【東京都渋谷区の会計事務所】中川 尚税理士事務所 税理士 中川 尚 (東京税理士会 渋谷支部所属) |
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租 税 判 例 研 究 8【税理士損害賠償/過大な相続税を納税する危険を説明すべき義務の存否】 ○種別:那覇地方裁判所沖縄支部 損害賠償請求事件(棄却)(確定)判決 ○判決年月日: 平成23年10月19日 ○事件番号: 平成22年(ワ)第106号 ○裁判結果: 棄却 1 概要 本件は、訴外Aの相続人である原告らが、税理士である被告において訴外Aの課税対象となる相続財産を調査すべき義務を怠り、あるいは同人に過大な相続税を納税する危険を説明すべき義務を怠った結果、同人が相続していない本件土地についても相続税を納付して損害を被った旨を主張して、被告に対し、不法行為に基づき訴外Aの妻である原告Xにつき1233万7993円、訴外Aの子らである原告乙、同丙、同丁及び同戊につき各自損害金308万4498円及びこれらに対する遅延損害金の支払をそれぞれ求めたという事案である。 2 争点 (1)被告に注意義務違反が認められるか否か、 (2)相当因果関係の存否 (3)本件損害額、の3点である。 3 前提となる事実 ・Xは訴外Aの妻。 ・訴外Cは訴外Dの子で、訴外Aの異母弟。 ・被告は、訴外Cの死後依頼され、訴外Aらが相続する申告を行った。 ・しかし、実際は本件土地の所有名義人は訴外Cの単独名義ではなかった。 4 裁判所の判断@ 税理士である被告は、税務の専門家として、税務に関する法令、実務の専門知識を駆使して、納税義務者の信頼に応えるべき立場にあるから、納税義務者のため税務代理、税務書類作成等の業務を行うに当たっては、課税対象となる財産の範囲を調査し、これを納税義務者に説明すべき義務を負うものというべきである。 裁判所の判断A 被告は、本件土地の所有名義人が訴外Dであることを確認したことから、訴外Cの相続人らに事情を尋ねたところ、Cが本件土地を所有していた旨の回答を得たばかりか訴外Aから、自分が本件土地を相続したと主張されたものである。被告が、税務の視点に立って、相続税を負担することになるにもかかわらず相続による取得を主張する者の供述に信用性を認めたことには、合理性が認められる。 裁判所の判断B 税理士は、税務の専門家であって、法律の専門家ではないから、ある財産を遺産に含めて相続税の課税対象として処理する場合に、所有権の移転原因を厳密に調査する義務があるとまでいえず、税務署が納税行為の適正を判断する際に先代名義の不動産の有無を考慮している現状にも照らせば、被告が本件土地に関する調査義務に違反したということはできない。 裁判所の判断C また、訴外Aは、自己の納付税額が4300万円を超える高額なものである上、その納付資金のほぼ全額を銀行借入れによって調達しており、その納付の根拠に強い関心を有していたと認められるところ、本件確認書に押印し、更に本件申告書にも押印していることからすれば、被告が訴外Aに対し、本件土地を同人の相続財産に含めることで、納付する相続税額が増加する旨を説明したとの被告本人の供述は採用することができる。そして被告は、これまで認定説示したとおり調査を行い、本件土地が訴外Dの所有名義になっていることも、認識していたのであるから、被告が、訴外Aに対し、本件土地の相続登記のために、Dの相続人らの遺産分割協議書が必要である旨を伝えたとの被告の供述も採用することができる。 そうすると、被告がAに対する説明義務に違反したということはできない。なお、訴外Aは本件確認書等で本件土地の相続税評価額を確認していたものと認められるから、被告に訴外Aから書面による承諾を得る義務があったということはできず、この点に関する原告らの主張は採用することができない。 7 判決 以上のとおり、被告に注意義務違反すなわち過失を認めることはできないから、争点(2)(3)につき検討するまでもなく、被告のAに対する不法行為は成立しない。 判決年月日 H23−10−19 |
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