「平和共同候補」実現運動への共産党の敵対と詭弁
参院選めざす護憲・活憲勢力の選挙戦略の当否
(宮地作成)
〔目次〕
1、「平和共同候補・共同リスト」実現という護憲・活憲勢力の市民運動
6、護憲・活憲勢力は、共産党が孕む第1・第2障害物を除去できるか (表1〜5)
7、共産党が敵対無変更→護憲・活憲勢力の分裂選挙→共倒れ惨敗回避の可能性(表6)
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HP『平和への結集をめざす市民の風』平和共同候補の実現を
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共産党『参院選での「平和共同候補」を求める運動について』共産党の敵対方針
『統一地方選・参院選を目指す3中総方針の検討』「共同候補運動」への敵対継続
『護憲・活憲運動における共産党のセクト的対応』セクト的排他的誤りの事例集
『共産党が護憲・活憲運動内で行う排他的言動の検討』共産党のセクト的分裂策動
yahooニュース『選挙』
(イタリア・ドイツの共同候補運動、フランスの「進歩のための統一協定」運動)
柴山健太郎『勝ったのは民主主義だ!』政権を奪還したイタリア中道左派連合
柴山健太郎『ドイツ連邦議会選挙における左翼党躍進の政治的背景』
『フランス共産党の党改革の動向と党勢力』「進歩のための統一協定」運動
アルチュセール『共産党のなかでこれ以上続いてはならないこと』
1、「平和共同候補・共同リスト」実現という護憲・活憲勢力の市民運動
1、発足と趣旨
2006年3月11日、平和への結集運動は、正式な運動組織として、「『平和への結集』をめざす市民の風」を発足させた。「風」の 公式サイトを開いた。その趣旨は次である。
「平和への結集」とは、9条改定に反対し、平和憲法を守り活かしていくために、市民・政党の広範な結集を呼びかけるものです。平和・環境、社会的公正、選挙制度改革などを軸にして、ネットワーク作りを進め、「平和共同候補・平和共同リスト」の実現をめざします。
本Webサイトは、平和憲法がおびやかされ戦争のできる国へと進みつつある日本の現状を憂え、「平和」を希求する個人・市民グループ・団体間を緩やかに結ぶネットワーク作りを願って開設するものです。
持続可能な地球の未来にとって欠くことのできない「平和」を、世代の相違や地域・団体間のちがいを乗り越え、"小異を残して大同につく"を基本に、みなさまとともに考えていきたいと思います。
2、呼びかけ人、賛同人とその登録システム
2006年4月24日現在、呼びかけ人179名、賛同人262名で、合計441名になっている。今後、誰でも、この趣旨に賛成すれば、HPの「賛同・入会フォーム」から、参加ができる。私(宮地)も、賛同人の登録をした。
3、7・7シンポジウムの趣旨と呼びかけ
今こそ市民の風を!07年参院選・平和の共同を求めて
7・7シンポジウムの呼びかけ人承諾のお願い
日時 7月7日午後6時開場、6時30分開演(予定) 会場 日本教育会館大ホール
日ごろのご活躍に敬意を表しております。
さて、私どもは標記のようなシンポジウムを7月7日に準備をしております。
9条改憲の動きが強まる中、来年に実施される参議院議員選挙は、憲法の命運を決める重要な選挙となります。憲法改悪を阻止するために、この選挙で、日本共産党、社会民主党、新社会党、みどりのテーブルなどが結束して市民とともに立ち上がるべき重要な時であることを多くの人々が認識しております。それが実現できるならば、改憲の発議を阻むことも可能になります。
また東京都知事選挙も、憲法の将来を大きく左右します。これらの選挙で従来のようにバラバラに選挙に挑むならば、改憲の流れを堰き止めることはできません。この危機的な状況を何としても乗り越える知恵と方法の結集が求められます。
今、各界やメディアでも、9条改憲反対の平和の共同・選挙協力を求める声が高まっています。
政党の事情や、様々な問題があることは承知しておりますが、平和憲法を守りぬくことをあらゆることに優先させてこの難関を切り抜けましょう。今こそ、平和を愛する広範な人々が手をつなぐべきではないでしょうか。
わたしたちは思いを同じくするすべての皆さんと協力し合い、07年参議院選挙での平和の共同の実現をアピールし、また各界・各地域での様々な形態での平和共同の努力を交流して、このシンポジウムを大きく成功させたいと願っております。
つきましては、本シンポジウムの呼びかけ人を、ぜひともお引き受けいただきたく、心からお願い申し上げます。(承諾書)
2006年4月1日 発起人一同(4月10日現在)
2、2007年7月参院選制度の解説(宮地)
参議院の議席定数は、242人である。3年に一度の選挙で、その半数121議席を改選する。非改選が121人残る。2007年参院選改選定数の内訳は、(1)比例代表48議席、(2)選挙区73議席となる。比例代表は、全国一区であり、ドント式の計算で決める。
参議院内の護憲・活憲勢力は、共産党と社民党である。
共産党は、2004年公示前勢力20→改選15で、当選4、−11議席減の大惨敗だった。非改選との合計は9議席になり、党首討論権・議案提案権喪失政党に転落した。2007年参院選において、共産党は比例代表4・東京選挙区1の合計5議席を改選する。2007年目標は、比例代表5・東京選挙区絶対確保1の6議席としている。
社民党は、2004年公示前勢力5→改選2で、当選2、±0議席だった。非改選との合計は5議席のままである。
共産党・社民党の合計は14議席である。2党の議席占有率は、14÷定員242≒5.8%に過ぎない。ところが、ドント式による比例代表の得票率は、共産党7.80%+社民党5.35%=合計13.15%になっていた。
そこから、護憲・活憲勢力が、別個に選挙立候補をするよりも、「平和共同候補・共同リスト」実現運動をした方がいいとの発想が生れた。(1)、平和共同候補とは、選挙区73議席改選において、47都道府県選挙区ごとに、共同候補を決める方式である。(2)、共同リストは、全国一区の比例代表48議席改選に当たって、共同リストによる候補者を決める。それらの候補者は、共産党・社民党だけとは限らない。他政党・他党派や無党派から候補者を選ぶ。ただし、候補者の最終決定をするタイムリミットは、選挙準備や候補者知名度アップを考えると、あと数ヶ月内であろう。
前回2003年総選挙比例区において、共産党・社民党が「平和共同候補・共同リスト」を作って、たたかっていたらというシミュレーションが、インターネット新聞に載っている。その計算では、共産党9+社民党5=合計14議席。→共同リスト結成のケースなら、21議席になっていた。
さとうしゅういち『共産党・社民党様−いまこそ野党協力を』14→21議席の(表)
〔小目次〕
1、『参院選での「平和共同候補」を求める運動について』 2006年年5月20日
2、第24回大会における共産党の憲法改悪阻止方針 2006年1月
3、新社会党との2006年1月6日の協議の概要 共産党側の本音剥き出し
1、『参院選での「平和共同候補」を求める運動について』
2006年年5月20日(土)「しんぶん赤旗」
憲法改悪を阻止するためということで、来年の参議院議員選挙に向け、市民の手による「平和共同候補・平和共同リスト」実現をめざし、それを政党に求めるという「市民運動」が、一部で進められています。この「運動」は、憲法改悪に反対する多くの人々の期待に応えられるか――いくつかの重大な問題点を指摘しないわけにはいきません。
政党と市民運動の関係のあり方が問われる
まず考える必要があるのは、この「市民運動」が問題にしているのは、憲法問題での共闘一般ではなく、国政選挙での共闘の実現だということです。
国会内外の運動の面での共同の場合には、その運動が掲げる課題についての合意があり、その合意点を共同で推進する誠意が双方にあることが、共同の実現にとってなによりも重要な条件となりますが、国政選挙での共同は、それだけで可能になるものではありません。国政選挙で自党に属さない候補者を推すということは、その党が、共同の候補者について、国政の全般について自分たちおよび自党の支持者を代表する権限を委任することを意味します。
だから、わが党は、国政選挙の共闘の場合、国政の全般についての政策協定を結ぶことを、不可欠の条件の一つとして主張し、この立場を一貫してつらぬいているのです。そして、私たちは、現在の日本の政党状況を見た場合、日本共産党との間で、このような政策協定を結び、それを基礎に国政選挙での共同を実現する条件――政策的一致と共闘の意思をもった政党は存在しない、という判断をしています。この判断は、選挙共闘にたいする立場とともに、私たちが、党の大会その他で確認し、公表しているところです。
市民団体・運動が、政党に選挙での共同・共闘を要望することは、ありうることです。しかし、もともと市民団体と政党の関係は、対等平等の関係であって、どんな問題であれ、双方が自立した組織として相手の立場を尊重することが求められます。政党の存在意義にもかかわる政党間の選挙共闘の問題で、市民団体が、要望にとどまらず、“ああしろ、こうしろ”と指図するということになれば、それは、政党の自立性の全面否定です。
市民の手で「平和共同候補」をという「運動」は、率直にいって、最初からこの筋違いを押し通そうというものです。「運動」の代表者たちのなかでは、七月に予定しているシンポジウムを案内する記者会見の席上などで、次のような発言があったと聞きます。
「直接政党に申し入れると、ノーという答えが返ってきてしまう。それによって、その政党関係者は受けなくなってしまう。それは遅らせた方がいい。だから正式に各党に申し入れることはない。ただ、インフォーマルなレベルで折衝がある。七月まではじっとこらえて声を結集してから正式な申し入れをしたい」
「政党に市民的圧力をかける」「恐怖感を味わわせなければならない」「いうことをきかなければ対立候補を立てる。別の政治団体をつくる」
ここに見えているのは、一方的に“政党は自分たちの言い分をのめ”という態度であり、市民運動と政党が互いに自立性を尊重し合って共同するという立場ではありません。直接申し入れたら断られる、つまり無理筋だということがわかっているからこそ、「市民団体」の名で政党の支持者を個別に、インフォーマルに組織し、それを通じて政党にいうことをきかせよう、対立候補で脅かそうというのです。これは、策略的で非民主的な手口といわなければなりません。「憲法擁護」を看板にする「市民運動」に、あってはならない態度です。
憲法改悪阻止でいま必要なことは何か
この「平和共同候補」運動が、憲法改悪反対闘争の重要性を強調しながら、「選挙共闘」しか視野に入れず、問題をこれ一本にしぼっているのも、大変奇異に感じられる点です。
憲法をまもる運動には、日本共産党や社民党などの支持者だけでなく、政治的には保守的な立場の人も含め、文字通り思想・信条の違いを超え広範な人々が結集しています。「九条の会」の運動では、「会」の発足から二年で全国の地域・職場・学園・分野に五千に近い草の根の会が生まれ、さらに発展しています。ここには自民党の元議員なども参加しています。改憲反対の一点で、支持政党の違いを超えて国民の多数派を結集する条件は十分にあります。ここに憲法改悪阻止の展望、大道があります。
憲法改悪阻止を真剣に考えるなら、全国レベルであれ、都道府県レベルであれ、市区町村レベルであれ、どこでも「憲法をまもろう」という世論と運動を、国民・住民の多数派にすることが、なによりも重要で確実な道です。
「共同候補」運動は、この肝心な点をみずに、国政選挙での候補者問題を第一義にし、それを前面におしたて、それこそが憲法を守るもっとも幅広い、たしかな道であるかのように主張しています。しかし、どんな名目を掲げようと、広範な人びとの目には、これが選挙のための運動としか映らないのは明らかです。選挙に向けた候補者調整運動、しかも策略的な運動に、憲法改悪反対の運動を矮小(わいしょう)化すれば、いま改悪反対の運動に支持政党の区別なく結集している多くの人々を運動から遠ざけ、運動の発展に困難をもたらしかねません。改憲反対の多数派結集には、マイナスの効果しかもたらさないでしょう。
いま、憲法改悪反対の運動を発展させるためになによりも必要なことは、「選挙共闘」問題などではなく、広範な国民各層のあいだで憲法改悪反対、憲法擁護の声を広げることに可能なあらゆる努力をつくすことではないでしょうか。
特定政党の事実上の“応援団”ではないか
「共同候補」運動と同じ主張をしているのが、新社会党です。同党は、今年三月の定期全国大会で、市民の力で「平和共同候補」の実現をという運動の問題を、大会議題にして論議し、「改憲阻止のため参院選での共同戦線・共同候補の擁立の成功が最も重要」と決めました。今回の運動の中心に、前回参院選で「共同候補」擁立をすすめた団体がありますが、当時、その「運動の成功に総力をあげる」としたのも新社会党でした。
新社会党はまた、昨年の総選挙にあたって「政党要件がないと決定的に不利な衆院ブロック比例選挙で護憲派の前進を実現するためには、社民党の政党要件を、社民党外の護憲勢力が活用」するという態度を表明していました。つまり、自分たちは政党要件(※)を満たす条件がないので、要件を満たしている政党を利用して国会に出ようということでした。今回の「共同候補」運動の訴えに「比例部分での共同リストなどを形成することができれば、単独では当選できない小グループからの立候補者にも、当選の可能性が生まれます」とあります。これは、新社会党の主張と同じ趣旨です。
このように見てくると、「共同候補」運動は、推進者の意図はともかく、客観的には新社会党の応援団の役割を担う運動ということになります。特定の政党を応援する運動を「市民運動」の名でおしすすめ、他の政党をそれに従わせようというのであれば、それは、善意の人々をあざむくというより、もてあそぶことにさえなるでしょう。
◇ ◇ ◇
憲法改悪阻止のたたかいにとって、来年の参議院選挙はたしかに大変重要な意味をもちます。重要であればあるほど、いま改憲反対勢力にとって必要なことは、憲法改悪に反対する国民・住民の多数派の結集、改憲派を圧倒する世論の形成に全力をつくすことです。わきたつような世論の動きこそが、選挙の様相を決め、政党の行動や方針にも影響を与えるのです。そのことを抜きにした狭い選挙対策で、政党に自分たちの勝手ないい分をのめと迫るような「運動」は、憲法改悪阻止の運動に障害をもちこむものです。
政党要件 政党として独自に候補者名簿を提出できる公選法上の要件=参院比例代表選挙の場合では、国会議員五人以上、直近の国政選挙の得票率2%以上、選挙区・比例あわせて候補者十人以上のいずれかの条件を満たすこと。
共産党・志位和夫『第24回党大会にたいする中央委員会報告』以下は報告原文の抜粋
『第24回党大会の全内容』 2006年1月
「憲法改悪反対の一点でのゆるぎない国民的多数派を結集するために、党の存在意義をかけて総力をあげてたたかう」。「わが党は、政治的立場、思想・信条の違いをこえた広い国民的共同の前進のために力をつくします」。「国民的多数派を結集する運動に力をそそごうではありませんか」。
「わが党は、どんな課題でも、国民の利益にかなった一致点があるなら、他党との協力の門戸を開き、それを探求するという立場をつらぬいています。とくに憲法問題では、憲法改悪に反対し、その平和原則にそむくくわだてを許さないという一点での広い国民的共同をよびかけています。しかし、現在の日本の政党には、日本共産党との政党間の正式の共闘をためらう傾向が、憲法問題でも、根強い状況があります」。
「国政選挙での共闘は、国政の基本問題での政策的一致と、先方に共闘をおこなう意志が必要であり、その条件がある相手は、全国政党としては、現在は存在していません」。「一つは、日本共産党と無党派との共同であります。その運動体としては、全国革新懇の運動が重要です。この十年間に草の根での革新懇が倍加し、地域、職場、青年で合計七百五十八に達していますが、この運動の発展にさらに力を入れたい」。
3、新社会党との2006年1月6日協議の概要 共産党側の本音剥き出し
「回答」を得たあと、概略以下のようなやりとりをおこなった。
(新社会党石河)、(1)「回答」内容自体に反論はあるが、今日は中身には踏み込まない。しかしせめて話合いの窓口を開くくらいの幅のある対応はできないのか。(2)首長選挙では各地で共闘できているのに「政党間共闘の条件がない」とはいかがなものか。
(共産党浦田書記局次長)、(1)国政選挙における共同は憲法だけでなく政策全般にわたる一致がないとできない。だから新社会党とも社民党ともできない。窓口設置も適切ではない。(2)首長選挙は、無所属を共同でおすのだから、性格が違う。
(新社会党石河)、(1)首長選で共産党員を推薦し、かつ共産党の県委員会との協議もして共同している例はたくさんある。(2)各界から新社会党に護憲勢力の共同を国政選挙で実現せよとの切実な声が寄せられている。ばらばらでは大変なことになる。(3)一昨年の参院選ではいくつかの選挙区で共産党公認候補を推薦しようと新社会党側から申し出て、県レベルでは両党の協議が前進をみせたのに共産党中央からストップがかかった例もある。最初から全面的な共同を求めているのではなく、針の穴からでも可能な方法を探るためにも両党の話合いをすべきだ。(4)「回答」について「赤旗」に公表するのか。この理由で公表すると、共同にはいい結果をもたらさない。節度をもってはどうか。
(共産党浦田書記局次長)、(1)各地の例はわかっているしすべて真剣に検討したうえでの回答だ。(2)護憲派の共同の要求はうちにも寄せられている。しかし社民党が憲法改悪反対を貫くかどうか不安が残っている。「九条の会」呼びかけ人で共産党と社民党の関係者が話しあうことすらできない。(3)国会では少数でも九条では改悪反対が多数派だから大衆運動で展望はひらける。将来も国政での共同ができないとは考えていない。機が熟せば社民党だけではなく民主党内や保守のリベラルも含めた共同をめざす。共産党と新社会党だけではインパクトがない。(4)党の各地から問い合わせもあるし、党の態度を示さねばならないので、「赤旗」に掲載する。
(新社会党石河)、必要に応じまた話合いにくるが、それは応じるのか。
(共産党浦田書記局次長)、わが党は共同のために常に開いている。
〔小目次〕
1、他政党との選挙協力・共同を全面拒否とその根拠
2006年5月20日「しんぶん赤旗」
わが党は、国政選挙の共闘の場合、国政の全般についての政策協定を結ぶことを、不可欠の条件の一つとして主張し、この立場を一貫してつらぬいているのです。そして、私たちは、現在の日本の政党状況を見た場合、日本共産党との間で、このような政策協定を結び、それを基礎に国政選挙での共同を実現する条件――政策的一致と共闘の意思をもった政党は存在しない、という判断をしています。
2006年1月6日、新社会党との協議の概要−新社会党側の報告
(共産党浦田書記局次長)、(1)国政選挙における共同は憲法だけでなく政策全般にわたる一致がないとできない。だから新社会党とも社民党ともできない。窓口設置も適切ではない。(2)首長選挙は、無所属を共同でおすのだから、性格が違う。
(共産党浦田書記局次長)、社民党が憲法改悪反対を貫くかどうか不安が残っている。「九条の会」呼びかけ人で共産党と社民党の関係者が話しあうことすらできない。国会では少数でも九条では改悪反対が多数派だから大衆運動で展望はひらける。
1、他政党規定の当否と硬直性・独善性
共産党は、「国政選挙での共同を実現する条件――政策的一致と共闘の意思をもった政党は存在しない、という判断」をしている。その他政党規定は正しいのか。
憲法改悪阻止政策の一点であれば、一致する政党はある。他の政策については、相互にすり合わせて、妥協すべきではないのか。共産党の他政策が、すべて絶対善であるとし、一切妥協できないとすれば、それらを全面的に呑む政党は、たしかに存在しないであろう。別ファイルに載せたように、イタリア・ドイツ・フランスは、相互に政策面で妥協しあったからこそ、共同候補・共同リストを作成できた。憲法改悪阻止、護憲・活憲が重要課題になっている現情勢において、日本共産党の硬直的・独善的な対応は、反動的ですらある。
2、社民党への不安の当否と猜疑心
共産党は、新社会党への拒否回答の場において、「社民党が憲法改悪反対を貫くかどうか不安が残っている。九条の会呼びかけ人で共産党と社民党の関係者が話しあうことすらできない」と本音を漏らした。この不安と猜疑心は正当なのか。その根拠として、9条の会での話し合いを挙げている。
共産党は、新社会党との協議拒否回答にたいし、党内外から批判が殺到した結果、それに慌てふためいて、社民党にたいし、初めて憲法改悪阻止での共闘申し入れをした。浦田回答は、その前だった。トップレベルで申入れもしていないのに、9条の会レベルでの話し合いができるはずがない。
しかも、共産党側からの申し入れは、党内外批判にたいするアリバイ作りだった。それは、3つの事項から証明できる。(1)、正式会議でなく、料理店での食事懇談という低レベルの話し合いだった。(2)、共闘の具体的決定もなんらなされなかった。(3)、その後、共闘内容の進展の話し合いも持たれていない。共産党は、まさに、批判逃れの見え透いた手口を使った。
日本共産党は、戦前、スターリンの社会ファシズム理論に隷従し、軍部・政府とたたかうよりも、社会民主主義政党・その大衆団体とたたかうことを最優先させた。それが、丸山眞男『戦争責任論の盲点』の意味する背景である。
戦後も、共産党のフラクション路線によって、大衆団体を引き回し、社会党・総評を「右転落」ときめつけ、罵詈雑言レベルの批判を浴びせてきた。共産党は、今もなお、社会民主主義政党を下に見下し、軽蔑する体質を秘めている。それは、レーニン批判の別ファイルに載せたように、21世紀資本主義国の東方の島国においてのみ、日本共産党がレーニン型前衛党5原則の全面堅持政党として残存していることに、基本原因があると言える。
〔小目次〕
1、「平和共同候補」実現運動にたいする共産党の敵対とその論理構造
1、「平和共同候補」実現運動にたいする共産党の敵対とその論理構造
(1)2006年1月第24回大会決定、(2)2006年5月20日共産党方針と、(3)2006年1月6日新社会党との協議における共産党浦田書記局次長発言−新社会党側の報告という3つの内容に基づいて、共産党の敵対性の根底にある論理構造を検討する。
→(1)、2007年7月参院選に向けた1年前の現在、参院選での政策的一致と共闘の意思をもった政党は存在しない。これは、第24回大会決定でもある。約1000人の代議員がその判断に満場一致で賛成した。一人の異論・反対も出なかった。40万党員がそれに賛成している。
→(2)、国政選挙における共同は憲法だけでなく政策全般にわたる一致がないとできない。だから新社会党とも社民党ともできない。窓口設置も適切ではない。
→(3)、社民党が憲法改悪反対を貫くかどうか不安が残っている。「九条の会」呼びかけ人で共産党と社民党の関係者が話しあうことすらできないからである。
→(4)、首長選挙は、他政党と共同をしている。しかし、それは、無所属候補者を共同でおすのだから、性格が違う。よって、日本共産党は、2006年1月の第24回大会において、満場一致で決定したとおり、参院選では、いかなる政党とも共同しない。そして、共産党独自で、比例代表5人の立候補・当選、選挙区の全区立候補方針でたたかう。
→(5)、政党間の選挙共闘の問題で、市民団体が、要望にとどまらず、“ああしろ、こうしろ”と指図するということになれば、それは、政党の自立性の全面否定である。市民の手で「平和共同候補」をという「運動」は、率直にいって、最初からこの筋違いを押し通そうというものだ。
→(6)、「市民団体」の名で政党の支持者を個別に、インフォーマルに組織し、それを通じて政党にいうことをきかせよう、対立候補で脅かそうというものだ。これは、策略的で非民主的な手口といわなければならない。
→(7)、「九条の会」の運動では、「会」の発足から二年で全国の地域・職場・学園・分野に五千に近い草の根の会が生まれ、さらに発展している。改憲反対の一点で、支持政党の違いを超えて国民の多数派を結集する条件は十分にある。ここに憲法改悪阻止の展望、大道がある。共産党独自の選挙活動と「九条の会」の運動とを結合させることで、憲法改悪阻止ができる。
→(8)、「平和共同候補」運動が、憲法改悪反対闘争の重要性を強調しながら、「選挙共闘」しか視野に入れず、問題をこれ一本にしぼっているのも、大変奇異に感じられる。「共同候補」運動は、国政選挙での候補者問題を第一義にし、それを前面におしたて、それこそが憲法を守るもっとも幅広い、たしかな道であるかのように主張している。しかし、選挙に向けた候補者調整運動、しかも策略的な運動に、憲法改悪反対の運動を矮小(わいしょう)化すれば、いま改悪反対の運動に支持政党の区別なく結集している多くの人々を運動から遠ざけ、運動の発展に困難をもたらしかねない。改憲反対の多数派結集には、マイナスの効果しかもたらさないであろう。
→(9)、「共同候補」運動と同じ主張をしているのが、新社会党である。同党は、今年三月の定期全国大会で、市民の力で「平和共同候補」の実現をという運動の問題を、大会議題にして論議し、「改憲阻止のため参院選での共同戦線・共同候補の擁立の成功が最も重要」と決めた。「共同候補」運動は、推進者の意図はともかく、客観的には新社会党の応援団の役割を担う運動ということになる。特定の政党を応援する運動を「市民運動」の名でおしすすめ、他の政党をそれに従わせようというのであれば、それは、善意の人々をあざむくというより、もてあそぶことにさえなる。
2、共産党方針の性格と護憲・活憲勢力にとっての2つの選択肢
これら共産党の論理は、「平和共同候補・共同リスト」実現運動にたいする批判というレベルではない。その性格は、(1)まさに、運動にたいする敵対であり、全面否定である。→(2)、それは、護憲・活憲勢力からの「平和共同候補」実現運動メンバーの排斥指令を意味する。→(3)、さらには、実現運動賛同人・会員から、共産党員は脱退せよ、手を引けという全党的命令となる。
その語調も、独善的立場から、市民運動を見下し、排斥しようとする意図が見え透いている。共産党が常用するきめつけ用語もちりばめている。「要望にとどまらず、“ああしろ、こうしろ”と指図する」、「政党にいうことをきかせよう、対立候補で脅かそう」、「策略的で非民主的な手口」、「策略的な運動」、「矮小(わいしょう)化」、「マイナスの効果しかもたらさない」、「善意の人々をあざむくというより、もてあそぶ」などである。このようなレッテル貼りは、共産党への異論・批判者にたいして用いる常套手段ではある。それにしても、護憲・活憲勢力にたいするレッテルとしては異様である。
1994年第20回大会前後、共産党・宮本顕治は、丸山眞男批判大キャンペーンを展開した。それにたいし、ほとんどのマスコミが、「共産党は頭がおかしくなったか」と批判し、嘲笑した。政治学関係の学者党員たちのほとんどが、その批判内容・手口に怒って、離党した。その8年後、参院選を前にして、共産党が、護憲・活憲勢力内の選挙運動に敵対し、全面否定するキャンペーンを始めた。これは、今後、憲法改悪阻止の路線をめぐる深刻な内部対立に発展する。
護憲・活憲勢力にとっての選択肢は、2つしかない。第3の中立的立場はありえない。
〔選択肢1〕、共産党の論理に賛同し、「平和共同候補」実現運動を排斥する。実現運動のよびかけ人・賛同人・会員になっていた共産党員は、党中央指令に従って、運動から脱退する。そして、共産党の独自候補者だけの当選を目指す。
〔選択肢2〕、「共産党は、またもや頭がおかしくなったか」と批判し、嘲笑する。共産党の敵対方針を蹴って、あくまで、共産党を含む他政党候補者の共同、無党派候補者の擁立を図り、「平和共同候補・共同リスト」を実現させる運動を粘り強く広げる。
共産党方針は、護憲・活憲勢力に一種の踏み絵を強要するものと言える。憲法改悪阻止を目指す市民は、どちらを選ぶのか。そこから、両者が、具体的にどのような行動を選択していくのか。両者の協定が、なんらかの形で成立しない場合、7月参院選は、護憲・活憲勢力における分裂選挙→共倒れ惨敗結果という悲劇的事態を迎える。
〔詭弁1〕、参院選での政策的一致と共闘の意思をもった政党は存在しない。
これは、2006年1月第24回大会の満場一致決定である。しかし、党大会は、一方で「憲法改悪反対の一点でのゆるぎない国民的多数派を結集するために、党の存在意義をかけて総力をあげてたたかう」。「わが党は、どんな課題でも、国民の利益にかなった一致点があるなら、他党との協力の門戸を開き」と決定している。
憲法改悪阻止の一点なら、社民党・新社会党と一致している。それ以外の政策は、相互に妥協しなければ、共闘はできない。イタリア・ドイツ・フランスの共同候補・共同リスト作成と統一選挙の体験は、それを証明している。共産党の他政党規定は、あまりにも硬直した独善的な誤りである。
(イタリア・ドイツの共同候補運動、フランスの「進歩のための統一協定」運動)
柴山健太郎『勝ったのは民主主義だ!』政権を奪還したイタリア中道左派連合
柴山健太郎『ドイツ連邦議会選挙における左翼党躍進の政治的背景』
『フランス共産党の党改革の動向と党勢力』「進歩のための統一協定」運動
〔詭弁2〕、首長選挙は、無所属候補を共同でおすのだから、参議院選挙と性格が違う。
共産党は、首長選挙において、他政党と共同候補を決め、当選させてきた。国政選挙でも、比例代表・選挙区において、無党派候補者を共同でおすことはありうる。ある政党が、他政党の候補者をおすケースだけとは限らない。現に、共産党は、2000年10月、総選挙東京21区補選で、すでに決定していた共産党候補を取り下げて、無党派の河田悦子候補を支持した。彼女は、共産党票もあって当選した。これは、共産党が無所属候補を推した事例である。もっとも、共産党は、次の総選挙で独自候補を立て、河田議員を意図的に落選させた。その背景には、インターネットにあるように、いろいろある。
嫌煙家『東京21区問題』河田悦子候補と共産党の対応の問題点、2003年
7月参院選においても、「平和共同候補・共同リスト」実現運動が、(1)政党候補者だけでなく、(2)無党派候補者を擁立し、その候補者個人と政策協定を結べば、なんら問題は起きない。そもそも、共産党には、革新共同候補者を推して、当選させた実績がある。1972年、総選挙において、愛知1区で田中美智子福祉大学助教授を、福島1区で安田純治弁護士を立てた。私(宮地)は、当時、愛知県選対部員として、田中美智子選挙事務所に張り付いて、当選めざす運動をした。この事例は、共産党の主張が、まったくの詭弁・ウソであることを証明している。共産党は、なぜこんな過去事例を隠蔽する見え透いたウソをついてまで、「平和共同候補・共同リスト」実現運動への敵対方針を出すのか。
〔詭弁3〕、政党間の選挙共闘の問題で、市民団体が、要望にとどまらず、“ああしろ、こうしろ”と指図する。
「平和共同候補」実現運動は、政党間の選挙共闘の問題だけを提起しているわけではない。無党派候補者を含めた護憲・活憲勢力の候補者の共同候補・共同リスト作成を要望している。それを“ああしろ、こうしろ”と指図とするのは、歪曲的断定である。
〔詭弁4〕、国政選挙での候補者問題を第一義にし、それを前面におしたてている。
これも、共産党式歪曲による断定である。たしかに、この運動は、「共同候補・共同リスト」実現をめざす選挙運動組織である。しかし、共産党も認めているように、その趣旨は憲法改悪阻止である。護憲・活憲運動は、当然ながら、(1)9条の会など市民団体の運動とともに、(2)国会における憲法改悪阻止勢力の議員を当選させる運動との二本足となる。
本来は、共産党こそが、あらゆる政党・党派・大衆団体に呼びかけ、憲法改悪阻止のための「共同候補・共同リスト」作成運動を呼びかけるべきであった。共産党がそれをしないので、護憲・活憲勢力が、9条の会市民団体の運動とともに、参院選候補者運動という二本足を呼びかけた。それを「候補者問題を第一義にしそれを前面におしたて」とするのは、恣意的なレッテル貼りである。
〔詭弁5〕、新社会党の路線と一致→事実上の応援団である。
護憲・活憲勢力は、共産党だけではない。多くの政党・党派・大衆団体が、憲法改悪阻止で一致している。共産党は、9条の会だけを持ち上げている。しかし、憲法改悪阻止をめざす大衆団体も、9条の会だけではなく、多様である。憲法改定の国民投票法案と憲法改定案は、衆議院・参議院の議席比率で決まる。憲法改悪阻止運動は、(1)院外の市民運動・組織とともに、(2)参院選・衆院選の選挙運動・組織という二面作戦が必要になるのは、護憲・活憲勢力の常識である。
すべての護憲・活憲勢力が、その二面作戦に取り組もうとしている。新社会党は、共産党と同列の護憲・活憲勢力の一構成部分である。新社会党の方針が、二面作戦に一致するのはなんら不思議ではない。それにたいし、「平和共同候補」実現運動を、新社会党の事実上の応援団と規定するのは、なんというこじつけであろうか。
そもそも、散見する限り、(1)9条の会よびかけ人と、(2)「平和共同候補・共同リスト」実現運動よびかけ人・賛同人との名前が一致しているケースが多い。(3)イラク派兵反対訴訟の弁護団・原告団とも一致する。愛知県のメンバーを見るだけでも、3者に名を連ねている人がかなりいる。ちなみに、私(宮地)は、(1)あいち9条の会よびかけ人281人の一人であり、(2)の賛同人に共産党の敵対方針後、登録した。(3)夫婦でその原告団に入っており、法廷に何回も参加してきた。
それらのリスト一致は、(1)(3)の人が、至極当たり前のように、(2)の参院選に向けた市民団体・「平和共同候補・共同リスト」実現運動に参加をするのが正しいという立場に立っていることを示している。彼らは、新社会党の方針を応援して、参加したわけではない。共産党も、非難・敵視の日本語に事欠いて、こじつけ詭弁を使うようになるとは情けない。
6、護憲・活憲勢力は、共産党が孕む第1・第2障害物を除去できるか
〔小目次〕
2、共同候補・共同リストへの敵対による共産党独自参院選の展望と思惑 (表1、2、3)
3、護憲・活憲勢力は、第1・第2障害物を除去できるか (表4、5)
1、共産党が孕む第1・第2障害物の具体的発現とその性質
護憲・活憲勢力は、憲法改悪阻止の一点で一致すれば、あらゆる政党・党派・市民運動との共同行動、統一行動を求める。ただ、運動内部におけるセクト的言動の表れとは、たたかわなければならない。憲法改悪阻止のためには、2つの作戦が必要なことは常識である。(1)国会外における9条の会など市民団体・運動とともに、(2)国会の衆参議席において、護憲・活憲勢力議員を飛躍的に増やす選挙運動と組織である。9条の会は、護憲・活憲勢力の市民団体だが、選挙運動を行う団体ではない。となると、両面作戦の内で、(2)約1年後に迫った2007年7月参院選めざす護憲・活憲勢力の市民運動・選挙運動はどうあるべきか、というテーマが浮上する。
日本共産党が、護憲・活憲勢力の一構成部分をなすのは、当然である。しかし、憲法改悪阻止運動において、共産党の指導的地位が認められているわけではない。護憲・活憲勢力は、社民党・新社会党や緑のテーブルなどの政党、憲法改悪阻止で一致する新左翼党派・あらゆる市民団体・運動を含む。その中の一構成部分が、正当な理由もないのに、他政党・党派・市民団体を排斥したり、敵対するようなセクト的言動は許されない。
ところが、別ファイル2つで検証したように、護憲・活憲運動や9条の会運動内部において、共産党のセクト的排他的言動が具体的に現れた。国民的規模になった市民運動において、1964年当時、ソ中両党隷従の日本共産党が、「ソ連・中国の核実験はきれいな実験である。防衛的な実験で正しい」という特定のスローガンを持ち込んで、分裂させたのが、原水爆禁止運動だった。その分裂は今日まで続いている。1984年、原水協と原水禁とが、統一回復をしようとしたとき、宮本顕治・金子満広が反対した。そして、それに従わなかった平和委員会・原水協幹部ら数十人を粛清した。古在由重も規律違反を犯したとして除籍した。
『護憲・活憲運動における共産党のセクト的対応』セクト的排他的誤りの事例集
『共産党が護憲・活憲運動内で行う排他的言動の検討』共産党のセクト的分裂策動
『「マオ−誰も知らなかった毛沢東」からの連想』原水禁運動への共産党の分裂行為
『不破哲三の宮本顕治批判』〔秘密報告〕平和委員会・原水協・古在由重ら一大粛清事件
共産党が孕む〔第1障害物〕とは、護憲・活憲運動、9条の会におけるセクト的排他的言動である。〔第2障害物〕とは、別ファイルの末尾で触れたが、参院選めざす運動における独善的硬直的方針である。上記の論理と詭弁に基づく、「平和共同候補・共同リスト」実現運動にたいする敵対と拒絶対応である。これらは、二度にわたる原水爆禁止運動にたいする共産党の分裂行動に続く、国民運動にたいする共産党による2回目の一大分裂行為という性質を帯びる。
この〔第2障害物〕分裂策動が公然と発現したのが、2006年5月20日の「平和共同候補」実現運動にたいする敵対論文である。共産党が、この誤った方針を変更・撤回しない限り、このテーマをめぐる護憲・活憲運動内部の対立は、参院選が近づくにつれ、深刻な問題に発展する。というのも、「平和共同候補・共同リスト」実現運動にたいする期待と賛同がいかに大きいのかは、インターネットの検索リスト数とその内容を見るだけでも明らかだからである。
Google検索『平和共同候補』813000件
2、共同候補・共同リストへの敵対による共産党独自参院選の展望と思惑 (表1、2、3)
共産党の誤りの根源は、「参院選での政策的一致と共闘の意思をもった政党は存在しない。これは、第24回大会決定でもある」という他政党規定である。そこから、他政党・他党派との選挙協力を全面拒絶し、共産党だけによる参院選をたたかう。共産党だけの独自選挙運動と9条の会運動との結合によって、憲法改悪阻止ができる、という情勢判断である。これらは、正しいのか。
それでは、共産党の独自選挙の目標と見通しと思惑はどうなのか。共産党の参院選目標といくつかの選挙データを見てみる。
〔第一〕、共産党の参院選結果経緯と目標は、次である。
(1)、比例代表・1998年8人当選→前々回2001年4人に惨敗→前回2004年4人維持で減ったまま→2007年、一人だけ戻して、5人当選目標である。
(2)、選挙区は、1998年7人当選→前々回2001年1人に惨敗→前回2004年0人に壊滅→2007年、一人だけ戻して、1人絶対確保目標である。比例代表・選挙区合計で6人当選目標である。
〔第二〕、立候補方針はどうなのか。2006年6月時点では、比例代表候補者5人・複数定員の重点選挙区候補者7人という12人だけをHPで公表している。沖縄県が糸数慶子を共同候補に決定した。しかし、下記(表3)のように、(1)比例代表立候補者を25人に増やすと思われる。(2)選挙区立候補者は、全選挙区46人立候補方針を、党大会で決定している。もっとも、強制しないとも言っている。未定候補者は、従来のように、以後、追加公認することになる。
ただ、民主党HPは、共産党の選挙区立候補者について、HP公表7人以外に、38人を載せ、合計45人を決定したとしている。共産党は、なぜ決定した45人全員をHPに載せないのか。そうなると、候補者の未決定選挙区は、46都道府県−45=徳島県のみ未定1になる。
共産党『2007年参院選の比例代表・選挙区予定候補者』比例5人・選挙区7人のみ掲載
民主党HP『2007年参院選予定候補者一覧』共産党の比例代表5人・選挙区45人の名前
〔第三〕、比例代表・選挙区とも、追加する候補者の役割は何か。それらには、自分の名前を言わせないで、共産党名だけを訴えさせる。なぜなら、追加想定の比例代表候補者20人と、重点選挙区以外の候補者38人、および、未決定の1人は、当選をめざす東京選挙区一人を除いて、ダミー候補だからである。それは、比例代表5人を当選させるための比例代表共産党票上乗せのダミー(身代り・替玉という顔なし)候補だからである。どの選挙においても、共産党の比例代表票は、一部選挙区を除いて、選挙区票より少ない。そこから、他40選挙区に身代り・替玉候補を立て、その獲得票の少しでも、比例代表候補票に回そうという「かおなし候補者」作戦だからである。
選挙区選挙において、このような身代り・替玉候補者作戦を採っている政党は、共産党しかいない。2004年選挙結果データからも分かるように、自民党・公明党・民主党・社民党は、このような見え透いた有権者騙しの手法を使っていない。最初から自己の当選を目標としない全選挙区の身代り・替玉立候補者方針にたいし、有権者はどういう審判を下すのか。
〔第四〕、この選挙戦略の根底には、どういう思惑があるのか。それは、この全選挙区立候補戦略の結果が、野党票の票割れとなり、自民党・公明党候補者を当選させることになろうとも、関係ない。その上乗せ票によって、共産党の比例代表候補者が一人でも多く当選しさえすればいい、という党利党略である。もともと、野党といっても、共産党と政策的一致する政党が存在しないという党大会決定から見れば、政権交代をさせるための野党間選挙協力などは無意味である。共産党が、他野党の当選を意図し、全選挙区立候補方針をやめ、政策的に全面一致しなくとも、新政権を作るような政権交代戦略を採れという意見がかなり出ている。しかし、この他政党規定から検討すれば、その意見は、保守政党どうしによる二大政党論に陥る保守反動的見解と断言できる。
6人当選目標を達成し、非改選4議席と合わせれば、10議席になる。2004年は、合計9議席に惨敗し、党首討論権・議案提案権を失った。1議席を増やし、10議席になれば、2つの権利を回復できる。
共産党の議席占有率は、10議席÷242議席≒4.1%に回復する。共産党が固執する独自選挙の最大限目標そのものが、10議席・4.1%である。この院内勢力4.1%と9条の会運動との結合で、かつ、「平和共同候補」実現運動を拒絶したままで、憲法改悪阻止が、参議院内でも、できるという展望である。もちろん、目標どおり、比例代表5・選挙区1の合計6人が当選すればの話であるが。
(表1) 2004年参院選のダブルスタンダード比較表
改選議席年度1998年との比較 |
前回2001年との比較 |
||||||
1998年 |
2004年 |
増減 |
2001年 |
2004年 |
増減 |
||
議席 |
選挙区 比例代表 |
7 8 |
0 4 |
−7 −4 |
1 4 |
0 4 |
−1 なし |
得票数 (万票) |
選挙区 比例代表 |
875.9 819.5 |
552.0 436.3 |
−323.9 −383.2 |
536.3 432.9 |
552.0 436.3 |
+15.7 +3.4 |
得票率 |
選挙区 比例代表 |
15.66 14.60 |
9.84 7.80 |
−5.82 −6.80 |
9.87 7.91 |
9.84 7.80 |
−0.03 −0.11 |
(表2) 得票数、組織票・浮動票率、得票率表
年 |
得票数 |
組織票 |
浮動票率 |
得票率 |
絶対得票率 |
||||
選挙区 (万票) |
比例代表 (万票) |
N×2 (万票) |
選挙区 (%) |
比例代表 (%) |
選挙区 (%) |
比例代表 (%) |
選挙区 (%) |
比例代表 (%) |
|
86 |
661 |
543 |
528 |
125 |
103 |
11.42 |
9.47 |
7.66 |
6.28 |
89 |
536 |
395 |
528 |
102 |
75 |
9.43 |
7.04 |
5.97 |
4.40 |
92 |
481 |
353 |
468 |
103 |
75 |
10.61 |
7.86 |
5.17 |
3.79 |
95 |
431 |
387 |
400 |
108 |
97 |
10.38 |
9.53 |
4.45 |
4.00 |
98 |
876 |
820 |
380 |
231 |
216 |
15.66 |
14.60 |
8.84 |
8.27 |
2001 |
536 |
431 |
328 |
163 |
131 |
9.87 |
7.91 |
5.29 |
4.25 |
2004 |
552 |
436 |
286 |
193 |
152 |
9.84 |
7.80 |
5.38 |
4.25 |
(表3) 2004年参院選の供託金没収の人数・比率・金額
立候補 |
当選 |
没収点 |
没収者 |
没収率 |
没収金額 |
|
選挙区 |
46 |
0 |
57964票以下 |
23人 |
50% |
6900万円 |
比例代表 |
25 |
4 |
25-4×2 |
17人 |
68% |
1億200万円 |
合計 |
71 |
4 |
/ |
40人 |
56.3% |
1億7100万円 |
ただ、供託金没収についての新対策は、2006年1月の第24回大会で手を打った。全党員から、毎月の党費1%納入とあわせて、供託金支援基金毎月100円徴収するという方針を、約1000人代議員の満場一致で決定したからである。よって、何の心配もいらない。
党費納入約27万党員×毎月100円×参院選までの17カ月間≒4億5900万円が、そっくり代々木党本部に貯蓄される計算になっている。いくら没収されようとも、党員からの徴収で、まだお釣りがくる。全党員は、次回総選挙に向けても、毎年1200円の供託金支援基金を納入することが義務付けられた。
『参院選結果』ファイル多数
2004年参院選結果データ 朝日 読売 日経 共同 JANJAN
3、護憲・活憲勢力は、第1・第2障害物を除去できるか (表4、5)
憲法改悪阻止をめざす国民は、9条の会趣旨に賛同し、全国で約5174の会を結成し、活動している。同時に、1年後に迫った参院選に向けて、護憲・活憲勢力の国会議員を増やす「平和共同候補・共同リスト」実現運動のよびかけ人・賛同人・会員へと、ごく自然になった。
ところが、2006年5月20日、共産党の敵対方針によって、事態が一変した。9条の会はいいが、「平和共同候補・共同リスト」実現運動は誤りという断定である。しかも、その語調は、「要望にとどまらず、“ああしろ、こうしろ”と指図する」、「政党にいうことをきかせよう、対立候補で脅かそう」、「策略的で非民主的な手口」、「策略的な運動」、「矮小(わいしょう)化」、「マイナスの効果しかもたらさない」、「善意の人々をあざむくというより、もてあそぶ」など、反党分子にたいし使うようなレッテルを多用している。これは、全共産党員にたいする指令という性質も持つ。
この方針は、日本共産党の重大な誤りである。誤りにととまらず、憲法改悪阻止という戦後最大の国民・市民運動にたいする敵対的で、独善的な分裂策動でもある。ここで、改めて、国民的要求・運動にたいする日本共産党の分裂策動の歴史を確認する。というのも、今回の誤り・分裂策動は、日本共産党史上4回目の犯罪に発展する可能性を含むからである。戦前が一つ、戦後は二つある。
〔分裂策動の誤り1〕、戦前、スターリンの社会ファシズム理論への隷従と、それによる反戦平和の国民運動の分裂
1930年代、コミンテルン日本支部は、鉄の軍事的規律=Democratic Centralismの下で、スターリンの誤った社会ファシズム理論に隷従していた。日本支部は、帝国主義戦争反対・ソ同盟擁護をスローガンに掲げてたたかった。ただし、戦後の研究が、その実態を解明した。実際の共産党活動は、スローガンとは別に、社会民主主義政党・団体を「社会ファシズム」と断定し、それとの闘争・殲滅を最優先課題として行動した。軍部・政府との闘争は脇に置かれた。日本支部は、反戦平和に取り組む社会民主主義政党・団体の運動を敵視し、反戦平和運動を分裂させた。
たしかに、党史『日本共産党の七十年』は、社会ファシズム論の誤りを認めはした。しかし、反戦平和運動を分裂させた真相と責任には沈黙・黙殺したままである。丸山眞男『戦争責任論の盲点』の真意はそこにある。この詳細は、別ファイルで検証した。
『1930年代のコミンテルンと日本支部』反戦平和運動を分裂させた真相と責任
田中真人『1930年代日本共産党史論』(あとがき)
丸山眞男『戦争責任論の盲点』(抜粋)
〔分裂策動の誤り2〕、1952年からの55年までの武装闘争と、それによる破防法反対運動・労働運動の分裂
当時の日本共産党は、ソ中両党に隷従し、両党の命令に従って、朝鮮侵略戦争の後方兵站補給基地武力撹乱の戦争行動を展開した。それは、三次にわたる破防法反対闘争や労働運動を分裂させ、崩壊させる決定的要因となった。1955年六全協は、ソ中両党命令により開催された。それは、崩壊した日本共産党の再建会議だった。そこでは、「極左冒険主義の誤り」を認めた。しかし、ソ中両党命令により、武装闘争の具体的データや総括は隠蔽された。このテーマについては、多くの別ファイルで検証した。
『日本共産党の武装闘争路線』ファイル・データ多数
〔分裂策動の誤り3〕、1964年以降の原水爆禁止運動の分裂策動と今日までの継続
1964年時点も、日本共産党は、ソ中両党への隷従状態にあった。ソ連の核実験の評価をめぐって、原水爆禁止運動内部において、2つの見解・スローガンが激突した。(1)社会党・総評の「いかなる国の核実験にも反対」と、(2)共産党の「ソ連・中国の核実験はきれいな実験で、防衛的だから正しい。賛成する」との対立である。これにより、原水爆禁止運動は分裂した。今日、共産党側の誤りは明白である。共産党も、後に、スローガンの誤りだけを認めた。しかし、分裂をさせた主要原因が共産党側にあった真相と責任を一切認めていない。これも、別ファイルにおいて、経過を確認した。
『「マオ−誰も知らなかった毛沢東」からの連想』原水爆禁止運動の共産党による分裂
〔分裂策動の誤り4〕、2006年5月20日、「平和共同候補」実現運動にたいする共産党の敵対方針
これは、今後、共産党の対応によって、護憲・活憲運動の分裂策動に発展する危険性を孕んでいる。というのも、この方針は、5月20日論文だけではなく、2006年1月の第24回大会決定を根底にしているからである。
それでは、護憲・活憲勢力は、共産党の敵対方針にたいし、どう対応したらいいのか。ただ、「平和共同候補・共同リスト」実現運動のよびかけ人・賛同人・会員は、まさか、共産党がこのような全面拒絶・排斥方針を出すとは考えてもいなかった。まさに、想定外の状態が発現した。彼らは、憲法改悪阻止の参院選戦略として、(1)9条の会よびかけ人・参加者であるとともに、(2)「平和共同候補」実現運動に参加したにすぎない。
これを決定的な亀裂と受け留めるのかどうか、共産党方針にたいする態度・対応をどうするのかが、憲法改悪阻止という意志を持つ国民に問われることになった。二面作戦に参加した人には、共産党幻想を持つタイプも多い。善意に溢れて、共産党側が、「平和共同候補」実現運動への賛成に大転換するのではないかと期待するかもしれない。しかし、問題は、敵対方針が、満場一致の第24回大会決定に基づいていることを厳しく認識する必要がある。
日本共産党は、資本主義国において、レーニン型前衛党の5原則を隠蔽・堅持する唯一の残存政党である。その国際的な特殊位置づけから見れば、党大会決定を変更・撤回させることは容易なことではない。日本共産党が、国際的にみて、異様なほどに特殊な残存政党であるという現実を直視しないと、護憲・活憲運動における共産党の誤りへの対応を間違えることになる。地獄への道は善意で敷き詰められている、ということわざは、護憲・活憲勢力内部にも当てはまる可能性がある。そのデータを2つの(表4、5)で確認する。
資本主義諸国において、残存するレーニン型前衛党は、2党だけになってしまった。ただ、ポルトガル共産党は、1970年代前半に、ヨーロッパ諸党の中で一番早く、プロレタリア独裁理論は誤りだとして、放棄宣言をした。よって、レーニン型前衛党5つの基準・原理のすべてを、「訳語変更、略語方式、隠蔽方式」にせよ、堅持しているのは、世界で日本共産党ただ一つとなっている。
(表4) レーニン型前衛党の崩壊過程と度合
プロレタリア独裁理論 |
民主主義的中央集権制 |
前衛党概念 |
マルクス・レーニン主義 |
政党形態 |
|
イタリア |
´76放棄 |
´89放棄 |
放棄 |
放棄 |
´91左翼民主党 |
イギリス |
解党 |
解党 |
解党 |
解党 |
´91解党 |
スペイン |
´70前半放棄 |
´91放棄 |
放棄 |
放棄 |
´83に3分裂 |
フランス |
´76放棄 |
´94放棄 |
? |
? |
共産党名 |
旧東欧9カ国 |
崩壊 |
崩壊 |
崩壊 |
崩壊 |
´89崩壊 |
旧ソ連 |
崩壊 |
崩壊 |
崩壊 |
崩壊 |
´91崩壊 |
ポルトガル |
‘70前半放棄 |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
共産党名 |
日本 |
訳語変更堅持 |
略語で堅持 |
隠蔽・堅持 |
訳語変更堅持 |
共産党名 |
中国 |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
共産党名 |
ベトナム |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
共産党名 |
北朝鮮 |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
朝鮮労働党 |
キューバ |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
共産党名 |
この(表4)において、レーニン型前衛党が大転換・解党・分裂・崩壊したソ連・東欧・資本主義国を含むヨーロッパ全域では、20世紀末以降で、一般国民や左翼勢力のほとんどが、次のレベルの認識を持つに至ったと言えよう。それは、「1917年10月、レーニンがしたことは、革命ではなく、一党独裁狙いの権力奪取クーデターだった」「4000万人粛清犯罪者のスターリンだけでなく、レーニン自身がクーデター政権を維持するために、ロシア革命勢力である自国民数十万人を赤色テロルで殺害した大量殺人犯罪者だった」とする「十月革命」認識内容がほぼ常識になった。そのような国民・左翼の劇的な認識転換・強烈な圧力を受けなければ、レーニン型前衛党がかくも脆く、いっせいに崩壊しなかったであろう。
『コミンテルン型共産主義運動の現状』上記内容の詳細な経過
(表5) 日本共産党の欺瞞的な4項目隠蔽・堅持方式
4つの原理 |
欺瞞的な隠蔽・堅持方式 |
他国共産党との比較 |
プロレタリア独裁理論 |
綱領において、訳語変更の連続による隠蔽・堅持。(1)プロレタリア独裁→(2)プロレタリアのディクタトゥーラ→(3)プロレタリアートの執権→(4)労働者階級の権力→(5)放棄宣言をしないままで、綱領から権力用語を抹殺し、隠蔽・堅持している |
ヨーロッパでは、1970年代、ポルトガル共産党を筆頭として、100%の共産党が、これは犯罪的な大量殺人をもたらし、誤った理論と認定した。そして、明白に放棄宣言をした。資本主義世界で、放棄宣言をしていないのは、日本共産党だけである |
民主主義的中央集権制 |
規約において、訳語変更による隠蔽・堅持。(1)民主主義的中央集権制(Democratic Centralism)→(2)「民主集中制」という略語に変更→(3)「民主と集中の統一」と解釈変更で堅持→(4) 「民主と集中の統一」は、あらゆる政党が採用している普遍的な組織原則と強弁している |
ヨーロッパの共産党は、「Democratic Centralism」の「民主主義的・Democratic」は形式・形容詞にすぎず、「官僚的・絶対的な中央集権制・Centralism」に陥ると断定した。それは、「党の統一を守るのには役立ったが、一方で党内民主主義を破壊する」組織原則だと認定した。この反民主主義的組織原則を堅持しているのは、残存する犯罪的な一党独裁国前衛党4党とポルトガル共産党・日本共産党だけである |
前衛党概念 |
規約において、(1)前衛党→(2)規約前文から綱領部分削除に伴い、その中の「前衛党」用語も事務的に削除→(3)不破哲三の前文削除説明で、「前衛党」概念を支持・擁護 |
イタリア共産党は、「前衛党」思想を、「政党思想の中で、もっともうぬぼれた、傲慢で、排他的な政党思想だった」と総括し、全面否定した。日本のマスコミは、左(2)を「前衛党」概念の放棄と錯覚し、誤った解説をした |
マルクス・レーニン主義 |
(1)マルクス・レーニン主義→(2)個人名は駄目として、「科学的社会主義」に名称変更し、堅持。不破哲三の『レーニンと資本論』全7巻を見れば、マルクス・レーニン主義そのものの堅持ぶりが分かる。ただ、彼は、さすがにレーニンの暴力革命理論だけを否定した |
「マルクス・レーニン主義」の命名者はスターリンである。ポルトガル共産党を除くヨーロッパの共産党すべてが、マルクス・レーニン主義と断絶した。フランス共産党が放棄したのかは分からない |
日本共産党は、4項目に関して、訳語・名称変更しただけで、ヨーロッパの共産党がしたような明白な放棄宣言を一つもしていない。その実態も、隠蔽・堅持方式を採っている。世界的にも、こういう欺瞞的スタイルを採る共産党は皆無であり、いかにも不可思議な政党ではある。その点で、加藤哲郎一橋大学教授は、日本共産党を「現段階のコミンテルン研究の貴重な、生きた博物館的素材」と指摘した(『コミンテルンの世界像』青木書店、1991年、P.3)。
21世紀の資本主義世界で、いったい、なぜ、日本共産党という一党だけが、レーニン型前衛党の5つの基準・原理を保持しつつ残存しえているのか。もっとも、残存する一党独裁型前衛党の中国・ベトナム・北朝鮮を合わせれば、アジアでは、4つの前衛党が崩壊しないでいる。「アジアでの生き残り」の政治的・地政学的原因、および、隠蔽・堅持方式については、別ファイルで分析した。
『「レーニンによる十月クーデター」説の検証』日本共産党の唯一残存とその原因・経過
『規約全面改定における放棄と堅持』2000年第22回大会、欺瞞的な隠蔽・堅持の詳細
『「削除・隠蔽」による「堅持」作戦』欺瞞的な隠蔽・堅持方式の4段階の詳細
日本共産党の2006年1月第24回大会決定→5月20日敵対方針における分裂策動の深刻さを、「平和共同候補・共同リスト」実現運動メンバーがどのレベルで受け留めるのか。
「平和共同候補」実現運動に参加した共産党員のかなりは、党中央指令に従って、運動から脱退する。党中央の敵対方針が誤りだと判断する共産党員はどうするのか。彼らは、フランス共産党の経験をどう考えるのか。
1978年3月の総選挙結果に関するフランス共産党中央委員会の総括内容をめぐって、千数百人以上の知識人党員が公然と異議申し立てを表明した。
その前の1977年9月に「政府共同綱領」改定交渉が決裂し、左翼連合は分裂していた。それに関する党中央の選挙総括は、(1)共産党の成果、(2)反共攻撃の激しさ、(3)共同綱領にたいする党の一貫した忠誠と社会党の裏切り、を内容とするものだった。
その総括にたいして、多くの知識人党員が党外のマスコミ、新聞、ラジオで党指導部批判意見を続々と発表し始めた。ルイ・アルチュセールなど個人にとどまらず、「6人の知識人党員の手紙」、「100人の党員の声明」、「300人声明」が公表された。党中央がルイ・アルチュセール個人攻撃に絞り、彼を孤立させようとした策謀にたいして、集団的抗議に立ち上がり、それぞれ『ユマニテ』掲載を要求したのにたいして、党中央が掲載を拒否したので、マスコミ公表に踏みきった。
アルチュセール『共産党のなかでこれ以上続いてはならないこと』
ただし、日本共産党は、資本主義国で、ポルトガル共産党と並んで、唯2つ残存するDemocratic Centralism組織原則堅持政党である。党中央は、公表24000の支部を超えた横断的・水平的交流や、フランス共産党のような横断的「声明」発表を、分派活動規律違反と断定する。その声明発表党員は、瞬時に、調査(=査問)され、除名・除籍で党外排除をされる。それを覚悟で、なんらかの党中央批判行動に立ち上がれるのか。(1)共産党員としての組織内残留と、(2)「平和共同候補・共同リスト」実現運動とのどちらを優位に置くのか。
共産党員以外の人たちも、共産党の党大会決定・敵対方針にたいし、どういう行動に出るのかも問われる事態に突入した。
7、共産党が敵対方針無変更→護憲・活憲勢力の分裂選挙→共倒れ惨敗を回避する可能性 (表6)
〔小目次〕
2、イマジン(Imagine) (表6)
1、敵対と分裂を回避する可能性と行動
敵対方針が、第24回大会の満場一致決定に基づくからには、それを変更させることは、容易ではない。しかも、東方の島国においてのみ、国際的に唯一残存する特異なレーニン型前衛党5原則を隠蔽・堅持する政党なのでなおさらである。日本共産党は、日本において、真理を認識・体現・実践できる唯一の政党と自己規定をする誇り高きレーニン型前衛党である。他政党・他党派は、その真理を認識さえできない、共産党の正しい政策に一致できないという他政党規定で見下す独善的姿勢を貫いている。
「平和共同候補・共同リスト」実現運動も、インターネットで50万件以上もの賛同・参加意見に発展してきている。よって、共産党の党大会決定・敵対方針にたいし、いまさら旗を巻いて、共産党の軍門に降るわけにもいかない。よびかけ人・賛同人たちも、共産党がこの運動に賛成するだろうという善意な見通しからスタートした。共産党が、このように敵対という出方をするとは、想定外だった。
このままで行くと、7月参院選は、護憲・活憲勢力の分裂選挙→共倒れ惨敗→憲法改悪勢力の大喜びになる。約5174になった9条の会という市民運動も、内部分裂する。
その悲劇的事態を回避する可能性はあるのか。現在の両勢力の力関係において、共産党の体質のままでは、共産党側から、敵対方針を変更・撤回する可能性はない。その力関係を、「平和共同候補・共同リスト」実現運動側が、急激な勢力拡大によって、転換させるしかないであろう。その方法は、3つある。
〔第1〕、7・7シンポジウムに向け、共産党の敵対方針との対抗を意識しつつ、運動を、インターネット・相互メールを初め、あらゆる場において、劇的に進展させる。
〔第2〕、運動賛成者が、「平和共同候補・共同リスト」実現運動の賛同人・会員に大量に登録する。現役共産党員も、仮名・ペンネームで登録できる。
平和への結集をめざす市民の風『賛同・入会フォーム』ここから直接登録
〔第3〕、共産党にたいし、敵対方針を変更・撤回し、「平和共同候補・共同リスト」実現運動に参加するように、メール・電話・ファックス・「党員意見書」などで、大規模に要請する。共産党は、党大会決定・敵対方針のままなら、2004年と同じとすると、第2次追加公認候補者を決定・発表する。(1)比例代表5人+追加20人、(2)選挙区のHPリスト7人+決定38人+追加1人となる。
それからの要請では遅い。共産党のプライドと面子からも、いったん発表した候補者を、市民運動からの大量要請に屈服し、取り下げるような屈辱に耐えられないからである。ただ、選挙区予定候補者23人の内、HPには、複数定員の重点候補者7人しか載せていない。決定している38人を、なぜHPに載せないのか?。
現在なら、その「要請」行動は、効力を持つ。追加候補者HP発表後の『明日では遅すぎる』。
(1)、前回の比例代表候補者25人中、20人は、未決定である。改選する比例代表48議席にたいし、その過半数の25議席をめぐって、共産党5人・社民党1人を含めた「25人の比例代表・共同リスト」を作る協定を成立させることは、共産党が同意さえすれば、簡単にできる。ただ、「比例代表・共同リスト」は、何人でも構わない。前回2004年は、共産党25人・社民党5人・みどりのテーブル10人という計40人が、護憲・活憲勢力の比例代表で立候補した。
(2)、共産党沖縄県委員会は共同候補を決定した。46都道府県中、決定した45選挙区の共産党候補者は、HP未公表である。はっきりいって、そこでは、共産党選挙区候補者は絶対に当選できない。その45選挙区において、「平和共同候補」を立てる協定を結ぶことも、共産党が同意さえすれば、可能である。
参議院で、2増・2減が決まった。東京5→6、千葉2→3議席である。栃木2→1、群馬2→1に減った。よって、定員2人区は、12道府県、3人区は5府県ある。共産党が敵対方針を変更・撤回さえすれば、それら17道府県において、当選をめざし、候補者調整による無党派候補者を立てる「平和共同候補」という別の展望も開ける。
民主党HP『2007年参院選予定候補者一覧』共産党の比例代表5人・選挙区45人の名前
むしろ、それをした方が、その都道府県における共産党比例代表候補者の人気を高め、比例代表票を増やす結果に繋がるはずである。共産党常幹や共産党員は、その有権者心理、道理を理解できないのであろうか。
共産党『メールアドレス』「しんぶん赤旗」、および、共産党への要請
日本共産党中央委員会 TEL 03-3403-6111 FAX 03-5474-8358
視点を一変させて、明るい展望を、イマジン(Imagine)することも可能かもしれない。
想像してみよう / 護憲・活憲勢力内に、敵対なんて存在しないと /
そう思うのは難しいことじゃない / 敵対する理由も、分裂する理由もない /
想像してみよう / 9条の会のすべての人々が、平和への結集をめざす風になったと
(表6) 「平和共同候補・共同リスト」のイマジン
共産党が党大会決定・敵対方針を変更・撤回した場合
改選 |
日本共産党 |
社民党 |
他政党・無党派 |
|
比例代表・共同リスト |
48 |
5 |
1 |
10〜20 |
追加公認の可能性 |
(20) |
(前回5立候補) |
(前回、みどりの党10立候補) |
|
選挙区・共同候補 |
73 |
HP公表7、決定38 |
未決定 |
14前後。東京6人区は2人 |
追加公認の可能性 |
(HP未公表38) |
(前回10立候補) |
3人区・2人区の候補者調整 |
このテンポで、共産党の敵対方針にたいする批判・反対が激増し、一方、「平和共同候補・共同リスト」実現運動への賛同・支持が高まって、護憲・活憲勢力内の天秤バランスが傾けば、どうなるか。その時は、共産党が敵対方針を変更・撤回する可能性が出てくる。日本共産党は、非政権前衛党である。14カ国の一党独裁型前衛党のすべてがやってきたように、国家暴力装置と秘密政治警察によって、批判・反対運動を弾圧することはできない。
そこから、共産党は、有権者1億数百万人の支持動向に敏感にならざるをえない。政党支持率急落傾向に、きわめて臆病な体質を秘めている。志位・市田・不破らは、彼らの誤りへの批判・反対の抗議メール・「意見書」が激増すれば、動揺する共産主義的人間である。
共産党は、5月20日敵対方針において、「対立候補で脅かそう」という受け留めをした。別の見方をすれば、「共産党への要望」を「脅迫」と錯覚するほどの小心者のトップが党中央を占拠している。
日本共産党が行った、1964年、1984年の二度にわたる原水爆禁止運動にたいする分裂策動と、現在まで続く分裂の悲劇を、参院選で再び繰り返さないためにも、護憲・活憲勢力のかなりが、なんらかの行動に立ち上がるのだろうか。それとも、『海の沈黙』というレジスタンスに閉じこもるのか。あるいは、党中央指令に忠実な共産党員は、運動から脱退するのか。
ちなみに、私(宮地)は、1964年時点、名古屋市の民青地区委員長・共産党地区委員だった。私は、「ソ連・中国の核実験はきれいな実験で正しい。賛成し、支持する」「社会党・総評のいかなる国の核実験にも反対主張は誤り」と断定する党中央、および、上田耕一郎論文にたいし、無条件で賛同する犯罪的誤りを犯した。民青内でも、地区委員長として、その誤った理論の宣伝・解説をする先頭に立った。私も、中間機関の一専従ながら、共産党の分裂策動に直接加担した経歴を持っている。
今回の党中央による分裂策動の再発にたいしても、専従4000人弱・共産党地方議員3403人・衆参国会議員18人と党費納入27万党員は、党中央の誤りに従うのか。
フランス共産党の問題は、1978年、党中央の選挙総括にたいし、フランス共産党員1500人以上が、分派禁止規定を蹴破って、横断的・水平的交流を組織した爆発的な抗議・抵抗運動だった。
1994年1月 第28回大会で、民主主義的中央集権制を放棄した。放棄に(1)賛成1530人、(2)反対52人、(3)棄権44人という採決結果だった。この大会を機にマルシェ書記長は引退した。代わったユー全国書記は、「民主主義的中央集権制は、統一と画一性を混同し、誠実な共産主義者でも意見が異なれば、これを打倒し、隔離すべき敵であるかのように扱った」と自己批判した。
東欧・ソ連10カ国とその前衛党のいっせい崩壊の性質は何だったのか。1989年東欧革命とは、前衛党の誤り・犯罪にたいする、国民的規模でのレジスタンス運動の総決起であり、それを引き金とした前衛党の全面的内部崩壊だった。
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〔関連ファイル〕
HP『平和への結集をめざす市民の風』平和共同候補の実現を
yahoo検索『平和共同候補』50000件 Google検索『平和共同候補』813000件
共産党『参院選での「平和共同候補」を求める運動について』共産党の敵対方針
『統一地方選・参院選を目指す3中総方針の検討』「共同候補運動」への敵対継続
『護憲・活憲運動における共産党のセクト的対応』セクト的排他的誤りの事例集
『共産党が護憲・活憲運動内で行う排他的言動の検討』共産党のセクト的分裂策動
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(イタリア・ドイツの共同候補運動、フランスの「進歩のための統一協定」運動)
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