渋谷区の税理士 中川尚税理士事務所
       
【東京都渋谷区の会計事務所】中川 尚税理士事務所 税理士 中川 尚 (東京税理士会 渋谷支部所属)              



                                                                                                                                                                                                   
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租 税 判 例 研 究 3



認定利息が相当とされる判例

 

○種別: 判決/最高裁判所第三小法廷(上告審)

○判決年月日: 平成16年 7月20日

○事件番号: 平成11年(行ヒ)第169号

○裁判結果: 破棄自判

 

1.概要

○被上告人 =納税者X

○上告人  =税務署長Y

 

被上告人(納税者X)が、その大半の出資持分を有する有限会社に無利息で金銭を貸し付けたところ、上告人(税務署長Y)から所得税法157条(平成13年の改正以前)の規定を適用され、利息相当分の雑所得があるとして、平成元年分から同3年分までの所得税の増額更正及び過少申告加算税賦課決定を受けたため、利息相当分が上記更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項にいう正当な理由があるなどと主張して、取消しを求める事案。

 

○第一審(東京地裁平成7年)

3年分の所得税に係る更正処分+過少申告加算税賦課決定処分の取消請求

○第一審判決

:いずれも請求を棄却。

○控訴審(東京高裁平成9年)

:審査裁決の取消請求

○控訴審判決

:Xが控訴。控訴審判決は、第一審判決を変更し、更正処分については請求を棄却し、賦課決定処分については、請求を認容して処分を取り消し、審査裁決については、控訴を棄却した。

○本件上告審

:Y税務署長のみが上告。

 

2.争点となる租税法

過少申告加算税賦課決定処分の適否。

○所得税法157条(同族会社等の行為又は計算の否認等)

「税務署長は、次に掲げる法人の行為又は計算で、これを容認した場合にはその株主等である居住者又はこれと政令で定める特殊の関係のある居住者(その法人の株主等である非居住者と当該特殊の関係のある居住者を含む。)」

 

○国税通則法65条4項(正当な理由)

「第1項又は第2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。」

 

○所得税法36条1項(収入すべき金額)

「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。」

 

3.前提事項

@ 有限会社Aは、昭和63年11月に設立。法人税法2条10号に規定する同族会社。

Xは、昭和63年12月末日において、その資本金の98%に相当する出資。

平成4年8月のA会社の解散に至るまで、その代表者である取締役であった。

 

A Xは、店頭売買登録銘柄である株式会社Bの発行済株式総数5888万株中4325万2000株を有していたが、平成元年3月10日、A会社に対し、場外取引により、そのうち3000万株を代金3450億円で売却した。

 

B Xは、上記代金の精算日に、銀行4行から3455億2200万円を年利3.375%で借り入れて、A会社に対し、うち3455億2177万5000円を、返済期限及び利息を定めず、担保を徴することもないまま貸し付けた。

A会社は、同日、前記各証券会社に対し、前記代金3450億円及び手数料5億2177万5000円を支払った。上記各社はXに対し、手数料と有価証券取引税を引いた残額3425億8143万7500円を支払った。Xは、同日、前記各銀行に対し、前記借入金を弁済した。

その結果、本件貸付けが無利息、無期限のままの状態で残存することとなった。

 

C A会社は、収益のほとんどが本件株式の配当収入であり、実質的な営業活動を行っていなかった。

 

D Xの顧問税理士等の税務担当者は、税務当局が個人から法人への無利息貸付けに所得税を課さない旨の見解を採っていると解していたため、Xの平成元年分から同3年分までの所得税については、雑所得を0円とする申告。

上告人は、同4年6月18日、本件規定(所157条)を適用して、本件貸付けによってXに利息相当分に係る雑所得が生じたと認定し、上記各年分の所得税の増額更正をするとともに、これらに係る過少申告加算税賦課決定をした。

 

E 元東京国税局税務相談室長が編集した「昭和58年版・税務相談事例集」には、会社が代表者から運転資金として無利息で金銭を借り受けたという設例について、所得税法上、別段の定め(同法59条等)のあるものを除き、担税力の増加を伴わないものについては課税の対象とならないとして、参照条文として同法36条1項を挙げた上で、代表者個人に所得税が課税されることはない旨の記述がある。

 

 

4.原審の判断

各年分の過少申告加算税賦課決定を取り消した原審の判断は、次のとおりである。

 

@ 本件貸付けは、多額の金員を無利息、無期限、無担保で貸し付けたものであり、独立かつ対等で相互に特殊関係のない当事者間では通常行われない不合理、不自然な経済的活動であり、これによってXの得べかりし利息相当分の収入の発生が抑制されることになる。営利法人であるA会社としては、その資産の大半である本件株式を何らかの形で運用することが通常予想されるのであるから、Xがその経営責任を果たすために無利息貸付けを実行した等の特段の事情を認めることもできない。したがって、上告人が本件貸付けに本件規定を適用したことに違法はない。

 

A 税務当局が個人から法人への無利息貸付けに所得税を課さない見解を採るものと解することは、無理からぬところである。そして、Xの顧問税理士等の税務担当者において、税務当局が上記見解を採るものと解したことをもって、単なる法解釈についての不知又は誤解であるということはできないから、前記得べかりし利息相当分が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項にいう正当な理由がある。したがって、本件各決定は違法である。

 

 

 

 

 

5.判決

本件規定は、同族会社において、これを支配する株主又は社員の所得税の負担を不当に減少させるような行為又は計算が行われやすいことにかんがみ、税負担の公平を維持するため、株主又は社員の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為又は計算が行われた場合に、これを正常な行為又は計算に引き直して当該株主又は社員に係る所得税の更正又は決定を行う権限を税務署長に認めたものである。

このような規定の趣旨、内容からすれば、株主又は社員から同族会社に対する金銭の無利息貸付けに本件規定の適用があるかどうかについては、当該貸付けの目的、金額、期間等の融資条件、無利息としたことの理由等を踏まえた個別、具体的な事案に即した検討を要するものというべきである。

 

そして、前記事実関係等によれば、本件貸付けは、3455億円を超える多額の金員を無利息、無期限、無担保で貸し付けるものであり、Xがその経営責任を果たすためにこれを実行したなどの事情も認め難いのであるから、不合理、不自然な経済的活動であるというほかはないのであって、税務に携わる者としては、本件規定の適用の有無については、上記の見地を踏まえた十分な検討をすべきであったといわなければならない。

 

他方,「昭和58年版・税務相談事例集」は,その体裁等からすれば,税務に携わる者においてその記述に税務当局の見解が反映されていると受け取られても仕方がない面がある。

しかしながら,その内容は,代表者個人から会社に対する運転資金の無利息貸付け一般について別段の定めのあるものを除きという留保を付した上で,又は業績悪化のため資金繰りに窮した会社のために代表者個人が運転資金500万円を無利息で貸し付けたという設例について,いずれも,代表者個人に所得税法36条1項にいう「収入すべき金額」がない旨を解説するものであって,代表者の経営責任の観点から当該無利息貸付けに社会的,経済的に相当な理由があることを前提とする記述であるということができるから,不合理,不自然な経済的活動として本件規定の適用が肯定される本件貸付けとは事案を異にするというべきである。

そして、当時の裁判例等に照らせば、Xの顧問税理士等の税務担当者においても、本件貸付けに本件規定が適用される可能性があることを疑ってしかるべきであったということができる。

 

そうすると、前記利息相当分が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項にいう正当な理由があったとは認めることができない。

 

 



       

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