少し前に読んだ本なのですが、加納朋子さんの新刊、『スペース』。 何度かこの電気ストーブでも話に出した加納朋子さんは、 私の大好きな作家さんの一人です。 (『いちばんはじめにあった海』が好きなのじゃ〜)
で、とある方から、この本を読んだ感想を聞かれているような、 はたまた聞かれていないような、だったのですが(謎)。 それで、感想をここで書こうと思いつつ、結局ずっと書けずじまいだったので ちょっとこの機会に書いてみようかと思います。 (もっとも、その方がこんな店の奥をご覧になってる確率は極めて低いのだけど・笑)
『スペース』は『ななつのこ』『魔法飛行』に続く、駒子ちゃんのシリーズの三作目。 この本は、駒子ちゃんのお話『スペース』と、駒子ちゃんの同級生である まどかさんのお話『バックスペース』の、ふたつの連作で成っています。
で、断片的な感想を書こうと思うのですが、 ミステリの特性上どうしてもネタバレになる恐れがあるので、 できるだけ抽象的には書くのだけど、とりあえず反転してみたり。 感想書くの苦手なくせに、書き出すと長いので要注意(笑)。
このふたつのお話の背後で和音のように流れていて、たまに聴き取れる言葉『スペース』。 『スペース』という言葉には含まれる色々な意味があって、 それがささやかながらも印象的な形をもって聴こえてきます。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の空白箇所のエピソード。 行間、タイプライターのスペースキー、宇宙。 "space"と"spade"。
でも、とりわけ強く現れるのは、あるべき「場所」、 それと埋めるべき「空白」「隙間」としてのスペース、であるような気がします。
私の場合、よくその本を読んでいた時期に、ちょうど聴いていた音楽が リンクして、ずっと印象深く残ってしまうことがあるのですが、 (まれに、「何でこの歌がこのおはなしに?」ということもあったり・笑) この『スペース』にリンクして頭に浮かんでくるのが、 坂本真綾さんの歌、『光あれ』。
断片的にいくつか引用すると、こんな詞です↓
もしもまだこの声が誰かに届いてるなら その人に誓いたい 僕は愛を忘れないと
僕の花はもう二度と開きはしないと思ってた でも遅くたってかまわない 壊れた時間を取り戻したい
もちろん、『スペース』で描かれた想いは、この歌でうたわれているほどの 解放に近いような「強い」(ちょっとうまい言葉で表現できない)感情では なくて、もっと静かなものかもしれないけれど。
あるべき場所を見出し、自分の中の空白が未知の感情や知識で満たされてゆく、 確かで強い感覚は、個人的には似ているような気が、します。
例えば本文中から引用すると、こんな箇所とか。
今まで知らずにいた、知らなくてもまるで平気だった知識や感情、そして自分自身……。 そうしたもので満たされていくのは、なんて幸福でくすぐったくて不思議なのだろう? そうして私は、それまでの自分がいかに空っぽだったかを思い知ったのだ。
こういったお話って(もっともこの本に限らないことですが)、 読んだ時の自分の状態や環境によっても、感想は変わるだろうけれど。 でも、きっと誰にだってこういった想いを抱くことは、あるのだと思います。
ちょうど自らが、そのことを実感している時期だっただけに、 『スペース』は、ひときわ胸に染み込んできた、おはなしなのでした。
……何を書いてるのか、よくわかりませんね(笑)。
と、上記の『スペース』の感想に関連して、 (何が関連してるのやら、という方は『スペース』を読んでみましょう・笑) 個人的なことで恐縮なのですが、ちょっと報告をば。
私ことぐーたらオーナーは、秋頃に相方さんと籍を入れて一緒に暮らしていくことになりました。 今年がはじまる頃には、そんな気配のかけらもなかっただけに、 自分自身まだ「ありえない」心地もあるのですが(笑)。 でも、確かにあるべき場所に向かっている、という確信もあって。 (むしろヒロコさんの『ねこ曜日』だったりして・笑)
先ほどの真綾さんの『光あれ』から借りると、 ♪下手くそなのは変わらない それでも誰かと生きてゆきたい ……なのです。
もっとも、そうは言っても、このお店やおはなしの本作りは、 これまでと相変わらず、よりいっそうのんびりぐーたらと続いてゆくことかと思います。
いったいどこまで、このまま変わり映えのしないお店が続いてゆくのか。 よろしかったら、これからもお茶でも飲みながら、お付き合い頂ければ幸いです。
いじょ(笑)。
……それにしても、結局親族以外での最初の報告がこの店で、となってしまうところが 我ながら自分らしいというか何というか(笑)。 まあ、この電気ストーブの一番の読者は身内達だし、別にいっか(殴)。 |