THEATER/TOPS 12/1〜12/11
12/3(土)観劇。座席 H-3
作・演出 小池竹見舞台は現代の新宿と徳川の治世よりさらに昔の新宿。現代と過去の同じ場所を繋ぐ歴史ロマン。
<現代劇>
サラリーマンの定岡(小林至)は真澄(大倉マヤ)の彼氏である水内(中村靖)に金を渡し“愛”を買おうとしていた。いわゆる援交。女子高生のさとみ(帯金ゆかり)は、友人の真澄に、中年の男性とデートをして欲しいと頼まれる。“余命半年”という言葉に騙され、無償で会い始めるさとみ。しかし、会っているうちに定岡の事が好きになって行く。しかし、定岡は、金と引き換えに得た“愛”だと勘違いしていた。4ヶ月たったある日、金がさとみに渡っていない事が発覚する。問い詰める定岡に対し、事実を認める水内。そして、真澄から“余命半年”のウソが暴露される。「あと2ヶ月で死ななければ」と悩む定岡。入院すると嘘をつき、さとみと1ヶ月後に会う約束をする。その約束の日。さとみは新宿の公園で定岡を待っていた。しかし、2時間過ぎても定岡は現れない。そんな時、さとみは“蛇女(山下禎啓)”に出会う・・・。
<時代劇>
・・・物語の前提部分を“ごあいさつ”より引用(勝手に引用ご勘弁を)・・・
『とある本に、まだ新宿が野っ原だったころ馬飼いとして移り住んだ夫婦のことが書かれておりました。ある日、男が手塩にかけて育てた一頭の馬を葛飾の市場に売りに行くと、一貫文ほど(20万くらい)の値がつき、不思議なことに受け取った銭の全てが中国の貨幣「大観通宝」でありました。信心深い男は、そのことになにやら神秘的な想いを抱き、すべて浅草寺に喜捨してしまいました。帰りの遅い夫を心配して迎えに来ていた妻も、男の行いを知ると「それは良いことをなさいました」と喜んだといいます。そして、二人で家路に着こうとしたその時、家のあたりが煌々と輝いていました。「火事か!」と二人が家に戻ると家の中は黄金に満たされており、二人は一日にして「中野長者」と呼ばれる大富豪になったといいます。』
時代劇は、その長者のその後の物語。巨万の富を築いた鈴木九郎(今林久弥)は、雇った人夫に財宝を運ばせ、杜の深くに隠しているらしいが、戻ってきた人夫はいないという。隠し場所を悟られぬよう、淀橋の暗がりで密かに斬り捨てているという噂もある。九郎には、奥方のお芳(山下禎啓)と美しい娘のお清(近藤英輝)がいた。悪事の報いか、お清の肌を蛇の鱗が覆い始めていた。そして、今年も年貢の納めの為の家財改めの下検分で、市川左源太(小林至)がやってきた。祟りなどあり得ないと九郎は、下人の佐吉(阿部宗孝)、珍斎(五味祐司)、乙(井上貴子)に家財を運ばす算段を企てていた。そして最後には、登仙坊玄卓(中村靖)の手で亡き者にする事も・・・。九郎の屋敷で、偶然お清に会った佐吉は、鱗のことを承知の上で、恋をする。家財に紛れて家を出て、一緒に逃げようと相談を持ちかける。身分違いの叶わぬ恋は成就するのか・・・。時代劇と現代劇の二本立て構成。時空を越えた二つの物語が、交錯しながら描かれていく。二つの話を繋ぐのが、二人の黒子(伊藤伸太朗、松本大卒)。この黒子を、芝居から離れた、より現実的である観劇サイドに配すことによって、実は三重層的な構成になっているのも面白い。
時代劇にチャレンジしたいという想いから、今回の公演になったと書かれてあった。2本とも金にまつわる物語の中で、真実の愛を見つける話である。共通するものは、どの時代でも金で動く人がいて、その汚い世の中でも真実の愛はあるって事なのか。
それ以外は残念ながら共鳴するものは感じなかった。チラシには「新宿の礎を築いた男、鈴木九郎に降りかかる大蛇の呪い。そして現在も生きる愛と金にまつわるヲロチの報い・・・」とあるが、現在に“報い(前世の悪行の結果が、現世で現れること)”の部分を感じる事ができなかった点に、そう感じさせる要因があったと思う。二つの話はそれぞれ面白く観れたが、最後に二つの話が交差して何かが生まれた訳ではない。さとみの「200年でも待ち続ける」という気持ちだけでは物足りない・・・。今回の双数姉妹を観て感じた事は、双数姉妹のカラーは無に帰してしまったのか・・・という事である。様々なスタイルを作っては壊し現在に至っているのは判る。面白く観れたのに苦言を垂れるのは心苦しいが、今のスタイルに双数姉妹らしさを全然感じなかったのである。今のスタイルが最終だとは思わないが、初めて観た作品(『ハクチカ'96』)で衝撃を受けた自分としては、あまりにも普通過ぎる芝居に魅力は感じない。で、残念な事に今回の作品で魅力を発揮していたのが、花組芝居の山下禎啓や北京蝶々の帯金ゆかりだったりするのも、双数姉妹としてどうなのって感じである。客演の魅力を引き出すのも才能だと思うが、劇団員をもっと魅力的に使ってはどうなのって気持ちも残る。おせっかいだけど。
ちょっと余談だが(個人的に応援しているので)、帯金ゆかりの純真な女子高生役は新しい魅力を感じた。いつもウルサイ役が多いが、今回の役もなかなか良い。セーラー服も魅力あったし。ってそれが本音かい。
“双数姉妹”自分が観た公演ベスト
1.ハクチカ'96 2.不在者 3.オクタゴン 4.3 BALKAN BOYS 5.君はヲロチ 6.ラバトリアル 7.安天門 8.ニセオレ−偽俺− 9.双数姉妹〜神無きフタリの霊歌(ゴスペル)〜 10.サナギネ―幼年期の終わりに― 11.オペレッタ―王女Pの結婚― 12.SHOCKER
作・演出 本谷有希子申し訳ありません。まだ書けていません。