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  「Anacostia」 Anacostia (1977)

A-1「Heartache in Disuise」のイントロを聴いた時は「ほんとうにソウル?」と思うような印象だったけど(フラメンコ・ギターだもの)、続くA-2「Looking Over My Shoulder」しっとりとしたバラードでスウィートとしての失地を回復。A-4「We Can't Live Life Alone」の力強いテナーにまるで恋人のように寄り添うファルセット。Van McCoyによるB-2「What Kind of Loove」B-5「Baby I'm Avalable」はセレブな印象のホップする曲。ピアノ・ソロのイントロというソウルにしては珍しいB-3「I Can't Stop Loving Her」は、その後にインサートされる「語り」とファルセットで引っ張ってゆくボーカルによるスウィートの基本をしっかりとおさえた佳曲。

「Kellee」 Kellee Patterson (1976)

自らの名前を冠したKellee Pattersonのリーダーアルバムはカバー曲を中心にソウルフルに、時にはジャジィーな彼女のボーカルが光る。Barry WhiteのA-1「I'm gonna love you just a little more baby」はそんな彼女の魅力が炸裂。ピアノのはじけるグルーヴィーなメロディーにパワフルでセクシィーなボーカルが冴えるアルバム屈指のナンバー。A-2「What you don't know」やA-5「I love music」のスピーディーなリズムによるドライヴィン・グルーヴに自然に身体もゆれる。個人的にビックリのB-2「Jolene」のカバーのファンク具合や自らのペンによるB-4「Once not long ago」のサウダージっぽいアレンジも素敵。

  「Inside」 The Glass House (197?)

Holland-Dozier-Holandプロダクションによるインビタックス・スウィートの傑作アルバム。ファルセットのような危う気なハイ・テナーを武器にウルトラ・メローな楽曲を繰り出すA面は強力。A-1「Look What We've Done To Love」A-2「You Ain't Lovin' Unless You'er Lovin'」と続くスウィートバラードにこのアルバムの神髄をみることができる。名曲A-4「Hey there lonely girl」のちょっとオールドタイマーなスローメロディーも最高。コクのある甘さ。グループ内には女性メンバーが存在していて、ミディアム・タイプの楽曲のリードは彼女が担当。B-1「If it ain't love」やB-3「Touch me jesus」などをゴスペル的なパワフルさで歌う。でも色気でいえば男性ボーカルの方が上。

「Full moon」 Sharon Ridley (1978)

瑞々しいグルーヴにつつまれたのアルバムはジャケットのイメージそのままに青白い月の光りのような神秘的で慈愛に満ちた雰囲気。A-2「Just you and me」の美しいストリングスアレンジにのって歌われる、胸にキュンとくるせつないメロディ。ミディアムテンポのリズムにソウルフルなカッティングギターとホーンがからむA-3「Changin'」のフロアーステップ。AOR的なしっとりとした響きをもった曲B-4「Nothing else means more to me than our love」。エレピのキラメく音色にどこかブラジルフレヴァなパーカッション。フュージョン的な大人のグルーヴのアルバムタイトル曲B-5「Full moon」など日の当たらない夜にこそ逆に輝きだす。そんなミッドナイト・ユースなアルバム。

  「Utopia」 Enchantment (1983)

デトロイトの実力派5人組によるEnchantmentの80年代コロンビア移籍後2ndアルバム。音は80年代らしくシンセをベースとした電子音とバキバキとしてベースが特徴のA-1「Give it up」をはじめとするダンスナンバーだが、コーラスワークはしっかりとして安っぽさはない。だけどここはやっぱりA-3「Love struck」の美しすぎるスウィートでしょう。オールドタイプのスウィートにはない洗練されたオケに女性のようなのびやかな歌声。きっとAORファンの人も好きだとおもう。全体的にスローに美しい曲が多くてB-1「Don't fight the feeling」B-5「Gotta find a love」のやさしいハイ・テナーの声がロマンチックなムードをかきたてる。

「Revelation」 Revelation (1975)

ニューヨーク系ソウルミュージックで数多くのバックコーラス参加をしている実力者がメンバーの中核をなすテクニシャン揃いのグループ。このデビュー盤ではシグマスタジオのフィリーに実にしっかりとしたコーラスを聴かせてくれる。A-1「Get ready for this」のハリのあるミディアムやA-3「We've gotta
survive」のステッピンリズムとまるで教科書のようなコーラス。スローならB-2「What good am i」、B-4「You're sure to find me」でのスウィートさもうまさが光る。フィリーに巧みなコーラスという的をはずさない仕上がり。ゆえに「ほんのすこしの毒」をもとめるスウィートファンにはものたりないかんじる人もいるようす。でもレアなだけでヘタッピなソウルを聴くならこっちのほうがいいですね。

  「Mr.Danny Pearson」 Mr.Danny Pearson (1978)

Unlimited GoldというBarry Whiteのレーベルからリリース。もちろんプロデュースもBarry White、演奏者はアンリミテッド・オーケストラ!というあのゴージャスなスウィートが好きな人にはお勧め。A-1「What's Your Sing Girl?」をはじめ各曲では聞き覚えのあるアンリミテッドお得意のピアノフレーズも飛び出す。街頭のガヤガヤ声と雨音のSEからはじまる名曲A-3「Walkin in the rain with the one i love」でのせつなげな歌声と曲間にはさまるテレフォントークに、やりすぎじゃないのというほどのドラマチックさを感じる。本来はハイテナーなのにファルセットにまで近い高音を披露するB-2「Say it again」もオケのミディアム具合にマッチしてカッコイイ曲。

「the Joneses」 the Joneses (1977)

フリーソウル界隈ではマーキュリー時代のファンキーな1stが話題になったが、スウィートソウル・ファンには圧倒的にこちらに軍配があがる。フィリー末期の傑作。A-1「Who loves you」のおなじみのフィリーグルーヴにのってつきぬけるように歌われるボーカル&コーラス。最高!。ダミ声ぎみのHarold TaylorのリードによるA-2「In love again」や1stからの変わらぬ「スポロロ」フレースの堪能できるA-5「Music to my ears」やドウワップ的イントロによるスウィートナンバーB-3「Merry go round」のボーカルチェンジとクラシックタイプのコーラスが美しいメロディーとマッチして実力者らしい仕上がりをみせる。どこを切ってもフィリーが溢れる名盤。

  「Round Trip」 Round Trip (1981)

そもそもソウル/ファンク系のインストバンドのようで、81年リリースということからもわかるようにシンセバキバキの音、よくわからないジャケ(スペースシャトルですよ!)というスウィートなら敬遠しかねないアルバムなんですが、インストバンドと作るスウィートに名曲ありの言葉とおりここにおさめられたB-2「Lost inside of you」の浮遊感ただよう甘いしらべ。まさにスペース・スウィート・ソウル。メンバーには女性がいるのにファルセットをリードにするところもグッド。B-3「You and me」のスローは別のメンバーによるハイテナーのボーカルにファルセットのコーラス&女性コーラスが加わるスウィートグループでは出来ない美しさと広がりともった曲。

「alice clark」 alice clark (197?)

MAINSTREAMレーベルのヤング・ガール・ソウルの最高峰。おそらくMAINSTREAM周辺のジャズマンがバックを演奏しているのだろうが、そのすべての曲でグルーヴィーなビックバンド的な音が響く。そのメロディに時にはアグレッシブに、時にメランコリックにalice clarkが歌い上げる。当時のモータウン、サザンといったソウルの路線とは別のジャズからのアプローチによるソウル(曲内にコーラスがいっさい入らないスタイルから、実際はソウルというよりもジャズボーカルというジャンルが正解だろうが)は、黒人ジャズボーカルのアルバムの中に1、2曲入っていることはあったが、本アルバムのようにすべてがそのタイプでレコーディングされた(しかも高水準で)ものは以外とめずらしい。収録曲のすべてが素晴らしい。奇跡のアルバム。