【東京都渋谷区の会計事務所】中川 尚税理士事務所 税理士 中川 尚 (東京税理士会 渋谷支部所属) |
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租 税 判 例 研 究 14対価の前払いがある取引の収益計上時期について −有料老人ホームの入居一時金の収益計上を中心として− 東京高等裁判所平成23年3月30日判決 1. 事実の概要 @有料老人ホームを運営する財団法人であるX会社(原告)は、入居者との間で終身入居契約を締結した場合には、入居者はXに入居一時金を支払い、Xは入所者が死亡するまで終身にわたって施設を利用させ、介護等の役務を提供することとなっていた。 A終身入居契約は、(1)入居者が死亡したとき、(2)入居者が解約を申し出たときに終了するが、その契約終了が入居日から5年以内である場合には、中途終了返済条項に基づき、Xは入居者に、入居一時金の一部を返金する。 BXが行っていた、入居一時金の会計処理 @受領時に一旦、全額を負債(前受金)計上。 A毎決算時に、入居一時金を入居者の平均余命等を勘案してX が計算した年数等で按分した金額を、想定入居期間内の各事業年度における収益の額として、負債から収益へ取り崩して計上。 Cこれに対し、所轄税務署長Y(被告)は、入居一時金のうち、返金しないことが確定した額が、その返金しないことが確定した事業年度の収益となるべきであるとした。 ○第1審の東京地方裁判所は、X の主張を排斥し、請求を棄却した (東京地裁平成22年4月28日判決)。 第2審の東京高等裁判所も、第1審と同様にX の請求を棄却した (東京高裁平成23年- 2 -3月30日判決)。 2.争点 ○Xの行った計算は、公正妥当と認められる会計処理の基準に従っていたといえるか。(法人税法22条4項) ○有料老人ホームの設置者は受領した金額を前払金として備えておく必要性があるのか。(老人福祉法第29条第6項) 3 判旨の要約 → 請求棄却。 (1)収益計上時期の一般的基準 収益は、その収入の原因となる権利が確定(実現)したときの属する年度の益金に計上すべきで、また、確定する時期は、それぞれの権利の特質を考慮し決定されるべき。 (2)本件入居一時金の収益計上時期 本件入居金一時金は、入居者に対し、終身にわたり、X の施設を利用させ、介護を提供すること等の役務に対する対価としての機能を有する一方、当該役務を提供すべき期間は、入居者の死亡、当事者の解約の申出等の不確定な事情によって定まり、中途終了返済条項の定める額以外の額は、その返還を要しないという点に特徴がある。 そうすると、本件入居一時金は、一定期間の役務の提供ごとに、それと具体的な対応関係をもって発生する対価からなるものではなく、上記役務を終身にわたって受け得る地位に対応する対価であり、いわば賃貸借契約における返還を要しない保証金等に類するというべきである。 この入居一時金に係る権利の特質に照らせば、本件入居一時金の収入の原因となる権利が確定する時期は、その権利は、返還を要しないことが確定した額ごとに実現し、権利として確定するものと解するのが相当。 (3)厚生労働省通知の公正処理基準該当性 確かに、通知の趣旨が、本件一時入居金のような「一時金」を複数の事業年度に配分して収益計上するに当たり、償却期間の長さは入居者の平均余命を勘案して決めるべきという点は認められるものの、それは資金繰りが困難になることのないようにすることを目的にしたものである」 4. 関連法案 一時金は利用権の取得に対する対価か、それとも賃貸借契約と長期役務契約の対価か ○法人税法22条4項(各事業年度の所得の金額の計算) (第2項に規定する)当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。 ○老人福祉法第29条第6項 有料老人ホームの設置者のうち、終身にわたって受領すべき家賃その他厚生労働省令で定めるものの全部又は一部を前払金として一括して受領するものは、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ、当該前払金について返還債務を負うこととなる場合に備えて厚生労働省令で定めるところにより必要な保全措置を講じなければならない。 |
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