軍を始めてしまった。やがて神田隊は地獄絵の様相を呈していく。
◇うんちく
新田次郎の原作小説を橋本忍が脚色。有名な「八甲田山・死の行軍」を完全映像化した作品。強大な自然の猛威、それに折り合いをつけて挑む人間と、無謀な挑戦をしてしまう人間達がカットバックで描かれ、見ている方も凍えてくるような力作。神田隊の全滅していく様子なんて本当に見ていて背筋が寒くなってくる。
○「二百三高地」1980・東映・シナノ企画
◇スタッフ
○監督:舛田利雄○脚本:笠原和夫
◇キャスト
仲代達矢(乃木希典)、丹波哲郎(児玉源太郎)、森繁久弥(伊藤博文)、三船敏郎(明治天皇)、夏目雅子、あおい輝彦、佐藤允ほか
◇うんちく
東映が久々に放った「日露」ネタ映画。大ヒットした辺りは根強い「日露映画」人気を証明している。予告編はほとんど右翼のノリなのだが、本編はむしろ反戦的。旅順攻防の凄まじい描写もリアルである。乃木ら指揮官の作戦ミスもバッチリ描かれており、割と史実に忠実。仲代の乃木、丹波の児玉が実にハマっていた。
○「日本海大海戦」1969・東宝
◇スタッフ
○監督:丸山誠治○特技監督:円谷英二
◇キャスト
三船敏郎(東郷平八郎)、笠智衆(乃木希典)、松本幸四郎(明治天皇)、仲代達矢(明石元二郎)、加山雄三(広瀬武夫)ほか
◇うんちく
東宝が製作した戦争映画シリーズの一本。海軍の東郷を中心に日露戦争を描く。仲代達矢のスパイ活動が「007」を彷彿とさせて面白い。ストーリーは平板そのものだが円谷英二が力を注いだ特撮による海戦シーンは見応えがある。これが円谷の遺作となった。
○「海ゆかば・日本海大海戦」1983・東映・シナノ企画
◇スタッフ
○監督:舛田利雄
◇キャスト
三船敏郎(東郷平八郎)ほか
◇うんちく
東映が「二百三高地」の成功に気をよくして乱打した戦争映画の最終作。戦闘シーンも迫力に欠け、シナリオも冗漫。
○「明治天皇と日露大戦争」1957・新東宝
◇スタッフ
○監督:渡辺邦男
◇キャスト
嵐寛寿郎(明治天皇)、林寛(乃木希典)、田崎潤(東郷平八郎)、宇津井健(広瀬武夫)、高島忠夫(乃木保典)、丹波哲郎(島村少将)ほか
◇ストーリー
極東への侵略を進めるロシア帝国に対し、本来戦争を望まぬ明治天皇だったが、やむなく開戦の詔勅を出す。旅順の戦い、奉天の戦い、日本海海戦を経て日本は遂に勝利する。
◇うんちく
新東宝の創立十周年記念ワイドスクリーン・総天然色超大作で、史上初めて天皇を主役にすえるという大胆な企画で大ヒットを飛ばした(以来、「日露もの」は当たる、という迷信が生まれた)。嵐寛寿郎演じる明治天皇は平和主義者でなおかつ国民・兵士と労苦をともにする人物として描かれ、乃木・東郷についてもほとんど神格化された名将像そのままとなっている。これが戦後作られた映画というのが今ではかえって信じられないくらい(笑)。神社に始まり神社に終わる映像、たびたび挿入される「御製の歌」、ラストのナレーションも「民族の誇りと英知で世界平和に貢献しなければならない」と何やら怖い(笑)。それにしても日本海海戦のシーンは東宝のお株を奪わんばかりの精巧なミニチュア特撮でちょっと驚かされる。これ以後、新東宝はほとんど「皇国史観」みたいな戦争映画を連発していくことになる。
○「坂の上の雲」2009〜2011・NHKスペシャルドラマ
◇スタッフ
○脚本:野沢尚・加藤拓・柴田武志・佐藤幹夫○音楽:久石譲○原作:司馬遼太郎
◇キャスト
本木雅弘(秋山真之)、阿部寛(秋山好古)、香川照之(正岡子規)、菅野美穂(正岡律)、松たか子(秋山多美)、石原さとみ(秋山季子)、藤本隆宏(広瀬武夫)、柄本明(乃木保典)、高橋英樹(児玉源太郎)、尾上菊之助(明治天皇)、石坂浩二(山本権兵衛)、西田敏行(高橋是清)、加藤剛(伊藤博文)、渡哲也(東郷平八郎)ほか
◇ストーリー
伊予・松山で生まれた三人の男、秋山好古・秋山真之兄弟と正岡子規を軸に近代国家となったばかりの明治日本を描く。好古は陸軍で騎兵を育て、真之は海軍の参謀となり、子規は短歌・俳句の近代化に短い生涯を捧げる。やがて日本は大国ロシア相手に日露戦争という大きな賭けに乗りだしてゆく。
◇うんちく
司馬遼太郎の代表作の一つで、過去にも何度も映像化企画があがったものの司馬自身が拒否してきたいわくつきの作品が原作。NHKが大河ドラマとは別枠で全13回、年末放送の3年がかりという異例の形で制作した。豪華キャスト(チョイ役が多いけど)に大掛かりな戦闘シーン、原作以上に子規の存在感を増すなど手の込んだ大作ではあったが肝心の日露戦争部分で原作を大きくはしょらざるをえず、また司馬の歴史解説をそのまんまナレーション(渡辺謙)で流すなど、終盤硬直気味のドラマだった感もある。脚本の野沢尚が執筆未完成のうちに自殺してしまったため、ディレクターたちが補完してシナリオを完成させるという経緯もあった。
○「ポーツマスの旗」1981/NHKドラマスペシャル
◇スタッフ
○原作:吉村昭○脚本:大野靖子
◇キャスト
石坂浩二(小村寿太郎)、大原麗子(小村町子)、原田芳雄(明石元二郎)、秋吉久美子(ナターシャ)、田中健(本多熊太郎)、三原順子(宮本ゆき)、佐藤浩市(富岡慎太郎)、宇野弥太郎(川谷拓三)、鈴木瑞穂(伊藤博文)、児玉清(金子堅太郎)、オスマン=ユスフ(ウィッテ)、ロナルド=ウィスニスキー(T=ルーズベルト)、ほか
◇ストーリー
1905年、日露戦争の講和会議がアメリカの仲介でアメリカ東海岸の町ポーツマスで開かれる事となった。日本が戦争継続など不可能な情勢の中で難役を押し付けられた外務大臣・小村寿太郎ら日本全権団はウィッテ率いるロシア全権団と凄まじい駆け引きを展開する。その一方、明石元二郎はヨーロッパで暗躍し、ロシア国内の革命勢力を扇動しようとしていた。
◇うんちく
ポーツマス講和会議の全貌を全4回・5時間半強もの時間をかけて描く大作ドラマ。小村と明石を軸に「日露戦争最後の戦い」を描くことをテーマにしているが、見所はもっぱら「外交官たちの戦い」で、明石の部分は余計という気もしなくはない。実際にポーツマスで大規模なロケを行い各回の冒頭に現在のポーツマスの模様を紹介したり、当時の閣僚や、当時はまだ一官僚に過ぎない幣原喜重郎が出てくるなど、歴史ドラマとして細かいところで見ごたえがある。
○「男子の本懐」1981年・NHK長時間ドラマ
◇スタッフ
○原作:城山三郎○脚本:山内久
◇キャスト
北大路欣也(浜口雄幸)、近藤正臣(井上準之助)、壇ふみ(浜口の妻)、佐野浅夫(小泉孫二郎)、勝野洋ほか
◇ストーリー
昭和4年、張作霖爆殺、昭和恐慌など不穏な情勢の中で難局を打開するべく頑固・清廉で「ライオン」とあだ名された官僚出身の浜口雄幸が首相となる。浜口は日銀出身の井上準之助を蔵相に迎え、金解禁・軍縮など日本の経済・政治を立て直すべく長期的な改革を推進していく。しかし不景気の中の痛みを伴う改革と軍縮外交で軍部・右翼の怒りを買った浜口と井上は次々と凶弾に倒れていく。
◇うんちく
タイトルは東京駅で狙撃された直後に浜口がつぶやいた言葉からとられている。明治生まれの質実剛健な官僚系政治家の二人が危機に陥った日本の建て直しを図ったものの結局挫折し、その後の日本が一気に破滅への道をたどっていく過程をまさにドラマチックに描いていく。二人を襲うテロリストの心理過程にも踏み込み、単純な善悪論ではないドラマ作法も上手い。
○「戒厳令」1973・現代映画社、ATG
◇スタッフ
○監督:吉田喜重○脚本:別役実
◇キャスト
三国連太郎(北一輝)ほか
◇ストーリー
中国から帰った革命思想家・北一輝は「日本改造法案大綱」を著し、戒厳令下の国家改造を夢想した。これに影響を受けた右翼青年が財閥の重役を殺害し、また青年将校にも北の著作の影響を受けたクーデター計画が練られて行く。北自身は彼らとはつかず離れずのあいまいな態度をとろうとするが、昭和12年2月26日、ついにクーデターは実行された。
◇うんちく
松竹ヌーベル・ヴァーグの旗手の一人とされた吉田監督が、2.26事件の思想的首謀者として処刑された思想家・北一輝の姿を、その心理面に重点を置いて撮り上げた作品。法華経を唱え、自虐意識に苛まれ、クーデターによる国家改造を夢想する北のいささかエキセントリックな姿を、この手の演技では右に出る者のない三国がまさに「怪演」している。大胆な構図など前衛映画的な表現が多くみられ、難解な点も否めない。
○「動乱」1980・東映/シナノ企画
◇スタッフ
○監督:森谷司郎○脚本:山田信夫
◇キャスト
高倉健(宮城啓介)、吉永小百合(溝口薫)、米倉斉加年(島謙太郎)、田村高広(神崎中佐)、志村喬(宮城広介)ほか
◇ストーリー
宮城中尉の中隊から脱走兵が出た。実家の貧しさゆえに身を売られる姉・薫に会いに行こうとしたのだ。結局脱走兵は処刑され、宮城も朝鮮辺境守備隊に左遷されて辛酸をなめるが、この地で女郎となっていた薫と再会、純情な愛を育む。やがて宮城は国家改造を目指す皇道派にのめりこんでゆき、二・二六事件を起こすことになる。
◇うんちく
「二・二六事件」をテーマにしているが登場人物は全てモデルは存在するものの名前も設定も変えられており、あくまでフィクションという建前である。高倉健・吉永小百合2大スターのメロドラマを軸に、山本薩夫映画でおなじみの山田信夫の脚本で当時の日本の過酷な社会矛盾を背景に描き込んで二・二六事件を一種の革命運動のように描く。二・二六が失敗したことで日本が戦争へと突っ走って行った?ととれるような終わり方はどうかと思うが。
○「226」1989・フィーチャーフィルムエンタープライズ
◇スタッフ
○監督:五社英雄○脚本:笠原和夫○製作:奥山和由
◇キャスト
三浦友和、萩原健一、竹中直人、本木雅弘、佐野史郎、隆大介ほか
◇ストーリー
昭和12年2月26日。社会変革=「昭和維新」を唱える陸軍若手将校たちがクーデターを決行した。閣僚たちを次々に殺害し、一時決起は成功したかに見えたが、わずか3日間のうちに彼らは「賊軍」とされ追いつめられていく。
◇うんちく
主要キャストはもちろん、端役チョイ役に至るまで豪華キャストで固めた「2・26事件」もの。特別出演者を探すのが楽しみな映画ではある。しかし反乱の三日間に話をしぼっているため反乱にいたる背景などの説明が今ひとつで、青年将校たちの「決起」を単純に美化しがちな観も否めない。それと昭和天皇関係が一切出てこないのも欠点の一つ。ラストに死ぬ将校が「天皇陛下万歳」と叫んで終わるのが意味深ではあるが。
○「戦争と人間」1970〜1973・日活
◇スタッフ
○監督:山本薩夫○脚本:山田信夫○原作:五味川純平
◇キャスト
滝沢修(伍代祐介)、芦田伸介(伍代京介)、高橋悦史(伍代英介)、浅丘ルリ子(伍代久美子)、北大路欣也(伍代俊介)、吉永小百合(伍代順子)、山本圭(標耕平)、高橋英樹(柘植大尉)ほか
◇ストーリー
昭和初期、新興財閥の伍代産業は軍部と結びついて満州への事業進出を図ろうとしていた。大陸進出の野望を持つ祐介・京介・英介に対し、次男・俊介は社会の矛盾を見て一家および日本のやり方に疑問を持ち、末娘の順子は俊介の親友で反戦・労働運動家の標耕平と恋に落ちる。その他伍代財閥に関わる数多くの人間達のドラマを展開させながら、張作霖爆殺、満州事変、日中戦争、ノモンハン事件と歴史は泥沼の戦争への道を歩んでいく。
◇うんちく
「赤いセシル・B・デミル」の異名をとる山本薩夫監督が五味川純平の原作小説を合計9時間超の三部作で映画化した超大作。しかし日活が途中で製作を断念したため「完結編」と銘打たれた第三部は中途半端に終わるものとなってしまった。上に書いたストーリーはあくまでメインを簡潔にまとめたもので、とにかく膨大な数の登場人物(実在人物も含む)と国際的スケールの舞台を用意した豪華作品だ。大スターがゾロゾロ出てくる出演者ロールはまさに壮観。歴史的事件の再現シーンも数多く、2・26事件や西安事件の映像が拝める。極めつけはラスト(のつもりは無かったのだろうが)に出てくる、ソ連軍の協力を得たノモンハン事件の迫力の戦闘シーンだろう。また、共産党員の山本監督らしく労働運動や反戦運動への弾圧や軍隊内の非人間的な実態の描写などはかなり力の入ったものになっているのも見どころ。
○「スパイ・ゾルゲ」2003・「スパイ・ゾルゲ」製作委員会
◇スタッフ
○監督:篠田正浩
◇キャスト
イアン=グレン(ゾルゲ)、本木雅弘(尾崎秀美)、椎名桔平(吉河光貞)、上川隆也(特高刑事)、永澤俊矢(宮城与徳)、葉月里緒菜(三宅華子)、小雪(山崎淑子)、夏川結衣(尾崎英子)、榎木孝明(近衛文麿)、岩下志麻(近衛夫人)、竹中直人(東条英機)、大滝秀治(西園寺公望)ほか
◇ストーリー
ドイツ大使館に勤めるリヒャルト=ゾルゲと近衛内閣嘱託・尾崎秀美らがコミンテルンのスパイ活動をしていたとして一斉に検挙された。取調べの中でゾルゲと尾崎はこれまでの経緯を明かしていく。激動の上海で出会った二人は、2.26事件などを通して密接に結びつき、やがて政府中枢に入った尾崎が日本の国策をゾルゲらに流す。ゾルゲがソ連に流した情報は歴史を大きく動かすことになるが…
◇うんちく
スパイ史上に名高い「ゾルゲ事件」をテーマに篠田正浩監督が自ら最後の監督作品として満を持して臨んだ昭和史大作。ゾルゲらのスパイ活動を描くのはもちろんだが狂言回し的印象もあり、、監督自らの経験も含めた昭和前期史そのものを描くことがテーマだったと思われる。2.26事件や昭和天皇の政治的役割など突っ込んだ描写もあるが、もう一つ的を絞りきれなかったかも。篠田監督が進めていた背景にCGを多用する手法は本作で昭和の町並みを再現する上でかなり効果的に使われている。
○「激動の昭和史・軍閥」1970・東宝
◇スタッフ
○監督:堀川弘通○脚本:笠原良三
◇キャスト
小林桂樹(東条英機)、加山雄三(新井記者)、三船敏郎(山本五十六)、山村聡(米内光政)、志村喬ほか
◇ストーリー
昭和11年の2.26事件をきっかけに軍部は日本の主導権を握り、戦争への暴走を始めた。陸軍を代表する形で首相となった東条英機は対米開戦に踏み切り、初戦の圧勝で独裁を強めていく。しかし敗色が濃くなると国民にそれをひた隠しにし続ける。毎日新聞の記者・新井は現地取材で真実を知り記事にするが、そのため東条・陸軍の怒りを買い、戦地へと送られることとなった。
◇うんちく
「日本のいちばん長い日」に続く東宝の昭和史シリーズ第二作。東条英機の動向を中心にすえ、陸海の軍閥がいかに日本を破滅に導いていったかを描く力作。とくに加山雄三の記者の視点から「報道の責任」を問う姿勢が注目される。死に赴く特攻隊員が戦意高揚をうたった報道機関を非難し、「こんな国は滅びればいい!」と叫ぶシーンは強烈。ラストがやや唐突だが次作「沖縄決戦」への引きということなのかな。
○「落日燃ゆ」2009・テレビ朝日系大型ドラマ
◇スタッフ
○監督:猪崎宣昭○脚本:尾西兼一○原作:城山三郎
◇キャスト
北大路欣也(広田弘毅)、高橋惠子(広田静子)、山本耕史(広田正雄)、橋爪功(佐藤賢了)、大滝秀治(西園寺公望)、内藤剛志(山本五十六)、津川雅彦(吉田茂)ほか
◇ストーリー
外務官僚出身で国際感覚をもつ広田弘毅は、暴走する軍部を押さえ込むため総理の座に担ぎ出されるが、結局軍部によって総辞職に追い込まれてしまう。その後の戦争と敗戦を経て、突然広田はA級戦犯として東京裁判で戦争責任を問われる。周囲がみな無実を信じるなか、広田自身は「責任はある」と自覚していた。
◇うんちく
むしろ軍部に抵抗する側でありながらA級戦犯として処刑された唯一の文官・広田弘毅の生涯を描いた城山三郎の原作小説をドラマ化(滝沢修主演による1976年版もある)。原作では吉田茂との対照的な生き方が印象的なのだが、このドラマでは家族との関係を中心に小ぶりにまとめた印象。
○「あの戦争は何だったのか・日米開戦と東條英機」2008・TBSドキュメンタリードラマ
◇スタッフ
○監督:鴨下信一○脚本:池端俊策○監修:保阪正康
◇キャスト
ビートたけし(東條英機)、阿部寛(石井秋穂)、高橋克典(吉原政一)、橋爪功(東郷茂徳)、風間杜夫(木戸幸一)、山口祐一郎(近衛文麿)、伊武雅刀(嶋田繁太郎)、平野忠彦(杉山元)、高橋克実(武藤章)、木村祐一(佐藤賢了)、西田敏行(徳富蘇峰)、市川団十郎(山本五十六)、野村萬斎(昭和天皇)ほか
◇ストーリー
敗戦後の昭和23年、新聞記者の吉原は開戦を煽った文化人・徳富蘇峰に取材し、日米開戦に至る裏舞台を聞き出す。当時、参謀本部および陸軍省、そして世論では開戦強硬論が巻き起こり、外交交渉での決着をはかろうとした近衛文麿は内閣を投げ出した。昭和天皇は「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と開戦派と目されていた東條英樹に組閣を命じ、あくまで日米外交を進め戦争回避の意向を示した。これに従い東條は交渉再開の方向で陸軍・海軍・外務の意見をまとめようとするが、強硬な陸軍と統帥部、予算分捕りを目論む海軍の前に少数の避戦論は力を失っていく。避戦派の石井秋穂中佐は最後の奇策を東條に進言するが…
◇うんちく
戦争そのものに比べてあまり取り上げられない開戦に至る国家指導層の動向を描いた意欲作。単純に東條個人を責めるのではなくむしろ当時の日本指導部の組織的欠陥、マスコミや世論に押されて力なく流されていく様子を同情的に、ドキュメントタッチで淡々と描いた(ドラマ途中でドキュメンタリーも挿入される)。豪華キャストでの緊張感ある映像、昭和史研究家・保阪正康氏の著作を原作にして堅実な内容となったが、ドラマとしての面白みにはいま一つ欠ける感もあった。
○「気骨の判決」2009・NHKスペシャル終戦特集ドラマ
◇スタッフ
○演出:柳川強○脚本:西岡琢也
◇キャスト
小林薫(吉田久)、國村隼(伊地知健吉)、渡辺哲(兼吉征司)、山本圭(司法大臣)、麻生祐未(吉田節子)ほか
◇ストーリー
戦時中の1942年に行われた衆議院選挙では「大政翼賛会」に属さない独自候補に対し露骨なまでの選挙妨害が行われた。鹿児島の選挙区で敗れた候補が県政や教育者ぐるみで妨害が行われた選挙の無効を裁判所に訴える。大審院の吉田久は実態を調査、数々の妨害を受けながらも1945年3月に「選挙無効」の画期的判決を打ちだす。
◇うんちく
あまりとりあげられることのない戦時中の議会選挙の実態と、それを司法の立場から勇気ある無効判決を下した知られざる史実を取り上げた意欲作。架空人物ではあるが苦悩しつつ戦争協力と選挙妨害に与する國村隼の校長が印象的。
○「日本のいちばん長い日」1967・東宝
◇スタッフ
○監督:岡本喜八○脚本:橋本忍
◇キャスト
三船敏郎(阿南陸相)、高橋悦史(井田中佐)、中丸忠雄(椎崎中佐)、佐藤允(古賀少佐)、黒沢利男(畑中少佐)、宮口精二(東郷茂徳)、山村聡(米内光政)、島田正吾(森近衛師団長)、小林桂樹(徳川侍従)、松本幸四郎(昭和天皇)、笠智衆(鈴木貫太郎首相)ほか
◇ストーリー
1945年8月。日本は沖縄も失い、敗戦は決定的となっていた。政府では本土決戦を叫ぶ軍部と講和派が対立していたが、原爆投下、ソ連の参戦を受けて、8月14日、昭和天皇が降伏の「聖断」を下す。政府は各国への通知・玉音放送の準備を始めるが、陸軍の一部はこれの断固阻止を図る。そして8月14日の深夜、玉音放送の録音版を奪うべく、陸軍の一部がクーデターを決行した!
◇うんちく
コメディとアクションの鬼才・岡本喜八監督が描いた実録もの。8月14日正午から玉音放送が始まる8月15日正午までの24時間の刻一刻を、息詰まる緊張感で一気に見せる傑作である。登場人物の全てが実在で、そのリアリティはただごとではない(よく考えると、演じてる本人達もその時代の記憶が生々しい頃だ)。当時の東宝のまさにオールスターキャスト(チョイ役でも大物が多数出演)で臨んだ大作で、以後の「8.15シリーズ」へとつながっていく。戦闘シーンはほとんど無いが、個人的に日本最高の「戦争映画」だと思っている。
○「日本敗れず」1954・新東宝
◇スタッフ
○監督:阿部豊
◇キャスト
早川雪洲(川浪陸相)、藤田進(中田大将)、斎藤達雄(首相)、山村聡(南郷外相)、細川俊夫(畑少佐)、丹波哲郎(松崎少佐)ほか
◇うんちく
上記「日本のいちばん長い日」と全く同じテーマを終戦からわずか9年という時期に映画にしてしまった一本。さすがに時代が近すぎるので実在人物はすべてもじった仮名で登場する。脚本・演出ともにひねりがなく淡々としていて「いちばん長い日」と比較されてしまうのが気の毒な映画だが、この時期でこのテーマに正面から取り組んだことは評価されていい。玉音放送が流れるなか生まれた子供たちが映画公開時の時点で小学校で遊ぶ姿が映される希望に満ちたラストも忘れがたい。
○「大日本帝国」1982・東映
◇スタッフ
○監督:舛田利雄○脚本:笠原和夫
◇キャスト
丹波哲郎(東条英機)、市村萬次郎(昭和天皇)、若山富三郎(石原完爾)、三浦友和、あおい輝彦、篠田三郎、夏目雅子、西郷輝彦ほか
◇ストーリー
日中戦争が泥沼化し、ABCD包囲陣による経済封鎖の中、東条英機は昭和天皇に首相に任じられる。天皇の意向は和平だったが、「ハル・ノート」を突きつけられた東条内閣はやむなく開戦を決議する。初め快進撃する日本だったが、やがて各地で敗走・玉砕、そして敗戦へ。そして戦争が終わっても戦犯として裁かれる人々がいた。
◇うんちく
「二百三高地」に続く東映戦争大作。前作同様に天皇から庶民まで多くの人物をパノラマ的に登場させ、太平洋戦争を描写していく。公開当時タイトルのインパクトもあって激しい非難も浴びた作品であるが、少なくとも戦場レベルでの描写では日本軍の他民族に対する横暴や自国民の生命を軽視する傾向、そして玉砕の異様さもキチンと描かれている。戦時下にしぶとく生き抜こうとする庶民の描写もあって姿勢も結構前向きである。問題なのは東条をはじめとする政治家・軍人など国家指導層の描き方が甘く(というか量が少ない)、日本が「被害者」という印象を強く与えている点だろう。
○「プライド・運命の瞬間」1998・東映・東京映像
◇スタッフ
○監督:伊藤俊也
◇キャスト
津川雅彦(東條英機)ほか
◇うんちく
東條英機の視点から東京裁判を描いた作品。裁判の綿密な再現や俳優陣の熱演は見物だが、あからさまな東條美化・侵略否定の姿勢が目に付く。だいたいインド独立のシーンが良くはさまるのは何なのか。パール判事を描く企画が東條に変更されたため展開もムチャクチャである。
○「太陽」2005・ロシア
◇スタッフ
○監督:アレクサンデル=ソクーロフ
◇キャスト
イッセー尾形(昭和天皇)、ロバート=ドーソン(マッカーサー)、佐野史郎(侍従長)、つじしんめい(老僕)、守田比呂也(鈴木貫太郎)、六平直政(阿南惟幾)、草薙幸二郎(東郷重徳)、桃井かおり(香淳皇后)ほか
◇ストーリー
敗色濃厚の戦争末期、「現人神」である昭和天皇は憂鬱な気分を生物の研究で紛らわしていた。やがて戦争が終わり占領軍がやって来ると、昭和天皇はマッカーサーと会談し、「神」であることを否定する「人間宣言」を出すことになる。
◇うんちく
ソクーロフ監督のレーニン、ヒトラーに続く現代史映画三作目。スタッフも製作もロシアなのに日本人が見てほとんど違和感を感じさせないのが凄い。当然出演者の大半が日本人なのだが、イッセー尾形演じる昭和天皇はまさに本人そのものに見える瞬間があるほどのもの。ただかなり芸術性の高い難解な映画でもあり、史実を再現するといった映画ではないことにも注意。
○「白洲次郎」2009・NHKスペシャルドラマ
◇スタッフ
○演出:大友啓史○脚本:大友啓史・近衛はな
◇キャスト
伊勢谷友介(白洲次郎)、中谷美紀(白洲正子)、奥田瑛二(白洲文平)、原田芳雄(吉田茂)、岸辺一徳(近衛文麿)ほか
◇ストーリー
大富豪の御曹司として奔放に育った白洲次郎はイギリスに留学、イギリス仕込みの英語力と知性で伯爵令嬢の正子の心を射止めて結婚、吉田茂や近衛文麿のブレーンとなる。戦争回避に失敗して戦時中は農村に隠居生活を送り、戦後は吉田のもとで占領政策をめぐりGHQとぶつかりあう。
◇うんちく
なぜか発生した「白洲次郎ブーム」に乗る形で製作された大型ドラマ。少々キザな男の昭和史舞台裏ものといったところだが、妻・正子(本来はこちらのほうが有名人だった)にも焦点を分散させたせいもあって後半かなり散漫な印象が残る。全三回で放映されたが吉田茂役の原田芳雄の病気治療のため第三回の放送が大幅に遅れるアクシデントもあった。
○「憲法はまだか」1996・NHKドラマ
◇スタッフ
○脚本:ジェームズ三木
◇キャスト
津川雅彦(松本丞治)、江守徹(近衛文麿)、鈴木瑞穂(吉田茂)ほか
◇うんちく
タイトルの通り、日本国憲法誕生までの舞台裏を描くドラマ。憲法50周年記念作品として制作され「象徴天皇」「戦争放棄」の二部構成。劇中、包帯グルグル巻きの少年が何度か唐突に登場するが、これが「憲法」を象徴している。あまり知られていない事実もいろいろと出てきて興味深い。
○「小説吉田学校」1983・フィルムリンクインターナショナル
◇スタッフ
○監督:森谷司郎
◇キャスト
森繁久弥(吉田茂)、高橋悦史(池田勇人)、若山富三郎(三木武吉)、芦田伸介(鳩山一郎)、竹脇無我(佐藤栄作)、西郷輝彦(田中角栄)ほか
◇ストーリー
敗戦後の日本。二期目の首相を務める吉田茂は日本の独立達成のため平和条約の締結を急ぐ。その間に展開される鳩山・三木一派との権力闘争を戦うため官僚出身を中心とした吉田子飼いの政治家集団「吉田学校」が結成される。官僚政治家の独占を恐れる三木武吉は鳩山一郎を首相にすべく、次々と策謀をめぐらす。
◇うんちく
吉田茂を中心に昭和20年代の日本政治史を描く。とにかく実在人物だらけの映画のため、見ていて「あ!この人もいた!」という発見が多々あって非常に楽しい。首相になった人だけでも幣原喜重郎、吉田茂、鳩山一郎、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、三木武夫、中曽根康弘、竹下登、宮沢喜一、海部俊樹などが登場。その他現在の政治家の親・祖父の世代がかなり登場する。ただ吉田茂の美化が強引すぎるような気もする。
○「力道山」2004・韓国/日本
◇スタッフ
○監督・脚本:ソン=ヘソン
◇キャスト
ソル=ギョング(力道山)、中谷美紀(綾)、萩原聖人(吉町譲)、船木誠勝(井村昌彦)、ノ=ジュノ(大木金太郎)、武藤敬司(ハロルド坂田)、橋本真也(東浪)、藤竜也(菅野武雄)ほか
◇ストーリー
第二次大戦のさなか、朝鮮人・金信洛は相撲部屋に入門するため日本にやって来た。差別的いじめもしたたかに逆利用して菅谷会長という有力な後援者を得た彼は「力道山」のしこ名で昇進していく。しかし朝鮮人ゆえに大関・横綱にはなれないと知った力道山はプロレスに転向。渡米後の日本で大プロレスブームを巻き起こして国民的スターとなる。しかし成功の陰で興行上の対立、妻・綾との不和も拡大し孤立感を深めてゆく。
◇うんちく
戦後日本の象徴的大スターの知られざる実像に迫ろうとした力作。韓国の名優・ソル=ギョングが肉体改造したうえ、ほぼ全編日本語のセリフで熱演。現役プロレスラーも多数出演した試合シーンは大迫力で、当時の日本の熱狂ぶりを見事に再現している。フィクションも多く混ぜているが目的のために手段を選ばぬ力道山像やプロレス興行のドロドロした裏舞台も描き、なかなかリアル。プロレスにとどまらず戦後日本の「歴史」の一断面を描いた一作としてお奨め。
○「黒部の太陽」1968・石原プロ/三船プロ
◇スタッフ
○監督:熊井啓○脚本:井手雅人/熊井啓○音楽:黛敏郎
◇キャスト
三船敏郎(北川)、石原裕次郎(岩岡剛)、滝沢修(太田垣士郎)、辰巳柳太郎(源三)、高峰三枝子(加代)、宇野重吉(森)ほか
◇ストーリー
1956年、関西電力が北アルプスの黒部峡谷に水力発電のための巨大なダムの建設を決定、建設会社熊谷組が現場へ資材を運ぶための大トンネルの建設を請け負った。気の進まぬまま現場責任者となった熊谷組の北川に、下請け会社の社長の息子・岩岡はフォッサマグナを抜けるトンネル工事の困難さを伝える。順調に進むかに見えたトンネル工事は果たして「破砕帯」にぶつかり、大規模な出水と多くの犠牲者を出す難工事となる。そのさなか北川の娘が難病に倒れ…
◇うんちく
高度成長期の象徴する大工事を石原・三船の二大スタープロダクションで製作、社会派の熊井啓監督により映画化した大作でその後の「プロジェクトX系映画」の元祖。映画会社の執拗な企画つぶし圧力があり、電力会社・ゼネコンの全面協力とチケット買い取りで実現した経緯がある(企業名が全て実名なのはそのためでもある)。トンネルシーン撮影は熊谷組工場敷地内に実物そのままのセットが組まれ、出水事故シーンは大迫力。製作した裕次郎の「映画は劇場で」との遺志で長らくTV放映、ソフト化されず、完全版上映もなかなかない一作。
○「東京オリンピック」1965・オリンピック東京大会組織委員会
◇スタッフ
○監督:市川崑
◇キャスト
出場選手たち、観客ほか
◇うんちく
1964年に開催された東京オリンピックの記録映画。名匠・市川崑監督が望遠レンズを駆使した膨大なフィルムから編集、単なるスポーツ大会の記録映画にとどまらない芸術作品に仕立て上げた。選手たちの肉体の美しさやその苦闘を映しつつ、無名の選手や観客の反応なども細かく挿入するのが特徴で、どこかユーモラスな作者の視線も感じさせる。当時組織委員長だった河野一郎が内容を批判し、「芸術か記録か」という論争を起こしたことは有名。ところどころで映る野外の風景や人々の姿は高度成長期の日本そのものの貴重な記録でもある。もともとは全種目を入れる義務があったので全3時間ぐらいあったのだが現在ソフト化されているものは30分ほどカットしたディレクターズ・カット版である。
○「実録・連合赤軍〜あさま山荘への道程(みち)〜」2008・同名製作委員会
◇スタッフ
○製作・監督:若松孝二
◇キャスト
坂井真紀(遠山美枝子)、地曳豪(森恒夫)、並木愛枝(永田洋子)、ARATA(坂口弘)、伴杏里(重信房子)、坂口拓(塩見孝也)、原田芳雄(ナレーション)ほか
◇ストーリー
1960年代から70年代にかけての世界的な学生運動や中国の文革の影響を受け、日本でも左翼学生運動が激化した。しかし安保闘争に敗れ、学生運動が収束していくなか過激活動家は内ゲバを繰り返し、その中から武装革命闘争を掲げる「赤軍派」が結成される。警察による指導部の検挙が相次ぐなか赤軍派は「革命左派」と合流して「連合赤軍」となり、山岳に拠点を作って軍事訓練を開始する。だがそこで起こったのは凄惨な「総括リンチ」だった…
◇うんちく
世界的背景をもつ学生運動、その敗北から生まれた「連合赤軍」の結成過程とその凄惨な末路にいたる歴史を3時間超にわたってじっくりと描く実録大作。60〜70年代という時代を生きた、ある意味真剣すぎた若者たちが現実と乖離した「革命ごっこ」の末に破滅していく過程を、赤軍派とも深いかかわりをもつ若松監督が鎮魂をこめて真正面からとりくみ映像化している。下記の「突入せよ!」では全く見えてこない時代背景を描き出すにはこれだけの時間は必須だったろう。どこか「仁義なき戦い」っぽくもある。
○「突入せよ!あさま山荘事件」2002・あさま山荘事件製作委員会
◇スタッフ
○監督・脚本:原田眞人
◇キャスト
役所広司(佐々淳行)、宇崎竜童(宇田川信一)、藤田まこと(後藤田正晴)、天海祐樹(佐々幸子)、伊武雅刀(野間本部長)、豊原功輔(内田尚孝)ほか
◇ストーリー
1972年2月、武力革命を唱える過激派・連合赤軍のメンバーがライフル銃を持って人質をとり「あさま山荘」に立て篭もった。警察庁の佐々は警察庁長官・後藤田に現場に赴いて事件解決の指揮にあたるよう指示を受け、「犯人は全員生け捕りとせよ」と厳命される。現場に向かった佐々だったが犯人たちの激しい抵抗、そして東京の指示を快く思わない長野県警との対立に苦しめられる。極寒の中、警察機動隊と犯人達の息詰まる死闘が続く。
◇うんちく
公開時にとうとうこれも「歴史」の範疇かと思わされた、日本現代史の中で最も世間の注目を集めた「あさま山荘事件」の映画化。佐々淳行本人の原作をもとに警察内部の組織対立と銃弾と水・鉄球が飛び交う攻防戦を迫力のタッチで映像化している。ただもう少しこの当時の時代を感じさせる描写や事件の思想的背景も入れてほしかったところ。
○「KT」2002・日韓合作「KT製作委員会」
◇スタッフ
○監督:阪本順治
◇キャスト
佐藤浩市(富田満州男)、キム=ガプス(金車雲)、チェ=イルファ(金大中)、筒井道隆(金甲寿)、ヤン=ウニョン(李政美)、キム=ピョンセ(金俊権)、原田芳雄(神川昭和)ほか
◇ストーリー
韓国大統領・朴正熙に睨まれ亡命生活を余儀なくされていた政治家・金大中は東京を訪れた。これを機会に彼の抹殺をはかるKCIA。その動きを探る日本の公安、そして自衛隊。三島由紀夫に共鳴していた自衛隊の諜報員・富田は自らの「戦争」をするためにKCIAの金大中拉致計画に関与していく。1973年8月8日、「金大中拉致」は実行されるが…
◇うんちく
その後韓国大統領にもなってしまった金大中氏だが、それ以前はこの事件で最も有名だったと思う。時代も近いし依然不透明な、かつキナ臭い匂いが漂うこの題材を映画化しようという大胆な企画で、最近の韓国映画のノリも取り入れて日本映画には珍しい迫真の政治サスペンスになっているが、物語の絞り込みが足りない面も。むしろ在日朝鮮人の青年を中心に日韓近代史の混沌ぶりを投げ込んで見せたところに魅力があるかも。
◎原始〜平安時代◎鎌倉〜室町時代◎戦国時代◎安土桃山時代◎江戸前期◎江戸後期◎明治〜現代
歴史映画コーナーのトップに戻る