書名:タバコ狩り
著者:室井尚
発行所:平凡社
発行年月日:2009/6/15
定価:680 円+税
横浜国立大学の室井教授の本です。室井さんには何年か前にお会いしたことがあります。なかなかユニークな人で発想が柔軟で面白い人です。人が気がつかない視点から見ることが出来る人ではないかと思います。禁煙運動の行きすぎた風潮に危険な兆候を感じ取っている人は多いのではないかと思いますが、なかなか言えない。長いものには巻かれれろ。自分で考えることをやめてしまった人達に、自分で考えることをもう一度思いだそう。
一九九八年にWHO(世界保健機構)の事務局長に就任したグロ・ハルレム・ブルントラント女史の強力な政治力に寄って喫煙を「人類の敵」とみなす、極端なタバコは遺跡運動へと拡大していった。ブルントラント女史は元ノルウェーの首相、元小児科医、自らもタバコや電磁波の過敏症を抱えていた。今まで、国連の一機関であるWHOが各国に罰則まで含めて強制したことが、無かったが、タバコ問題は別。それと似たような問題が、IPCCの環境問題。捕鯨問題、鳥インフルエンザ問題等々
最近は「安心安全を」大義名分に、このままにしておくと大変なことになるという病的な心配性が高じて、昔は神様だったのが科学的に明白だからという、科学を武器にその種の議論がマジョリティになるという不思議な現象。イランが核兵器、核兵器を製造できる設備を持っているから、イランを攻撃しないといけない。とアメリカは強引にイランに侵攻した。結果は何処にも核兵器は無かった。次は9月11日のテロ、国家同士の戦争、冷戦は敵と味方がはっきりしているが、テロは隣人、兄弟までも疑わないと行けなくなってくる。セキュリティ、環視社会の到来。不安を必要以上に煽る常套手段。それがどんどん加速している現状に警告を与えている書です。たかが嗜好品であるタバコに大騒ぎしている所にも問題の本質があるとも。コーヒー、お酒など個人の嗜好品を国家がWHOが罰則まで決めるほど暇なのか?他にやることが一杯あるのでは?
WHOはメタボ、その次はお酒までいろいろと注文をつけるようになってきている。中世は教会、神様が正しい。今は科学(本来は科学は仮説の連続、時間共に次々と結果の変わってくるもの)を金科玉条に科学的に完全に証明されたことと勝手に決めつける独裁者がいるようだ。この本も平凡社以外の出版社からの依頼で書き始めたそうです。しかし編集担当と打ち合わせながら始めたにもかかわらず、出版できないということで、一年ほど遅れて平凡社から出版できたとか。
何か目に見えない力が働いている世間の流れに反対する、異議を申し立てることが出来ない世の中が到来してきたそんな危険が感じられてます。またこの本の批評などをネットを見ると少しもこの本真意は読まないで(読みが浅い)、自分の主張ばかりで室井尚を馬鹿者呼ばわりしているものも多いですね。もう少し異論にもしっかり読むことが出来る力をつけて欲しい感じがする。この本にそんなおかしいことは書いていないと思います。これは温暖化問題でも同様、世論、マスコミと違うだけでバカ呼ばわり。科学的なことが正しい、悪いの2極になってしまうのはおかしいと思います。科学は正しい、悪いではなく、ただ仮説です。それをどう判断するか?分からないことは分からないという勇気のない科学者が多すぎるような気がします。WHOの報告などちょっと読めば喫煙者よりも受動喫煙者(これもおかしなことば)の方が影響が大きい。すぐにでも死んでしまうような表現をしていますが、普通に考えればわかること。みんな裸の王様になってしまった。東西冷戦でやることがなってしまった現代はまた中世に逆戻りして「魔女狩り」のように「タバコ狩り」が進行していくのでは?この流れをただ見ているだけしか手はないと著者は言っている。タバコの次は電磁波、酒、メタボ、温暖化などネタはつきそうもないですね。この根底に差別が深くかかわっている。「安全、安心」を脅かす者は全て排除しなければいけないという。一人一人を大切に個性を尊重する生き方とは全く違いますね。これが西洋の一六世紀からの哲学の行き着く先か?じっと見てみたいと思います。いろいろと考えさせてくれる一書でした。
「タバコ狩り」室井尚さん
http://www.yomiuri.co.jp/book/author/20090707bk01.htm?from=nwlb
室井 尚
http://www.bekkoame.ne.jp/~hmuroi/
本書より
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むしろ問題なのは、文明を動かしているのが「人間の理性」だと確信している人々の方です。タバコをめぐる言説に典型的なように(人間の理性に支えられた、素晴らしい!)「科学」によってタバコの有害性は「完全に証明されている」のだから、そのことが「明証性(エビデント)」である以上は、それを「絶滅」し、「消滅」させることが「正しい」と頑なに信じ込み、決めつけている人々です。
■本書の概要
なぜここまでタバコは憎まれるのか。
ありとあらゆるところが全面禁煙になりつつある。
自明のことのように進むこの動きの背後には、
〈科学〉をたてにしたWHOの強引な世論誘導がある。
はたして、その〈科学〉は本当に正しいのか。
2010年2月、タバコが日本から消える?
「テロとの戦い」とも見紛うタバコ排除の力学を暴く。
■目次
第一章 肩身の狭い喫煙者
喫煙者はマイノリティではない!/公園に集まるビジネスパーソン
広がる喫煙規制/20××年、タバコが消える日がやってくる
第二章 なぜ、喫煙=悪になったのか
禁煙法と禁煙運動の歴史1/禁煙の文化的背景
禁煙運動の歴史2/WHOの禁煙キャンペーンが始まる
恐るべきFCTCの中身
第三章 本当のところタバコはどのくらい体に悪いのか?
タバコの害が科学的に明白(エビデント)であるとはいかなることか?
タバコは肺ガンの「原因」か?/疫学の問題点
喫煙が寿命を縮める?
第四章 受動喫煙という詭弁
タバコは猛毒物質?/平山疫学への疑問
その後の疫学研究について/「受動喫煙」はひどい誇張にほかならない
第五章 喫煙をめぐるさまざまな議論
タバコ1000円問題と税金/日本は「禁煙後進国」か?
シガレット以外のタバコについて/タバコが嫌いな人といかにつきあうか
第六章 このままでは自由が奪われる
私はなぜ嫌煙論に反対するのか/AIDS化する世界
喫煙者として、私はこれからどうしていくか
あとがき
参考文献・サイト一覧/資料