書名:研ぎ師太吉
著者:山本 一力
発行所:新潮社
発行年月日:2007/12/20
ページ:285頁
定価:1600円+税
深川黒江町の十兵衛店で、刃物の研ぎを生業とする太吉の元にひとりの若い女が訪ねて来る。かおりと名乗る娘は料理人だった父親の形見である出刃庖丁を、供養したいので研いでほしいという。太吉は以前武家屋敷に奉公していた。その時香織という名の商家から奉公に上がっている娘と恋仲になっていた。同じ名前ということで快く引き受けた。そのとき娘は妙なことを口走る。「おとっつあんは、殺されたんです」。
その後、人殺しの疑いを掛けられて自身番小屋に捕まって留め置きになった。そのかおりから太吉を呼んで欲しいという知らせが入る。自身番小屋に出頭した太吉に、北町奉行所の同心小堀新五郎はなぜか伝手があるなら、それを使いこなしてみろと謎を掛ける。かおりの留め置き期間は7日だと釘をさす。そこから太吉の犯人捜し、伝手を求めたかおりの救出に走り回る。江戸の下町を舞台に職人、商人、やくざなどの人々の息づかいがびしびしと伝わってくる山本一力の作品。山本一力の作品はいつも人情、義理、誠実、そして人々の和が存分に出て来る。登場する人々か生きている。また山本一力節というような物語の進め方です。どこかすっきりとして爽快さを感じる作品です。