特急〔白鳥〕の13時間
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庄内平野を行く(東酒田〜砂越) |
列車は羽越本線に入る。車掌が交替し、チャイムが鳴ってふたたびの案内放送。「本日の指定券は売り切れております……」と告げる。今日の下りと翌25日の席はたちまち埋まったのに比べて、この上り列車は比較的あとまで席が残っていたが、最終的に満員御礼となったようだ。
9時19分の羽後本荘に着く頃、雪がちらつきはじめた。仁賀保(にかほ)につづいて、「奥の細道」最北の地、象潟(きさかた)。「陸の松島」が左手に見える。
有耶無耶(うやむや)の関が近い小砂川(こさがわ)〜女鹿(めが)で県境を越え、山形県へ。
遊佐(ゆざ)で庄内平野に入ると、視界が効かなくなるほどの雪になった。10時11分に酒田を出て、5分ほどで砂越を通過。先日吹雪の中で撮影を行ったところだ。今日も雪が吹き降りのようになっている。
上り〔白鳥〕砂越を約70分遅れで通過 (2001. 2. 12) [Nikon F5, AF-S ED 80-200mm F2.8D(IF)+TC-14E, RHPIII] |
10時31分、鶴岡を過ぎ、三瀬(さんぜ)でまた海に出る。ここから村上まで日本海のすぐ近くを走る。ハイライトは桑川(くわがわ)付近の「笹川流れ」。
羽越本線は旅客ではローカル線に近いものの、関西と東北・北海道を結ぶ貨物列車の経路で、その需要を満たすために一部が複線になっている。一駅ごとに単線、複線、また単線と変化に富み、また線増部分は長いトンネルで抜けていたりする。海側の下り列車の方が車窓は良いが、しかし下り〔白鳥〕では冬場は闇に沈んでしまう。
あつみ温泉から鼠ヶ関(ねずがせき)を過ぎると新潟県。天気は雨に変わった。
県境は人の流動が少ない。したがって普通列車の本数も極端に減る。
- 青森・秋田 (大館〜碇ヶ関) : 7往復 (特急4往復)
- 秋田・山形 (吹浦〜羽後本荘) : 9.5往復 (特急3往復)
- 山形・新潟 (府屋〜鼠ヶ関) : 8往復 (特急8往復)
- 福井・滋賀 (永原〜近江塩津) : 8往復 (特急24往復)
わずかなローカル列車は朝夕に集中し、通行手形(特急券)を持てない「青春18」族を悩ます、現代の関所といってもよいかも。
小波渡(こばと) 〜 五十川(いらがわ)付近で2001M<いなほ1号>と離合。きょう最初の昼行特急とのすれ違い。
新潟県は南北に長い。県内の天気は上越、中越、下越それに湯沢、佐渡と分けられ、それぞれ違っていることも少なくない。ここからしばらくの〔白鳥〕の車窓は、それを実感させるものになる。
笹川流れを過ぎて、間島に近づいた。先日ここまで来たときの大雪を思い出す。
新潟県北部をゆく〔白鳥〕。この日は時折視界が無くなるほどの雪だった (越後早川〜間島 : 2001. 2. 11) [Nikon F5, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D (IF), RHPIII / Trimmed] |
村上駅の手前で屋上から「ブシュッ」という鈍い音が聞こえた。交直セクションを前に電源スイッチが切り替えられ、電流の異常からABB(空気遮断器)が飛んだ音だろう。室内灯がしばらく消え、やがて復帰すると直流区間。
ちなみに直流・交流(50Hz)をまたぐ村上〜酒田のローカル列車は、いまだに電車化されていない。電車並みの性能をもつキハ110系も投入されているところからして、とうぶん電車にするつもりはないようだ。
11時28分着、村上で〔いなほ3号〕に出会えば、この先大きな遅れはないであろう。新潟まで1時間。坂町(さかまち)、中条(なかじょう)と、新潟への近距離客を拾ってゆく。ローカル電車はE127系になった。