マニュアル(Manual)講座   −−新版作成中−−

    伸びる企業はマニュアル上手
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 1. マニュアルとは
 2.マニュアルの役割
 3. マニュアルのつくり方
 4. 業務分析
 5.  業務マニュアル
 6. ユーザーズ・マニュアル
 7.危機管理マニュアル
 8. 教育・訓練マニュアル
 9. マニュアル・小売業編
10. マニュアル・メーカー編
11. マニュアル文章
12. マニュアルの図解表現
13. マニュアル有効活用
14. マニュアル事例
15. マニュアル作成ツール
16. マニュアルセミナー
 マニュアルの本
 業務分析の本






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ブログ−マニュアルの色々
 

01 マニュアルとは

1 マニュアルの概念は広範

 マニュアルの概念とその効用に関しては,様々な見解と評価が聞かれます。マニュアルをパート,アルバイトなどの非正社員や一般社員向けに,定型的仕事の手順・方法を指示するものと限定してとらえるのは,いささか視野が狭いのではないでしょうか。
 現実のビジネス場面におけるマニュアル導入の実態は,“マニュアルは経営システムを構成する要素の一つであり,「企業の知的資産」”として,その適用範囲は広範です。
 企業経営におけるマニュアル導入の実態からして,マニュアルは経営システムを構成する主要な素の1つであり,「企業の知的資産」であります。こうした観点から,マニュアルは有用とし,マニュアル論を展開します。

1−1 マニュアル(Manual)の語源は,「手に持った本」

 マニュアル(Manual)の語源は,「手に持った本」を意味するラテン語です。manu−とは,を意味します。ビジネス分野でのマニュアルの適用範囲は,@仕事の処理手順や手続きを記述した「事務手順書」や「処理要領」,Aパソコンや情報システムなどのハードウェアやソフトウェアの使い方に関する「使用説明書」や「操作説明書」類,さらにはB企業理念やビジョンに基づく社員の行動規範,社会貢献を説く教育用テキスト類と広範に及びます。

1−2 マニュアルの役割・機能

@コストダウン−−ローコストオペレーション−−

 マニュアルの役割の一つに,コスト低減にあります。マニュア化を通じて現行のムリ・ムラ・ムダを洗い出し〜問題点の発見〜改善〜マニュアル作成の一連の手順を通じてのコスト低減を図ります。

A経営の質の向上ー企業の知的資産

 マニュアルの基本的機能の一つに,“組織内の標準的な取り決めの文書化“です。なお,「標準」とは,一方的な押しつけではく,組織内の合意,納得という意味を持ちます。この点への配慮が欠けると,当事者の共感を得られず,お蔵入りとなりかねなません。 「会社や組織の持つよき伝統,個々の社員の持つ知識やノウハウといった暗黙知を組織ぐるみで共有・伝承して形式知−文書(ドキュメント)化し,経営の質の向上に貢献といった効果が期待できます。
 近年,「会社全体の組織が,相互に牽制しあって,会社の価値すなわち株主価値を高めるために,社内の規則違反や不正や法令違反ができない」ことを目的とした,コーポレット・ガバナンス(企業統治)を担う内部統制システムのツールという,役割も課されています。

 

最高水準−ベスト・プラクテスの追求−
 組織(企業内)における優れた仕事のやり方を,あるいは成功事例を手本としての水平展開に向けて,,そのやり方をマニュアル化するというのがベスト・プラクティスの追求です。

1−3 ISO9000におけるマニュアルの位置づけ

 ISO9000とは,国際標準化機構(ISO:International Organization For Standardization)が定める,製品やサービスの品質保証に関する企業体制の要件をまとめ国際的な規格です。PL法の施行,環境問題への意識の高まり,さらにISO規格取得を取引条件とする企業もあることから,ISO9000への関心が高まっています。
 IS09000では,国際基準に合わせて分掌内部の体制や仕組みを整え,それを第三者にわかる形で明示すること,そして業務の遂行に関するさまざまな指示や連絡を,マニュアルや手順書など文書として関係部署に配布することを求めています。

@品質マニュアル

  ISOに準拠した品質マニュアルとは,組織の品質方針を示し,組織の品質保証システムを記述したものであり,SO9000の要求に対して当社がどのように対処しているのかを文書化するものです。品質マニュアルには次の事項を含めます。

  • 品質管理の適用範囲。除外がある場合には,その詳細と理由

  • 品質管理について確立された”文書化された手順”またはそれらを参照できる情報

  • 品質管理に関わる部門間,諸機能の相互関係図作成

A品質システムの文書体系

 ISO9000シリーズに基づく品質システムで重要な役割を担う品質マニュアルは,ISO10013『品質マニュアル作成の指針』で,下図のピラッミド型の構成が例示されています。

   

2 マニュアルの種類とその適用分野

 マニュアルをその作成・使用目的から,@規範(マインド)マニュアル,A危機管理マニュアル,B業務マニュアル,C取扱い・操作説明(ユーザーズ)マニュアル,D教育・訓練(テキストブック)マニュアルの5種類に分け,それぞれのマニュアルの役割,作り方とその運用・活用を考えます。

1 規範マニュアル・・・・・・・行動規範 内部統制指針・規範

 規範マニュアルは企業の基本理念(哲学)に準拠します。その内容は,企業の社会の公器としての役割の自覚,そして企業や組織の基本方針や理念に基づき,“WHY to do”,すなわち「社会貢献のあり方」,「企業は何のために利益を得るのか」「組織としてどうありたいか」といった,企業や組織の目指す方向や社員の行動規範がここでのマインドマニュアルです。 
  粉飾決算,産地偽装,循環取引,架空取引,・・・・と,企業の不祥事は絶えません。こうした不祥事を未然に防ぐためのコーポ−レート・ガバナンス,内部統制(internal control )に関する行動基準や指針も規範マニュアルの範疇に含めます。

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▼持ち歩き型社員規範集 プロ球界も「クレド」で心得− 西武や楽天 意識高め集客後押しも 

クレド(Credo)はラテン語から派生した「信条」「志」の意味する言葉で、ビジネスの世界では「企業理念」を指す呼び名として定着している。米国では高級ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンや医療品大手のジョンソン・エンド・ジョンソンの社員が繰り返し読み、基本的な接客手順や行動指針を確認している。


2 危機管理マニュアル・・・・・・・不測の事態への対応

 大規模地震や新型インフルエンザなど,企業の事業継続(Business Continuity)を脅かすリスクの存在は大きいものがあります。こうした,企業の存続に直結する不測の事態への対応に備える,「危機管理マニュアル」(crisis management manual)はここに分類します。
 危機マニュアルは,企業や組織の経営理念や経営方針に基づく,危機的事態への対応の具体的な基準,行動指針です。その達成基準(where)は,「努力目標」や「あるべき姿」ではなく「責任限界」とするのが現実的です。

3 業務(オペレーション)マニュアル・・・・・・処理工程,手順,処理方法

 組織における仕事は分業化され,それぞれの担当者が分担して行っています。したがって,組織における仕事は,個人の範囲で完結するものではなく,各々の仕事が何らかの関連性を持っています。そこで各々の仕事が円滑に処理され(滞りなく遂行され)るような仕組みづくりが必要です。

 業務マニュアルは,業務単位別に仕事の目的や処理手順をまとめた「業務要領・事務管理マニュアル」と,担当者別 にその職務要領をとりまとめた担当者別業務マニュアルの2種類に分けられます。

業務要領・事務管理マニュアル(Standard Procedure)

 業務ごとに,その処理手順,処理方法などを成文化したものが「業務要領・作業手順:Standard Procedure」です。多くの場合,業務処理はなんらかの形でコンピューター・システムと連動しているところからパソコン操作,アプリケーション・プログラムの操作方法などについての記述も含まれます。

担当者別業務マニュアル(マイ・タスク・ノート)

従業員(担当者)ごとに,それぞれが担当する仕事についての手順・方法,責任と権限といった点を,記述したものが担当者別事務処理マニュアルです。

内部統制マニュアル

 2006年6月,日本版SOX法(J-SOX)−金融商品取引法の「内部統制報告制度」−が成立しました。2009年3月期の決算から,日本の上場企業のすべてに対し,「企業経営者に対して,財務報告の不正(虚偽や誤り)を排除する取り組みと,内部統制報告書の提出・公認会計士によるチェックが義務付けられました。

内部統制システムと内部統制マニュアル
 「内部統制」とは,狭義には企業の財務健全性を確保するために,企業内部に設置される仕組みを指します。広義には,企業,団体などの組織内部において,違法行為や不正,ミスやエラーなどが行われることなく,組織が健全かつ有効・効率的に組織が運営されるよう各業務で所定の基準や手続きを定め,それに基づいて管理・監視・保証を行う一連の仕組みが内部統制システムです。
 
 当該業務における内部統制を記述した文書である「内部統制マニュアル」の整備・充実は欠かせません。なお,内部統制システムのマニュアルの基本構成としては,次の3点があげられます。

  機能情報関連図:業務間のデータや情報(指示・命令・要請・承認・依頼)のやりとりを図解化。
  業務記述書(事務フローチャートを含む):業務別に,「使命と目的」,「達成基準」,「処理手順・方法」 ,「その他・特記事項」を記載。
  職務分掌・業務別責任権限一覧表(リスク対応マトリックス):業務別に責任・権限を一覧する

4 取扱い・操作説明書 (ユーザーズ・マニュアル)

 ユーザーズ・マニュアル(User’s Manual)とは,パソコンやコンピューター周辺機器などのハードウエアと,アプリケーション・プログラムなどのソフトウエアの使用方法や操作手順に関する取り扱い説明書を指します。ユーザーズ・マニュアルは,ハードウエアやソフトウエアを利用者(ユーザー)に使いこなしてもらうための道案内,あるいはシステムや機械とそれを使う人との橋渡し役を担います。
 なお,ユーザズ・マニュアル作成の前提として,ユーザーの要望をとりまとめたシステム要件書,システムやソフトウエアの機能をまとめたシステム仕様書,プログラムの動作を記述したプログラム仕様書,プログラムテストとそのデータを詳述したテスト仕様書といったシステム開発関連のドキュメント類の整備も必要です。

             システム開発に関連したドキュメント類

エレベーター圧死事故で,浮きぼりとなったマニュアルの重要性
 東京都港区のマンションで2006(平成18)年に起きた高校生のエレベーター圧死事故で,国土交通省昇降機等事故対策委員会は,ブレーキ異常が直接の原因とする事故調査報告書をまとめた。また,報告書では,製品の欠陥とともに,設計図や機器のマニュアルをメーカーから引き継がないという業界の“悪しき慣習”も糾弾された。

 当初は事故機の保守も自ら行っていたメーカーのシンドラー社は,入札制度導入によって落札業者が代わった際,業界の慣例通り,点検マニュアルを後継の保守会社に渡さなかった。保守会社は,東京都が発行する一般的なエレベーターの仕様書や,シ社の類似機のマニュアルを元に管理しており,対策委は「(仕様書とは)全く違う構造で,適切な管理ではなかった」とした。

 この背景には,保守管理も引き受けたいとするメーカー側と,独立系と呼ばれる保守管理を専門的に扱う新規参入業者との激しい顧客獲得競争がある。改善の動きは出ている。シンドラーエレベータ社や別の外資系メーカーは独立系を対象に技術指導講習会を開いた。「事故を教訓に少し風向きが変わりつつある」と,独立系団体「エレベータ保守事業協同組合」は評価する。マニュアルの引き継ぎを求めた際,応じるケースもみられるようになってきたほか,点検内容を厳しくチェックする顧客も増えたという。

5 教育訓練(テキストブック)マニュアル・・・・・・能力開発用の教材

 社内研修用の印刷教材や自己啓発の独習用教科書や関連資料類を,マニュアルと称している場合が多々みられます。
  終身雇用・年功序列制度が陰をひそめ,能力主義や業績主義が主軸となり,さらに知識や技術の陳腐化が早い時代にあっては,主体的な学習意欲を持った人材の育成が欠かせません。
 また,マニュアルを使うにも,自主的な判断力が必要です。そこで,自分で考えて行動できる人材の育成という観点から,教育訓練の重要性は高まるばかりです。

  なお,「教育」という言葉は英語の「education」に該当し,能力を見つけ引き出すことです。「訓練」は,「training」に対応します。訓練は,人が体で覚える部分,すなわち技能や礼儀作法などの「How to」の習得を主眼とします。通常,業務マニュアルは,手順・手続きといった「How to」の解説に重視します。対して,テキスト・マニュアルは,「何故そうしなくてはいけないか」,「そうすることはどのような意味を持つのか」といった,「why」を説明することに重点を置きます。

    Education                                                          
   
    Educationを教育と訳したのは,福沢諭吉である。




   



 
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 約四半世紀にわたりマニュアルづくりとその活用でのお手伝いさせていたいだいてきました。また,産業能率大学マネジメントスクールの「業務マニュアル作成講座」は,今年で25年目,開催回数61回を数え,延べ2000名超の皆さまに受講いただきました。 
 
 こうした長年にわたり活動させていただいたことへの感謝とお礼の意味で,「マニュアルづくりとその活用」」に関して講演(2〜3時間程度)とマニュアル作成に関するご相談を,無料(交通費は実費精算)でお引き受けいたします。
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1 内容−テーマ

  講演テーマ例(プログラム)

  ・マニュアル不要論を質す−「マニュアル否定論 vs マニュアル肯定論」
  ・事例紹介−「マニュアル活用企業」
  ・マニュアルは自前主義のすすめ−「外注は極力避ける」
  ・時代が求めるマニュアルの条件−国際化・リスク管理・プロジェクトマネジメント
  ・マニュアルのデジタル化


  アドバイス
  ・マニュアル診断(現在使用中のマニュアルの使いやすさ・妥当性など)

2 条件

  ・費用:東京都,千葉県は,交通費のみ実費精算  
       首都圏以外は,交通費,宿泊費,謝金(10,000円)
  ・営業活動は一切行いません。
  ・業務上知りえた情報は,一切使用することはありません+。
  ・守秘義務は厳守します。ご要望により事前に覚書をとりかわします。


略歴−小林 隆一

 1943年生まれ。産業能率大学講師,鹿児島国際大学教授を経て,現在経営コンサルタント。『マニュアル作成の実務』評言社刊,『マニュアルのつくり方・生かし方』PHP研究所,『「身の丈」を強みとする経営』日本経済新聞出版社刊,他著作多数。

 日経文庫ビジュアルシリーズ− 『流通の基本』(日本経済新聞出版社刊)が4版が3刷となりました。 第1版を1994年7月に刊行し,世紀をまたぎ,今年で17年目のロングセラーとなりました。延べ発行部数も十数万部と,多くの方々にお読みいただき,感謝の気持ちで一杯です。特に大学で「流通」あるいは「マーケティング」のテキストとして採用されている事,著者としては望外の喜びです。