特急〔白鳥〕の13時間

4

11時55分、新発田(しばた)から白新線に入り、新潟へ向かう。

〔白鳥〕運転開始時は、北海道連絡の使命を第一に、新潟に寄らず新津から羽越本線を直進していた。上野編成を分離したときに、新潟に寄るようになった。折返しの手間がかかっても、日本海側最大の都市・新潟によるメリットのほうを選択したというわけだ。〔白鳥〕で新津〜新発田を通して乗車する場合、運賃・料金は羽越本線経由で計算する。

JTB、JRの大型時刻表では、「羽越本線(水原経由)」と書いてある。水原(すいばら)とはあまり聞き慣れない名前だが、白鳥の越冬地・瓢湖(ひょうこ)の最寄り駅だ。特急〔白鳥〕愛称のふるさとでもある。3月3日、前日の最終下り〔白鳥〕として青森へ向かった列車は、回送で羽越本線を直進した。マークは外されてしまったそうだが、久々の、そして最後の〔白鳥〕走行になった。

また鉄道唱歌のチャイムが流れ、いつしか満席になった客室内の乗客が一斉に腰を上げた。12時17分、新潟1番線に定刻の到着。


JPEG 4KB
JPEG 12KB
まもなく新潟県以北から消える国鉄色・
ボンネット車に視線が集まる(新潟)

新潟で上り〔白鳥〕には、昼行特急としては異例ともいえる17分もの停車時間が与えられている。停車時間はこのところ増加傾向にあったが、2000年3月の改正で今の時間になり、下り列車も7分の停車だ。新潟をまたいで乗る客が少ないということの証左でもあり、列車分割を視野に入れて設定されたとも考えられる。

結果としてこの時間は、長い道中でのよい気分転換になる。廃止まであとわずかとなったこの時期は、カメラを持った乗客、駅で待ち受けていた撮影組が先頭車に集まり記念撮影。その一方で、キヨスクで食料を調達する人、スタンドのそば屋で腹ごしらえする人も多い。

疑問だったのはホームに駅弁がなかったこと。売り切れたのかもしれないが、乗客の多さは予想できたはずで、ちょっと配慮が足りないような気がする。秋田で乗った車内販売も一巡しかできず、さっきかろうじて残っていた弁当を買って腹を満たしたばかりだが、先の道中で食糧不足になるのが心配なので、改札を抜けて売店に急いだ。

この行動、あとでよーく考えてみると、羽越本線を直進しているはずの乗車券、特急券では、新潟駅の改札は出られないはずなのだが……(!!) そんなことは全く失念していた私も、きっぷを見せた駅員も、全く気づかなかった。

そんなこんなで17分間などあっという間に過ぎて12時34分、気分も新たに出発。ここまで最後部だった1号車を先頭とし、列車番号も5002Mになる。

確かに車内の顔ぶれ、雰囲気は変わった。青森から(おそらく大阪まで)乗っている人以外、大半の席には新しい主が座り、空席も目立つ。長岡までは新幹線で20〜30分ということも関係しよう。ただし、「指定券はすべて発売済みとなっております」と車掌が改めて念を押す。